2015.7.1

ビタミンE-mail

教務事務職員に知ってほしい10のポイント
(続)その8 教務事務は学生と接する大学の「顔」である。
事務組織で学生と接するのはもっぱら教務事務である。学生にとって、教務事務職員は「頼れる存在」であり、学生サービスの「窓口」であり、大学の「顔」である。学生が抱える問題点の早期発見・フォローアップなど、福利厚生にも貢献している。教務事務職員は大学の立場・考えを学生に伝える役割だけで無く、学生の立場を代弁する役割も担っている。
2014.09.17 配信
back もどる 
教務事務職員に知ってほしい10のポイント
(続)その7 成人教育の考え方を重視する
小児教育と成人教育は大きく異なる。子供の教育は、教師がプランを立て、将来いつか役立つことを期待して(子供には意義が分からない)、全員一律に教え、達成感を点数で競わせる。成人の教育は学習者個人の目的や関心(多くの場合、明日すぐに役立つこと)に基づいており、学習者が自分でプランを立て、自分で到達度を評価し、教師はそれをサポートする。成人は緊張を強いられる環境を嫌い、リラックスした雰囲気で仲間と共に学ぶことを喜ぶ。医学生は多かれ少なかれ成人学習者であり、こうした成人の特質を理解して教育サポートを行うことがのぞまれる。
2014.07.16 配信
back もどる 
教務事務職員に知ってほしい10のポイント
(続)その6 自己学習と生涯学習の重要性
医学の爆発的進歩に伴い、医学部で教える内容は飛躍的に増大している。知識の変化は目まぐるしく、学生時代に覚えたことだけでは医師としての任務は果たせない。生涯学習を続ける姿勢が求められる。知識を受動的に与えられるのを待つのでは無く、自ら仮題を見つけ、それを解決しながら知識を構築していく習慣が大切である。問題基盤型学習 problem-based learning (PBL) が世界的に広まっている理由はここにある。
2014.06.27 配信
back もどる 
教務事務職員に知ってほしい10のポイント
(続)その5 医学教育のカリキュラムは他学部と大きく異なる
この10年間で医学教育カリキュラムは大きく変化した。教育の大綱化により、教養課程は1年前後に短縮され、90分X15コマといった伝統的な単位制は減少しつつある。ブロック制(ユニット制)カリキュラムを採用し、集中的に科目を履修する大学が増えている。臨床実習期間は年々増加しており、70週前後と欧米並みの大学もある。他学部で一般的な年余にわたる研究室配属や卒論はほとんど行われていない。共用試験(CBT,OSCE)や医師国家試験がカリキュラムに大きな影響を与えている。
2014.05.02 配信
back もどる 
教務事務職員に知ってほしい10のポイント
(続)その4 医学教育は世界の動きに連動している
医学情報の9割は英語によって発信されており、情報・ヒト・モノの往来は飛躍的に増大しつつある。日本の保険水準は世界最高を保っているが、常に最新医学を取り入れる必要があることは言うまでもない。
教育に関しても国際交流が促進されており、WFME(世界医学教育連合)やECFMG(米国以外の医学部卒業生が米国で臨床研修を行うための資格審査を行う機関)は教育の標準化を目指した動きを見せている。こうした世界の動向を注視していく必要がある。
2014.03.27 配信
back もどる 
教務事務職員に知ってほしい10のポイント
(続)その3 医学教育は社会の変化に対応する
医療は社会を反映するものである。かつては結核などの感染症や栄養不良などが大きな健康問題であったが、現代では高齢者、精神疾患、がん、生活習慣病など、疾患構造が大きく変化している。医師の専門分化が進行し、高度医療が発展する一方で、患者をトータルに診療できる総合医の不足や、特定診療科の医師不足、へき地・地方医療を担う医師不足が問題となっている。
2014.03.06 配信
back もどる 
教務事務職員に知ってほしい10のポイント
(続)その2 医学教育は社会の期待を担っている
医療は社会にとって不可欠のシステムであり、国民の幸福を支える大切な役割を担っている。これは昔からの変わらぬ真理で、古代ローマも医療と教育に力を注いだと言われている。こうした社会の期待があるからこそ、各国は医療の維持・発展のために大きな財政負担をしている。学生はもちろんであるが、教職員も改めて意識すべきであろう。
2014.01.22 配信
back もどる 
教務事務職員に知ってほしい10のポイント
(続)その1 医学部は「医師」という専門職を育成する教育機関である。
医学部に入学してくる学生の99%は医師の資格を取得する。もちろん医師にならなくても良いし、研究職や行政職として活躍する者もいるが、多くは卒業後ただちに臨床医となる。従って、学部教育の目標は自ずと「良き医師の育成」となり、教育内容も「医師になること」を前提として計画される。このように将来の職業を意識した教育が行われるのは医療系学部の特徴であり、卒業後様々な職業につく他の学部とは大きく異なる。
2013.12.20 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
10.スタッフ育成 10.2 教務事務職員に知ってほしい10のポイント(鈴木康之:MEDC)
・最近10年間、医学教育は大きな変化を遂げつつあり、教務事務職員の役割も、かつてない程重要になった。
・教務事務は、教員とともに学生を育てるという、大学教育ならではの、やりがいのある任務であり、学生にとっては大学の「顔」とでも言える存在である。
・教務事務職員は専門性の向上に努め、教員と友に車の両輪となって医学教育を推進してほしい。
2013.11.06 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
10.スタッフ育成 10.3 臨床研修事務職員に知ってほしい重要ポイント−「卒後臨床研修に関する事務職員研修」の経験から−(植村和正:名古屋大学卒後臨床研修・キャリア形成支援センター)
・平成16年以降、臨床研修事務は質量ともにきわめて増大し、かつ重要になった。
・臨床研修事務に関する課題は多岐にわたるが、研修医、指導医、他の医療職、他の事務部門などとのコミュニケーションがポイントである。
・臨床研修事務担当職員には、「新研修制度の理念」、「研修医のニーズ」、「ローテート研修の特徴」、成人学習理論」を理解して欲しい。
・臨床研修事務は責任も大きいがやりがいも大きい部門である。
2013.10.23 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
10.スタッフ育成 10.1 FDの企画・運営(丹羽雅之:MEDC)
医学教育セミナーとワークショップは
・MEDCは使命の一環として、主にティーチャートレーニングを目的とした「医学教育セミナーとワークショップ」(S&W)を実施してきた。
・参加者による評価結果は、S&Wにて取り上げてきたテーマならびにその内容は多くの参加者のニードを満たすものであった。
・海外からのエキスパートや客員教授の招聘によりS&Wの質的向上を目指してきたが、海外での開催を含め今後更なる国際的視野からの運営を図りたい。
2013.10.01 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
9.評価 9.5 小児OSCE(鈴木康之・加藤智美:MEDC)
小児OSCEは
・小児科領域の診療能力向上のために有用である。
・臨床実習・研修の総括的表かだけでなく、simulativeな教育プログラム(形成的評価)としても活用できる。
・模擬患者・看護師・医師などが保護者役を演ずることが出来る。
・指導スタッフ・模擬患者・看護師・研修医などの協力のもとに、workshop形式で課題作成することが効果的である。
・課題作成に必要なblueprint、template、実際の課題例を提示した。
2013.09.06 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
9.評価 9.4 卒業時Advanced OSCEの構築(出口寛文・寺崎文生・花房俊昭:大阪医科大学)
卒業時Advanced OSCE(臨床実習終了時OSCE)は
・臨床実習終了時の総括的ないしは形成的評価として活用できる。
・コミュニケーションスキル、技能・態度のみならず臨床推論、患者教育の能力についても評価できる。
・OSCEは「症例提示型」、「複合主義型」、「単一課題型」などの形式が考えられる。
・臨床実習終了時の到達目標を明確にしてシナリオや課題表を作成すると効果的である。
・OSCEのシナリオや評価表の作成は学内のFDを兼ねたworkshop形式で作成すると教員の理解も深まる。
・OSCEの普及のためには個別大学医学部・医科大学の今後の努力と常設の専門機関を含めた大学間の評価協力体制一層期待される。
2013.08.21 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
9.評価 9.3 e-Portfolioシステムの構築と利用
e-ポートフォリオは
・地域体験実習での学生の振り返り教育に有用である。
・教員がポートフォリオに費やす時間、場所の効率が高まり、負担軽減が期待できる。
・医療面接実習、臨床実習など多方面に応用可能であり、さらに複数の大学、医療機関にまたがる教育システムにも応用可能である。
・My portfolioとの一体化により、6年一貫教育、さらには生涯教育に役立てることが出来る。
2013.08.07 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
9.評価 9.2 番外編 医学教育におけるポートフォリオの活用
ポートフォリオは学生のコーチングや評価にとって、多くのユニークな可能性を秘めている。しかし、しっかりとした条件下でなければポートフォリオの効果を発揮することはできない。例えば、ポートフォリオを読んで学生を指導・コーチングするメンターは指導法のトレーニングを受ける必要があるし、評価者のトレーニングや、ルーブリックなどを用いた全人的な評価も不可欠である。また、ポートフォリオは学生にとっても有益性が実感できるものでなければ、モチベーションが上がらず、ポートフォリオ導入の効果は得られない。最初から膨大なポートフォリオを導入しようとすると、様々な抵抗や問題が惹起される。スリムなポートフォリオでも、学生のパフォーマンスを把握できることが明らかにされており、賢明な導入が望まれる。
2013.07.24 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
9.評価 9.1 医学教育におけるポートフォリオ(Erik Driessen:マーストリヒト大学/2007年度MEDC客員教授)、鈴木康之・吉村学(MEDC)
・ポートフォリオは学習者のコーチングと評価に利用できる可能性を秘めている。
・ポートフォリオは万能ではない。有効活用にするには一定の条件を満たす必要がある。
・まず、訓練されたメンターがポートフォリオをしっかり読んで学習者と対話する時間を設けることが必須である。
・ポートフォリオから得るものが無ければ、学習者はモチベーションをもってポートフォリオを作成することはない。
・あまり膨大なポートフォリオの導入は何かと抵抗に遭う。スリムなポートフォリオでも学習者の能力を評価できることが明らかにされている。
・包括的なルーブリックによって評価すると良い。
・とにかく評価者の訓練が重要。
(原文は英語)
2013.07.09 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
9.評価 9.1 入学生選抜(入試)のためのMultiple Mini-Interviews(Keh-Min Liu/劉 克明:台湾 高雄医学大学/2011年度MEDC客員教授・Min Liu)
・医学生の入学生選抜は学力と個人の資質の両方に基づいて行われるべきである。
・筆記試験は、多くの場合、受験生の学力を評価するために使用される一方、面接試験はしばしば受験生の学力以外の特性を評価するために使用されている。
・客観的臨床試験(OSCE)をモデルにしたMultiple Mini-Interviews(複数のミニインタビュー;MMI)は、いくつかの短時間インタビューステーションから構成されている。
・各ステーションには特定のインタビュー用シナリオが用意され、面接官は一定の評価シートに基づいて受験者を評価する。
・すべての受験生は同じ面接官に会い、同じ話題について質問されるため、、多くの受験生はMMIは公正かつ客観的だと感じた。
(原文は英語)
2013.06.27 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
8.基礎医学教育 8.2 HIV / AIDS研究:医学教育への示唆(Chirasak Khamboonruang: Chiang Mai University, Thailand/2001年度MEDC客員教授)
HIV / AIDS研究を題材とした自己学習は、医学生のみならず医療専門家や医療従事者にとって、各自の認識を新たにし、知識・経験・スキル・および専門家としてキャリアを高めるために、非常に有益な学習プロセスと言えます。
(原文は英語)
2013.06.04 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
8.基礎医学教育 8.1 基礎統合実習の意義と実際 高橋優三ら(岐阜大学名誉教授)
・医学部出身者が基礎系医学教育研究者に進路を取ることが撃滅傾向にある。
・医学部在学中に研究の醍醐味を体験しておくことが、将来臨床系からリクルートする際、有効な手段と考える。
・全国の医学生に呼びかけ、7年にわたり基礎統合実習のトライアルを実施した。
・これはPBLテュートリアルと基礎系実習の統合であるが、実験系の全てを学生たちが討論しながら進めていくところに特徴がある。
・研究者の日常を短期間で疑似体験するが、学生に与えたインパクトは非常に大きいことが、1年後のアンケートから窺い知れる。
・カリキュラムに入れ込む方策を今後のトライアルを通して解決していく予定である。
2013.05.17 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
7.医療英語と国際交流 7.2 海外臨床実習に向けた準備教育 若林英樹(MEDC非常勤講師/現総合在宅医療クリニック)
・何を学ぶために海外に行くのか〜目標の明確な設定と志望プログラムの選定を支援する。
・海外実習を乗り切るための英語力とコミュニケーションスキルを身につけられるように支援する。
・海外の医学教育では重視されているが日本では不足している領域(病歴聴取、身体診察、臨床推論、ケースプレゼンテーション等)を身につけられるように支援する。
・海外の臨床実習で学生に期待されているパフォーマンスを理解できるように支援する。
・海外実習の準備段階から帰国後まで、実務的にもメンタル的にも相談できる場や窓口を設ける。
2013.05.07 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
6.地域基盤型教育 6.4 地域で医療の心理社会的側面を教える(エリザベス・ミラー/ピッツバーグ大学メディカルセンター)
・医療の心理・社会的側面をどう教えるかは難しい課題です。
・患者とその家族が社会的・文化的な影響をいかに受けているかを医学生に理解させるには、革新的な教育アプローチを必要とします。
・この章では、患者の心理・社会的側面を取り扱うことがプロフェッショナルとしての責任(医療サービス)であるということを医学生に理解させるために、学生を医療のテリトリーから外に出して、医師が地域でどのような役割を果たしているかを教育する方法(サービスラーニング)を解説します。
・このサービスラーニングは、心理・社会的問題がどのように健康と病気に影響を与えているのかを、学生が実体験する機会を提供してくれます。
(原文は英語)
2013.04.22 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
6.地域基盤型教育 6.5 地域診療所における臨床教育(吉村 学/揖斐郡北西部地域医療センター)
・大学との連携を行い、実習内容や評価方法について事前に情報交換を行う。
・学生をよく理解して、指導医学生関係構築に努めよう。
・スタッフや患者、家族を是非「先生役」に御願いしよう。
・外来診療のみならず、訪問診療、保健活動など全てを教育機会ととらえよう。
・ケアの継続性 Continuity of Care を感じてもらうように工夫しよう。
・指導者としては Be patient で行こう。
・毎日振り返りを行い、学生の学びをサポートしよう。
・実際の事例から学びを促す勉強会を企画しよう。
・最終日にまとめのプレゼンテーションをしてもらい、スタッフからフィードバックをもらえるように促そう。
・評価は真剣に、診療面だけでなく態度面も合わせて、指導医だけでなくスタッフや患者にも評価者として参加してもらおう。
2013.04.12 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
6.地域基盤型教育 6.2 初年時における地域基盤型教育(川上ちひろ・加藤智美・阿部恵子・村岡千種・那波潤美/MEDC)
初年時における地域基盤型教育は、
・大学では経験できない、現実の地域社会でリアリティの高い学びを提供する。
・継続的な人間関係の構築、異世代とのコミュニケーションを体験できる。
・ライフサイクル/ライフイベントについて考えるきっかけとなる。
・社会人としての基礎を学ぶことができる(プロフェショナリズムに繋がる)。
・ポートフォリオを利用して振り返る(自己内省)習慣を身につけることができる。
・それぞれの領域で得たことを学生同士交流することで、さらに学びが広がる。
2013.04.02 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
6.地域基盤型教育 6.1 地域基盤型/指向性医学教育カリキュラム構築の戦略(藤沼康樹/医療福祉生活連家庭医療学開発センター))
地域基盤型/指向性医学教育は・・・
・今後の日本の医療を支える人材構成上必須となる。
・地域のみでなく、病院でも実施可能である。
・健康(疾患でなく)、人口集団、ライフサイクル、他職種チーム連携など、カリキュラム作成上特徴的なコンセプトがある。
2013.03.19 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
5.シミュレーション教育 5.3 問題基盤型学習(PBL)と臨床技能教育の統合(Jan-Joost Rethans:マーストリヒト大学准教授、オランダ/2008年度MEDC客員教授)
・PBLと臨床技能教育の融合は、学生の医学理論に対する正しい認識や理解を容易にします。
・臨床技能教育においてフィードバックは重要なポイントです。
・臨床技能教育は、縦断的に(学年をまたいで)カリキュラムにうまく取り入れられると、もっとも効果を発揮します。
・スキルスラボ専任の臨床医(緊急呼び出しがない臨床スタッフ)が常駐することがとても重要である。
・学生はスキルを習得しながら、順次、教育課程を登っていく。
(原文は英語)
2013.03.07 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
5.シミュレーション教育 5.2 シミュレーション教育の構築(阿部幸恵:琉球大学医学部付属病院)
シミュレーション教育とは・・・・
・臨床現場を模擬的に再現した学習環境の中で専門家としての知識・技術・態度を統合していく教育である。
・医療の室の統一化と向上が図れる。
・医療安全に寄与する。
・成人教育理論を下敷きにしたもので、学習者中心の学習を引き出す。
・シミュレーション中の思考、行為および感情を振り返るDebriefingによって反省的実践家を生み出す。
・学習分野や時期を問わず多様な分野での実践の可能性を秘めている。
・シミュレーション教育において、学習者の主体的学びを支援する指導者の育成と卒前および生涯教育での構築が求められている。
2013.02.25 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
5.シミュレーション教育 5.1 シミュレーション教育の可能性(高橋優三:兵庫医科大学客員教授・岐阜大学名誉教授)
・シミュレーションは、その特性をうまく利用した場合のみ、教育的価値がある。
・シミュレーションで現実を再現できるのは、極めて限定的であるが、これを利用して、教育目標を設定する。
・失敗して学べる環境であるので、学習者中心の訓練が可能、OJTによるバームクーヘン式成長が可能、の特性を持つ。
・医療手技とアルゴリズム(人体生理、治療方針、院内規制など)を、五感を伴って学ぶことができる。
・ソフト(教員能力、カリキュラム)とハード(シミュレーター)の開発により、医学教育の半分をシミュレーション教育で賄える時代が来る。
2013.02.14 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
4.臨床教育 4.6 総合医・家庭医の育成(山田隆司:岐阜大学地域医療センター)
総合医・家庭医の育成は・・・・・
・国民の医療ニーズに沿った、国民のための臨床医の育成という視点を持つべきである。
・個々の患者の全ての健康問題に関わり、ずっと寄り添うことで信頼される医師を目指している。
・医学教育の早い時期から地域社会に触れることで、医師としてのプロフェショナリズムを培うことが望まれる。
・既存の専門医や地域医療の現場で働く医師、コメディカルの協力や支援を受けられるよう配慮すべきである。
2013.02.04 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
4.臨床教育 4.5 外来における臨床教育(西城卓也:MEDC・川尻宏昭:名古屋医療センター)
・外来病棟と病棟診療に必要な能力は異なるので、それぞれが教育されるべき診療である。
・外来診療能力は、卒然卒後の臨床教育に組み込まれるべきアウトカムである。
・学習項目は多様であるが、基軸となる教育方略・評価方法が存在する。
・様々な教育モデルは、時間的制約や多様な学習者に対応する鍵である。
・教育プログラム開発と指導者養成が今後の喫緊の課題である。
2013.01.21 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
4.臨床教育 4.4 臨床実習における学生評価(その2)(石井誠一:東北大学医学教育推進センター)
5.OSCE
全国80大学医学部の半数以上がOSCEている。その8割以上はCPX型OSCEであり、残りは共用試験型OSCEである。全体に小規模で仮題となる症候・病態も限定的である。
6.Feedback
学習者の能力向上には形成的評価(feedback)が効果的であり、初学者へのfeedbackでは即時、具体的、模範例の提示、反復の機会などが重要である。
7.評価の導入と運用
評価の導入には学内、院内のコンセンサスが不可欠である。関係者(stake holder)による審議で評価全体の青写真(blueprint)を作成する。実施に当たり、piloting(試行)、phase-in(段階的導入)を置くことも考慮する。公明性担保のための評価分析と成績判定の責任部署を分離する。
8.学生評価とカリキュラム評価
「臨床実習における学生評価」は「臨床カリキュラムの評価」の側面を持つ。また、hidden curriculum は学生のプロフェッショナリズム形成に深く関わる。これらについては評価の統括部署が全体を俯瞰して分析する。
9.評価の妥当性とメタ評価
評価の妥当性は常に検証が必要である。評価法の評価(meta-evaluation9という視点も欠かせない。
2013.01.15 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
4.臨床教育 4.4 臨床実習における学生評価(その1)(石井誠一:東北大学医学教育推進センター)
1.到達目標と評価
評価の前提として、(outcome)ならびに評価の目的と方法がシラバス等に明示され、評価対象者(学生)と評価者(教員、その他)に通知されていることが不可欠である。
2.評価する能力
Bloomのtaxonomy分類によるskills8技能)、attitudes(態度)、knowledge(知識)の3つの能力を評価する。Miller's triangleを参考に到達レベルに応じた評価を行う。
3.評価の目的
形成的評価(formative assessment)と総括的評価(summative assessment)に分けて考える。総括的評価ではstakesの程度に応じた信頼性の担保が必要である。
4.評価方法
診療現場での評価(workplace-based assessment)と模擬的条件下での評価(simulation-based assessment)が用いられる。前者として本法では観察記録評価が一般的であり、Portfolio評価も少数の大学で実施されているが、360度評価、mini-CEXの実施は希である。後者として医学部の半数以上がOSCEを実施している。(続く)
2013.01.04 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
4.臨床教育 4.3 臨床コンサルテーションスキル(ジェニファー クレランド:Averdeen大学Scotland/2009年度MEDC客員教授)
・医師患者関係は医療の礎石となるもので、医療面接あるいは臨床コンサルテーションは医師患者関係が最も重要となる領域です。
・コミュニケーションは臨床スキルの中核的かつ不可欠な要素です。
