橋本 潤  「CT型濁度計における時間分解能の向上と指数関数導入に対する検討」

流体中の濁度測定技術は,砕波帯内の底質浮遊現象など,我が国だけでなく,深刻な侵食問題の解明へとつなが る糸口となる.しかし,実験研究が急速に進んでいる近年においても,波や流れ場を乱すことなく測定する困難さ から解明できていない現象が多い.  本研究では,非挿入形式のCT型濁度計を用い,解析手法の高精度化による現象の明瞭化により従来捉えること ができなかった底質浮遊現象を確認することに成功した.本研究で用いたCT型濁度計は,医療用断層撮影装置と ほぼ同じ原理で,透過減衰量から計測断面内における各領域の濁度分布を逆解析により求める光学式濁度計であ り,可動部を持たないことから高速かつ連続撮影が可能であるという特徴を有している.  新たな解析手法として,誤差ベクトル評価モデル及び非線形モデルを導入した.誤差ベクトル評価モデルは,光 学距離の差から生じる誤差混入率を考慮し,各レーザの透過減衰量を修正することで改善を目指すものである.非 線形モデルは,推定値解析に指数関数を用いることで,ピークの鋭敏化と正のエネルギーのみで評価することを可 能にする.逆解析手法としては,従来と同じ拡張ベイズ法を用い,事前情報には,平滑化フィルタを採用している. 評価方法としては,実際のCT型濁度計と同様に32対のレーザを仮想し,擬似的に濁度分布を与えることで擬似 減衰量(擬似データ)を作成し,これを逆解析することで再現性及び精度を評価した.これにより,著しい解析性 能の向上が見られた.次に,砕波帯内における浮遊砂現象の実験データの解析を行い,今回主眼としていた濃淡の 著しい浮遊砂の現象を明瞭に捉えるだけでなく時間発展を追って現象を把握することができることを示した.  従来の解析モデル(linear model)に比べ,本研究で開発した(Non-linear model)は,明らかに明瞭化された画像を 取得することが可能になり,浮遊砂現象の詳細及び時間発展を捉えることが可能になった.