博士号取得後の研究

博士号取得後は日本学術振興会の特別研究員として、首都大学東京の梶井克純教授、加藤俊吾准教授の下で大気観測を行いました。
メインで行ったのは、OHラジカルの反応性測定です。OHラジカルの反応性(とその他の大気中微量化学種)を測定することにより、大気質の測定を行うことが出来ます。また、この研究により大気中でどのような起源の微量成分が重要かを探ることが出来ると考えています。

☆OHラジカルとは?
OHのことで、不対電子をもっているためエネルギー的に不安定で、他の化学種との反応が非常に速いことが知られています。通常、日中の大気中ではオゾンの光分解などから生成する第一励起状態の酸素原子O(1D)と水蒸気(H2O)の反応などで生成しますが大気中のほかの化学種と反応して、1秒以下の時間スケールで消失してしまいます。したがって濃度としては非常に低い(0.4 pptv, 106 /cm3、pptv=体積基準で1012分の1)ですが、大気微量成分の大気中での寿命、滞在時間を決定するなど重要な役割を果たしています。

☆OHとオゾンの関係の概要
大気環境問題の一つとして対流圏オゾンの濃度増加(一般的な呼び方で言うと光化学スモッグの増加)が知られています。対流圏でのオゾン(O3)生成にはOHラジカルが関与する反応が重要な役割を果たしています。

OH+CO→H+CO2
H+O2+M→HO2+M, Mは第三体

RH+OH→R+H2O、Rは炭化水素などからHが引き抜かれた形のラジカル
R+O2+M→RO2+M, Mは第三体

ここで生成したHO2、RO2は大気中のNOと反応しNO2となります。NOと反応したRO2のうちの一部はHO2を生成します。

RO2+NO→RO+NO2
RO+O2→R'O+HO2、R'はRからHが引き抜かれた形のもの
HO2+NO→OH+NO2

生成したNO2は日中では太陽光で光分解され、基底状態の酸素原子を生じ

NO2+→NO+O(3P)
O(3P)+O2+M→O3+M、Mは第三体

の反応でオゾンが生成します。

研究成果

・論文
都市郊外地域のオキシダント生成能の評価
      梶井克純、吉野彩子、渡邉敬祐、定永靖宗、松本淳、西田哲、加藤俊吾
大気環境学会誌 第41巻 第5号 259-267, (2006)

・学会発表
後日アップ予定

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