・コミュニケーションスキルはきちんと教育され修得される必要があります。
・コミュニケーションスキルの指導・学習に活用できる包括的な理論と研究成果が存在します。
・コミュニケーションスキルの訓練はしっかりとした学習方略に基づいて行われる必要があります。
・コミュニケーションスキルのトレーニングによって臨床能力が向上します。
(原文は英語)
2012.12.28 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
4.臨床教育 4.2.基本的な臨床能力の教育(Dr.Ratanavadee Nanagara, Khon Kaen University, Thailand/2004年度MEDC客員教授)
・優れた臨床実践を行うためには、コミュニケーションと医師患者関係に関するコアとなる能力(コンピテンシー)が必要であり、それが患者ケアと患者満足度の向上に結びつきます。
・臨床のコンピテンシーとは、単に病歴聴取や身体診察の能力を意味するのでは なく、それらを駆使して患者の臨床上の問題や苦しみを解決する能力をも意味します。
・臨床のコンピテンシーの教育は、入学後の早い段階から、基礎的医学教育と臨床指導プログラムを統合して教育することが望ましく、こうすることで学生は膨大な知識を整理しながら学び、患者インタビューを通じて効果的に情報収集することが可能となります。
・病歴聴取、身体診察などのコンピテンシーを身につけるためには、医療知識だけではなく、臨床推論能力と問題解決能力を必要とします。
・コンピテンシーを適切に評価する方法としては、観察評価、客観的臨床能力試験(OSCE)、形成的フィードバック(正しいことの強化と誤りの訂正)などがあります。
(原文は英語)
2012.12.14 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
4.臨床教育 4.1.身体診察の教育(Dr. Alan T. Lefor:自治医大/MEDC客員教授)
・身体診察は医師にとって1つの特権であり、患者と医師の関係を構築するためにも不可欠なな手段です。
・身体診察手技を完全に修得して、自動的に診察できるようになるまで、学生は診察手技のテンプレートを使用して繰り返し練習すべきです。
・身体診察手技をマスターする上で、患者との信頼関係が重要な鍵となります。多くの正常所見を診ることによってのみ、異常所見を認識することができるようになります。
・学生が身体診察を行ったら、すぐその場で指導者からフィードバックを受けるべきです。学生へのフィードバックは、身体診察を教えるために不可欠な要素です。
(原文は英語)
2012.12.04 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
3.行動科学・倫理教育 3.3.Narrative-Based Medicineの教育(宮田靖志:北海黄大学病院地域指導医支援センター/卒後臨床研修センター)
・ナラティブ能力とは、患者の病の体験を物語として理解・尊重し、患者の苦境を共有し、その物語に共感し、患者のために行動することができる能力のことである。
・ナラティブ能力涵養に、ライフストーリー聴取、パラレル・チャート作成が有効である。
・NBM教育のツールとして映画、ビデオ、随筆、実際の患者の語りなどが利用できる。
・共同学習にて、リフレクションを用いたナラティブ記載による学びを深めることが重要である。
・ナラティブ能力の涵養は、プロフェッショナリズム教育にもつながる。
2012.11.26 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
3.行動科学・倫理教育 3.2.模擬患者の養成(阿部恵子:名古屋大学地域医療教育学講座)
SP養成は・・・・・
・リクルートから始まり、適正の有無を確認することが重要である。
・よりリアリティーのある演技と、より学習者の行動変容につながるフィードバックを可能とし、学習効果を高める。
・初期トレーニングを確実に実施することで質の担保に貢献する。
・SPの不安感を減少させることができる。
・経験の多少に関わらず、定期的に行うことで、SPのレベルアップが期待できる。
2012.11.12 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
3.行動科学・倫理教育 3.1.医療コミュニケーション教育その2(藤崎和彦:MEDC)
・実践レベルの医療コミュニケーション教育には、
1.学習者同士によるロールプレイと
2.模擬患者参加型のコミュニケーション教育があり、
それぞれの長所や短所を上手く利用する必要がある。
・模擬患者参加型の医療コミュニケーション教育で不可欠な3つの要素は、
1.学習目標の明確な適切なシナリオの開発と、
2.優秀な模擬患者の養成、
3.教員・指導者のファシリテーション能力の向上である。
2012.11.03 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
3.行動科学・倫理教育 3.1.医療コミュニケーション教育その1(藤崎和彦:MEDC)
・医療現場でのコミュニケーションは日常のコミュニケーションの延長では対応できず、医療専門職に特化した教育が必要である。
・医療コミュニケーション能力とは「身体化」された技能で、獲得のためには実際の反復したトレーニングが不可欠である。
・基礎レベルのコミュニケーション教育の目標は、
1.相手と向き合う姿勢を身につけること。
2.コミュニケーションを構成するメンバー間の複数の視座の存在に気づくこと。
3.話し手の意図とコミュニケーション行為として実際に行われたことの間には常にギャップがあり得ることに気づくことである。
(続)
2012.10.23 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
2.問題基盤型学習 2.1.医学生にとって何故PBLは重要なのか?(Phillip Evans:英国グラスゴー大学(原文は英語))
・PBL学習は良い医師を育成します。
・PBL学習により育成された医師は生涯にわたる学習と臨床実践の能力を備えます。
・エモーショナルインテリジェンス(EI)は、現在、臨床実践における基本であると認識されています。
・PBLは学生のEIの開発に役立ちます。
2012.10.10 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
2.問題基盤型学習 2.3.チーム基盤型学習の授業構築(森田孝夫・藤本眞一:奈良県立医科大学教育開発センター)
・TBLは講義に代わる新しい授業方法として開発された。
・学習内容の半分(基礎知識)は予習で学び、残りの半分を授業で学ぶ。
・TBLは「予習」、「準備確認」、「学習内容の応用」の三つの段階からなる。
・テストは@予習で修得した知識の確認、A予習における学習者間のバラツキの補完、Bチーム決定の明確化、のために用いられる。
・学習形態は、個人学習→グループ学習→全体セッションへと順次移っていく。
・最終ステージではグループ間の競争が起こり、「グループ」が「チーム」へと変貌する。
・教員の役割は、主としてチーム間討議のファシリテーターであり、最終ステージにおいて初めてティーチングを行う。
2012.09.29 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
2.問題基盤型学習 2.2.問題基盤型学習(鈴木康之・加藤智美:MEDC)
・問題基盤型学習 Problem-Based Learning(PBL) は、能動的に深い自己学習を促す学習方略として重要な位置を占めており、世界医学教育連合のグローバル・スタンダードでも主なカリキュラム・モデルとして挙げられている。
・PBLは全ての科目に導入可能であり、動機付けを促進し、講義・実習効果の向上に寄与し、生涯学習の習慣を身につける。
・PBLの導入は、カリキュラム・ポリシーにPBLを明確に位置づけ、学生・教職員がPBLを学習(教育)方略の一つとして認識することから始まる。
・PBLを効果的に運用するには、優れた症例シナリオの準備、タイムリーな学生ガイダンス、PBLを理解した教員組織による企画・評価、事務サポートが不可欠である。
2012.09.21 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
1-5 アウトカム/コンピテンシー基盤型教育(吉村仁志:沖縄県立南部医療センター・こども医療センター小児腎臓科)
アウトカム/コンピテンシー基盤型教育は
・世界の医学教育の大きな潮流である。
・まず、社会と患者のニーズ分析から、カリキュラムにて出来上がってくるべき意思の能力と資質(アウトカム)を策定する。
・続いてアウトカム取得達成のため、さかのぼって学習項目、学習順序、学習法略、学習環境、学習者の評価、カリキュラムの評価を決めてゆく。
・アウトカムに基づく各々の現場での具体的行動能力の明確化、学習必須項目設定、学習者中心主義、学習速度を考慮したカリキュラムの柔軟性、科学的現場評価の実践が要求される。
・卒然、卒後、生涯教育の全般にまたがり、社会に対して説明責任を果たし、透明性を示す。
2012.09.13 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
1-4 医学教育とエビデンス(錦織 宏:京都大学医学教育推進センター)
・医学教育におけるエビデンス(科学的根拠)は存在する。
・医学教育における種々の課題を考える際、医学教育のエビデンスにあたることには一定の意味がある。
・エビデンスを医学教育の現場に厳密にあてはめる必要はない。
・医学教育の現場での経験を振り返る際に、エビデンスを適宜利用する。
・Reflective Medical Teacherは次世代の医学教育実践者のモデルとなりうる。
2012.09.04 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
1-2 医学教育専門家養成(藤崎和彦:MEDC)
・わが国の医学教育専門家養成は.「富士研ワークショップ」や「臨床研修指導医養成講習会」を通じて一定の成果と広がりを持つようになり、さらに高いレベルの専門家養成が求められるようになってきた。
・世界的なレベルでの医学教育専門家養成は、医学教育大学院修士課程レベルの教育が広がっており、欧州,北米アジアを中心に76校の修士課程が設立されるようになっている。
・わが国での医学教育専門家集成に対するニードは、大学院修士課程レベルというよりは認定専門家レベルの集成を求める声が大きい。
・日本医学教育学会では学会認定医学教育専門家の資格創設を検討中であり、その概要について述べる。
2012.08.28 配信
back もどる 
日本の医学教育の挑戦 《Key Messages》
1-1 日本の医学教育の展望(鈴木康之:MEDC(原文は英語))
・急速に発展している国際化とヘルスケアの変化にともなって、ここ10数年来日本の医学教育は大幅な改革がなされてきました。
・卒前・卒後教育における臨床実習、問題中心型学習、地域密着型教育、コミュニケーション教育ならびにシミュレーションを用いた教育等のカリキュラムが改良され、より重要視されてきています。
・高校新卒生の為の地域枠入学制度が全国に導入されるなど、医学部の定員増が実施されました。
・学習者評価戦略も改革されつつあります。しかしながら、評価の重要性への理解がなかなか浸透しないため、早急な改革は望めないのが実情です。
・医学教育分野の国際化に大きな期待がかかっています。日本は国際的なヘルスケア教育の発達に貢献することが望まれています。
2012.08.20 配信
back もどる 
SP
SPとは、simulated patient、standardized patientの略で、それぞれ模擬患者、標準模擬患者と訳される。初学者が、医療面接や身体診察のような診察場面を学ぶためには、シミュレーションを通じた体験が有用であり、SP参加型の教育が注目されるに至った。また、診療実践の評価において、OSCEのような技能評価を行うときにも、SPが必要となる。(→模擬患者)
2012.08.06 配信
back もどる 
DALEの円錐 (dale's cone、デールの円錐)
「デールの経験の円錐」ともいう。アメリカの教育学者Dale E が1950年代に提唱した円錐形の経験の配置図のことであり、視聴覚教具・教材の教育的意義を説明するために用いる。底辺に最も具体的で個別的な「直接的・目的的体験」を置き、順に上の方へひな形(模擬)体験→演劇的参加→演示→見学→展示→テレビ→映画→レコード・ラジオ・写真→視覚的象徴、頂点に最も抽象的で汎用的な「言語的象徴」を配置した。より下の方の体験ほど学習効果が高く、言語的象徴がもっとも効果が薄いことになる。(2012)
2012.07.24 配信
back もどる 
在宅医療
在宅医療(home medical care)とは在宅(患者の自宅もしくは老人施設など)で行う医療のことであり、外来・入院についで第三の医療として捉えられている。慢性疾患患者、寝たきり老人、心身障害者、末期患者などを対象とし、地域のかかりつけ医師(家庭医)、歯科医師、歯科衛生士、保健師、看護師、薬剤師、リハビリテーション専門職などが連携して行うチーム医療であり、患者の生活、QOLを重視している。病院などの施設中心の医療の欠点・限界を補い、患者中心の医療を提供するために、1990年ごろから在宅医療の強化が図られた。
近年の長期入院などによる医療費増の抑制なども背景となっている。(2012)
2012.07.09 配信
back もどる 
家庭医
第一線の医療現場で、患者や地域住民の抱えるあらゆる健康問題を解決する基本的な医療を行う医師を家庭医、プライマリ・ケア担当医、かかりつけ医などと呼んでいる。「プライマリ」には「第一」という意味のほかに「基本的」という意味が含まれ、「ケア」には患者の面倒をみ、世話するという意味が含まれている。
家庭医は内科、小児科、精神科、外科、眼科、耳鼻咽喉科、産婦人科などの基本的医療を提供し、必要なときは各専門医に紹介相談しつつ、ターミナルケアをも提供する。国民は専門医の存在価値は十分に認めながらも、「いつでも、どこでも、何でも診てくれる」家庭医を求めている。(2012)"
2012.07.02 配信
back もどる 
SD
FD(→faculty development)が教員を対象とした取り組みであるのに対し、SD(staff development、スタッフ・ディベロップメント)は教員以外の職員の能力向上のための各種教育・活動を指すことが多いが、教員・職員すべて(=大学組織全体)を含めてSD という場合もある。(2012)
2012.06.25 配信
back もどる 
FD
FD(Faculty Development,ファカルティ・ディベロップメント; Faculty=大学の教員または教員組織(Development=能力開発の意)とは,教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組の総称のこと。授業方法についての研究会の開催、新任教員のための研修会の開催などがこれ にあたる。従来は講義形式で行うことが多かったが、最近はワークショップ形式でのFDが多くなっている。(→ワークショップ)
なお,大学設置基準においては,平成19年に「教育内容等の改善のための組織的な研修等に関する事項」として ”大学設置基準第25条の3の規定によるいわゆるファカルティ・ディベロップメント(FD)については、これまで努力義務であったものを義務化するものであるが、これは大学の各教員に対し義務付けるものではなく、各大学が組織的 に実施することを義務付けるものであること。これを踏まえ、各大学においては授業の内容及び方法の改善につながるような内容の伴った取組を行うことが望まれること。」とし、FDの実施を各大学に求めている。(→大学設置基準)
なお、FDの定義・内容は論者によって様々であり,単に授業内容・方法の改善 のための研修に限らず,広く教育の改善,更には研究活動,社会貢献,管理運営に関わる教員団の職能開発の活動全般を指すものとしてFDの語を用いる場合もある。 (2012)
2012.06.17 配信
back もどる 
アドバンスドOSCE
OSCEの一つ。正式名称ではなく日本国内でのみ通用する通称である。
臨床実習前に実施される共用試験に組み込まれたOSCE(Objective Structured Clinical Examination:オスキー)が臨床実習に入る前の基礎的な臨床スキルを評価するのに対し、アドバンストOSCEは、臨床実習終了時、卒業時、研修終了時などに行われるOSCEを指す。したがって、その内容は、さらに高度な臨床能力を問われるものとして位置づけられる。模擬患者(→模擬患者)を相手に医療面接(→医療面接)をした後、身体診察を行い、診断を確定して治療方針を患者さんに伝えるまでの一連の流れをシミュレートするなど、知識だけではなく臨床技能や態度を総合的に評価する手法として広がりつつある。(2012年)
2012.06.09 配信
back もどる 
OSCE (Objective Structured Clinical Examinationの略、オスキーと読む)
OSCEとは、日本では医学部、歯学部、6年制薬学部の共用試験(→共用試験)の一貫として用いられる学生評価手法であり、学生が臨床実習に進む前に臨床能力を身につけているかを試す実技試験である。共用試験に合格しないと臨床実習には参加できない。医学部では「医療面接」(→医療面接)、「胸部診察」、「腹部診察」、「神経診察」、「救急」、「頭頚部診察」、「バイタルサイン」等、歯学部では、「医療面接」、「口腔内診査」、「テンポラリー・クラウンの作成」、「バイタルサイン」等、薬学部では「患者・来局者接遇」、「各種薬剤の調製」、「無菌操作」等が課題として出される。それぞれの課題を「ステーション」と称し、学生は順にステーションを回り、課題をこなし、評価者(教員等)から評価を受ける。1975年に英国で提唱されて以来、臨床能力を客観的に評価する優れた方法として普及した。日本では1994年川崎医科大学が初めて導入し、2001年より医学部歯学部の共用試験においてOSCEトライアルが開始され、2005年12月より正式に実施された。薬学部では2010年に初めて実施された。試験の信頼性を得るためには一定数以上のステーションが必要である。卒業試験、研修医の臨床能力判定などへの導入も試みられており、これらをアドバンスドOSCE(→アドバンスドOSCE)と称することもある。(2012年)
2012.06.01 配信
back もどる 
日本の医学部の分類
現在の日本には、医学部が80校ある。大学の医学部が79、大学校の医学部が1。分類に重要視される基準は、設立母体と設立年代である。国立が43、公立8、私立が29。設立年代に関しては、例外を除き3つに区分される。その歴史を@第二次世界大戦開始以前まで遡れる医学部は26、A戦争に設立された医専に遡れるのが17、B昭和40年代から50年前半に設立された所謂 新設医大が34。すなわち、戦争前、戦争中、新設医大ブーム、この3つの時期がポイントとなる。なお戦争中に乱立した医専は、多くが廃止となったが、戦後も存続し、国公立大学の医学部として発展した例がAの区分である。
これらの基準を総合して医学部を色分けすると、旧帝国大学からの医学部が7(旧帝大)、戦前の官立医科大学からの医学部が6(旧六)、第二次世界大戦中に医専などの形で発足しその後、大学に昇格、国立に移管された医学部が12(新八、その他四)。医学部が無い県を無くす、医師不足を解消する、などを目的とした医学部設立のラッシュは40年前の事であるが、いまだに新設医大と総称され、その内訳は国立18、公立0、私立16である。私立大学の医学部は、戦前からが12、新設医大が17である。公立大学の医学部は、戦前からが2、戦争中の医専由来が6である。
2012.05.20 配信
back もどる 
医学部の組織:学科
かつて日本の医学部は、医学科のみの一学部一学科が原則であり、例外は東京大学の保健学科、徳島大学の栄養学科広島大学の総合薬学科(その後、改編)などであった。現在では保健学科、看護学科などの設置が普通になっている。鳥取大学では生命科学科が設置されている。医師国家試験の受験資格があるのは、医学部医学科の卒業生のみである。かつて医学科が備えるべき学科目については解剖学、生理学、病理学、内科学、外科学、小児科学・・・など名称を含めて厳しく決められ、それらと同じ名前の講座が整備されていた。解剖学、生理学、内科学や外科学のように守備範囲が膨大な領域では、第一解剖学、解剖学第二講座など、いわゆるナンバリング講座が複数必要であった。以上の構成と名称については、平成の大学設置基準の大綱化以来、各大学の自主性が大幅に認められた。それ以降、医学科において分野の廃止と新設は珍しくなくなった。また国際、環境、病態、解析、統合、分子などのトレンド・キーワードを並べた講座・分野の長い名前が氾濫し始めた。
2012.05.12 配信
back もどる 
医学部の組織:教授
日本の医学は、明治時代にドイツのシステムを導入したためドイツの影響を大きく受け、それを長らく引きずっていた。つい最近まで医学部における教授とは、各講座に一人の責任者であり、その役目を強調する意味で主任教授とも呼ばれた。この場合、教授という日本語の英語訳はprofessor というよりも、むしろchairmanが適切である。
日本の医学部における組織の特殊性のため、優秀であっても准教授、講師、助教のまま据え置かれる教員が多く、外国へ出て行った時には身分の呼称でずいぶん不利な状況となる。そのためか、現在ではアメリカをはじめとする諸外国の例に倣って、ひとつの分野(department)に複数の教授や部下の居ない教授(ひとり社長ならぬひとり教授)を新たに設置したり、研究教授(research professor)、臨床教授(clinical professor)の称号を与える大学がある。なお臨床教授という称号は、学内の正式教員のみならず、関連病院に所属し医学生の臨床実習にあたる臨床医にも用いられる。
アメリカではprofessorの種類と人数が多すぎて、あの人もProfessorXXこの人もProfessorXXと敬称され、結局誰が職務上のprofessorなのか、馴染みのない人には不明となる。そのため狭義のprofessor(つまり古典的な正教授)の職務にある事を強調したい時にはfull professor(敬称としては、用いない)の用語を使う。
2012.04.30 配信
back もどる 
医学部の組織:講座 分野
平成の時代になり大学改革がずいぶん進行し、日本の医学部の組織は様変わりをした。かつては(例外を除き)医学科のみからなる医学部であった。そして解剖学講座、生理学講座、内科学、外科学講座など、約30余りの講座の集合組織であった。講座の長は、たった一人の教授であり、その他の教員として助教授、講師、助手などが配置されていた。これに相当する現在の組織は“分野”であり、教授、准教授、講師、助教などが配置されている。講座の英語名はdepartmentであり、つまり百貨店、デパートメントと同じである。何でも揃っている、が語源である。講座に自己完結系の機能を求めた。軍隊で言うなら師団の考えである。戦前の医学部の講座は一軒家であり、玄関に○○講座と書かれた大きな看板が掲げられ、そこから事務官や技官の部屋の前を通り過ぎて奥に入っていくと教員研究室や、学生講義室、実習室に至る。教授は、まさに一国一城の主であった。昭和30年代に入ると、医学部の校舎の建て替えのときには、講座は大きな鉄筋のビルに入居、つまりマンション形式となった。講義室も、実習室も共同利用となった。さらに時代が流れて平成の大改革で旧講座は、分野と名前を改め、いわゆる大講座を構成する一組織となった。
2012.04.22 配信
back もどる 
大学の組織:大学院大学
日本の大学の教授は、学部に所属し、○○大学教授△田◇朗と名乗り、学部と同じ名称の大学院の教授を兼任するのが普通である。最近急増したいわゆる大学院大学では、教員は本籍として大学院に所属し、○○大学院教授△田◇朗と名乗り、学部兼任という形になっている。総合大学で、全ての学部が“大学院大学化”している場合もあるが、一部の学部のみが“大学院大学化”している場合もある。医学部・歯学部の場合、学部での教育と大学院での研究の乖離がはなはだしいという現状がある。すなわち学部の教育においては職業訓練の色彩が濃いため、教育内容を大学院の研究内容に合致させられない。大学院の研究は世界最先端が求められ、医師になるための知識・技能とは別物である。このため学部の講座名と、大学院の講座名を必ずしも一致させないのは、現状追認の感がある。
2012.04.15 配信
back もどる 
大学の組織:大学院
大学院は、大学にある大きなもの、という意味から来ている。院とは、なにか大きなものを示す。大学院に活動の重点を置いている大学は、大学院大学と通称されている。大学院は、英語では、graduate schoolであり、直訳で創作された言葉ではない事は、明らかである。
大学院は、4年制大学卒業生が入学する修士課程(マスターコース、標準修業年数2年)と修士課程修了者が入学する博士後期課程(ドクターコース、標準修業年数3年)がある。一貫制博士課程なら 標準修業年限は、5年である。医学部、歯学部の卒業生は、それぞれ医学士、歯学士であるが、修士課程の修了者と同等と見なされ、学部卒業後直ちに博士課程(標準修業年数4年)に進学できる。この場合、研究論文が卓越など成績が優秀の場合には、3年で卒業することも可能である。この優秀の判定の基準は、それぞれの研究科で独自に決めている。
なおアメリカでは医学部、歯学部は大学院と同等と見なされる。
2012.04.08 配信
back もどる 
医学教育開発研究センター(MEDC)
当センターは2001年4月に医学教育分野で初の全国共同利用施設として誕生しました。

