金澤 謙吾 「理論を重視した波浪推算基礎モデルの構築」

近年,波浪推算の精度は向上しWAMモデルなど第三世代波浪モデルを始めとしての利用・開発が国内外で行われるようになっている.さらにWAMモデルでは流れや水深変化による波の屈折まで考慮している.また開発当時の計算機環境を反映して,使用メモリー量を抑制するようにプログラムが工夫されている.さらにWAMはプログラムコードに追加・変更する形で改良が進められている.しかしこれにより,WAMの最終版WAM Cycle4では,非常に見通しの悪いプログラムになっている.プログラムを理解したり,改良したりする上で,この見通しの悪さが大きな壁になっている. そこで本研究ではこのWAMモデルを理解するためにも,また将来のデータ同化モデルへの改良を意識して,物理機構や計算手法の見通しが良いモデルの作成を目指し,WAM Cycle4に組み込まれている物理機構・計算手法をリストアップし,それらの取捨選択を行なった.  最終的にプログラムは全体として1/3に短縮することに成功し,特に基礎方程式部分の移流項に着目すると,プログラムは1/10以下に短縮することができた.その結果プログラムが表現している物理過程が追いやすく,見通しのよいプログラムに変更することができた.そしてそのモデルを用い波浪推算を行い,WAM Cycle4による比較検証を行なった結果,二つの推算値は完全に一致し本研究のモデルの妥当性を示すことができた.