岐阜大学しずい細胞プロジェクト

岐阜大学しずい細胞プロジェクト

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2016年以前に歯を提供していただいた方への重要なお知らせ

岐阜大学では、歯髄細胞を広く研究に利用していただくために、倫理審査委員会の承認を経て、理化学研究所バイオリソース研究センターへの歯髄細胞の寄託をおこないました(2022年3月公開)。2016年以前に歯を提供していただいた患者さんには、歯髄細胞から誘導したiPS細胞の公共バンクへの寄託への同意を頂いておりますが、歯髄細胞も寄託することにご同意願いたいと存じます。細胞使用目的変更に関してのご質問、または同意の取り下げ等につきましては、下記お問い合わせ先までお願いいたします。

沿革と目的

2016年2月4日節分「岐阜大学しずい細胞プロジェクト」が発足しました。医学系研究科の再生機能医学分野(旧:組織・器官形成分野)と口腔病態学分野が協力して研究を続けてきた「歯髄細胞」を有効利用するための戦略を話し合いました。そして新規設立の難しい公的バンクとしてではなく、きちんと利益を生みながら運営される産学協同のベンチャー企業を作って事業化を目指すことを決めました。

たとえば、現在国内にはすでに民間歯髄細胞バンクがありますが、主に個人の細胞を預かって将来のために保管したり、自分の細胞を自分の治療に使用する「自家移植」のための細胞バンクです。他人への移植(他家移植)は、倫理面や製造面でのハードルが高く、これまでのビジネスモデルが通用しません。そこで、以下のような目標を定めました。

岐阜大学しずい細胞プロジェクトの目的
日本人歯髄細胞の収集 日本人の約100人に1人出現する、ヒト白血球抗原(HLA)をホモに持つ特殊なドナー(HLAハプロタイプホモドナー)の探索。他家移植医療に必要な歯髄細胞コレクションを構築し、営利企業を通じて研究用・臨床用に広く提供する。
世界規模の歯髄細胞収集 日本人とはHLAが異なり、民族的な多様性が高いハンガリーと協力し、世界規模の歯髄細胞コレクションを構築する。
iPS細胞の誘導 京都大学のiPS細胞研究所と連携して、日本人iPS細胞ストックの充実に貢献する。
再生医療に携わる
人材の育成
再生医療分野で活躍する認定医や臨床培養士の教育を通じて、未来の医療に貢献する。

 2016年2月29日には東京で、社団法人国際ミーティングポイント協会(名古屋市)と協力し、京都大学の山中先生を招いての外交団セミナーを開催しました。われわれは10年以上も前から、他家移植(他人への細胞の移植)について深く考え、HLAハプロタイプホモ細胞に注目してきましたが、山中先生もiPS細胞ストック構想を通じて同じ想いを持って研究をされています。京都大学と岐阜大学が手を取り合って協力すれば、いつか世界中の人にiPS細胞を届ける事ができる日が来ます。

メンバー

会 長 : 吉田 和弘
(岐阜大学長)
副会長 : 山口 瞬
(岐阜大学医学系研究科長)
理 事 : 國貞 隆弘
(岐阜大学医学系研究科名誉教授)
理 事 : 山田 陽一
(岐阜大学医学系研究科教授)
メンバー : 手塚 建一
(岐阜大学医学系研究科准教授)
メンバー : 飯田 一規
(岐阜大学医学系研究科講師)
メンバー : 川口 知子
(岐阜大学医学部附属病院医員)
メンバー : 纐纈 春彦
(国際ミーティングポイント協会代表理事)
メンバー : 西野 慎祐
(国際ミーティングポイント協会理事)

岐阜大学しずい細胞プロジェクト Q & A

はてな?

しずい細胞Q&A その1:HLAハプロタイプホモドナーってなに?

HLAについて

HLAハプロタイプホモドナーは、日本人では約100人にひとり見つかる、特別な血液型です。免疫細胞が目印にするマーク(HLA)が普通の人の半分しかないので、組織や細胞を移植した際には拒絶反応が起きにくく、たくさんの人に移植できる細胞です。

われわれは、このHLAハプロタイプホモドナーを、医療廃棄物として捨てられる永久歯や乳歯の細胞を使って見つけます。歯の提供時にいただく同意には、営利企業を通じて提供する事も含まれています。これまで続けてきた無償での研究機関への提供では、100人に1しか見つからないHLAハプロタイプホモドナーを発見し、細胞の採取・培養や、治療に必要な安全性を確保する検査にかかる、莫大なコストを支える事ができないからです(HLAハプロタイプホモ細胞1ラインあたり数千万円かかります)。

そのため、岐阜大学しずい細胞プロジェクトは、大学発ベンチャー企業を立ち上げます。まずは、多くの研究機関に安定した品質の細胞を供給して、動物実験によって特定の疾患に効果があるかどうかを確かめる研究に使ってもらいたいと思っています。その中から、患者さんに細胞を投与する「臨床研究」に進むものが現れることを期待しています。その時こそ、HLAハプロタイプホモドナーの細胞がその真価を発揮するときです。例えば、日本人で最も多いHLAハプロタイプをホモに持つ細胞なら、日本人の17%(1700万人!)に投与できますから、今よりもずっと低価格で安定した効果が期待できる細胞治療が実現することでしょう。

しずい細胞Q&A その2:提供するのは歯だけですか?