岐阜大学医学部では1995年度からPBL-Tutorialを全面的に導入し、統合型カリキュラム、クリニカル・クラークシップ、医療面接実習など先駆的な取組を進めてきました。当センターはこうした岐阜大学の取組を基盤として設置されたもので、医学教育の新しい流れを全国で共有し国情に見合った医学教育システムを構築することと、個々の教員・指導医の教育スキルを高めることを主な任務としています。当センターには、テュトーリアル部門とバーチャル部門があり、教員6名(教授2名、准教授2名、助教2名)と事務職員、技能補佐員が一致協力して運営にあたっています。

近年、国内の医学部・医科大学に続々と医学教育部門が設立されつつあります。私たちは共同して「医学教育ユニットの会」を立ち上げ、手を携えて医学教育の改善に取り組んでいます。
毎年4回開催している医学教育セミナーとワークショップは41回を数えるまでになり、本年5月には開設10周年記念行事を行うことができました。これまでに久留米大学をはじめとする国内の多くの医学部と共同開催させていただきましたことに感謝し、今後も共同利用拠点としての責務を果たしてまいりたいと思います。

最近では歯学、薬学、看護、リハビリなど幅広い医療人教育分野でも教育改革が進行しており、その支援も行っており、多職種連携教育に力を入れてゆきたいと考えています。
海外の医学教育機関との交流にも積極的に取り組んでおり、英国(グラスゴー大学、アバディーン大学、エジンバラ大学)、オランダ(マーストリヒト大学)、米国(ノースカロライナ大学)、マレーシア(国際医学大学)、タイ(コンケン大学、チェンマイ大学)、韓国(ソウル大学、カトリック大学)、台湾(高雄医学大学)、オーストラリア(モナーシュ大学)などとのネットワークが広がっています。

厳しい医療環境・社会情勢の中でこそ、良質な教育を進め、良い医療人を育成してゆくことが求められています。これは大きな試練ですが、やりがいのある任務です。 一人でも多くの方が医学教育分野に興味を持ち、私たちの仲間に加わっていただくことを念願しています。

終りに、平成22年4月1日付で文部科学省から医学教育共同利用拠点として、認定を受けることとなりましたことを御報告いたします。文部科学省ホームページ
今後も一層の機能充実を果たしてゆきたいと思いますので、御指導・御鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
2012.04.01 配信
back もどる 
大学の組織:学部
Universityは、6才から12年間の教育を受けてから入学するのが通例である。第二次世界大戦後の教育改革がアメリカ主導で行われたため、新制大学には旧制高校も含まれる事になり、これは、教養部、医学部進学課程として大学の組織に組み込まれた。現在、教養部は、東京医科歯科大学を除き、廃止された(教養学部は、東大などに存在している)。大学組織の核になるのは、学部である。学部が一つなら単科大学、複数あれば複合大学、数多く幅広くあれば総合大学と呼ばれる。明治の頃に発足した学部は、医、法、文、理、工、商、農など一文字で表現はされるものが多かった。当事の人々の語彙能力の高さを窺わせるものである。
2012.03.26 配信
back もどる 
大学の組織:哲学と実学
森羅万象、世の中の現象には共通するものがあるはずで、大学はこれを追求するという高尚な場であり、世俗の厳しい状況とは一線を画する象牙の塔であった。世の中に共通する真理は、明治のころは、哲学と呼ばれていた。つまり現在の哲学とは、少し意味合いが異なっている。大学に医学部、工学部、法学部、商学部のような世俗と密接に関係した学部が入ってくると、大学は哲学を研究したり学ぶ場所から、高度職業人教育の場という実学の色彩を濃くするにいたった。大学で授与される博士号はDoctor of Philosophyであり、日本語に直訳すれば、哲学博士である。
2012.03.18 配信
back もどる 
大学の組織:university、collegeの名称
日本の大学に相当するのは、英語ではuniversityであるが、このuniversityはあきらかにuniversal、universeを語源としている。宇宙に通じる真理を追究する場であるという思いが込められている。明治の近代教育の組織を創った時には、universityなる教育機関にどの様な訳語を当てるのか、議論があったはずである。結局、古来からの日本語で高等教育機関として用いられていた大学という言葉が流用されたものと思われる。その他、英語にはcollegeという名称もあり、日本語ではこれも大学と訳されている。collegeが独立した教育機関の場合もあるし、巨大なuniversityを構成する一教育部門の場合もある。イギリスやオーストラリアではcollegeが寮の意味で用いられ、women’s collegeが女子大ではなく、女子寮であったりする。この意味で用いられるcollegeは一軒家であり、学生の個室のほか食堂、セミナー室が備わっている。礼拝のスペースが設置されている場合もある。collegeには教員がtutorとして配属され、セミナー室がいわゆるテュトーリアル教育の場となる。
日本の医学部に相当する教育機関はmedical schoolであり、School of MedicineやMedical Collegeなる名称が用いられている。
2012.03.10 配信
back もどる 
進級:長期履修
大学は標準履修年数の考えでカリキュラムが組まれている。社会人の場合、このカリキュラムが窮屈で標準の年数では卒業できない場合が多い。そこで多様な人材が大学・大学院教育を無理なく受けられるように、標準修業年数を超えて履修すること、つまり長期履修を認める大学が多くなった。医学系であっても大学院では、長期履修の制度は一般的である。授業料は、標準履修の場合と同じである。この長期履修を利用する場合には、それぞれの大学が独自に定めた規則にしたがって事前の申込が必要である。
2012.02.29 配信
back もどる 
単位制による卒業
卒業に必要な科目を、在学中のどこかの期間で、すべて履修し終えたら卒業できる、という制度である。科目を履修した場合を、単位を取得したと表現する。この単位は英語ではcreditと呼ばれている。単位の数は、その科目の種類と時間数によって決まる。卒業に必要な単位は、幅広い分野の学習を促す為に、領域ごとに取得すべき単位として、大まかに決めるのが普通である。
日本の医学部専門課程で、単位制を採用している大学は皆無であるが、大学院の場合には単位制である。また旧教養部や現在の共通教育などは、単位制を採用している大学が多い。単位が足りず卒業延期、専門への進級が延期になるケースはありえるが、単位制では通常、留年という概念が無い。
2012.02.25 配信
back もどる 
学年制による進級
医学部での進級を中学や高校と同じく、一年次の科目を取得したら二年次の科目の履修が可能、それを履修したら三年次の科目の履修が可能、というようにそれぞれの年次に履修できる科目が決まっている場合、これを学年制の進級と呼ぶ。これは、例えば病理学を習う前段階に解剖学や生理学の既習が必要である、というような医学部の特性から考えると学年制の採用は、妥当である。進級の条件として、当該学年における全科目の取得が必要な場合もあるし、一科目のみが不合格なら仮進級を認める場合もある。留年になった場合、不合格になった科目の履修だけを求める大学もあるし、再度 全科目の履修を求める大学もある。運用は、千差万別である。
2012.02.20 配信
back もどる 
入試形態:地域枠
日本の医学部の入試は、全国平等、受験者の出身地を問う事は無かった。これはアメリカの医学部が、ジョンズホプキンス大学の様な超一流校を除き、地域志向が強く80%〜90%の学生を地元の州民から採る場合さえある現実と大きく異なっていた。
ところが深刻化した地方での医師不足の解決策の一つとして、卒業後の地元定着を狙って、地元の学生だけを対象にした入試枠の設置が、多くの国公立大学で始まった。“地元”の範囲は、当該県の場合もあるし、近隣の県を含める場合もある。また全国公募とし、卒業後の地元就職のみを条件にしている例もある。
卒業後、地元で働くことは紳士協定であり、法律的な義務ではないため、在学中の教育で地域医療の志を、さらに確固たるものにするカリキュラムが求められている。なお、県当局が、入学後の高額な奨学金を整備している例が多い。
2012.02.10 配信
back もどる 
入試形態:推薦入試
日本における推薦入試の意味は、多くの場合、受験者の出身高校の校長が推薦する事を必須条件とした入学選抜である。
一般に、一つの高校から推薦できる学生の数(推薦枠)は少なく、入試も別枠で行われるが、入試全部が推薦枠の場合もある。推薦できるのは、大学が指定した高校(推薦指定校)のみの場合もあるし、制限を設けない場合もある。推薦を受ける受験生が現役に限定の場合もあるし、浪人も含める場合もある。校長が適切な学生に「推薦する」と持ちかける場合もあるし、学生が「私を推薦してください」と申し出る場合もある。高校の推薦を大学が信頼して、そのまま入学させる場合もあるし、さらに学力試験を課して選抜する場合もある。
このように実施形態はさまざまであるが、これは推薦に関する解釈や評価の違いを反映したものである。
2012.01.31 配信
back もどる 
入試形態:一芸入試
一芸に秀でるものは、他の芸にも通じる能力を持っている。これはしばしば経験する事実であるが、この考えを入試にも取り入れる大学がある。いわゆる読み書き算盤的な学力とは関係なしに、受験者が申告する特技を評価して入学者の選抜を行なう。巷では一芸入試と呼ばれているが、公式には、自己推薦入試、AO入試などの名称が用いられている。
優れたスポーツ選手が受験学力を不問のまま、大学在学中もそのスポーツを継続することを条件に入学を許可される場合があった。これも一種の一芸入試であろう。一芸入試の問題点は、入学後に授業についていけない学生も入学する恐れがあることである。一芸に秀でるものは努力する癖もついているが、授業の進行が早すぎて基礎学力のキャッチアップが間にあわない状況であろう。
2012.01.22 配信
back もどる 
入試形態:AO入試
伝統的な受験学力に最重点を置いた試験選抜は万能ではなく、しばしば妥当性に疑問が付されるため、この解決策のひとつとして提案された入試形態である。面接や小論文でコミュニケーション能、学習適性、素養などを含む多面的な評価を行い、大学のアドミッシンポリシーに合致した学生を選抜する。医学部の入試に採用している例も見受けられる。この仕組みを有効に機能させるためには、かなりの専門能力を持った人的資源を入試用に確保する必要がある。その担当部署A.O.(Admissions Office入学管理局)の名前を流用してAO入試と呼ばれている。なお選抜方法は千差万別であり、定型的なものは無い。その成果が関心事であるが、AO入試で入学した学生と一般入試で入学した学生の学力差について、GPA換算の成績を指標にするかぎり、見解の一致を見ていない。どのような学生を求め、社会に出てからどのような活躍を期待するかは大学のアドミッシンポリシーであり、それに沿ったAO入試を行なっているのであるから、AO入試での入学者の評価をいつ、どのように行なうかは、容易ではない。
2012.01.15 配信
back もどる 
ネット商業サービスの教育利用:解剖図譜
例えばvisible humanを入力しGoogleの画像検索をしていただきたい。ご覧いただければお分かりのように、学生は、実に種々の映像にアクセスできる。一昔前には、極めて高価な解剖書に記載されていた内容や、そもそも掲載されていなかったような貴重な画像である。これらを自由に閲覧できる。すなわちアメリカ国立衛生研究所の機関の全米医学ライブラリーによる解剖構造データベース作製visible human projectの成果が、次々に公開され、医学教育の推進にも役立っているのである。
2012.01.01 配信
back もどる 
ネット商業サービスの教育利用:SNS
social network serviceソーシャル・ネットワーキング・サービスは、もともと社交・交流の場として、かなり以前から開始されたが、一般的になったのはインターネットの普及以降である。普及とともに、この仕組みは商品の販売促進に流用され始め、課金無しのビジネスモデルとして確立された。

