竹内 紘基「風力発電適地選定のための広域超高解像度風況マップの構築手法の検討」

風力発電のエネルギーは風速の3乗に比例することもあり,風車の適地選定の際には,精度の高い風況調査が非 常に重要になってくる.そこで,労力の削減や面的な風況を把握するためにも計算機上で風車の適地選定を行うこ とができる風況計算手法の高度化が求められてきた.中でも,期待されているのがメソ気象モデルを用いた風況計 算手法である.気象モデルを用いた風況シミュレーションは,地面状態・地表面起伏や高低気圧・積雲対流を考慮 した風を再現できるので精度面において非常に有効な手法である.しかし,多くの物理過程と基礎方程式からなる ために,空間解像度を上げたり,広領域の計算を行ったりした場合に,計算時間が膨大になるという問題点がある. そこで,本研究では,メソ気象モデルMM5と風診断モデルMASCONモデルを用い,広領域で高精度かつ高解像度 な風況計算の効率化について様々な検討を行った.また,それに基づいて,年間データベースや風力発電適地選定 が行えるようなWindowsツールの構築をした. まず,計算精度を落とさず,かつ,計算時間の大幅な短縮を可能とするMM5とMASCONモデルの最適なモデル設 定について検討を行った.MASCONモデルの第一推定値として,MM5の3km格子領域計算値を用いた場合に,モデル の設定をいかに変化させても高い計算精度を得ることはできないことが示された.すなわち,MASCONモデルでは再 現することができない新たな小スケール(1km格子領域)の擾乱を再現する必要があることが明らかとなった.し かし,MM5の1km格子領域計算を広領域かつ長期間で行うと計算時間が膨大なものとなってしまう.そこで,MM5 の1km格子領域の計算において,計算時間を短縮させるため,様々な効率化を行った.その結果,計算精度をほと んど落とすことなくさず,計算時間を従来の手法と比較して4分の1以上の短縮を可能となった. 次に,前章で最適とされたモデル設定に基づいて,中部地域を覆う広領域・超高解像度な年間風況データベース を構築した.これにより,今までにない広領域かつ超高解像度な風況計算値がデータベース化された.  さらに,風力発電適地選定を目的として,前章で構築された膨大な風況データを簡易に表示・解析できるアプリ ケーションを作成した.大規模データベースの取り扱いに慣れていない風力発電事業者であっても,膨大な風況デ ータから,容易に風速・発電量及び標高が表示・解析することが可能となった.