[3]. ポリフェノールの媒介する新しいコレステロール代謝調節系 |
血中の高密度リポタンパク質( HDL)は、末梢組織に蓄積したコレステロール(CHOL)を肝臓に運び、末梢組織に蓄積したCHOLを取り除く作用などを持ち、抗動脈硬化作用を有することが明らかにされている。HDLレベルは、その主要構成タンパク質であり、抗動脈硬化因子であるアポA-Iレベルに依存するので、アポA-I発現を調節する因子を探索し、その機構を解明することは、高コレステロール血症や動脈硬化症の予防や改善を考える上で非常に有用である(図8参照)。最近、大豆ゲニステインなどの植物に広く存在するポリフェノールの動脈硬化症への好影響が注目を集めている(図9参照)。しかし、ポリフェノールのCHOL代謝改善作用の分子機構は不明な点が多い。我々はHepG2細胞を用いて、ゲニステインが、エストロゲン受容体 α ( ER α )を介してアポ A-I遺伝子の転写活性化を通じてmRNAを上昇させることにより、アポA-Iを上昇させることを発見した(9)。さらに、ゲニステインとER α によるアポ A-I遺伝子転写活性化が、アポA-I遺伝子プロモーターの−264〜−191及び−80〜−44領域を介して誘導されることを初めて発見した(10)。さらに、 ゲニステインによるアポ A-I遺伝子転写活性化には、ER α の他に、転写因子 HNF-4 α 、 ARP-1の関与が示唆された(図10参照)。
(9)長岡 利ら:日本農芸化学会誌、 75, 291 (2001) |