このSNSは、もちろん教育にも流用できる。卒業生の囲い込みのみならず、いわゆる学習者参加型の遠隔教育が誰にでも手軽に実現できる方法として重宝されている。今現在、参加をclosed型とし研修医レベル、研究会や学会の会員の間でSNSを用いた学習会は急激に広がっている。方法論的には、たいていは参加者間での議論の場を通して切磋琢磨を期待する教育・学習や、バーチャル体験による学習である。
2011.12.24 配信
back もどる 
ネット商業サービスの教育利用:テレビ電話
テレビ電話がインターネット回線で、可能である。音質も、画質も使い物になるレベルである。しかも国際通信であっても、無料。これこそ遠隔教育に100%適したインフラである。最近は最大10箇所を結ぶ会話も可能のシステムもある。さらに、例えば学生食堂の一角を協定大学同士が互いにストリーム配信をすれば、たちどころに国際交流広場になる。今、私達の一世代が経験している情報技術の変化は、原始時代から江戸時代までの変化に相当しているのかもしれない。
2011.12.18 配信
back もどる 
ネット商業サービスの教育利用:動画投稿サイト
大学で教育目的に使う動画を、大学のサーバーに載せる事はもちろん可能である。しかしその実務作業は、簡単な事ではない。まず、サーバーの管理が大変。さらに教材の動画を部分的に用意できても、取り揃えるのは、容易ではない。常に著作権や倫理規範に留意せねばならないからだ。すなわち敷居は、結構、高い。ところが商業サービスの動画投稿サイトでは、どう考えても前記の2点をクリアしていると思えない動画が、世界中から観賞できる状態になっている。大学内での高尚な議論を嘲笑っている状況である。投稿サイトの動画には、語学学習に使えるものや、勉強のトリガーフィルムとして使える物がたくさんある。これを大学の正式授業の一部に使えるものか否か、意見は分かれるであろう。種々の議論を素通りし、教員が自分の授業に使う動画教材を、種々の手続きを経て大学のサーバーに載せるのではなく、手軽にネットに投稿して利用する事例も起きている。
2011.12.11 配信
back もどる 
ネット商業サービスの教育利用:検索エンジン
全世界のインターネットのサイトを検索するエンジンが自由に無料で使える。これらの情報検索の方法は、抜群に優れているし、今後もどんどん進歩、改善するであろう。すでに、今、学生が意味不明の単語や概念を調べる方法が激変している。アクセスできる情報の量は、圧倒的であり、同等のインフラを独自に用意する力は大学には無い。情報の信頼性について懸念があるが、この点はネットだけでなく、あらゆる情報ソースについても程度の差こそあれ、同じである。したがって、学生には得られた情報の解釈・取り扱いの技術を教える方が、ネットを使うなと禁止するよりも、はるかに本質的である。無料検索エンジンがネット上で使用できるようになって10年余、いつの間にか、教育を取り巻く社会の様子が激変していた。この変化を教育へ正式に取り込む事に躊躇している大学もあるし、そうでない大学もある。
2011.12.03 配信
back もどる 
項目応答理論 項目反応理論
試験は、本当に公平でなのだろうか?入試で山が外れた、たまたまな得意な問題が出た、これで人生が変わる。受験者全員が同じ問題なら、割り切れない思いが残っても諦めが付く。しかしCBT(医学部の臨床実習前に行なわれる資格試験、コンピュターを用いる)やTOEIC 、TOEFL (英会話試験)では個人ごとに問題が異なる。宴会で隣の席の魚が自分の席の魚よりも大きく見えた有名作家のように、自分に宛がわれた問題が他人に宛がわれた問題より難しいのではと思いがちなのは、人間の正直な性かもしれない。公の試験を運営する側としては、試験の適切性の確保が必須である。項目応答理論は、受験者や問題が異なっても、受験者の能力値とテスト項目の難易度を不変的に求められる数理モデルである。
CBTが公平かつ適切に行なわれていることは、項目応答理論による分析で確認されている。現在までに種々の方法が発表されているが、日本人研究者によるHaebara methodが有名である。
2011.11.25 配信
back もどる 
口頭試問 口頭試験
ひと昔前、日本の医学部の試験の形式として、(1)ペーパーテスト、(2)実技試験、(3)口頭試問の3つが用いられていた。(1)と(2)は現在も健在であり説明を要しない。(3)の口頭試問とは、教員が口頭で問題を言い渡し、学生が答えを口頭で返すという代物だ。容易に想像できるように、学生一人当たりの問題の数は少ないし、あたる問題による不公平感が大きいし、時間がかかるし、欠点だらけのように思える試験である。2011年現在、口頭試問を進級判定に響く試験に採用しているところは、例外的であろう。かつて医師国家試験でも口頭試問が取り入れられていたが、廃止されて久しい。
ところが対人コミュニケーション能に問題がある医学生の存在が無視できない状況となり、かつての口頭試問の存在意義を再認識する声もある。
2011.11.14 配信
back もどる 
GPA
今は懐かしい表現になってしまったが、大学での成績は?と聞かれて可山優三という返事があった。加山雄三が人気スターであった頃の話である。つまり可が山ほどあって優が3つ、平均的な学生の成績である。オ―ル優という秀才もいた。これはダントツのトップで、尊敬と恥ずかしさが混じる不思議な状況であった。大学での教育が牧歌的な古き良き時代は過ぎ去り、よくわからないモヤモヤで済ませるアナログ時代から、何でも数字ではっきりさせるデジタル時代に突入した。
GPA(Grade Point Average、グレード・ポイント・アベレージ)は、優、秀、良、可、不可やA、B、C、D、Fなどの成績ではなく、これらを4,3、2、1、0などの数字に置き換え、個人の成績をその平均点で表現するものである。これにより、GPAが3,0の学生は奨学金の申請資格あり、2.9以下の学生は資格なし、という明快な基準設定が可能となる。また外国の大学へ留学する学生の成績を出す場合にも、GPAは4.0などと記載でき成績を第三者に伝えやすくなる。ただし、GPAの教育上の妥当性や弊害について議論が多く、万能ではない。
2011.11.05 配信
back もどる 
合格基準
医学部の進級試験では、合格基準が60点の場合が多い。逆に言うなら40点分を間違えても合格である。このことは、人の命を預かる医師は些細な間違いも許されない、という世間一般の常識とは、相容れないものがある。なぜ100%を合格基準にしないのであろうか、という疑問が誰の頭にもよぎる。
そもそも大学では、どのような能力を育成すべきであり、試験ではどのような能力を調べられるのであろうか?学生時代に試験で満点を取る能力の学生は、卒業後、どのような運命をたどるのであろうか?患者から全幅の信頼を得る名医の学生時代の成績は、如何に?
難しい議論はさておき、やはり医師には、絶対して間違えてはならないものがある。100点満点でないと即失格、である。この主旨を尊重したのが医師国家試験における禁忌枝問題である。
2011.10.29 配信
back もどる 
米国での医師免許試験:USMLE、COMLEX
現在、米国で医師免許取得には、米国内・国外の医学校を問わず、USMLE(United States Medical Licensing Examination)の3段階の試験に合格するのが条件である。Step1 は基礎医学分野 (解剖、生理、生化、薬理、病理、行動科学)、 Step2は医学校の最終学年が対象で臨床知識をみるStep2CK(Clinical Knowledge;内科、外科、小児科、精神医学、産婦人科、公衆衛生、家庭医学、救急)と臨床技能をみるStep2CS(Clinical Skills)から成る。Step3は、総合的な医療知識と実践に関する試験であり、1年目レジデントが受験対象である。
Step2CS とStep3の試験方法は、OSCEである。
COMLEX(Comprehensive Osteopathic Medical Licensing Examination)は、College of Osteopathic Medicine)の学生や卒業生が、DOとしての免許を取得するための試験である。
2011.10.19 配信
back もどる 
外国人:米国での医師免許 (その2)
米国で医師として働くには、MD(medical doctor)かDO(doctor of osteopathy)の資格が求められる。現在の米国ではmedical school やcollege of osteopathymedicineの卒業生の数が、全米で必要な研修医の数に達しない。そのため外国の医学校の卒業生(FMG)の受験を認めている。
米国は50の“国”(州)から成る連邦国家である。国家試験は連邦政府が行っても、それぞれの州が、医師免許を発行している。どこかの州で医師免許を取っても、他の州で働く場合には、当該の州での免許を取得せねばならない(おもに書類審査)。
州によって法律が異なるため、医師免許なしで研修医になることが可能の場合がある。また大学病院では教授の裁量で、米国医師免許を持たない外国人医師が手術などを行う例がみられる。
2011.10.12 配信
back もどる 
外国人:米国での医師免許 (その1)
米国で臨床訓練を受けたり、臨床医として働く希望者が少なからず存在する。その場合、米国での医師免許が関心事である。医学生の内から米国医師免許試験の準備に取り掛かっている例さえ散見される。
かつて米国では、外国で取得した医師免許が有効であった。ところが約半世紀前、これを廃止、外国の医学部卒業生に対して試験を課すこととなった(当時のECFMG)。当時の日本の医学部関係の雑誌には「試験を課せられる事になったが、あまりにもひどい医師を排除するのが目的であり、恐るるに足りない」とある。
しかしながら、米国人が本国内で医師免許を取得するハードルが高くなるにつれ、このECFMGも益々難しい試験となった。さらにカリブ海の小国に米国人子息用の医学校が乱立してからは、この卒業生の締め出しの役割を担っている。
2011.10.07 配信
back もどる 
ポートフォリオ:研修医教育
研修医教育にもポートフォリオが用いられ、有力な補助手段になっている。特にローテーションの場合には、複数の指導医が関与するため、該当の研修医が、過去にどのような訓練を受けてきたかを知り、これからどんな訓練を受けるべきかを決定する情報源として貴重である。
研修医が過去に経験した症例は、ポートフォリオに記載されているが、これを基に質問をすれば、研修医の実力を推察でき、これからの訓練に役立てることができる。
研修医本人にとっても、自分が成長のどの段階にいるのかを知る羅針盤のように役立てることができる。もちろん、適切な書式のポートフォリオが適切に使われた場合に役立つという前提条件が付く話である。
2011.09.27 配信
back もどる 
ポートフォリオ:評価に用いる
ポートフォリオを評価に用いることは、可能である。むしろ推奨されるべきであろう。いわゆるペーパーテストで測られる能力は、医師として必要な能力、医科学者が具有すべき能力の10%程度かもしれない。ペーパーテストでは測れない能力の方が、大きいはずである。したがってペーパーテストに代わる評価方法の導入が切望されているが、ポートフォリオは、その希望の星のひとつである。
ポートフォリオによる評価は、訓練や学習の後に記入、提出されたポートフォリオを見つつ、指導者が“学生”を評価することにより行われる。
この評価の時、学生の得た能力の絶対値の評価ではなく、学習の前後の差という相対値であらねばならない。また、自分の成長をどのように捉えているのかを冷静に、的確に見つめる能力を把握し評価すべきである。結果の絶対値のみに目を奪われて評価すると、学習者はその対策として、不正直な記載をしてその場を乗り切るという誘惑に負けたくなる。大袈裟表現と嘘で塗り固めた記入がまかり通るようでは、健全な未来はあり得ない。
2011.09.24 配信
back もどる 
ポートフォリオ:他人に見せる記述と見せない記述
書き上げたポートフォリオは、日記帳に様に自分だけが読む秘密とするのか、愛の交換日記の様に特定の人(指導者)だけには見せるのか、赤裸々な私小説並の公開なのか、公開度を事前に決めておく必要がある。ポートフォリオに記入するのは、自己の振り返りであり、これを基に自分の学習の到達度を知り、次の学習に気がついて自己決定型学習を行う。したがって、記入が自分に正直であらねば、何の値打もない。したがってポートフォリオは、自分に正直な記入をひるむ様な状況に追い込むのを避けるべきである。正直な記入を阻む理由は、2つある。ひとつは他人に見せる恥ずかしさである。これを解決するためには、指導者に見せてもOKの部分と、見せない部分の二本立てをする。もうひとつの理由は、悪い評価に?がるのでは?懸念である。これを解決するためには、指導者にポートフォリオ評価技能が必要である。学習者の到達度を正しく評価し、本人の成長を支えるのが目的であり、進級の当落に直接影響するような評価に使用しないのが普通である。
2011.09.12 配信
back もどる 
ポートフォリオ:コーチングとの融合
ポートフォリオの書式では、それぞれの項目に、内蔵させるべき基本的な要素がある。それは(1) 事前の自分と事後の自分を見つめ、(2) 自分に何が出来るようになったのか、また (3) 何が足りないから何を学ぶべきかを、自ら気がつくステップ、である。ポートフォリオを教育に用いるのは、身につけて欲しい項目の一つ一つについて、自己振り返りをさせ、学生を望ましい方向の学習に誘導するためである。書き上げたポートフォリオを指導者がチェックし、学生の自己決定型学習の促進を行うが、学生自身の内なる力を引き出すために、コーチングのスキルを利用するのが極めて効果的である。それゆえ、指導者がコーチング・スキルを身につけている事が望ましい。しかしながら、指導者に必ずしもコーチング・スキルを期待できないので、ポートフォリオの書式にコーチング的な発想を取り入れる、つまりポートフォリオとコーチングの融合が図られつつある。
2011.09.07 配信
back もどる 
ポートフォリオ:医学部における書式
一般にポートフォリオの書式を作る時、医師に必要な能力を構造化し、言語化し、これを記入すべき項目とするが、必ず学生が幅のある思考と記入が出来るような工夫をすべきと考えられている。なお、前記の「構造化」とは、英語ではstructuredであり、OSCEのSである。ポートフォリオの記入項目と、OSCEの評価項目は、考え方として似ている部分がある。 医学部での人材教育で重要なポイントは数多いが、医師としての最低限の品質保証をする、医学者として自主的に成長する能力を付与する、もその例である。前者の考えはとても重要であるが、これを最優先でポートフォリオの書式を書き上げると、学生が常に誰かを頼りつつ勉強をする癖がつき、後者の能力を身につける機会を失うので留意が必要である。したがって、ポートフォリオの書式は、OSCEの評価項目より、はるかに目が粗いのが普通である。
2011.09.03 配信
back もどる 
ポートフォリオ:書式
ポートフォリオの書式は、白紙もあり得る。これは、記入者が自己学習能力を完璧に身につけており、しかも成果の方向性を、事前に限定しない方が賢明の場合である。逆に細かい項目で埋め尽くされたポートフォリオの書式もあり得る。これは特定の能力を初心者に、短期間に、型にはめた様に訓練する場合に好都合である。結局、たいていの場合、ポートフォリオの書式は、この両極端の中間に位置する。 もし、学務系の職員を養成するポートフォリオを作ると、想像してください。書式は、どうしますか? あなたなら、新人を全面的に信頼して、白紙にしますか? それとも、これまで築き上げてきた自分の経験を、事細かに教えてあげるような書式にしますか?
2011.08.26 配信
back もどる 
ポートフォリオ:その価値を決定するもの
ポートフォリオの価値は、書式と使われ方で決定される。まず、何の目的で使うのか、それを決めてその目的に合うように、ポートフォリオの書式を決定すべきである。さらにポートフォリオは、書きこんで終了ではなく、その後どの様に使われるかが重要であり、そのためには全員がポートフォリオの主旨を理解しておくべきである。この2点を間違うと、教育現場におけるポートフォリオの導入は、教育改革をしているという取り繕い化し、長期的には徒労、つまり疲れと虚無感を招くだけである。
ポートフォリオは、医師国家試験がないイギリスの医学校における医師育成に大きな力となっている。医学生の訓練に関与する無数の医師たちに共有されているノウハウの蓄積がある。
2011.08.16 配信
back もどる 
ポートフォリオ:その用語が意味するもの
医学教育の分野でポートフォリオの用語は、(1)ポートフォリオ紙片、(2)多くのポートフォリオ紙片を束ねたバインダー、(3)ポートフォリオの概念(抽象名詞)、の意味で用いられている。アメリカの大学の中にある文房具店で売られているポートフォリオは、ポートフォリオ紙片を束ねるためのバインダーである。学生は、種々のポートフォリオ紙片をバインダーに綴じて、自分の成長の証とする。「このコースの終了時に、ポートフォリオを提出しなさい」の場合は、記入した紙片の提出の意味である。「採用の面接を行うので、ポートフォリオを持って来なさい」の場合は、過去に溜め込んだ紙片を束ねたバインダーそのものを持参する必要がある。「ポートフォリオで指導するのが一番良い」なる表現は、ポートフォリオが抽象名詞として用いられた場合である。
2011.08.11 配信
back もどる 
ポートフォリオ:名称の由来
新しいものが出現したとき、名前をどのように付けるのが妥当であろうか?響きは?内容を正確に表現しているか?覚えやすいか?命名は大事であって、命名次第では成功か失敗かが決まる。ポートフォリオなる名称は、実に便宜的な(?)命名方法であるが、とても成功した不思議な例である。
もともとポートフォリオは、書類を束ねたもの、の意味である。つまり書類の束である。中身の話ではない。しかしながら、ポートフォリオは医学教育の分野でもてはやされているだけでなく、かなり広範囲の分野で使われ注目されている。
たとえば建築家の間では、自分が設計した物件の紙資料を束ねたものである。これを他人に見せたら、建築家としての自分の実力と実績を証明できる。特許の業界でポートフォリオと言えば、特許申請の文面を仕上げるときに用いられるもので、不備を検出するための視点を列記した書式である。
所変われば品変わる方式であるが、ポートフォリオは、確かに役に立っている。現に、医学教育の分野では、レポートに取って代わる勢いを見せ始めている。その「レポート」も中身を示す名称ではないが、広く受け入れられている。命名は、あまり堅苦しく考えないほうが、万人受けするのかもしれない。
2011.08.07 配信
back もどる 
CSA
Clinical Skills Assessmentの略である。日本語訳は、臨床能力評価である。米国で行われている例では、一般的な症例の模擬患者を診察する、必要な医療情報が示される、これを基に担当医師としての症例のまとめを行う。OSCEと類似であるが、評価の項目は大まかであり、細かく構造化されていない。ほぼ実践に即した評価である。最後に指導医からのフィードバックがある。当落を決める試験ではなく、学生の到達度を自覚させる形成的評価に適している。
2011.07.27 配信
back もどる 
基本的臨床技能 Basic Clinical Skills
患者とのコミュニケーションの取り方、問診の仕方、身体診察の仕方、検査プランの立て方、鑑別診断、治療計画、症例提示の仕方などの技能であり、コア・コース終了までに学習をする。日本の医学部で行われている臨床実習前OSCEは、この基本的臨床技能に関するものであるが、病院で行われるコア・コースを受講する資格を得るレベルのものである。実際の基本的臨床技能の訓練は、病院での臨床実習を通して行われている。
2011.07.20 配信
back もどる 
エレクティブ・コース
日本語に訳すなら選択コース。患者を診察するのに必須の、各科に共通の技能は最初にコア・コースで学習をする。これは全医学生が履修する。これを終了してから複数の科を選択して、深く学習する。当然のことながら、時間の関係で全臨床科をローテート出来るわけではなく、学生時代から専門性が出来てくる。米国ではこの制度を導入しているのが普通である。日本でも導入の動きがあるが、まだ全科平等の志向が強い。日本の医学生が海外で臨床実習を受ける場合、このエレクティブ・コースに参加する可能性がある。その場合コア・コースに相当する技能を英語で行う能力が必要である。
2011.07.12 配信
back もどる 
医道審議会
医道審議会は、厚生労働省設置法第6条第1項に基づき設置された同省の審議会等のひとつである。分野別に分科会や部会が設置されている。委員及び臨時委員は、日本医師会会長、日本歯科医師会会長、学識経験者などから選ばれる。専門委員は、該当する専門事項の学識経験者の中から選ばれる。審議するのは、医師、歯科医師、理学療法士・作業療法士などの不法行為であり、免許取消・停止などの行政処分を答申する。近年、医療関係者の犯罪や医療過誤への国民の目が厳しくなり、行政処分の厳格化の方向に進みつつある。以上はマスコミで注目されるような事項であるが、その他に審議されるのは、看護師等の人材確保に関する指針、死体解剖資格の認定、各種国家試験、など幅が広い。
2011.07.06 配信
back もどる 
MINCS MINCS-UH
Medical Information Network by Communications Satellite for University Hospitalの略号である。大学病院衛星医療情報ネットワーク正式な日本語名称である。衛星を介した通信であるため、参加にはパラボナアンテナの設置が必要である。大学病院間での高次医療情報の交換を行い、診療機能の高度化を目指して、1006年、旧帝大を中心とした8国立大学に設置されたが、その後、年度を追うごとに増加した。
MINCSの大きな特徴として、1)高品質画像の送信が可能、2)双方向通信が可能、3)セキュリティ保護であるが、通常のインターネットによる配信や、スカイプとの役割分担が課題である。
ウエブサイトは、 http://www.umin.ac.jp/mincs/
2011.06.30 配信
back もどる 
UMIN
University Hospital Medical Information Networkの略号であり、一般にはユーミンとして知られている。正式の日本語名称は、大学病院医療情報ネットワークである。センターが東大病院内に設置され、国立大学病院を結ぶ専用回線で結ぶネットワークとして発足した。平成5年度からは、インターネットを用いたため、すべての医学・医療関係者が利用できる状態になった。業務として大学および大学病院の診療、研究、教育、研究活動を支援し、現在、大いに効果を挙げている。その他ホームペイジ、Eメイル、学会等の申し込みサイトなどで、幅広く利用されている。
ウエブサイトは、http://www.umin.ac.jp/
2011.06.22 配信
back もどる 
メディア教育開発センター
文部科学省所管の独立行政法人NIME(National Institute of Multimedia Education)として知られ、高度に発達する多様なメディアを教育に取り入れる方法につき、高等教育機関との共同研究で先進的なモデルを開発し、大きな成果を上げていたが、2009年に独立行政法人整理合理化計画により廃止された。現在は、放送大学ICT活用・遠隔教育センター(http://www.code.ouj.ac.jp/)に、その業務が移管されている。
2011.06.16 配信
back もどる 
CDC
アメリカの国立疾病管理センター(Center for Disease Control and Prevention)の略称である。国立保健サービスの1部局である。CDCの業務は広範囲の疾病に及ぶが、感染症のたびに影の主役としてマスコミに登場するので、この面で名を馳せている。最近では、鳥のインフルエンザがヒトにも感染したり、ヒトからヒトへ感染する新型インフルエンザに変異したのではないかと心配され、大学の休講が相次ぐなど、大騒ぎになった事件が記憶に新しい。また、大学での実験動物や病原体の管理業務では、CDCからのガイドライン等は指針として使われることが多い。
ウエブサイトは、http://www.cdc.gov/
2011.06.07 配信
back もどる 
WHO
World Health Organizationの頭文字をとった略称である。日本語では、国際保健機関と呼ばれている。設立は1948年、国際連合に属する最大の下部機関であり、本部はスイスのジュネーブに置かれている。WHO憲章前文によれば、健康とは「完全な肉体的、精神的及び社会福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」とし、保健医療に関するあらゆる問題を活動内容としている。設立日の4月7日は、世界保健デーとして知られている。1995年にはWHO神戸センターが設立され、ここでは都市化と健康への影響などについての研究活動を展開している。
ウエブサイトは、http://www.who.or.jp/aboutj.html
2011.06.01 配信
back もどる 
NHS
National Health Serviceの頭文字をとった略称である。1948年に開始されたイギリスの医療の根幹をなす国営の医療保健システムである。イギリスは連合王国(United Kingdom)であり、構成する4つの地域(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)ごとに独立してNHSが運営されている。国民は自分の居住地にオフィスを構えるGeneral Practitioner(家庭医、一般医)を自分で選んで登録をする。病気や怪我の場合、まず、そのGPを受診する。さらに高度の医療が必要な場合にはGPから専門医に紹介され、受診となる。患者が病状に応じて公平なサービスを受けられることを目的としている。
2011.05.26 配信
back もどる 
RTCHD
Regional Training Center for Health Development Centerの頭文字を取っている。旧名はRTTC (Regional Teacher Training Center) である。WHO (World Health Organization) により、シドニーのNew South Wales大学に設置された。個人芸で行なわれることが多かった医学教育の世界に、医学教育学の概念を持ち込み、1772年にセンターとして設置されたものである。当時としては、極めて斬新な考えであった。このセンターにおけるFD(Faculty Development)は、日本の医学教育に大きな影響を及ぼした。
2011.05.17 配信
back もどる 
ERAS
Electronic Residency Application Serviceの頭文字を取っている。米国のレジデントのマッチングをインターネットで行なうシステムである。アメリカの134の医学部とカナダの17の医学部、400の教育基幹病院が参加している。運営は、AAMC(Association of American Medical Collegesである。
ウエブサイトは、https://www.aamc.org/services/eras/
MyERASは、申込者が記入すべき書式である。
このウエブサイトは、
https://www.aamc.org/students/medstudents/eras/134598/using_myeras.html
2011.05.11 配信
back もどる 
JRMP
医師臨床研修マッチング協議会が行なうプログラム(Japan Residency Matching Program)である。研修医マッチングとは、研修医と研修病院が、双方の希望に合致するような組み合わせを決めることである。研修医の希望と、研修病院の研修プログラムの情報が、コンピューターにソフトとして組み込まれた一定の規則従って、コンピュータにより組み合わせが決定される。本協議会は、日本医師会、医療研修推進財団、全国医学部長病院長会議及び臨床研修協議会から構成される。事務局は、医療研修推進財団に置かれている。
ウエブサイトは、http://www.jrmp.jp/#
2011.05.02 配信
back もどる 
GMC
国医学協議会(General Medical Council)の略語である。設立は、1858年。
イギリスにおける医学教育、医師登録を事実上コントロールする機関である。医師やその育成のあり方について、勧告を行っている。イギリスのみならず世界中に通用するオピニオンリーダーとして機能している。日本の医学部の視察をし、基準に合致しているかの判定を行った。
HPは、http://www.gmc-uk.org/
2011.04.25 配信
back もどる 
AAMC
アメリカ医科大学協会(Association of American Medical College)の略語である。アメリカとカナダの医科大学、教育病院、学術団体、個人会員からなる非営利団体であり、医学教育、研究、患者の治療などに関する扶助を目的として1876年に設立された。幅広い活動をしているが、MCAT(Medical College Admission Test、医学校の入学試験)やレジデントの研修先病院のマッチングなどが有名である。機関誌Academic Medicineを発刊している。
HPは、https://www.aamc.org/
2011.04.24 配信
back もどる 
CATO
社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構(Common Achievement Test Organization)を意味する。平成14年設立。設立の目的は、CBT(Computer Based Testing)とOSCE(Objective Structured Clinical Examination)を、医学系全80大学、歯学系28大学が協力して実施することである。
医学生が参加型の臨床実習を受けるためには、一定水準以上の態度・技能・知識を、身に着けておくべきである。CBTとOSCEは、この能力を検定する評価システムとして機能している。同様の主旨の試験は、医学教育に先進的な大学で先行していたが、CATOの設立により、CBTとOSCEが all Japanの体制で実施されるに至った。
HPは、http://www.cato.umin.jp/
2011.04.15 配信
back もどる 
全国医学部長病院長会議 Association of Japanese Medical Colleges
日本全国80の医学部長(or 医科大学長)病院長が参集する会議である。全国の医学部に共通する諸問題(教育、研究、診療)について調査・発表や、協議、提言し、医学・医療の改善・向上に繋げることを目的に、1967年に設立された。現在各種委員会が組織され、幅広い活動を行なっているが、発刊される報告書の例としては「医学教育カリキュラムの現状」、「我が国の大学医学部(医科大学)白書」などがある。
ウエブサイトは、http://www.ajmc.umin.jp/
2011.04.09 配信
back もどる 
医学教育振興財団 Japan Medical Education Foundation
全国80の医学部を正会員とする財団法人である。設立は1979年。文字通り、医学教育の振興を設立の目的としている。その活動は幅広く、日本の医学教育への貢献は非常に大きい。主な具体例としては、「国内医科大学視察と討論の会」を毎年、開催大学を変えつつ開催している。毎年夏には「医学教育指導者フォーラム」を主催している。機関誌としてJMEFを発行している。
ウエブサイトは、http://www.jmef.or.jp/
 
