岐阜大学医学部付属病院 生育医療・女性科(産婦人科)
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周産期医学
診療の内容
周産期医学とは分娩を中心に、妊娠中から出生後の新生児管理に至るまでの診療のことです。これは胎児の医療と母体の医療に分けることができます。個々の妊娠の問題点をいわゆるリスクとして評価し、安全な出産を目指して胎児と母体をしっかり管理していくことが診療の主な内容となっています。

1)母体側のリスク
健康な女性が妊娠しても、偶発的に病的な状態になってしまうことがあります。血圧が高くなってしまったり、尿に多量の蛋白が出てしまったりすると厳重な管理が必要になります。このような場合には高次医療機関での診療が避けられなくなります。また分娩に際しては思わぬ緊急事態が発生する可能性がすべての妊婦にあります。分娩時の大出血等がこれにあたりますが、われわれはこのような病態に迅速に対応し、母児の救命にあたっています。
近年出生率の低下が問題視されてきていますが、その一方で、かつては妊娠を禁じられていたさまざまな疾患を有する女性の出産が可能になってきました。これは疾患の管理方法が進歩してきたこともいい影響を及ぼしていますが、産科医の積極的なかかわりが重要になります。妊娠による病態の変化を各々の疾患の専門医と連係して評価し、適切な分娩時期を決定することによって、たとえ何らかの基礎疾患を有していても無事に子どもをもうけることができるように、最新の知識と技術を駆使して診療にあたっています。

2)胎児側のリスク
超音波検査に代表される画像診断技術の進歩は、周産期医療のありかたを根本から変えてしまいました。母体内での胎児のありさまは、今では手にとるように分かるようになってきました。この画像診断法を用いてあらゆる胎児の形態異常の診断を、積極的に行っています。
胎児の異常は多岐にわたります。前述したような形態の異常だけではなく、発育の異常等の機能的な問題にも取り組んでいます。胎児は基本的に患者として扱われなければなりません。患者である胎児には適正な診断と治療を提供する義務があります。したがって、診断された異常は出生前後の治療を前提とするものであるべきです。われわれは院外の未熟児診療の専門施設や小児外科診療を行うグループと積極的な交流を行い、胎児の異常が診断された時点で、出生後の治療についてのアセスメントを行っています。さらに出生後の治療が円滑に行われるように、胎児期にも必要な処置を考慮しています。
胎児に対する治療はまだ十分な認知を受けていませんが、すでに十分な効果が確認されているものも少なからずあります。国内外と最新情報を交換し、適切な医療を提供するべく診療にあたっています。

周産期診療は前述したように母体胎児の両面から、突然の病態の変化に対応しなければなりません。最新の設備を備えた施設でしか行えない医療を、常時提供できる体制の整備を進めています。
婦人科腫瘍
診療の内容
悪性腫瘍を中心に、正確な病理診断と超音波、MRI、CTなどによる画像診断を用いて詳細な術前評価と個別化された治療を行っています。
婦人科癌治療の将来的な展望は、多くは他のがん治療と共通するものですが、evidenceに基づく標準治療と先端的治療を区別した対応を徹底することや、さらに新たな治療の開発は婦人科癌でも必要になってまいります。また、現在、悪性腫瘍の中心的な治療であります手術療法、抗癌化学療法、放射線療法も、その対象の選択や方法を、現在より個別化・適正化してゆく努力がいっそう必 要になると考えています。
特に患者様の挙児希望の強い場合には、画像の十分な評価と世界的な症例の集積、患者樣、ご家族様との話し合いに基づく症例の個別化により、過剰な医療はしないように可能な限り妊孕性の温存に努めています。また、癌の手術、抗癌剤治療、放射線療法は生体に対して、免疫抑制的に作用することが多くありますので、積極的に漢方製剤も併用することにより、副作用の軽減などの治療効果をあげています。

1)子宮頚部異形成上皮〜子宮頚癌
子宮頚癌の前癌病変である子宮頚部異形成上皮〜子宮頚癌の初期病変には、高周波電気メスによる局所療法(リープ式円錐切除術)を行っています。併せて、その原因であるヒトパピローマウイルスの検索も行っています。患者様のニーズに合わせて、外来手術も行っています。その治療後の妊娠・分娩例も多く認めています。また、必要な場合には妊娠中にも温存療法を施行しています。特に患者様の挙児希望の強い場合には、円錐切除標本の適切な評価の後、健常な子宮を温存しリンパ節の郭清を行うなど可能な限り妊孕性の温存に努めています。
広汎子宮全摘術およびリンパ節郭清の必要な子宮頸癌症例には、ご自分の血液を術前から貯血して頂く自己血輸血を併用して通常の同種血輸血を回避しています。
進行子宮頸癌には、MRIなどでの適切な評価後に術前のネオアジュヴァント動脈内注入抗癌化学療法を行い、さらに、効果判定後、根治術や放射線治療を行い、予後やQOL(生活の質)の改善など良好な成績を得ています。

