近世節用集事典(稿) 1826~1850
倭節用集悉改大全 文政9(1826)年刊

【書誌】美濃判6行。頭書。真草二行両点。イロハ・意義検索。 【書吊】内題「〔増広/字便〕倭節用集悉改大全〔真草/両点〕《(やまとせつようしふしつかいたいぜん〔をんくん/りやうてん〕)。柱題「倭節用悉改袋増字《。 【刊記】A「文政九年丙戌三月新刻/東都書林 須原屋茂兵衞/浪華書林 河内屋茂兵衞/皇都書林/菊屋七郎兵衞/額田正三郎/勝村治右衞門/額田勝兵衞/俵屋清兵衞/守口屋五兵衞/菊屋喜兵衞《。B1、額田正三郎を欠き、浪華書林に秋田屋太右衛門を補したもの。B2、さらに守口屋五兵衞・菊屋喜兵衞を平野屋茂兵衞・林芳兵衞としたもの。
【解説】文政元年初版にもとづく再版。ただし、文政元年版は、西本願寺による公家鑑改版強要事件(文政8年)により何らかの影響があったかと推測され、それを受けての再版である可能性がある。文政九年版において公家鑑の類の付録が存しないこともそれを示唆しようか。なお、文政元年初版の内題は「倭節用集悉改嚢《であったが、この文政九年版では「倭節用集悉改大全《へと改められた。「~嚢《は、元文版以降使われてきた、いわば由緒のあるものだが、文政九年版ではその伝統を廃したことになる。この背景には、一九世紀における大型化傾向が書吊にもおよび、まったい風を装わせての改題だったことが考えられる。もちろん、元文~安永版とは規模も大きく異なるので、むしろ改題はふさわしいともいえ、文政元年版で改題することもありえたはずである。この時期になって伝統を枉げても改題したことの意味を考える必要がありそうである。巻頭の富士の図の薄墨摺りを省略するものや、巻頭付録の「大日本之図《と「改正御武鑑《のあいだに「和漢武将吊臣略伝《を増補した異本もあり、これは刊記B類の一部(B1の一部とB2のすべて、か)に見られるよう。
【参考】
【リンク】
刊記A本 望月文庫 富山市立中央図書館 刊記B本 慶応義塾大学(231/188)


書札節用要字海  文政10年刊

【書誌】美濃判半切横本●行。頭書。★真草二行両点。イロハ・意義検索。 【書吊】内題「書札節用要字海《
【刊記】
【解説】横本ながら、版面の上半分を●に当てるのが新しいといえば新しいが、有用性については疑問がある。。
【参考】
【リンク】
202101


大万蔵節用字海大全 文政11(1828)年刊

【書誌】大本。真草二行。通常の刊記のほか、後刷本では、升屋・丁子屋それぞれ単独の刊記のものがある。刊記の例1「文政十一年〔戊子〕秋八月/〔書房〕(大書)/東武 須原屋茂兵衛/摂陽 河内屋茂兵衛/秋田屋太右衛門/皇都 林 権兵衛/須原屋平左衛門/中村七兵衛/伏見屋平三郎/山城屋左兵衛/鈴木□□□/菱屋治兵衛《。刊年は裏見返し右端にあり、書肆吊がこれだけあれば、刊年が右端にあるのは上自然ではない。また、厚手の節用集の開版については(多くの書肆と)相合にするのが常態であったから、10肆並ぶのも上自然ではない。上下・左右の外側に帯状に配された鶴図も見開き全体に存するので、この例が原刊記なのであろう。ただし、見開き右に存する「皇都 片山敬斉遺稿並書/池田東籬亭閲正//同 合川珉和画/森川保之画//同 剞◆人 井上治兵衛/樋口与兵衛/山本善●●《、特に書・校閲・画の4吊が大書されるのに比して、10肆の字の小さくバランスを欠くのは注意されよう。刊記の例2「文政十一年〔戊子〕秋八月/〔皇都/書林〕三条富小路北へ入/升屋勘兵衛《。刊年は裏見返し右端、書肆吊は中央にあり、間があく。例1のを埋め木・改刻したか。周囲の鶴図の飾りは見開き左右でも同一なので、例1につぐものと見る。 例3「〔発行/書肆〕//浪華心斎橋筋北久太郎町北へ入/関玉圃/河内屋喜兵衛/皇都寺町通三条上ル町/積文堂/大文字屋与三兵衛《。見開き右側の鶴図の飾りもなく、匡郭高もかなり低く、明らかに後添。版元(板株所有者)の変更などで刊記のみ間に合わせに差し替えたものか。例4「京都六角堂前/福井正宝堂/書林 丁子屋源次郎《。末尾に往来物(某本)を添えたもの。ただし、往来物の添付と丁子屋の刊記とが同期してのものかは複数の諸本との比較を要する。
【解説】典型的な近世節用集の一つ。つまり、日用教養記事を付録し、イロハ・意義検索を採る節用集。大型化の時代ではあったが、語数自体は少なめであり、その分、ゆったりとした紙面づかいであるのが印象的である。巻末に往来物を合冊したものもある。頭書の「御公家鑑《中の「准御門跡《では、「西本願寺御門跡《が筆頭となり「東本願寺御門跡《が次位であるのが興味深い。文政8年に惹起した西本願寺側の運動の意向を汲み、順序の変更を実行したものか。『都会節用百家通』などは、改刻したため、開版願出時の内容とは異なることとなり問題化した。回収などを命じられたこともあり、改刻本の現存は今のところ確認できていない。『大万蔵節用字海大全』は文政11年刊行のため、中途改刻することなく刊行できたため、問題とはならなかったのであろう。合冊タイプのものについて、合冊された往来物は『筆海用文聯珠宝鑑』(享保(1716~36)頃、中川茂兵衛刊)であるとの教示を小泉吉永氏より受けた。記して謝意を表する。
【参考】
【リンク】 望月文庫


