海岸工学の室内実験で用いられる実験水槽では,水槽端あるいは水槽内に設置した構造物からの反
射波が,造波板に向かつて入射,また造波板で再反射してしまう,それによって,本来理想の波動場
には意としない反射波が存在し続けてしまうことがあり,これが実験精度上,大きな問題となってい
るのである.
二次元波動水槽に関する造波理論は,ポテンシャル理論を基礎としてすでに提案されている。さら
に,反射波を吸収しながら任意の波を造波する理論も同様にポテンシャル理論を用いられている.本
研究では,現有のピストン型造波装置に,この反射波吸収機能を付加することにより,水槽端あるい
は水槽内の設置構造物からの反射波を吸収しながら,任意の波形を有する波を生成できる波面検出型
無反射造波装置を開発・制作し,実験精度の向上を目指すものである.無反射造波装置の作動スイッ
チである吸収制御ONの状態では,水槽内の波が不安定である場合,すぐに設定された波形の大き
さになり安定しているのに対し,吸収制御OFFでは,水槽端あるいは水槽内の設置構造物から反射
された波が造波された波と干渉して大きくなったり,小さくなったりして不安定になった。このこと
より,制作した波面検出型無反射造波装置は,造波板に入射する波浪成分を吸収しながら,入力信号
通りの波浪成分を造波できる事が実証された。