back もどる 
日本看護学教育学会 Japan Academy of Nursing Education
創立は1991年。設立の目的は、看護学教育を卒前と卒後ともに発展、向上させ、看護専門者の資質と看護実践を高めることである。具体的には、実に様々な試みが行われているが、毎年の学術集会の開催、「日本看護学教育学会誌」の編集と発行、研究助成、および他機関との連携等が例である。
HPは、http://www.jane-ns.org/
 
back もどる 
日本歯科医学教育学会 Japanese Dental Education Association:JDEA
創立は、1982年。日本歯科医学会(http://www.jads.jp/)の専門分科会のひとつ。
設立の目的は、歯科医学ならびに関連領域の教育向上、充実、発展に寄与することである。活動の具体例として学術大会を毎年開催、「日本歯科医学教育学会雑誌」の編集と発行、さらに各種委員会が組織され、歯科医学教育に関わる研究、提言の策定及び事業推進を行っている。
HPは、http://wwwsoc.nii.ac.jp/jdea/
 
back もどる 
日本医学教育学会 The Japan Society for Medical Education
創立は、1969年。日本医学会(http://jams.med.or.jp/)に加盟している学会のひとつである。
設立の目的は、医学教育に関する研究の充実・発展・普及である。活動の具体例として学術大会を毎年開催、雑誌「医学教育」の編集と発行、「医学教育者のためのワークショップ」の主催を行っている。「医学教育白書」を定期的に刊行し、日本における医学教育の現状と課題について貴重な情報発信をしている。
HPは、http://jsme.umin.ac.jp/
 
back もどる 
MITIE :於シミュレーション教育
アメリカ・テキサス州、ヒューストン市には世界最大のメディカル・コンプレックスがある。その中の巨大病院としてメソディスト病院が知られている。メソディスト病院には巨大な研究・教育棟が併設されている。MITIE(Methodist Institute for Technology, Innovation, and Education)は、その中にある巨大なスキルスラボである。訓練としては、主に外科の手技訓練を担っている。研究は主にcomputationalsurgery(外科手術、手技訓練、手技評価などの新規開発に応用数学、コンピューターの力を流用する)である。
ウエブサイトは、MITIE Texasで検索。付近の地図は、Google地図で、Houston Texas Medical Centerで検索。
 
back もどる 
SimTiki :於シミュレーション医学教育
ハワイ大学医学部にあるシミュレーション医学教育施設である。名前の由来は、Tikiがハワイの古代神の名前であるので、シミュレーションの神様を願っての命名であろう。この施設の原型は、ピッツバーグ大学のWISERであり、類似の訓練を提供している。ハワイ、太平洋の島々のシミュレーション医学教育を担っているが、地の利があってアジア地域からの受講生も多い。
HPは、SimTikiで検索。
 
back もどる 
WISER :於シミュレーション医学教育
Winter Institute for Simulation Education and Research (WISER) は、ピッツバーグ大学の教育研究施設の一つである。
WISERがシミュレーションを医学部での教育レベルに引き上げた功績は大きい。開設以来、シミュレーション医学教育で先導的な役割を担っている。ピッツバーグ大学や近隣の医療教育機関の学生の教育で培った教育方法に魅せられて外国からも受講生が多い。訓練は有料であるが、医療手技のみならず、教え方(teacher’s training)を学ぶ機会にもなる。
HPは、WISER Pittsburghで検索。
 
back もどる 
JATEC :於シミュレーション医学教育
JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)は、ATLSの日本版である。JTCR(日本外傷診療研究機構)によって開発された。近年日本では、いわゆる不慮の事故での死亡人数は年間約4万人である。命は助かったものの、重篤な後遺症で苦しんでいる人は、さらにその1桁多い。これは、国民の安念を揺さぶる由々しき事態である。現代医学の力により、死ななくても済んだはずの人がやはり死なずに済み、命を取り留めた人も最小限の後遺症に収まる、そんな医療体制を日本全国津々浦々で構築するために、JATECコースが開催され、外傷初期診療ガイドラインによる標準的な診療の普及に役立っている。
 
back もどる 
ATLS :於シミュレーション医学教育
ATLS(Advanced Trauma Life Support)アメリカの外科学会の外傷の委員会によって開発された。外傷における初期診療に関する教育プログラムである。外傷の救急に携わる医療人なら、避けられるはずの死を避けたいのは、誰しもが願うことである。それゆえ外傷の救急診療に携わる医師は全て、診療理論を理解し、それに基づいて標準化された診察や処置(蘇生,全身管理、手術)が適切なトリアージ(処置の優先順位)の判断で行える能力を持つべきである。ATLSの訓練にはシミュレーションが用いられ、日本各地で開催されている。
 
back もどる 
ISLS :於シミュレーション医学教育
ISLS(Immediate Stroke Life Support)は、病院の救急における神経蘇生の標準的な初期診療(診断と治療)として、日本救急医学会と日本神経救急医学会により開発された。脳卒中などの急性期は、脳神経の損傷を可及的に少なくするため、まさに時間との闘いである。この重要な手技や知識を普及するために、医師、看護師、救急救命士などを対象にISLSコースが開設されている。この研修も多職種が参加するシミュレーションを主に用いて行われる。
 
back もどる 
Immediate Cardiac Life Support :シミュレーション医学教育
ICLS(Immediate Cardiac Life Support)は、突然の心停止の人に出会った時の対処方法であり、日本救急医学会によって作られた。学習者は医師、歯科医師、看護師、救急救命士、医学部学生などすべての医療関係者が対象である。
具体的には、突然の心停止に対する最初の10分間の対応と適切なチーム蘇生など緊急性の高い(Immediate)技術の習得を目標としており、この普及のために、日本救急医学会では、コースの指導者を養成するためのワークショップ開催、コース認定されたプログラムでの技術普及や、指導者の学会認定などを行っている。
 
back もどる 
AHA :於シミュレーション医学教育
AHAはAmerican Heart Associationの略称である。本来は心血管障害を研究する単なる学会であるが、その情報発信力は圧倒的である。特に心肺蘇生法のスタンダードを提案し、事実上の国際ガイドラインとして機能させている力は大きい。
また心肺蘇生教育に関する教育に関しても、ACLSやBLSなど教育プログラムを創設した。国際蘇生連絡協議会(ILCOR)は、その教育プログラムの普及を担っている。この訓練にはシミュレーションを最大限に活用しており、その結果、シミュ レーションイコール救急というイメージが焼きついた感がある。
 
back もどる 
OSCE :於シミュレーション医学教育
OSCEは、試験の一種である。臨床実技を評価する方法として広く採用されている。このOSCEはある意味では、シミュレーション医学教育で、実技の客観的な評価の部分だけを取り出したものとも言える。
日本の医学生が臨床実習を行う前に資格試験として受けるOSCEでは、種々の単技能が課題(試験問題)としてステ−ション毎に用意されている。日本でアドバンストOSCEと呼ばれているものが知られているが、この場合、課題として出題されるのは、症例である。症例を演じる模擬患者に一連の診察行為(上記単技能の連続)を行い、評価を受ける。多くのアドバンストOSCEは、医師国家試験レベルを想定しているが、2010年現在、まだ採用されていない。
シミュレーション医学教育では、良かった点・今後の改善点などの振り返りが必須であり、形成的評価がなされる。OSCEでは、結果が点数で示される総括評価である。
 
back もどる 
シミュレーション教育、地域貢献への展開
一般市民への医療処置の知識と技術の普及は、国民総プチ・ドクター化の側面もあり、国全体の健康を草の根式に守る結果となる。シミュレーションによる医療訓練は、現在のところ自動車学校、一般の学校(中学、高校、大学)、消防署、地方公共団体、各地のNPO、地域病院、医学部、医療系学生のサークルなどが担っている。教える人の多くはボランティアとして地域貢献的な考えで参加しており、受講料が無料の場合が多い。
災害派遣医療チームも社会への貢献が大である。人材教育のみならず、大災害時備えて行政が準備しておくべき物品、連絡体制、行政組織をも洗い出す事ができ、地域社会の安念構築に貢献している。
この方面における医学部における最大貢献は、あたらしい訓練方法や教育プログラムの開発、人材育成であろう。教員が実際の訓練に参加することで、教員にとっても“教育学”の開発につながるヒントが得られる。シミュレーションによる医療訓練は毎年の市民講座のメニューの一つになりえる。
 
back もどる 
シミュレーション教育の地域貢献 DMAT
DMAT(Disaster Medical Assistance Team)とは医師、看護師、救急救命士、薬剤師、放射線技師、事務職員等で構成された医療チームである(災害派遣医療チーム)。大規模自然災害や大事故(多重自動車事故、鉄道衝突事故、ガス爆発)時の出動に備えて訓練を積んでいる。ただし大規模災害は数年に1度程度にしか起こらず、軍人の「100年兵を養うは、この日のため」と類似になってしまう。
そこでDMATが活躍するのは、“日常的に起こっているが通常の救急体制では対応できない”ような事故がおこった場合である。例えば、工事現場でのクレーン車横転や建築資材の落下で下敷き事故、工場での巻込まれ事故、エレベータによる鋏まれ事故など。このような脱出不能や困難の場合には、現場から搬出してから救急車で救命救急施設へ運ぶよりも、駆けつけた現場で、救命救急外来と同等の治療を行なう方が救命率が上がる。
DMATの最大特徴は、上述の如く現場で急性期に活動できる機動性であるが、その役割を果たすためには規模(都道府県レベル、全国レベル)も重要である。
都道府県レベル:都道府県DMATは、2004年に東京で発足し、それを皮切りに全国に普及しつつある。この役目は、上記のように、通常の救急車による搬送では対応できない事故現場で行なう医療活動である。このレベルのDMATは、救命救急の職場を中心に結成されているのが普通である。
全国レベル:日本DMATは“稀にしか起こらない”大規模災害時に、広域医療搬送、ステージングケアユニット(SCU)、病院支援、などを担当する。このような大規模なDMATに駆けつける人々は、普段、別々の施設や部署でそれぞれ日常の業務に就いている。いざ鎌倉の場合に備えて、混成チームとしての実践的な訓練は、平時に適宜行なわれている。
方法は勿論シミュレーションである。このシミュレーションは、応急救助のあり方についても多くの示唆が生まれる場でもある。多くの犠牲者が出てから得られる教訓よりも、シミュレーションで前もって得られる課題の指摘のほうが有益である。
 
back もどる 
シミュレーション教育の地域貢献 トリアージの訓練
大災害時のトリアージの知識普及は、阪神・淡路の大震災以来、急激に拡大した。特に神戸地域では先進的で、トリアージの概念やDMAT(Disaster Medical Assistance Team)の訓練が普及しており、尼崎での脱線事故では被害が最小限に抑えられたと評価されている。素人がトリアージをつける事は稀であろう。しかしトリアージという一見非情に見える行為が、集団としては、多くの人命を助ける為に必要な事である事を一般市民が認識すれば、大災害時に実際にトリアージをする作業が円滑になると期待できる。
このトリアージの訓練には、シミュレーションが最適である。この訓練用に骨折、切創、火傷、打撲などの模型が用意されており、これを人間の体表に装着し受傷者としてロールプレイをする。
 
back もどる 
シミュレーション教育の地域貢献 とっさの手当て
心肺停止のみならず、水に溺れた人、喉にものを詰まらせた人、などを助けるのは、遠くにいる玄人よりも側にいる素人の方が最適である事を多くの人が知るようになったため、もし自分がその場にいたら人の命を助けたいと願う一般市民が、各地で行なわれているシミュレーション訓練を積極的に受けるようになった。いくつかの医科大学は、市民講座でこのような訓練の場を提供している。
振り返るにシミュレーターで有名な某社の起源は、水に溺れた人を助ける訓練用の人形の生産に辿る事ができる。これが発展して心肺停止の訓練用の人形と教材つくりに至っている。
また喉に詰まった異物を掃除機で吸い出す方法も、広く市民に知れ渡っている。気管異物除去のハイムリック法専用の人形が市販され、訓練に役立っている。
その他、大量出血、熱中症、頚椎損傷、熱傷などについても、初期の処置の重要性が認識され、種々の訓練が市民に行なわれている。これにより適切な処置によって死なずに済んだり、後遺症が少なくて済んだ場合があり、訓練の恩恵の例が多い。
 
back もどる 
シミュレーション教育の地域貢献 担い手としての学生パワー
基本的救命処置(BLS、AEDの使用方法)を地域住民に教えるという貢献の実務を担う医学生や看護学生のサークル団体が、日本各地に見られる。彼らはhands on訓練をボランティア的に行い、高い地元評価を受けている。このような人命にかかわるhands on 訓練教育が素人市民にできるのも、シミュレーションという方法の特性である。
学生がこのような訓練の担い手になるのは、地域貢献に参加しているという充実感のみならず、医学の勉強や、組織運営のノウハウ取得という大きな教育効果が期待できる。学生はけっして半人前ではなく、頼もしい一人前の側面を持つ。
 
back もどる 
シミュレーション教育の地域貢献 [BLS+AED]
心肺停止の状況における基本的救命処置(BLS、AEDの使用方法)の知識・技術は、病院、消防署、自動車学校はじめ、各地で行われている。hands on の技術は意外に忘れやすいので、一度の受講後も継続した訓練が望ましいる。訓練の場所としてシミュレーションセンターは最適である。
BLS 、AEDの訓練には、インストラクターの資格を持った人による講習が求められている。そのため病院の医療職員にインストラクター資格を積極的に取らせる試みもある。このような地域では、普及の大きな力になり、その結果BLSの心得を持つ市民が増加しつつある。
AEDの設置は、各地の集客施設(駅、空港、飛行機内、劇場、モール)で進んでいるが、日本で急速に普及したのは、残念な事に高円宮殿下の急死以降である。AEDが有れば救命の可能性があったため、同妃殿下は、その後AEDの普及に力を注がれている。
 
back もどる 
シミュレーション教育の地域貢献
大学による地域への貢献が求められているが、いざとなると妙案に困窮する場合がある。そのような状況下で、シミュレーターを用いた訓練は、社会に貢献できる好例として人気を博しつつある。具体的には、街角や家庭内で遭遇した心肺停止の人への対処(BLS、 AED)、気管異物除去などの応急処置など、第一発見者のとっさの処置が期待されている場合の訓練を一般市民に行う。
教える側からすると、従来の健康教室ように写真を使って説明するより、シミュレーターを用いた方が、はるかに説明しやすいという利点がある。学ぶ側からすると、シミュレーターを用いれば初めて経験する技術でも、hands on で手順の確認ができるので自信がつきやすく、訓練後、即刻実際にhands on できるような気がするので、参加者の満足度は高い。
 
back もどる 
オープンキャンパス :於シミュレーション医学教育
日本各地の大学では、偏差値以外の基準で入学を志望してくれる高校生の確保を願っている。オープンキャンパスは、自学に興味を持ってくれる学生を集める有力な広報活動である。医学部以外の学部では、高校生の知的興味を引くような“出し物”が豊富である。ところが、医学部では、高校生に見せるのには不適切な場合が多い。
スキルス・ラボでは高校生が医療をバーチャル体験できる。興味深々の物品が並び、しかも種々の魅力的なプログラムが用意されている。彼らの知的な興味を引くのに十分な場所なっている。
 
back もどる 
異職種体験スタッフ教育 :於シミュレーション医学教育
チーム医療教育の一種である。ただし、必ずしも本来の職種を担当するのではなく、他の職種をも体験する。こうして他の職種の立場や、考え方、気持ちなどを理解する。また他の職種が使う日本語の意味することを正確に理解できるようになる。このような結果は、本来の日常業務であるチーム医療の向上に役立つ。
なお、これはシミュレーションであるので、普段大きな判断責任を受け持っていないスタッフも主役になって実施できる。このためスタッフのモチベーションの向上という副産物が期待できる。
 
back もどる 
研修医教育 :於シミュレーション医学教育
研修医教育は、入職時のオリエンテイション、ローテーションで新しい科に配属された時のローカル・ルール説明、セミナー、症例検討会、回診、個々の医療手技のマンツーマン教育など種々である。この質的向上と水準保障のために、ポートフォリオやシミュレーションは、期待の星である。すでに導入している施設もあるが、どのような形式のポートフォリオをどのように使うのか、のようなシミュレーションをどのように使うのか、手探りの状態である。
幸いなことに、現在、内視鏡やインターベンションの分野では、ハイ・ファイのシミュレーターが発売され、研修医レベルの手技訓練に役立っている。またウエット・ラボでの訓練は、外科手技の取得に即効的である。救急やチーム医療の訓練プログラムは、完全に実用段階にある。単なるタースクトレーナーも、手技の説明用や、手技のイメージトレーニングに役立つ。
つまり研修医レベルの教育にも、シミュレーションが役に立つ時代になっている。
 
back もどる 
新人研修 :於シミュレーション医学教育
医療職の職員、事務職の職員など毎年新人が入職をする。この新人が覚えるべき事項が年毎に幅広く、奥深くなっている。学生の続きをしているような新人の研修は、どの職場でも大きな課題である。会議室に一堂に集めて朝から夕方までみっちり、病院のえらいさんが順番に出て来て講義。その内容は病院の安全管理、危機管理、情報管理、患者の視線に立った医療の提供、電話応対・・・はい、病院で働くなら全部身につけることが要求されることばかり。病院の責任者の気持ちは痛いほど理解できる。
シミュレーションは、新人研修にも適応できる。病院内のマニュアルを読みつつ自分の判断でシミュレーション訓練をする。つまり業務が“出来るようになる”訓練を骨格に、種々の関連知識を付加する。これは講義で“日本語だけが伝わった”状態よりも、実践的である。
 
back もどる 
研修医採用試験 :於シミュレーション医学教育
研修医採用試験をどのように行なうのか、深く考えれば、とても難しい。医師としての能力は、出身校やペーパーテストで判定できるものではないし、面接も有力であるが絶対ではない。
医療行為をシミュレーションさせて、その振る舞いを見れば、ひょっとしたら就職し実務についた時の評価に近い評価ができるかもしれない。しかしこれもperformanceだけに注目すると、シミュレーターに使い慣れた人が有利となり、けっして医師としての素養を反映する指標にならない。おそらく、振り返りの時に、「なぜ、そうした」式の判断根拠を聞きだすのが、本質的かもしれない。この分野は、未開拓のままである。
 
back もどる 
症例提示 :於シミュレーション医学教育
自分が経験した症例を医療チームのメンバーに提示するのは、実際のチーム医療を行なうのに必須の技能である。また症例提示を行なう事により、本人が医学を勉強する上で大きな原動力となる。
患者の基本情報やシミュレーターを診察する事により収集された情報を基に、鑑別診断を念頭に置いた症例提示を行なえば、とても有用なシミュレーション教育となる。
けっして高価なシミュレーターや、大規模な施設を必要としないし、実際の患者の場 合のような手続き上の煩雑さから開放されるため、効果的で手軽な教育方法である。
 
back もどる 
小さなシミュレーション :於シミュレーション医学教育
ロールプレイと手近にあるシミュレーターを用いて医療の現場のシミュレーションをするものである。高価なシミュレーターを必ずしも必用としないし、ありとあらゆる医療の現場のシーンがシミュレーション教材になりえる。どの場面でどのように判断したかの根拠を考える事は、医療人の実務能力を確実に伸長させる。また使用したシミュレーターの手技チェックも行なわれる。
類似のシミュレーションとして、医師役がシミュレーターに医療手技を行なう、その結果(performance)を患者役や家族役に説明する、がある。この場合も、ロールプレイに参加するのは、全員学習者である。
 
back もどる 
同学年屋根瓦方式 :於シミュレーション医学教育
シミュレーション医学教育は、醍醐味も欠点も数多くある。医療系の正式カリキュラムに採用の場合、最大の欠点は、教育資源の不足であろう。教員の人数もシミュレーターも不足しているのが普通だ。
同学年屋根瓦方式は、同じ学年の中で先発組の学生が後発組の学生を教えるという仕組みである。これで教員の数が少なくても運営できる。また学習課題を複数セットし、同時進行するので、同じ種類シミュレーターを数多く揃える必要性が減る。
間違った事が次々に伝わって、伝言ゲーム並みの悲劇や喜劇の心配がある。このため、教材をしっかり整備し、それを基準に学習できる体制を整えておく事が必須である。
 
back もどる 
屋根瓦方式 :於シミュレーション医学教育
初心者に教えるには、誰が適切か? 「最初に間違った事を教えると、まずい事になる」との理由で、“いちばん偉い人”が教えるべきである、との考えがある。その逆は、“一歩前に経験した人”が教えるという屋根瓦方式である。この屋根瓦方式では、See one、 Do one、Teach oneの考えで、一度先輩に教えてもらって自分でやってみる、その次は後輩に教えるというやり方となる。
屋根瓦方式は、アメリカの臨床医学の現場で用いられている。医療チームは、一人前の医者から医学生まで、種々の段階のメンバーで構成される。ここではワンランク上の人から教えてもらう、ワンランク下の人を教える、が同時進行となる。
人に教える事は、自分が深く学ぶ事に繋がる。さらに組織全体が学ぶ事に強くなる、などの利点がある。このような利点は「最初に間違った事を教えると、まずい事になる」の欠点を上回る、のかもしれない。
 
