荒川 大介「気象予測システムの風力発電事業への活用」

現在,地球温暖化問題をはじめ様々な地球環境問題が深刻化している。この状況を打破するため, 従来の化石燃料に変わる新エネルギーとして風カエネルギーが注目されている.既に,デンマークで は風力発電出力予測技術が実用化されており,大きな成果を上げている。日本でも近年になり,風力 発電の導入率は増加傾向にある.しかし,風力発電の利用は火力・原子力発電の利用に比べ消極的な のが現状である.これは,風の変化が激しい日本では,風カエネルギーから得られる電力量は予測が 困難であることに起因する. そこで本研究では,岐阜大学局地気象予測システムにより出力された風予測データを用いて,風力 発電量の予測可能性について検討を行った。この予測システムによる風データは,2kmメッシュの比 較的低解像度な計算に基づいており,風車周辺の微地形の影響まで加味することはできない。それら の効果については,現地観測データに基づく統計的な補正手法(カルマンフィルタ)により,風予測 データを修正することで,風力発電量の予測精度が如何に向上するか検討した。その結果,カルマン フィルタにより補正が加えられた風予測データは,そうでないものに比べて,誤差率が1/5近くまで 減少しており,その有用性を実証することができた 本研究の成果により,お天気任せで不安定な風カエネルギー量の平滑化が可能となり,風力発電導 入の後押しになるものと期待される.