自然エネルギーの利用は化石燃料輸入大国の我が国にとって,新エネルギー源の確保に留まらず,地球環境保全
及び過疎地域振興の立場から21世紀前半において実現すべき重要課題の一つ考える.自然エネルギーの中でも既
に実用化が進んでいる風力や太陽光に比べ波浪エネルギー利用は未だ試験研究段階である.その主な理由の一つに
波浪発電施設設置の際に把握しなければならない波浪特性の評価が従来の点計測主体の現地観測結果を用いるだ
けでは不十分であることに加え,発電量の安定化を図る手法が確立されていないことが挙げられる。そこで本研究
ではこれらの問題を解決し波浪発電を定量的に評価する事を目的とした
近年複雑な海岸地形や波浪の屈折,回折および浅水砕波等の浅海城特有の局所的な水理現象を考慮した第3世代
波浪推算モデルSWANが開発され,それまでの外洋だけではなく沿岸域や湾内においても高精度な波浪推算が可
能になった。そこで,本研究では現地観測に代わる手法として波浪推算モデルSWANを用いて日本沿岸域の波浪
特性を明らかにするとともに,波浪推算結果に基づいて波浪発電シミュレーションを行った.さらに,発電量の安
定化を図るために複数地点における発電施設を組み合わせる手法について検討した.
その結果,日本沿岸域に来襲する波浪の特性は日本海側,太平洋側,沖縄周辺の3パターンに分類できることが
わかった。その地域的特徴の原因には冬季季節風と台風の来襲が考えられる。また,波浪推算結果に基づき波浪エ
ネルギーを算出し,発電シミュレーションを行つた結果,日本沿岸域に来襲波浪は比較的大きなエネルギーを持っ
ており,波浪発電を行うには十分であることが確認できた.さらに,本研究では発電量の安定化を目的とした発電
施設配置最適化理論を提案しそれに基づいて発電シミュレーションを行つた.その結果施設の組み合わせの適合性
について各施設の発電規模と併せて評価することができた.
以上により, 日本列島周辺地での波浪場を高精度に推定し,波浪発電により安定した電力供給を目指した施設
計画について示すことができた。