back もどる 
Step up 教材 :於シミュレーション医学教育
シミュレーション医学教育の醍醐味は数多くあるが、そのうちのひとつは、「初心者でも、自分の判断でやってみる事が許される」である。Step up 教材では、やってみて、その振り返りで何が求められているのか、自分は何を勉強すべきかに気がつく。そしてさらに一歩Step upした課題に取り組む。これを繰り返して、段々難しい事が出来るように成長する。その各段階での達成感も学習者のモチベョーションを高める。
このStep up 教材を作るためには、到達目標のスキルを3〜5段階ぐらいに分け、各段階でのチェックポイントを明示する必要がある。また、各チェックポイントに関連して勉強すべき項目を列挙しておき、学習者にタイミング良く示す態勢を整えておく。
 
back もどる 
e-learning :於シミュレーション医学教育
e-learningという用語は流行りであり、幅広く使われている。もちろんシミュレーション医学教育でもe-learningの分野が存在する。
大きく分けて2つの亜分野がある。ひとつの亜分野は、コンピュターソフトで教員の代用を目指す。つまり、コンピュターソフトに学習者との双方向性の反応や学習の記録、評価などを担わせる。これは種々のシミュレーターに内蔵され市販されている。
もう一つの亜分野は、いわゆる遠隔教育と呼ばれ、インタ―ネットを用いての学習である。教材がインタ―ネットで配信されるだけならe-learningという言葉の使用は、ちょっと恥ずかしい。しかし地球上のどこかで行われているシミュレーションをliveでストリーム配信し、その映像を見ながら遠隔地の人がスカイプやツイッターなどで質疑応答に加われるなら、これはe-learningの名にふさわしい。
e技術の発展は、実に目覚ましい。この技術は教育事情を一変させる。今、求められているのは、見かけ上の利用ではなく、“学び”の本質を衝いた利用である。
 
back もどる 
VOD Video on Demand :於シミュレーション医学教育
ビデオは、音と映像のメディアであり、教育ツールとしては抜群の効果を持つ。このビデオに関する技術革新は、目覚ましい。素人にも、高品質の録画と編集が安価、手軽に行うことが可能となった。したがって、種々のビデオ教材が家庭用のAV機器で自家制作することが可能である。またシミュレーションの後の振り返り用にビデオ録画を用いると、学習効果を倍増させる。これも民生用の監視カメラを用いれば、安価である。
このようにビデオは良いことずくめであるが、必ずしも学習者に見せたい瞬間に出てくるわけではないという、不便が付きまとっていた(る)。Video on Demandは、必要な時に必要なビデオがパッと出てくる体制である。これは、サーバーに蓄えたビデオファイルが瞬時に呼び出せるシステムが利用できるようになってから、あちこちで実施可能となった。
なお、シミュレーションの振り返りをVideo on Demandで行うソフトが組み込まれていて便利な製品も市販されている。もしこれが無ければ、家庭用のビデオを用いるが、その場合には、シミュレーションの現場のあちこちに秒針の付いた大型時計を配置しておいて、巻き戻しの目安にする工夫が必要である。
 
back もどる 
越えられない天才 :於シミュレーション医学教育
“学校のテストの成績が悪い子”イコール“頭の悪い子”ではなく、成績が悪くても、勉強さえすれば次には成績が良い子になれる、という考えの一方で、いくらやっても限界がある、との考えもある。
手品師にはA級とB級があるという。どちらもプロであり腕前は、素人的な目では区別がつかない。しかし玄人の目では差がある。このB級は、きちんとした教育を受け、本人も努力すれば、かなりの人がなれるという。ただしA級は別格で、いくら努力しても一生涯A級になれないB級の人が存在するという。つまりA級とB級は量的な差ではなく、質的な差となっている。
公的な医学教育では、少なくともこの“B級”医師を確実に育てることが求められる。ある程度の時間をかければ、たいていの学生がB級レベルの一人前に育つが、勿論この時間は短いほうが良い。同じレベルに到達するのに必要な教育時間の比を学習率とするが、当然の事ながら学習効率が上がるようにカリキュラム教育を組み立てるべきである。この学習率に関与する因子としては、キャロルは学習の機会、学びの時間、本人の適正、教育の質、理解力などを上げている。
なお、医学部はA級の人材を育てるカリキュラムをも模索するが、「天才は、下手にいじらない方が育つ」という皮肉な考えもある。
 
back もどる 
学習率 :於シミュレーション医学教育
1960年代に提唱されたキャロルの学習モデルに出てくる考えである。“学校のテストの成績が悪い子”イコール“頭の悪い子”ではなく、成績が悪くても、勉強さえすれば次には成績が良い子になれる、という考えである。
ここで大切な根本理解は、1)時間かければ成績が良くなる、2)そして合格点に達するまでに学習時間が過剰にかかるのは、学習を支援する側、つまり教育者側の課題であるとの考えである。
医学教育では、卒業生の能力が一定のレベル以上であることが求められている。いわゆる品質保証の考えであり、その基準は他の学部よりもかなり具体的である。モデル・コア・カリキュラム、医師国家試験、各大学がシラバスに掲げる到達目標などで、そのおよそをうかがい知ることができる。
卒業生に求められる一定のレベルというのは入学試験を突破した学生なら、十分に到達が可能の範囲である。この学生達全員が6年の時間で修業がおわるように学習を支援せねばならない。これにはインストラクティブデザイン(ID)の考えが役に立つ。またシミュレーション医学教育は、そのIDに基づく教育を実践しやすい場である。
 
back もどる 
参謀の才能を育てる :於シミュレーション医学教育
戦争は取り返しのつかない真剣勝負であるが、ここでもシミュレーション教育は、大きな役割を果たす。兵卒の肉弾戦の訓練については、シミュレーション訓練をどのように取り入れるのか、容易に想像しやすい。では、参謀レベルではどうであろうか?参謀には、大局観に立った作戦の立案能力が必要であるが、参謀の育成を目的に実際の戦争をする事はできない。別の分野で相同の能力を育成することになるが、古代中国では碁が持いられた。つまり局所戦を戦いつつ全体を見る、全体を見つつ局所戦を戦う、この思考の育成用のシミュレーションには碁が最適であった。
ところで医学教育では、参謀としての才能を育てる必要は無いのだろうか?
たとえば、患者の全身や社会的背景を考えて個々の疾患の治療をする、個々の疾患を考えつつ患者の闘病生活を支える、つまり全人医療は、最近とみに強調されつつある。しかし実際の教育方法は未熟のままである。全人医療に必要な参謀的な思考の育成としては、現在、事例研究という形が用いられる。近未来的には、全人医療をシミュレーションするコンピュータープログラムが開発され、医学教育に大きな貢献ができると期待されている。
 
back もどる 
頭の中のシミュレーション :於シミュレーション医学教育
絵は、本番とシミュレーションの条件が一致している珍しい分野である。何べんでもやり直せるので、一見、絵の練習をシミュレーションで行う必要性が無いと思われがちだ。ところが、どのような線を描けばどのような効果が出る?・・・を頭の中でシミュレーションしつつ絵を描くのが、決定的に重要である。
頭の中のシミュレーションは、音楽でも作曲に重要だ。世俗的な政治でも、政治のカンのある人は、どんな発言がどんな影響があるのか、頭の中で即座にシミュレーションしてから発言する。興味深い事に、絵も音楽も政治も得意という人物は、稀である。マッキントッシュが画像情報の処理が得意というように、人間の頭脳にも特性があるのであろう。
医療の分野では、頭の中でのシミュレーションは、別名イメージトレーニングとも称される。この方面に優れている人は、次に何が起こるのか予想できるので、仕事の手際良さにつながるし、医療事故も少なくなる。
医学部には、優秀な学生が入学してくる。彼らは、入試問題を解くという点で優秀・・・これが共通項であり、その他の面に言及するなら実に様々な能力的特性を持っている。優秀な医師に育て上げるには、もし未開発の能力があるなら、それを若いうちに開発せねばならない。または、個人の能力的特性が有利に働く分野への進路を示唆する必要がある。医療があまりにも高度化した現在、それを担う医師の育成には、受験勉強の優劣以外に、個人の能力特性を吟味せざるを得ない状況と成りつつある。
 
back もどる 
本番に強い人を育てる :於シミュレーション医学教育
力士にとって、本場所が本番であり、この成績がすべてを決定する。したがって、力士は本場所で好成績を挙げるために訓練を積む。この訓練を稽古と称する。稽古には、鉄砲や四股踏みもあるが、申し合いが、本番に一番近い形態である。この申し合いは、いわばシミュレーションによる訓練である。このシミュレーションで再現できないものは、本場所の土俵上に満ち溢れる気迫と緊張感である。相撲は体をぶっつけ合う格闘技であり、鬼気迫るような気迫は勝つために必要であるが、稽古(シミュレーションでの訓練)では不足する。本場所では体が壊れる直前まで力を入れるとしても、稽古で体を潰すのは馬鹿らしく、安全範囲内に留めるために、力を抜かざるを得ない。
本場所では緊張感も凄い。初優勝をかけた大一番で未経験者が勝てないのは、この緊張感のためではないだろうか。失敗が許されない・・・金縛りにあって、体が動かなくなってしまう。
失敗が許されない・・・この緊張感をものともせず、冷静に高度の技術を駆使する外科医の精神力は並ではない。このような能力は、“学校”で育成できるのだろうか? それとも別の教育哲学の場所で?・・・幾多の修羅場をくぐり抜けて来たベテランには、「肝が据わっている」という伝統的な表現がある。
 
back もどる 
スペア人材の育成 :於シミュレーション医学教育
日本画に狩野派があった。一目了然の画風である。一派は大勢の人間が同時に、しかも幾世代にもわたり同じ画風の絵を描いた。 つまり、まったく同じ作風、技能で絵を描くのである。完成された画風を崩さないように、精確無比の模写を徹底的に教え込んだ。これでは、個人の個性を大切にするはずの芸術とはかけ離れた人材育成である。しかし利点もあった。超大作であっても、複数の人間の分担作業で描けるのだ。
医療の世界で分担作業が入ってきたのは、救急が発達してからである。救急は、目が離せない患者ばかりだが、医師は24時間つきっきりで治療に当たることは到底不可能。当然、当番交代という分担作業が必要である。当番交代をするためには、作業手順の統一が必要である。こうして救急の分野では、治療のやり方から個性が排除されやすい傾向となり、統一的な教育が普及した。シミュレーション教育は、そのような教育の普及に大きく貢献した。
ところで、医学教育の学務事務では、いかがでしょうか?全部を掌握している○○さんが休んでいるので仕事がストップ・・・、担当が転勤になった途端 なぜかやり方がコロリと変わった・・・なんてことは無いのでしょうか?
スペア人材の育成は、種々の理由で意外に難しい。
 
back もどる 
医学部におけるシミュレーション教育の研究
医学部におけるシミュレーション教育は、大きく分けて2つである。すなわちシミュレーター開発とシミュレーション教育プログラム開発である。教育プログラム開発は、2010年現在、猛烈な勢いで進行中であるし、これからも続くはず。おそらくインストラクティブデザインの考えは、この教育プログラム開発に大いに利用されると予想される。
シミュレーター開発は、工学的な技術が必要なため医工連携の開発体制が必須である。医学部側は、コンテンツの提供や医師育成にどのようなプログラムが必要なのか、ニーズの情報提供が求められる。技術シーズの提供は工学側の任務であるが、その技術の一部をなすのは人間の認知科学である。これについては、医学側との綿密な情報交換が必要となる。
人間は何故 騙されるのか? 何故 勘違いをするのか? この事が、どのように医療事故に結びつくのか? それを防ぐための教育は? これ等の事の理解には、人間はどのように外界から情報を得て、理解し、判断しているのかを知っておく必要がある。
急速に進むこの方面の研究開発は、医学部における教育を、従来の講義室における知識の一方的な移動ではなく、学習者の頭の中に能力を自生させる方向に、大きく変化させようとしている。
 
back もどる 
医学部教育、シミュレーション、インストラクショナルデザイン
日本の医学部教育は、医科学教育に重点を置いている。このことは日本の医学部卒業生の賞味期限が長い事に貢献しているが、医療技術の教育もやはり重要だ。ところが、この医療技術は、あまりにも範囲が広くて深さが深いので、学部の教育でどこまで教えるべきか、つまりどの段階で医師免許を与えるべきか“絶対的に正しい”基準は無い。つまるところ、医師の育成には生涯学習が不可欠として対処するしかない。
さらに、医学は実学であり、実務経験を中心に学問体系の構築がなされているという現実に則する事が必要だ。このような状況を考えると、シミュレーション教育(架空の実務経験)が医師養成の教育方法として果たす役割が、今後さらに大きくなると予想される。
事実、日本全国の医学部では、シミュレーションラボが次々に開設され始めている。医学部での教育なので、しっかりとした教育原理に基づくものであるべき。インストラクショナルデザインは、その背骨として大きな役割が期待されている。
 
back もどる 
評価レベル(Evaluate):インストラクショナルデザイン(ID)プロセス
インストラクショナルデザインに基づいて作成されたトレーニングプログラムを受講した結果、学習者に期待される効果が得られたかを測定・評価する段階です。評価は、コースの方法論的な妥当性と、内容の妥当性の2面に渡ります。

評価は、極めて重要な作業です。不適切な評価は、いかに善良な努力も邪悪に変えてしまいます。Kirkpatrickは、受講後の学習効果につき、4段階の評価レベル(反応、知識、業務遂行能力、投資効果)を設定し、それぞれを判定する方法を提唱しています。この評価の実施自体も、専門知識と多大な労力を要する作業です。
 
back もどる 
実施・実装(Implement):インストラクショナルデザイン(ID)プロセスル
インストラクショナルデザインの考えに基づいて教育のプログラム(トレーニングプログラム)のパイロットコース(モデルコース)を作成し、実施し、評価します。つまり、頭の中でベストの方法を考えた、試してみようか・・・という感じです。この評価結果を踏まえて、最終的には本番用のバージョンを作り上げます。

パイロットコースの実施を身近な人に頼み込む場合がありますが、実際の学習者にやってもらう方が、プログラムの不備が見つかる確率が高くなります。さらに、本番で多人数で行った場合、少人数で行なったパイロットコースでは予見しなかったような問題に遭遇する場合さえあるので、実施規模に関しても要注意です。
 
back もどる 
開発(Develop):インストラクショナルデザイン(ID)プロセス
教育プログラムの開発の段階で、いよいよ目的達成にベストの方法を研究し、選択し、パイロットテストを行ないます。素人なら、始めからこの本丸に突撃しがちですが、IDでは、前提条件の明示と共有の過程を重要視しています。

教育の実施方法では、学習者を一箇所に集めて行なうこともできますし、今はインターネットが発達していますので、e-learningなどの個別学習も可能です。また、たいていの場合、思春期を過ぎた大人が相手の教育ですので、実施に当たっては、いわゆる成人学習理論の駆使が必須です。この項目には記載すべき内容が多いので、詳細は専門書に譲るとして、誤解を恐れずに概要を例えると、「高校の教室での講義を再現するような教育方法は採用しない」ということです。成人が相手ですので、成人の持つ有利な点を利用し、不利な点を避ける方法の選択が求められているのです。
 
back もどる 
プロジェクトチーム:インストラクショナルデザイン(ID)プロセス
教育プログラムの設計を担当するのは、プロジェクトチームです。その構成員は、ありとあらゆる分野の人材です。テレビや雑誌の広告代理店と混同するようなメンバーを集めます。医学教育の教育プログラムの設計を医師だけで行うのではなく、医師はone of themかもしれません。このような異分野の人材と共同作業をした人材は、これを機にさらに成長を遂げます。もちろん「設計の仕様書」は、異分野の人材間の円滑な意思疎通に大いに役立ちます。

皆さんの職場では、いかがですか?業務の研修の資料を、その業務担当の職員が、素人芸で作っていませんか?
 
back もどる 
設計:インストラクショナルデザイン(ID)プロセス
教育訓練の基礎情報が集まれば、いよいよ設計(Design)の段階に入ります。つまり調査・分析した結果を基に、解決策や教育方法を効果的に開発する手順を決定します。具体的には、どのような中身を、誰と誰(プロジェクトチーム)が、どのようなスケジュールで、どのようなメディアを用いて教材プログラムに仕上げるのか?管理業務をどうする?を決め、仕様書(Course Design Specification)に纏め上げます。この場合、全体の流れを示し、さらに各部分の詳細を別記します。
一定の形式で記載しますので、第三者にも非常に分かりやすくなります。この「設計の仕様書」の考えは、大勢の職員が関与する大学の事務の業務内容を、誰にでも誤解なく伝えるために流用できはずです。
 
back もどる 
学習目標分析:インストラクショナルデザイン(ID)プロセス
どのレベルに達することを訓練の目標にするかは、とても重要なことです。これがはっきりしていない教育プログラムには、普遍性がありません。つまり、「一泊二日の訓練を受けて(条件)、入試業務を(対象)、円滑・間違いなく(基準---習得能力)、行うことができる(タスク---行動動詞)。」のような内容です。
さらに「行うことができる」などの行動動詞をどの段階に設定するかの明示が必要です。
訓練を受けた後に、何が行えるようになっているかの具体的な明示は、学習者にとっても、夢実現に向かって安心して勉強できる環境が得られる条件の一つです。
 
back もどる 
タスク分析:インストラクショナルデザイン(ID)プロセス
例えば学務系職員を養成する訓練コースを利用して設計する場合、IDの考えで言うタスク分析の過程では、学務系職員の職責を分析します。つまり、学務系職員が行っている職務、職責、活動について調査分析をします。職務遂行のための活動については、知識、スキル、態度に分解して整理します。この調査には、詳しい人からの聴集が有効ですが、聴き取った内容をインストラクショナルデザイナーはIDに利用できる形に分析し、記載します。この時に便利なのが基本情報収集フォームです。
学務系職員が担っている業務は種々雑多、また各大学で異なっています。したがって、例えば入試業務、OSCE関連業務のように細分した業務の研修を行う訓練プログラムの設計を行うのが実際的でしょう。
医療の訓練に応用する時にはさらに簡単です。と言いますのは、医療職の業務は、明示化・普遍化されている部分が大きく、細分した業務について言うなら、タスク分析に相当する部分が実務書に記載され市販されている場合さえあります。
 
back もどる 
学習環境分析:インストラクショナルデザインプロセス
訓練の方法を立案するにあたって、どのような環境(教育資源)が利用できるのかは、非常に重要な要素です。
日本の高等教育施設は、文部科学省の厳しい設置基準がありますので、たいていの教育環境は整備されているのが普通です。この「学習環境分析」を迫られる機会は、あまりありません。
ところが、シミュレーション医学教育の場合、シミュレーターや場所など、教育を制限する要素が目白押しです。この目安をつけずに教育訓練の立案など、ありえません。あと十数年も経てば、シミュレーション医学教育が日本全国に普及するでしょう。
その場合、現在の解剖実習室、生理実習室などが約100名の医学生を同時に教育できるように整備されているのと同様に、シミュレーション・センターが整備される(この文章、未来形で終えるか、希望形で終えるか、迷っている)。
 
back もどる 
学習者分析:インストラクショナルデザインプロセス
シミュレーション医学の受講生には、素人同然の学生から、臨床実習中の医学生、医師、コメディカルまでの幅があります。当然の事ながら知識、学習目的、モチベーションなどがバラバラです。
インストラクショナルデザインプロセスでは、学習者分析を行います。つまり受講する人々の知識・技術のレベル、興味の方向、該当の勉強に始めから好意的か嫌悪的か、などを調べます。このような基本情報無しに、有効な訓練方法を立てるのは、不可能です。
聴衆が誰かなどの事前調査は、講演する時にはまったく当然の事です。しかも、シミュレーション医学教育の場合、訓練を受ける集団が、異学年、異業種の混成部隊の場合さえあります。同じ学年、同じ職種の集団を相手に教育をしてきた従来の常識がききません。
 
back もどる 
分析:インストラクショナルデザインプロセス
シミュレーション医学教育のカリキュラム作成にインストラクショナルデザインを導入するプロセスの第一歩は、ニーズ調査と分析です。その分析により、当該のカリキュラムで、どのような受講生が、どこで、どのような技能を、どの程度身につけるのか、を明示します。
医学部のカリキュラム策定に当たっては、永年の経験の積み重ねがありますので、“常識”がまかり通り「学年:三年生、場所:教育棟の講義室と実習室、内容:○○学、到達目標:シラバス参照」程度の記載になりがちです。
ところがシミュレーション医学教育は、新参者であって“常識”で理解してもらえる事を期待できませんし、しかも教育の方法ですので、何を教えるかについては千差万別です。いちいち説明が必要です。
さらに悪いことに、シミュレーションをするための機材、場所など、実行するのに必要な前提条件が厳しいです。このため、シミュレーション医学教育のIDでは、分析のプロセスはどうしても避けて通れません。
 
back もどる 
ニーズ調査:インストラクショナルデザインプロセス
シミュレーション医学教育のカリキュラム作成にインストラクショナルデザインを導入するとして、そのプロセスの第一歩は、ニーズ調査と分析です。そのニーズ調査とは・・・
育成したい人材にどのようなニーズがあるのか?できるようになるとどのような意義があるか?などのニーズを明確にし、コース設計の基礎にすると共に、自分自身と受講者を納得させます。
ところで、あなたは「自分がニーズ有りと思う事には、他の人にもニーズ有り」と勝手に思い込んでいませんか?
また医師、看護師、などの職種を示す単語を何気なく、慣用的に使いますが、あなたの職場では、どのような仕事内容が求められているのか、具体的な考えが共有されていますか?
あたりまえだと受け入れていた事についても、ハッと気が付いて、存在の根源から考え直せる人こそ、「インストラクショナルテクノロジー」を学んで使いこなせる「インストラクショナルデザイナー(IDer)」になれる素養があるのかもしれません。
 
back もどる 
ニーズ調査と分析:インストラクショナルデザインプロセス
シミュレーション医学教育のカリキュラム作成にインストラクショナルデザイン(ID)は役立つ。そのプロセス(別名ADDIE)の第一歩は、ニーズ調査と分析(ADDIEのAは、Analyze)です。ニーズ調査と分析にはプロセス全体の3分の1ほどの時間をかけたいほど重要です。
つまり、シミュレーション医学教育に関しても、やみくもに“やってみる”のではなく、ニーズを冷静に調査し、分析する必要があります。
具体的には、そもそもその技能保持者がなぜ必要なのか?
そのような技能を、どのような受講生が、どこで、どの程度身につけるべきなのか?
以上、当たり前として素通りしてしまいそうな事ばかりですが、適切なカリキュラム立案のためには、はっきり認識し、言語化をしておくべきです。
 
back もどる 
インストラクショナルデザインを技術訓練に応用
インストラクショナルデザイン(ID)をシミュレーション医学教育に応用することは容易ですが、少し考えを整理しておくべき事があります。

