ダブルハイパー核とHダイバリオン
R.L.Jaffeは、1977年にs-quarkを2個含むHダイバリオンが存在する可能性を予言しました。これは中間子や重粒子と異なる新しいクォーク多体系として、その後多くの理論家が質量の計算にとりくみ、さらには宇宙の暗黒物質として存在するかもしれないといわれている未知のクォーク物質とも関係するとして、大きな注目を浴びてきました。またダブルハイパー核と、このHダイバリオンにはきわめて重大な関係があることがわかり、古い原子核乾板(Emulsion)のデータは一躍注目を浴びることになりました。なぜならば、もしHダイバリオンの質量が、核のなかでの2個のΛ粒子の質量和よりも軽ければ、核内の2個のΛ粒子は強い相互作用によって、たちまちHダイバリオンになって放出されてしまい、安定なダブルハイパー核は存在できないからです。ところが、E176実験の弱い相互作用で連続的に崩壊するダブルハイパー核(ΛΛ核)の検出によって、結合エネルギーが求められたことにより、Hダイバリオンの質量の範囲を狭めることができました。このようにHダイバリオンの存否にはダブルハイパー核の研究が重要な意味をもってきます。そしてS=−2の核になると、ΛΛ、ΣΣというようにハイペロンの混合という状態が指摘されていて、非常に多様なクォークの組み合わせが考えられます。Hダイバリオンというのもまさにその可能性に類するものであります。
中性子星のコアの領域のように通常の核物質密度を越える高密度領域においては、核子以外にハイペロンが混じったハイペロン物質(ハイパー核、ダブルハイパー核など)が存在する可能性があります。ハイペロンの混在は、中性子星が冷却する過程にも影響を与えます。ハイパー核の研究の進展は、得られた核子とハイペロンの相互作用、ハイペロン同士の相互作用の情報を取り入れて、ハイペロン物質の諸性質をより現実的相互作用に基づいて検討することをも可能にしています。
*Hダイバリオンに関する参考文献
・清水清孝,H粒子とは何か?パリティ(丸善株式会社),Vol.05 No.06,(1990),p.22
・高塚龍之,中性子星コアのΛ-ハイペロン超流動,ストレンジネスと原子核'98 p.42
・西崎 茂,ハイペロン物質と中性子星研究報告書
・ストレンジネスと原子核'98 p.48
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