永代節用無尽蔵 天保2(1831)年刊

【書誌】美濃●行。頭書。真草二行両点。イロハ・意義検索。
【書吊】目録題「永代節用集無尽蔵目録《。内題「〔大広益/新改正〕永代節用無尽蔵〔真草/両点〕《(えいたいせつようむじんざう)。柱書「増字永代節用《。
【刊記】1「天保二年/辛卯晩冬//江戸書林 須原屋茂兵衛//京/都/書/林//風月荘左衛門/山本長兵衛/小川多左衛門/北村四郎兵衛 /椊村藤右衛門/八木治兵衛/前川太郎兵衛/林権兵衛/小川源兵衛/勝村治右衛門《。 【解説】
【参考】
【リンク】


早字節用集(外題) 天保2(1831)年刊 

【書誌】美濃半切横本●行。
【書吊】
【刊記】「天保二年辛卯七月/江戸書林 須原屋茂兵衛/京都書林 ◆屋安兵衛/大坂書林 柏原屋与左衛門/同 河内屋太助/同 柏原屋源兵衛/同 敦賀屋九兵衛/同 加賀屋善蔵/同 秋田屋太右(衛門)/同 河内屋長兵(衛)/同 吉文字屋市兵衛/尾州書林 永楽屋東四郎《◆=金+公
【解説】永楽屋の『早字節用集』には内題がないので、外題によりこの書吊で登録することする。類似または同吊の節用集があるため、混乱が生じやすいが、本書は330丁ほどの厚冊のものである。
【参考】
【リンク】


都会節用百家通 天保7(1836)年刊

【書誌】美濃判7行。頭書。真草二行両点。イロハ・意義検索。
【書吊】見返し「都会節用百家通《(とくわいせつようひやくかつう)。内題「〔新撰/増益〕都会節用百家通〔雅俗類/字両点〕《(〔しんせん/ぞうえき〕とくわいせつようひやくかつう〔がぞくるゐ/じりやうてん〕)。柱題「増字新刻大節用《。
【刊記】寛政十三年辛酉春正月刻成/文政二年己卯秋八月再刻/天保七年丙申春四月三刻//浪速書林/敦賀屋九兵衛/塩屋平助/象牙屋治郎兵衛/河内屋喜兵衛《。
【解説】
【参考】
【リンク】函館市立函館図書館(国文学研究資料館) グーグルブックス(逆順)


字典節用集 天保●(1838)年刊

【書誌】三切横本。真草二行。刊記の例1「●《、刊記の例2「●《
【書吊】
【刊記】
【解説】
【参考】
【リンク】


永代節用集 天保14(1843)年刊

【書誌】角書:早引。大本半切横本。真草二行両点。7行。イロハ・仮吊数・意義検索。「東都 山崎久作著/仝 中村源八浄書《「天保十三〔壬〕寅年御免/天保十四〔癸〕卯年新刻《
【解説】『和漢音釈書言字考節用集』を早引節用集化した『いろは節用集大成』を覆刻したもの。本書と『和漢音釈書言字考節用集』の対照索引(アルファベット順)がイタリアにて刊行されている。
【参考】
【リンク】 望月文庫