IDは人材育成の総合戦略の範疇に分類されますが、シミュレーション医学教育は、育成の方法の範疇に分類されます。すなわち医師や看護師などの育成のための方法のひとつにすぎません。臨床実習、講義、PBLなどの教育方法と並列です。広い範疇のものを狭い範疇のものに応用するためには、限定という作業が必要です。これはインストラクショナルデザインプロセスの段階で話が具体的になる段階で、留意したい事です。

例えば人工呼吸器の取り扱い訓練なら、育てるべき人材を「人工呼吸器を使いこなせる医師」とし、「その方法にシミュレーションを用いる」と規定します。幸い、シミュレーション医学教育では、もともと訓練の目的を限定する必要がありますので、どのシミュレーションを用いて、どのような人に、どのような技能を身に付けさせるのか明示するのが伝統的行なわれてきた事です。これをそのまま流用できますので、IDとシミュレーション医学教育は相性がとても良いのです。
 
back もどる 
インストラクショナルデザインは人材育成の考え
騎士は、騎士の家に生まれた子供に“家内工業”で手作業的に育成されました。市民革命後には、兵士の育成は、徴兵制で集めた素人を対象に大量均一に行いました。

もはやオートメーション工場です。例えて言うと、画家に依頼して描いてもらった肖像画と、ブロマイドの差です。騎士→兵士、肖像画→ブロマイド、いずれも、訓練に効果と合理性が求められる段階への移行です。インストラクショナルデザインは、効果的・合理的な人材育成を目的に開発されました。

インストラクショナルデザインを例えば、「医学教育専門職員」の育成に応用するとしますと、「医学教育専門職員」と名乗っただけで職務内容が他の分野の人にも理解され、どこの大学でも即刻働けるような人材が、一定期間の訓練で、大量に育成できます。
 
back もどる 
インストラクショナルデザインプロセス :於シミュレーション医学教育
インストラクショナルデザイン(ID)は、学習効果が高い教育や訓練を立案するのに開発されました。シミュレーション医学教育のカリキュラム開発には、IDの考えの導入が役に立ちます。

IDの訓練を受けたことが無い人でも、教育や訓練の立案に際しては、教育の必要性、何をどのように教えようか、などをある程度漠然と考えます。 IDでは、このプロセスを構造化し、言語化し、これをインストラクショナルデザインプロセスと呼んでいます。

それはADDIEと略されていますが、Analyze (該当の教育に関する調査と分析)、Design (スケジュール、教員、教育の中身、教育方略など全体像の設計)、Development (実際に行う方法の開発)、Implement(実験的に、やってみる)、 Evaluation(開発したカリキュラムの妥当性の評価)です。
 
back もどる 
インストラクショナルデザイン :於シミュレーション医学教育
長い名前なのでIDとも略される。インストラクションデザイン、インストラクションシステムデザインと同義語である。どのように教育するのがベストなのか、作戦の立て方に関する汎用型の考えである。

もしあなたがベテラン社員で、ある日新入社員の教育係りに配置換えになったとします。新入社員をどのように教育するか、自分なりに方法を考えて頑張るでしょう。さらに教育部署が拡大し、複数の教育係りを教育部長として束ねる立場になると、今度は、教育係りの仕事が全員合格点になる作戦を考えねばなりません。つまり「彼らの教育は、君に託した。しっかり鍛えてやってくれ」式の親分子分や丁稚奉公を彷彿させる個人芸教育を依頼するのではなく、教育に普遍性を持った作戦を考えねばなりません。

具体的に言うなら、どのような職種を育てる訓練なのか?そのためには、どのレベルのどのような社員に何を教えてどのレベルにするのか?研修の期間は?使える教育資源は?などの基礎情報を基に、最適の訓練の作戦を立てられる能力を、社員教育係り全員が共有しているべきです。教育部長としてのあなたの仕事は、社員教育係りの教育能力の普遍化なのです。この時に使われるべき戦略の背骨になるのが、IDです。シミュレーション医学教育では、教育目的を絞ってシミュレーションを行なうので、このIDの考えと相通じるものがあります。
 
back もどる 
コーチング :於シミュレーション医学教育
成人の学習には、学習に目標や目的意識を持たせることが大切。本人の努力で実現可能の目標であり、結果が目に見える形であれば、本人はやる気を出し、学習効果は高い。
コーチングは、お客を目的へ連れて行ってあげる乗り物であるコーチが語源である。コーチの技術、つまりコーチングの極意は、本人の希望を明確化し、その目標に向かうのに必要なことで本人が持っているものを一緒に考えて引き出すことである。まさに成人教育の成功原理そのものである。コーチングは、現在、医学教育に積極的に取れられているが、シミュレーション医学教育もその例外ではなく、フィードバックの時に用いるべき重要な技術である。
 
back もどる 
青年期の学習 :於シミュレーション医学教育
医学部の学生は、青年期。
コンクリートで例えるなら、小児期は生コン、どんな形にでもなる。成人になるとカチカチのコンクリート、形を変えられない。
青年期相当のコンクリートは、まだ柔らかく形を変えられるような変えられないような・・・つまり無理に力を入れるとポッキリ・・・努力が無に帰するが、その一方で、飛躍的に基礎能力を開発できる柔らかい脳も混在している。この時期を逃さずシミュレーション医学教育を経験させると、OJTで一生涯研鑽を積む自己学習能を植え付けられる可能性が期待できる。
 
back もどる 
成人学習 :於シミュレーション医学教育
教育、学習を論じる時に、必ず知っておくべき事は、「小児の学習と成人の学習は、大きく異なる」、という厳粛な事実である。そして「小学校でやっている教育方を、そのまま大学でやるのは、要注意」ということである。
たしかに成人に言語を教えるには文法を教え、使う実地を教える。外国居住には、法律を教え、更に実生活を教える。「法」が大切である。
さらに成人学習にもっとも大切なことは、学習に目的意識を持たせる事である。すなわち「学習する事によって、学習者がどうなる・・・」を気がつかせる。何のために学習するのか「医者になるため・・・」という漫然としたものではなく「これが分かれば、この患者のこれが直せて・・・」。これを医療に置き換えてみるとシミュレーション教育は、成人の学習に適していることは、自明である。
 
back もどる 
小児学習 :於シミュレーション医学教育
子供は学習の天才である。言語を乱雑に聞いて言語をマスターする、しかも文法も理解してしまう。大人の外国人が変な日本語をしゃべっていると、ちっちゃな子供が「それッ 変!」。日常生活をごく普通に送っているだけで、やって良いことと悪いことの分別が出来るようになる。大人になってから外国で居住すると、いつまでたっても“変な言い回し”と“失礼な振る舞い”が直らない。
小児の学習の天才ぶりは、コンピューターゲームの時に顕著である。マニュアルを見ないでも、いじっているうちに、遊びこなしている。いつのまにか父親に「こうしたら、こうなる」と教えている。マニュアルを見た痕跡はない。
何でも受けいれる可能性があるこの時期に、シミュレーション教育を用いるのは、虚構と現実を混じる恐れがあり、慎重さが必要であろう。
 
back もどる 
augmented realty 拡張現実 :於シミュレーション医学教育
virtual realtyと親戚関係で使われる言葉である。mixed realty(複合現実感)とも呼ばれる。virtual realtyでは、出力をコンピューター画面(液晶プロジェクター)で行っている場合が多い。出力画像に高品質のものを用意しているが、それでも現実の再現には、限界がある。その弱点を補うために、現実のものに出力して、つまり現実世界の情報にvirtual realtyからのデジタル情報を重畳する。具体的に例示するなら、手術室の手術台にマネキンを置き、その体表にvirtual手術による術野が投影されるような仕組みである。現実世界に身を置きつつvirtual realtyを経験することになる。医学教育への応用が、とても期待されている。
 
back もどる 
dry lab :於シミュレーション医療教育
難しく言えば、生物の個体を使わないシミュレーション医療教育を示す抽象名詞的に使われる。簡単にいえば、通常のシミュレーションセンター、スキルスラボのことである。
医療訓練の流れから言うと、dry lab → wet lab → On the Job Training となる。今後、施術前の医療訓練が厳しく求められる時代となる。その入口であるdry labが益々充実することが求められている。
 
back もどる 
wet lab :於シミュレーション医療教育
生物の個体を使うシミュレーション医療教育を示す抽象名詞的に使われる。たとえば、本物の豚(生体 または死体)などを用いて内視鏡手術の訓練を行うような状況である。当然のことながら、適切な部屋の中での実施が求められる。生きている生物の命を絶つ場合には、動物実験の時と同じような倫理規定の遵守が求められる。動物の無駄死にならないように、同じ個体を用いて種々の訓練が連続的にするように工夫されなければならない。
 
back もどる 
Hand eye coordination :於シミュレーション医療教育
腹腔鏡手術のように、CRT画面を見ながらの手術は意外に難しい。思ったようには器具先が動いてくれない。イライラする。直視下の手術に比べて何が難しいのか分析してみると、いわゆるHand eye coordinationである。 つまり見えている状況に合わせて器具先を意図通りに操ること、これが難しい。特に、動きの軸について言うなら、CRT画面で見えている軸と、実際の軸とがずれていると、意図した通りの動きをさせるのは、絶望的なほど難しい。
そうなるとHand eye coordinationを基本技能と位置付け、この訓練だけに的を絞った訓練ソフトも登場する。腹腔鏡手術シミュレーターを用いて、豆を右から左にバーチャルに移動させるのだって、基本技能の取得として役立つ。
 
back もどる 
technical factor :於シミュレーション医療教育
human factorが医療事故の原因として頻度が高いことが注目されているが、多くの人は、シミュレーション医療教育で医療者の医療技術をアップさせ、technical factorによる医療事故を減少させるべきと期待している。つまり患者に施術する前の準備訓練としての利用である。
今のシミュレーターの進歩からすると、近い将来に、人体を忠実に再現するシミュレーターが教育の現場で広く用いられる可能性があるが、現状では、“皆さん”の期待に十分応えているのは、むしろ例外的である。まだまだ“もどき”で訓練している段階である。
 
back もどる 
human factor :於シミュレーション医療教育
医療事故の原因は? たいていの人は医療者の技術的な未熟さをあげるであろう。もちろん、それも原因となるが、頻度的に多いのは、核になる技術のミスに起因しているのではなく、むしろ「なぜ、こんなことをしてしまったの?」式の人間チックな間違いに起因している場合である。人間が外からの情報(視覚、聴覚など)をどのように処理し、今までの情報と組み合わせて思考し、行動に移すのかを明らかにしてみると、人間の脳には「緻密さ」と「いい加減さ」の同居があり、この絶妙な組み合わせこそが、判断力と創造性においてコンピューター以上の能力を保有している理由である事に気がつく。
医療の現場では、ミスが許されない。人間は、なぜ、日常業務でつまらないミスを犯すのか? ミスを生じさせない訓練とは?・・・シミュレーション医療教育の利用範囲は広い。
 
back もどる 
野球のルールを教える :於シミュレーション医療教育
ヨーロッパ人の大人に野球のルールを教えるのは、とても難しい。ルールがたくさんありすぎて、それが複雑に関連しているため、どこから教えたらよいのか、途方に暮れる。千里の道も一歩から、コツコツ教えていると、相手は途中で興味を失ってしまう。まるで、学生に医学を教えるカリキュラムの立案の時と、そっくり。
ところが、発想の転換をすると意外に簡単かもしれない。軟球を素手で打って野球だ、外野手も不要、三角野球を楽しもう。球にタッチされたら殺されるが、ベースにいる間は、安全。誰にでもできる簡単野球で基本ルールを覚えつつ、すこしづつ正式の野球に近づける・・・体験学習の積み重ね。
膨大な医療を初心者に教える時も、この作戦が役立つ。その名は、もちろんシミュレーション医療教育。
 
back もどる 
危機管理 :於シミュレーション医療教育
実務教育というのは、幅広い。レールの上を正確に走るだけの日常業務の教育をベースにし、不測の事態が起こらないように、また起こったとしても被害を最小限にする対処など、つまり危機管理の教育も含めねばならない。不測の事態といっても、コンピューターのシステムダウンや台風の襲来など、いわば“予測”範囲内の不測の事態もあれば、100年に一度という本物の不測の事態もある。
この危機管理に必用な能力は、応用に結びつく基礎能力である。シミュレーションは、この危機管理教育に最適である。その理由は、危機をバーチャルに引き起こして、さあどうする式の訓練ができるからである。救命救急は日常業務自身が、一種の危機管理であるため、教育にシミュレーションが最適である。さらに、“機器管理”的に、治療の真っ最中に起こった重要機器の故障などの不測事態への対処を、患者に迷惑をかけずに訓練する事ができる。
 
back もどる 
プロフェショナリズム :於シミュレーション医療教育
職業人としての心構え・態度を、公的学校のカリキュラムのなかで、どのように教えるのかは、とても難しい問題である。うっかりすると説教を垂れるだけのカリキュラムになりがちである。担当者はそう思っていなくても、横から見ている目には、そう思われかねない。
一般にプロフェショナリズムは、口で伝えるよりも作業体験を共有して次世代に伝えるのが最適である。シミュレーションは、ある意味では虚構であるが、シミュレーション教育に取り組む教員の姿は、現実であり、虚構の世界の話ではない。学生はシミュレーション教育を通して、医療の専門の内容など、種々の事を学ぶが、それ以上に見えない影響を深く及ぼすのは、教員が示す職業人としてのあるべき姿勢である。
「シミュレーターを患者としてみなしている。私がシミュレーターをおろそかに扱っている姿を見たら、学生には患者を“おろそか”に捉える原点ができてしまう」、これはシミュレーション教育に当たっている某米国人の言葉である。
 
back もどる 
フィードバックの原点 :於シミュレーション医療教育
広範囲にわたる皮膚の糜爛をどのように治療するのか? ただれた皮膚の滲出液を乾かしつつ治療すべきと習った人が多いと思われる。ところが最近、乾かさないまま治療すべきとの意見が優性である。そんな正反対の事を言われると、「あの自信に満ちた講義は、何だったの?」「じゃ、今までの治療を受けた人は、どうなるの?」と怒るか、または、ふてくされたくなる。さらに、「膿で蛆虫に食べさせるほうが、治癒が早まるし、傷跡もきれい・・・」と言う意見が出る至っては、思考停止に陥る恐れさえある。
このように実際の医療の現場では、治療方針がすっかり変わって面食らう事がある。何が正しい治療なのか、若干の不確実性があの中で学生をどのように教育すべきか? 特にシミュレーション教育では、医療実務が舞台なので、何を目的にした訓練なのか、しっかり確認しておく必要がある。すなわち、そのシミュレーション教育が@マニュアル遵守の訓練なのか?、A学習者の考えに基づいた対応能力を見る訓練なのか?、B背景にある医科学の勉強の入り口なのか?・・・など。ちなみに社会人となり実務に就いた時に求められる能力は、マニュアル絶対遵守の場合もあるし、マニュアルよりも担当者の裁量重視の場合もあるし、また変化に対応してマニュアルを書き直せる基礎能力が求められる場合もある。
シミュレーション訓練の目的意識がはっきりしていないと、事後のフィードバックの原点もぶれて、短期的弊害としては、学習者の心に腑に落ちない気持ちが残ったり、長期的弊害としては、そもそもきちんとフィードバック(reflectionの項を参照)できる次世代の人材が育たない。適切なフィードバックをする文化が無い集団には、自己成長能力も無い。
 
back もどる 
先輩の常識 :於シミュレーション医療教育
シミュレーションで現実の世界を再現するのは、とても資源がかかる。したがって、「こうした事にして・・・」、「これを、・・・に見立てて・・・」式に“として”シミュレーションがしばしば行われる。事情を知っているものは、つまり先輩たちは、目の前で繰り広げられているのが“として”であり、実際とは異なることを知っている。それ故、無害である。ところが、この様な常識は、実際を知らず、“として”シミュレーションで初めて経験する後輩たちに、それが実際であると間違って覚えられ、先輩たちを驚愕させる事がある。先輩の常識が後輩に伝わりにくいのは“常識”であるが、シミュレーション医療教育も、その例外ではない。
 
back もどる 
マニュアル :於シミュレーション医療教育
マニュアルは、ベテランには@備忘録として、またA教育する時のテキストとして役に立つ。初心者にも、@作業の全体像や流れを理解する、A手順を教えてくれる先生として機能する、などで役に立つ。シミュレーション医療教育においても、マニュアルはシミュレーションするアルゴリズムとして流用が可能である。
しかしながら医療の実務で、マニュアルの悪い評判も聞く。これは、マニュアルの書き方が不親切という悪評もあるが、むしろマニュアルに依存しすぎて、臨機応変の対応ができない使用者側の問題を重視すべきである。それ故シミュレーション医療教育は、どのマニュアルを用いて患者に対応するのか、またはマニュアル無しに“常識”に従って患者に対応するのかなど、選択を学ぶシミュレーション・シナリオも有り得る。
 
back もどる 
cooking medicine :於シミュレーション医療教育
料理(cooking)はレシピーを見ながらやれば、ある程度の物はできる。これは、料理に不確定要素が入りにくいからである。医療(medicine)は予測困難、不確定要素がいっぱいであるため、マニュアルは大切であっても、万能ではない。cooking medicineとは、マニュアル至上主義の医療を揶揄した表現であるが、初心者がシミュレーションで最初に医療教育を受けると、「医療は予測できる範囲で動く」ものと刷り込み的な誤解を持つ恐れが無きにしもあらずである。シミュレーション医療教育のカリキュラム策定に当たっては、注意すべき観点である。
 
back もどる 
コンピューターゲーム型シミュレーター :於シミュレーション医療教育
巷にコンピューターゲームが溢れている。この技術の一部を流用して医療教育のシミュレーターが開発され市販に至っている。入力や出力の機械部分で医療器具を流用し、いわゆるAR (augmented reality) になっているシミュレーターはすでに紹介したが、これは汎用のコンピューター用品を用いたシミュレーターである。
具体的な患者に対してどのような診察と治療をすべきか学ぶシミュレーター、患者への問診を通して医学を学ぶシミュレーターなどがその代表格である。サイトへのアクセス権やCDなどの形で供給されている。
 
back もどる 
縫合トレーニングキット :於シミュレーション医療教育
皮膚のモデルである。これに“切創”が加えてあり、針、糸、鉗子などを用いて縫合の練習をする。技術訓練が主目的であるが、付随して種々の事を訓練できる。上手く縫えたという達成感、実際に医療らしいことが体験できたという嬉しさがあり、学生からの人気は根強い。訓練にあたっては、ひとりひとりに専用のキットが必要であるが、幸いなことに安価なので、多数を用意しておくことができる。
糸の結び方など、現実と同様である技術が多く、訓練の成果が実際に役立つのが利点であるが、さらに最近、皮膚にかかる針の力などが可視化され、これを指標にベテランのスキルを学ぶシミュレーターも市販されている。
 
back もどる 
高齢者体験 :於シミュレーション医療教育
文字通り高齢者のハンディを体験する装具である。種々の物理的な負担をかけて体の動きを不自由にしたり、ゴーグルで白内障の見え方を再現したり、このような状況で日常の生活を擬似体験する。もともと神経や筋肉が正常な学習者が、この装具で得る不自由感覚は、高齢者の不自由感覚と異なる。しかし堅強な若者であっても高齢者の立場にたち、思いやりの心を持つきっかけになれば、医療人教育目的に適う。
 