 正確には、乳歯や永久歯の中心にある歯髄という組織に含まれる細胞を提供していただきます。細胞には遺伝情報が含まれていますから、その遺伝情報も一緒に提供していただくことになります。また、多くの患者さんを救うために、特殊な白血球型(HLAハプロタイプホモ)を持つドナーさんには、次回、歯が抜けるときに、その歯も提供していただけるようにお願いしています。HLAハプロタイプホモの歯髄細胞は大変に貴重で、多くの患者さんに移植される可能性があるため、法律に定められた感染症の既往歴をお聞きしたり、血液サンプルを頂いて検査することがあります。

しずい細胞Q&A その3:遺伝情報が解析されてしまうんですか?

 まず、白血球型を調べるために、その部分の遺伝子を解析します。また、他の患者さんに移植される細胞については、移植後にも安全かどうかを確かめるために、ガンと関連のある遺伝子を調べる場合があります。その他の個人情報に関わる遺伝子の解析については、計画が立ち上がった時点で、本ホームページにて告知する予定です。

しずい細胞Q&A その4:遺伝情報を含む個人情報は安全ですか?

 抜歯された直後に、ドナーさんの個人情報と切り離すために、細胞IDを付与します。細胞IDには、性別と年齢のみが付帯情報として付与されます。細胞IDとその他の個人情報を関連付ける対応表は、採取した医療機関ごとに厳重に保管され、その閲覧や複写はすべて記録され管理されますから、とても安全です。抜歯に立ち会った歯科医師や、研究者も、個人情報には許可なくアクセスできないことになっています。また、疫学研究などには利用できないことになっています。

しずい細胞Q&A その5:営利機関に提供されるとは?対価は?

 細胞は無償で提供していただきますが、細胞を増やしたり、加工したりして、移植が必要な患者さんに届くまでには、多大な経費がかかります。その経費を賄うために、営利企業によって価格が設定されて、研究所や医療機関に有償で届けられます。保険が適用される医薬品として販売される細胞には、薬価が設定されることもあります。これらの経済活動によって得られる利益については、ドナーさんに還元されることはありません。

しずい細胞Q&A その6:株式会社しずい細胞研究所って?

 岐阜大学のしずい細胞プロジェクトを母体として作られる予定のベンチャー企業です。これまで15年以上に渡ってこのプロジェクトを率いてきた手塚建一准教授が、代表取締役を務めます。歯髄細胞の培養方法や、運搬方法を定め、ブロックチェーンを使って詳細な細胞トレーサビリティを提供します。また、非営利、営利機関への細胞出荷の窓口になり、細胞取扱のサポート役を務めます。細胞をドナーから患者さんまで、安全・確実に届けるお手伝いをします。

しずい細胞Q&A その7:どんな病気の治療に使われるの?

 現在のところ、脊髄損傷の治療に使わせていただく同意を頂いております。また、国内では加齢黄斑変性症、パーキンソン病、脳梗塞、心筋梗塞など、歯髄細胞やiPS細胞を使った臨床研究が計画されており、提供していただいた細胞が、これらの治療に使われる可能性があります。同意書に記載されていない疾患の治療に利用される場合には、計画段階で本ホームページで告知いたします。

しずい細胞Q&A その8:バンクに寄託された細胞から個人が特定されることはありますか?

 理化学研究所バイオリソース研究センター(理研BRC)などの公的なバンクから、国内の大学や研究所に細胞が提供されます。その際「生物遺伝資源提供同意書(MTA)」が締結され、そのもとで研究が行われます。研究によっては、培養中の細胞の取り違えや、クロスコンタミネーションを防ぐために、STR (short tandem repeat)解析などがおこなわれることがありますが、それによって細胞提供者の個人が特定されるようなことはありません。

しずい細胞Q&A その9:ブロックチェーンに公開される細胞追跡情報に個人情報は含まれますか?

 細胞は、採取された医療機関で個人情報を推定できないようなID化がおこなわれます。このIDと個人情報を結びつける匿名加工情報は、電子カルテ等とともに各医療機関内で厳重に管理されています。ブロックチェーンに公開されるのはこのIDのみであり、それから個人を特定することはできないようになっています。


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