[2]. リン脂質結合大豆ペプチドのコレステロール代謝改善機能 |
これまでの大豆タンパク質(特定保健用食品素材)の血清 コレステロール低下作用に関する研究の一つの大きな流れは、大豆タンパク質そのものから、より効力の高い有効成分を特定する方向の研究である。我々も種々の大豆成分の探索評価の結果、大豆タンパク質とリン脂質を結合させ、ペプシン(又は、スミチーム)水解し、遠心分離後、高分子画分を得ることで、リン脂質結合大豆タンパク質ペプシン(又は、スミチーム)分解物高分子画分(SPHP)を開発した。SPHPはペプチドとしての作用増強効果と大豆リン脂質の効能を併せ持つ優れた特性を有し、そのためCHOL代謝改善作用は、これまでの既存の大豆関連調製物には例を見ない程に飛躍的に向上したことを、ラットを用いて発見した(4)。SPHPは、CHOL吸収抑制により血清CHOL低下作用を発現することを、in vivoでの放射性CHOL吸収評価実験や、Caco-2培養細胞において、放射性CHOLを用いて初めて証明した(4)。また胆汁酸の再吸収を抑制する可能性があることをin vitroでの胆汁酸結合実験により明らかにした(4)。その後、我々は特定保健用食品許可・工業的生産を視野に入れた研究開発の視点から、SPHPを含むCSPHPを開発した。高コレステロール血症の成人男性が1日わずか3gのCSPHPを3ヶ月間摂取することで、血清CHOLの有意な低下が観察された(5)。これは米国食品薬品局・FDAが示した大豆タンパク質そのものの効果(1日25g摂取:図7参照)よりも極めて優れている。CSPHPを含む「コレステブロック」は、特定保健用食品として2000年12月に許可され、協和発酵工業(株)の新製品「コレステブロック」(下記の写真参照)として、2001年2月から発売されている( http://www.kyowa.co.jp/health/ )(6、7)。最近の研究から、ラットにおいて、CSPHPに含まれる活性成分であるSPHP摂取により、コレステロール分解系の律速酵素であるCHOL 7α-水酸化酵素活性やそのmRNAレベルが有意に上昇することが発見された。つまり、肝臓でのコレステロールの分解をCSPHPが促進する可能性が示唆された(8)。
(4) Nagaoka, S. et al. : J.Nutr., 129, 1725-1730 (1999) |
2001年11月(米国の同時多発テロから2ヶ月後)アメリカのサンディエゴで開催された「第4回慢性疾患に対する予防と治療における大豆の役割に関する国際シンポジウム」の会場で、大豆のコレステロール代謝改善作用に関する著名な研究者であるイタリア・ミラノ大学の Sirtori(シルトーリ)博士と一緒の写真( 4 th International Symposium on the Role of Soy in Preventing and Treating Chronic Disease held in San Diego, U.S.A.:Nov. 4-7, 2001 )
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