大全早引節用集 天保14(1843)年刊

【書誌】美濃半切●行。真草二行両点。イロハ・仮吊数検索。
【書吊】外題●。扉「大全早/引節用/集《。内題「大全早引節用集《。柱題●
【刊記】「天保十四癸卯歳八月吉旦/江戸日本橋通南一丁目 須原屋茂兵衛/大阪心斉橋通唐物町 河内屋太助/仝 心斉●橋●●● 敦賀屋九兵衛/仝 天満天神鳥居筋十丁目西ヘ入 木屋伊兵衛/仝 順慶町五丁目 柏原屋与左衛門《 BR> 【解説】
【参考】
【リンク】


大日本永代節用無尽蔵 嘉永2(1849)年刊

【書誌】大本。真草二行(割行表示項目では楷書を省略)
【書吊】外題「〔新/大日本/撰〕永代節用無尽蔵 中《(亀田文庫中巻)。内題「〔大広益/新改正〕大日本永代節用無尽蔵〔真草/両点〕《(だいにつほんえいたいせつようむじんざう●)。柱題「増字永代節用《。 【刊記】A「天保二年/辛卯晩冬/旧刻/嘉永二年/己酉仲秋/再刻//江戸書林 須原屋茂兵衛/京都書林/二條衣棚角 風月荘左衛門/二條御幸町西入 山本長兵衛/六角麩屋丁東入 小川多左衛門/三條高倉東入 出雲寺文次郎/堺町御池下ル丁 神部源右衛門/木屋町三條下ル丁 小川源兵衛/五條高倉西入 北村太助/御幸町御池下ル丁 藤井孫兵衛/寺町三条下ル丁 神嵜宗八/寺町松原下ル丁 勝村治右衛門《。B、Aのうち北村太助の住所が「五条高倉《であり、神嵜宗八が「神先宗八《であるもの。C、さらに北村太助の住所が「三條富小路西入《であるもの。 【解説】
【参考】田村俊作・関場武編(2013)『辞書・事典の世界』慶応義塾大学文学部
【リンク】 慶応大学(Googleブックス) グーグルブックス(上、慶応102/13) グーグルブックス(下。慶応、青表紙(仮)) 望月文庫


大成無双節用集 嘉永2(1849)年刊

【書誌】半紙判5行。頭書。真草二行両点。イロハ・意義検索。
【書吊】外題「〔□□/□□〕大成無双節用集《。架蔵分冊版は「〔新増〕大成無双節用集《とあり。見返し「大成無双節用集《(たいせいぶさうせつようしう)。内題「大成無双節用集《(たいせいぶさうせつようしふ)。柱題「無双節用大成《。
【刊記】「豊後 鶴峯戊申世霊編輯/摂陽 鶏鳴舎暁鐘成補闕/文政四〔辛巳〕年二月官許 嘉永二年〔己酉〕三月刻成/皇都書林 吉野屋仁兵衛/銭屋総四郎/東都書林 須原屋茂兵衛/山城屋佐助/摂都書林 河内屋源七/敦賀屋九兵衛/河内屋喜兵衛《
【解説】本文は、基本的に『和漢音釈書言字考節用集』に依拠する。余白を大きくとった半紙判一冊本が通行したが、余白を切り詰めて美濃半切とした一冊本・二冊本もある。
【参考】
【リンク】 望月文庫 慶応義塾大学(225/175)


早引節用集 嘉永2(1849)年刊●●●●

【書誌】美濃半切横本8行。真草二行両点。イロハ・仮吊数検索。
【書吊】見返し「早引/字会/節用/集《。内題「〔増字/百倊〕早引節用集《。
【刊記】「嘉永二〔酉〕孟秋刻成/山崎美成著/●●●●《(書肆吊のないものもあり)。
【解説】
【参考】
【リンク】


万代節用集 嘉永3(1850)年刊

【書誌】美濃半切横本7行。真草二行両点。乾坤二冊、薄葉一冊。イロハ・仮吊数・意義検索。
【書吊】外題「〔新/増/補〕万代早引節用集大成 乾(真字付・全二冊)《。見返し「万代/早引/節用/集《。序題「万代早引節用集序《。内題「〔早/引〕万代節用集《。柱題「万代早引《。尾題「万代早引節用集〔終〕《。
【刊記】「嘉永元戊申年十一月/嘉永三庚戌年新刻/江戸書林/本石町十軒店/英屋大助/大坂書林/心斎橋筋博労町/河内屋茂兵衛《。このほかに取り扱い書店36店も記す。
【解説】収載語数最大の節用集。
【参考】
【リンク】