2)子宮体癌
子宮体癌は胎児が着床、成育する子宮体部に発生する腫瘍で、通常ホルモン依存性(卵巣から分泌される女性ホルモンの1つであるエストロゲンにより増殖促進される)を有します。日本においても、食生活を含めたライフスタイルの欧米化により、年々増加しています。
子宮体癌に対しては通常手術療法が用いられますが、40歳以下の若年性初期子宮体癌で、挙児希望の強い場合には、画像や病理標本の詳細な検討により、黄体ホルモン剤と内膜掻爬術により、根治を目指しています。また、その後の適切なフォローアップ、漢方製剤や生殖アシストにより妊娠、分娩例を多数報告しています。(1988年〜2004年治療12例中、全例が一旦は根治し、うち6例の妊娠例、5例の生児を獲得。これらの方は根治や分娩後も病変の再燃をしばしば認めますので、厳重なフォローアップが必要となります。)
子宮体癌の発見には、初診患者にも超音波等で子宮内膜に異常の疑われる場合には、積極的に内膜細胞診、組織診を施行しています。挙児希望のない場合の子宮体癌は手術療法が主たる治療となりますが、その病理標本の適切な評価の基づき、抗癌化学療法や放射線療法などの適切な補助療法を施行しています。特に、卵巣、卵管などの附属器まで達するような症例(転移性卵巣癌)には新規抗癌剤であるタキサン系薬剤も用いて治療効果をあげています。

3)卵巣癌
卵巣は腹腔内に浮かんだように存在する臓器であり、症状がでることが少なく、癌としてはしばしば進行した状態で発見されることが多いとされ、婦人科癌の中でも、予後不良と考えられます。
検診システムも開発途上の段階でありますが、超音波や血液検査が早期発見に有効とも考えられています。当科では、初診では必ず超音波を施行し、卵巣などに異常を認めれば、腫瘍マーカーを含めた血液検査やMRI、CTにより卵巣癌の早期発見に努めています。
初期卵巣癌で、患者様の挙児希望が強い場合、術前の画像による評価、術中所見、術後の病理標本の詳細な検討により、可能な限り子宮および健側卵巣の温存を心掛けています。
進行卵巣癌は根治の困難なことが多くあります。当科では、初回手術による肉眼的な腫瘍の駆逐後、多剤併用化学療法を施行しています。腹腔内に腫瘍細胞の播種を伴った場合には、簡便に腹腔内に抗癌剤の投与ができるように、皮下にインフユーザーポートの設置も行っています。多剤併用化学療法には従来の白金製剤に新しい抗癌剤タキサン系薬剤も用いていますが、evidenceに基づいた標準治療や 現在開発中でもあるような薬剤も用いて、最も効果のある可能性の高い治療薬を用いて治療にあたっています。

4)その他、良性疾患
手術前に子宮筋腫と思われる腫瘤は多くの場合、良性の「子宮筋腫」ですが、MRIなどを用 いて肉腫との鑑別診断が大切となります。子宮筋腫の治療は患者様のニーズに併せて、手術療法(子宮全摘、温存療法)とホルモン治療(GnRHアナログ)で症例により個別的に対応しています。なお、手術により子宮肉腫と確定診断されますと、治療は悪性腫瘍としてのものになり、「子宮筋腫」の治療とは全く異なったものになります。
生殖医学
不妊症、排卵障害の治療には西洋医学的方法ばかりでなく、漢方治療を含めた東洋医学的アプローチも積極的に取り入れています。
不妊症治療では、適切な治療方針に従い、体外受精も施行しています。受精困難例には顕微受精も行っています。
子宮内膜症はライフスタイルの変化により、年々増加しています。子宮内膜症もその病態に応じ、患者様のニーズに併せて、手術療法(癒着剥離など)とホルモン治療(GnRHアナログ、ダナゾール、中用量ピルなど)で症例により個別的に対応しています。
当科における臨床と研究との関連
研究においては、女性の生理的変化がいかに全身的、局所的に調節され、またそのコントロールの不具合と癌などの種々の病態との関連を、分子生物学的アプローチを含むさまざまな方法を用いて基礎的、臨床的に解明することを目的としています。さらにその臨床応用としての癌の予防、診断・治療の進歩をめざす臨床的研究を行っています。