back もどる 
妊婦体験装具 :於シミュレーション医療教育
文字通り妊婦のハンディを体験し、妊婦の立場にたった思考ができるように訓練をする装具である。胎児に相当する物体が入った腹部のモデルを学習者が装着し、日常の生活を疑似体験する。学習者に気がつきを促せるようにファシリテートすれば、効果的な学習の場となる。
 
back もどる 
外傷モデルキット :於シミュレーション医療教育
打ち身、切り傷、熱傷、複雑骨折などの外傷の皮膚モデルである。これを生身の人間が装着して、けが人としてロールプレイを行う。使い道としては、日常のけがの一次処置の説明、大規模災害時のトリアージ訓練における臨場感の演出などである。学習者が参加型になるため、教育プログラムが適切であれば、効果的な学習の場となる。
 
back もどる 
導尿教育用モデル :於シミュレーション医療教育
文字通り導尿の手技を教育するためのモデルである。導尿とは、尿道口から管を入れて膀胱中の尿を強制排出させる手技である。極めて大切な医療手技であるが、男性の場合、意外に難しい。この練習台になってくれるような人は、誰もいそうにない。このモデルは、男性用と女性用が用意されており、外生殖器だけのモデルもあるし、実際の人間が履けるズボンに外生殖器を取り付けたモデルもある。いずれにせよ単なる手技だけでなく、患者への配慮を学ぶモデルとして使える。
 
back もどる 
直腸診教育用モデル :於シミュレーション医療教育
文字通り直腸診の触診手技を教育するためのモデルである。直腸診とは、肛門を視診し、指を直腸内に入れて触診する手技である。とても大事な診察手技であるが、初心者が練習台に事欠く事態は、容易に想像されるとおりである。このため、直腸診教育用モデルの価値は高い。このモデル、たいていは臀部からなり、種々の病変を再現した直腸部が用意されていて、これを入れ替えて、それぞれの病変の触診所見を学ぶ。もちろん直腸診には、患者との信頼関係の構築が大切であるので、患者への声がけも学ぶべき項目である。
 
back もどる 
乳癌触診教育用モデル :於シミュレーション医療教育
文字通り乳癌の触診手技を教育するためのモデルである。乳癌の触診所見は、非常に重要であり、種々の名称がつけられており、医学生の必須の学習項目である。これを教科書の文章による記載で理解するよりも、モデルを用いての説明を受ける方が、はるかに理解できる。ただし、日本における実際の臨床では、モデルに再現され難いごく初期の乳癌の触診が重要であるし、また進行癌にしても微妙な触診所見を訓練できるレベルの完成度ではない。そのため、使用目的を、触診時におけるコミュニケーション能の向上に重点を置けば、このモデルはとても有効である。つまり、乳房触診では、患者との信頼関係の構築が重要であるので、乳癌触診教育用モデルをブラジャーのように装着した模擬患者に話しかけつつ触診をする練習に使うように工夫されている。
 
back もどる 
気管異物除去練習用モデル :於シミュレーション医療教育
文字通り気管に異物が入ったとき、ハイムリック法で除去する練習をするモデルである。上半身の人体モデルであり、学習者はこのモデルの後ろに回って、圧迫で異物を吐出させる。つまり、まず片手で握りこぶしを作り、みぞおちと臍の間に当て、このこぶしを反対の手で握り、手前上方に向かって、一気に圧迫する。
このハイムリック法は、実際には合併症が出たりして、薦められない場合もあるが、このモデルを使って教えられる内容は、多い。すなわち、気管に詰まった本人が、その旨を周囲の人に報せ助けを求めるときのジェスチャーや、異物除去の他の方法(背中を叩打する、掃除機を使う)などである。喉に餅を詰まらせて死ぬ人が毎年出るし、子供が異物を飲み込んで苦しがる事故も多いので、普段からこの訓練をしておくことは、大いに価値がある。
 
back もどる 
中心静脈注射練習用トレーナー :於シミュレーション医療教育
心臓近辺の太い静脈に注射液を入れるのに、鎖骨下静脈などを皮膚から穿刺し、カテーテルを挿入する必要がある。これは、たやすい技術ではなく、不適切な技術のため患者が死亡する場合さえ、稀ながらある。より良い訓練方法が最も求められている手技のひとつである。この手技を他人に説明するには、タスク・トレーナーが必須である。口や画像で伝達できるものではない。現在種々の市販品があり、研修医教育用としても人気筋になっているが、学習者が実際の感触を確かめられるレベルへの向上が期待されている。
 
back もどる 
分娩介助練習用トレーナー :於シミュレーション医療教育
赤ちゃんが誕生! 立ち会って見ているだけでも、感激の体験である。医学生、看護学生などは分娩に立ち会う機会があっても感激ばかり大きくて、肝心の産科的な内容を理解するような機会になっているとは限らない。また残念な事に学生が分娩に立ち会う機会も著減した。このためトレーナーに期待される役割は大きい。
また、胎児が産道を通る時の頭の回転や、子宮口の開大の触知などを理解するのに、書物やビデオよりもトレーナーが適している。この種のトレーナーは年々改良を加えられ、市場に出ている。
 
back もどる 
耳鏡検査練習用トレーナー :於シミュレーション医療教育
耳の穴のなか、つまり外耳道や鼓膜を耳鏡でみるのは耳鼻科医に必須の技術。臨床実習で耳鼻科に配属された学生が学ぶ基本技術である。学生が耳鏡を使って互いの耳外耳道をみてもいいが、病的な所見をみれるわけではない。このタースクトレーナーには、数種の病変耳が用意されており、これを装着する事により、病変の観察が出来る工夫がなされている。
 
back もどる 
筋肉注射訓練用モデル :於シミュレーション医療教育
文字通り筋肉に注射をする訓練が目的である。たいていは筋肉に注射する部位として選ばれる肩部や臀部のモデルである。簡単なモデルであるが、学生に教えられる内容は多く、役に立つ。例えば、なぜ肩部や臀部が筋肉注射の部位なのか、患者への声がけ、神経や血管損傷への注意、消毒の仕方、使用済み注射針の処理、注射薬の確認の重要性、注射方法の種類(筋肉、皮下、皮内、静脈・・・)と選択、注射後のアナフィラキシーショックへの早期対応、など様々。
 
back もどる 
眼底検査練習用トレーナー :於シミュレーション医療教育
眼底の網膜をみる事は、眼科医に必須の検査であるが、その他内科医や救急の医師にとっても重要な所見が得られる検査でもある。検眼鏡を用いれば即座に観察が可能であるが、その手技は、そう簡単ではない。この練習には、医学生が互いの眼を使っていたが、眼底検査練習用トレーナーが開発され、市販されているのでこれを用いる事ができる。
このトレーナーでは、数種類の病的な眼底所見が、実際の臨床で用いられている直像検眼鏡で観察できるようになっているので、初学の学生には眼底検査の手技や意義について理解しやすい。
 
back もどる 
採血練習用トレーナー :於シミュレーション医療教育
静脈採血、動脈採血などを練習するタースク・トレーナーである。現在のところ、肘関節の皮静脈から採血するトレーナーが一般的である。採血の局所は、痛みが激しいので、消耗品として交換できるタイプが大部分である。
血液に見立てた赤い液体を静脈に充満させ、皮膚を貫いて注射針を血管に入れ、採血を行う。医療行為をしているという実感、巧く出来たという達成感のためか、学生に人気がある。採血にまつわる一連の動作には習熟が必要である。また、清潔操作、使用後の針の処理など、学生が学べる医学的事項は多い。
 
back もどる 
気管への挿管練習用トレーナー :於シミュレーション医療教育
事故や病気で呼吸が止まったり、充分でない患者、または全身麻酔の患者などの場合、気管内に挿管し、人工呼吸を行う。この挿管は、簡単ではない。気管に管を入れねばならないのに、食道に入れてしまう場合さえある。
まだ反射が残っている、舌根が沈下している,口腔内に大量出血がある,気道に熱傷の患者、など場合には、気管に管を入れる事は更に困難である。しかもたいていは、時間をあらそう緊急である。そのため、気管への挿管練習用トレーナーは、実に利用価値がある。現在、モデル(頭頚部、頭頚部プラス胸部、全身)に精巧な口腔や、咽頭部、気管などを取り付けたタースク・トレーナーが市販されている。正しく気管に挿入され、正しく空気が送り込まれた場合には、胸が膨らんだり、モニターに換気の様子が示されたりする。
 
back もどる 
バイタルサイン用シミュレーター :於シミュレーション医療教育
患者の呼吸や血圧、心拍数などをチェックすることは、診察の基本である。なぜなら人間が生きていくためには、心臓の拍動や呼吸による換気が常に充分なされているのが絶対条件であり、バイタルサインとして認識されている。バイタルサインをとる技能は、医師、看護師などが、専門にかかわらず全員が身に着けておくべきである。誰でも正確に、迅速にとれねばならない。従来の実習では学生などが、交代交代、この訓練の稽古台になっていた。現在では、種々のシミュレーターが発売され、幅広い利用がなされている。
 
back もどる 
胸部聴診 :於シミュレーション医療教育
胸部聴診とは、患者の心音や呼吸音などを聴診器で聴いて、心臓や呼吸器疾患の診断の補助とするもので、医師の診察で最もシンボリックな絵になっている。
この聴診で得られる情報は非常に多いが、慣れていない初心者にとっては、心音や呼吸音を聞き分けるのが困難である。かなりの訓練が必要。それ故、種々の音声教材が発売されており、オーディオ機器で聴くことが出来る。
オーディオ機器での勉強で事足りるとしても、人形の胸部に聴診器をあてたとき、あてた場所によって種々の音が聞こえるほうが、はるかに臨場感に優れ、学習者の意欲を刺激することは、いがめない事実である。現在、胸部聴診の優れたシミュレーターが発売され、教育現場で広く利用されている。
 
back もどる 
haptic :於シミュレーション医療教育
双方向性がある、これは教育では大切にしたい要素である。教える側から学習者への一方的な知識や技能の流れではなく、両者が互いに影響しあう仕組みが欲しい。それは、シミュレーターを使う時も同じで、学習者と双方向に反応するようなシミュレーターは、使用後の満足度が高くなる。双方向に反応する例のひとつとして、シミュレーターでなにか手術などの操作したときに、指先に感触が返ってくるような触覚(haptic)を、バーチャルリアルティで作り出す研究が盛んに行われている。
この触覚は、シミュレーターがアナログ的な物の場合には、人体に似た感触の物を作る必要がある。それ以上に開発が困難なのは、完全コンピューター的なシミュレーターの場合であるが、すでに人間の実際の臓器を触った感じをバーチャル体験できるシミュレーターは、開発されている。
 
back もどる 
腹腔鏡下胆嚢摘出術シミュレーター(コンピューターソフト版) :於シミュレーション医療教育
これも前出の気管支鏡シミュレーターの範疇に分類される。このシミュレーターでは、腹腔鏡を用いた胆嚢摘出術をバーチャル体験できる。ダミーの鉗子とモニター画面、パソコンからなる。モニター画面には胆嚢や肝臓、鉗子の先が見える。これで切除、縫合やクリッピングの練習ができる。超音波凝固切開装置がついている機種もある。
本物の腹腔鏡下胆嚢摘出術は、非常に長い器具を用いて、しかも二次元のモニター画面を見ながらの手術なので、空間認識について開腹手術とは異なった技術が要求される。シミュレーターが、この技術の訓練装置として、急激な進展を見せており、近未来的には、本物の手術の前訓練として必須になるであろう。
 
back もどる 
気管支鏡シミュレーター :於シミュレーション医療教育
あたかも気管支鏡を用いて患者の気管支の検査を行っているかのようにバーチャル体験できるシミュレーターである。これが医療技術訓練や、医学教育の一部になる程の発展を遂げている。その完成度はハイファイと呼ばれるレベルである。
用いる気管支鏡は、本物そっくりであるが、ダミーである。この気管支鏡を人形の鼻の穴から入れ、喉頭を下り、気管、気管支に至り、内部の病変を探る。 見える像は、全てコンピューターの中に入っている画像であるが、鼻からの挿入した長さと気管支鏡の向きにより、本物の気管支鏡ならこう見えるはずだという像をコンピューターが瞬時に計算してモニターの画面に映し出す。局所麻酔をかけつつ、患者の苦痛を最小限度にして検査をせねば、バーチャル患者は、咳き込む。さらに病変部の生検も体験できる。
ダミー気管支鏡の操作というアナログ的な体験は、学習者には感覚的に分かりやすい。コンピューターソフトというデジタル技術は、検査結果を示す自由度に優れている。この二者の長所を結合させた傑作である。
 
back もどる 
curriculum based teaching :於シミュレーション医療教育
昔々、医学部の教育は、教授の意向に大きく依存していた。○○教授による内科学が○○内科学と呼ばれる例さえあった。その結果、講義の重複を心配して、隣の教授が何を講義しているのか、知りたいが知る術が無い。ついに「オイ、○○学では、何を習っているんだ?」と学生に聞く有様。
近年、統合カリキュラムの時代になって、学生がいつ、何を、どのように学習するのか、詳細なカリキュラムを医学部のシラバスに示す事が必須となった。そうでないと学習内容に重複や欠落が生じ、効果的なカリキュラムを組めない。
特にシミュレーション医療教育は、伝統的な区分である教科にとらわれない、また、低学年で習うべき内容と高学年で習うべき内容が混合する、などの理由でどの範囲をどのように教えるのか、責任者の意図による所が大きく、他分野の教員には見当がつかない場合が多い。さらに、カリキュラムを充分に知ることは、学生の自己決定型学習には、とても有効に働く。このため、シミュレーション医療教育は、curriculum based teachingであるべきであり、そのカリキュラムは明示されるべきである。
 
back もどる 
忠実度 :於シミュレーション医療教育
シミュレーターは、人体を再現するものであるが、再現の程度が高い方が、臨場感があり、しかも教育効果が上がりやすい。その再現の程度は忠実度と呼ばれ、機種により、千差万別である。高いものを忠実度が高いhigh fidelity、低いものをhigh fidelityと区分する。high fidelityなる言葉は、音楽のレコードの分野でも用いられている。つまり原音に忠実な音を再現する機器をハイファイと呼んでいる。
音楽とは異なり、シミュレーターが人体を再現するのは困難で、なかなかハイファイになりにくい。
 
back もどる 
タスクトレーナー :於シミュレーション医療教育
シミュレーターとも、モデルと呼んでも良いが、タスクトレーナーと呼ぶのが最適と思われる場合がある。すなわち、特定の医療手技を訓練するために、使用目的を絞って作られている人体模型(部分、全身)である。
具体的な例として、眼底を視る、気管に挿巻をする、聴診をする、採血をする、内診をする、などのタスクトレーナーが開発されている。これらのタスクトレーナーはすでに市販され、シミュレーションラボに広く導入されている。
たいていは、学習者が医療手技の手順を自分で確認したり、教員が手技を教える補助に用いたりする。
 
back もどる 
reflection :於シミュレーション医療教育
reflectionは、最近の医学教育で、重要視されている概念である。
すなわち自分のperformanceをreflectionし、それに基づいて、自分は何を勉強すべきか自分で決めて学習する(自己決定型学習)のが、いちばん効果的という考えである。シミュレーション医療教育は、個々の内容を教えるというよりも、何が良かったのか、何が悪かったのか、何を勉強すべきか、学習者に気がつく機会を与えるのが本筋であるため、reflectionはシミュレーション医療教育において最重要である。
なお、この短い文章の中に、2つの重要な単語が原語のまま出ている。Reflectionは 内省、省察、ふり返り、反省などと訳されているが意見の一致を見ていない。Performanceは「できは、どうだった?」という場合の「でき」の意味であるが、適訳に事欠き、しばしばパフォーマンスのカタカナが用いられる。この場合、パフォーマンスにスタンドプレー的なニュアンスを汲み取る人がいれば、大変な誤解になる。
要するに、母国語で新しい概念を産み出せない文化的脆弱の状態が続いているのが、日本の現状だ。
 
back もどる 
ファシリテイター、インストラクター :於シミュレーション医療教育
シミュレーション医療教育で学習者に直接指導をする教員には、従来の講義型の教育とは異なった教育方法が求められている。
すなわち、シミュレーション医療教育では、知識や技術を即物的に与えるが、これをなるべく少なくして、むしろ学習者に何を勉強すべきか、気がつかせることに重点を置いている。これは学習の促進という意味で、ファシリテイターという呼称が適切であるとの考えに結びつく。
インストラクターは、その分野に一日の長がある人で、持っている知識や技術を上から下へ移転するような教え方をするニュアンスを含んでいる。シミュレーション医療教育で、このような教え方をするのも、学習者の満足度を上げることは、確かである。
ファシリテイターとインストラクター、その現実的な差は上記の言葉ほどではないが、シミュレーション医療教育の本質を議論するときに、話題になりやすい。
 
back もどる 
シミュレーター :於シミュレーション医療教育
シミュレーターと呼ばれるものには、別称モデルとも呼ばれる人体模型と、シミュレーションする機械の2種類がある。前者は、モデルを用いた臨床技能訓練の項で、前述した。後者は、バーチャル内視鏡、コンピューターソフト・ゲームなどの類である。
たとえば、バーチャル内視鏡を用いて、あたかも内視鏡を用いて患者の検査を行っているかのような体験ができ、これが医療技術訓練や、医学教育の一部になるほどの発展を遂げている。また、医療の現場や患者の姿をCRTの画面示し、医療の手順をバーチャル体験できるコンピューターソフトが発売されている。
 
back もどる 
アルゴリズム :於シミュレーション医療教育
シミュレーション医療教育において、学習者はどのように判断し、行動するのか?その判断の仕方・考え方は、アルゴリズムとも呼ばれる。
これには、1)生体反応と2)治療方法・院内規則の2種類ある。このアルゴリズムは、医学の学習の背骨になっている。つまり、「どのような状況では、どうなる?どうするべき?」かを知っている事は、医師としての基本能力であり、この知識無しに医療は出来ない。
この2つのアルゴリズムを根拠に、学習者のシミュレーションをふり返り、成長を助ける教育方法としてシミュレーション医療教育が作られている。
 
back もどる 
シミュレーション :於シミュレーション医療教育
“シミュレーション”という言葉、なんとなく分かった気にもなる人もいるし、イメージがつかめない人もいる。
Wikipediaで調べてみると、あまりにも包括的な意味であり、逆に、分かりにくくなるかもしれない。医療教育における“シミュレーション”に分野を絞ってみると、シミュレーションするのは、神様が決めた「人体の反応」と、人間が決めた「医療の手順」である。または、この二つの混合である。
 
back もどる 
コンピューターゲーム的なソフト :於シミュレーション医療教育
「たまごっち」が発売されたとき、「お医者さんごっち」のコンピューターソフトが、同様にできるはずと思った人が大勢いたのではないだろうか。
これをもってシミュレーション医療教育が出来るはずと、可能性を感じたはずである。その夢が、徐々に具現化しつつある。膨大な開発費用がかかるため、開発速度は遅いが、すでに市場に出て、教育に用いられている教材ソフトがある。
三十年前に今日の医学教育の姿を想像するのは難しかった。今日、三十年先の医学教育の姿を想像するのなら、やはり「お医者さんごっち」かも・・・。
 
back もどる 
モデルを用いた臨床技能訓練 :於シミュレーション医療教育
シミュレーション医療教育で言うところのモデルは、ファッションモデルという華やかなものではなく、初心者の未熟な手技の練習台という悲惨な役回りを引き受ける人体模型である。眼底の練習用、気管の挿管用、静脈注射用など、それぞれ訓練の目的に合わせて、細工がなされている。また、学習者の手技を一方的に受けて、もっぱら手順の確認に使われるレベルのモデルから、学習者の手技に生体の様に反応するレベルまで、さまざまである。この反応のレベルは、コンピューター技術の発達により、急速に長足の進歩を遂げつつある。
 
back もどる 
模擬患者 & 模擬診察 :於シミュレーション医療教育
模擬診察は、医療面接と身体診察からなり、シミュレーション医療教育の一種に分類できる。
日本では、主に医療面接が行われているが、諸外国では、一般的な内科の身体診察を担う模擬患者が医学教育に参加している例が見られる。さらに婦人科の内診の練習に特化した模擬患者や、非英語非白人系国家の医学部で、医学生を白人系外国へ臨床実習に出す前の特訓用に英語を話す白人模擬患者、純粋の教育を目的として診察の練習台になる“本物の患者“などが存在する。
 
back もどる 
善きサマリア人の考え :於シミュレーション医療教育
医療とは、実は、教養教育の宝庫でもある。BLSやAEDという医療技術を大学生に教えることには実利があるが、その医療に密接に関係した法律や習慣を学生に考えさせるのは、単に講義で法律を教える以上のとても魅力的な教養教育となる。
例えば、街角で使える救命救急の技術を教える。そのとき「あなたの失敗で、容態が悪くなった。責任は?」を問いかける・・・。
“治療と傷害の境界は?”
“不幸な事態になったときの法的責任は?”
“そもそも医療は、誰が担うべきか?”
シミュレーションの場ながら、救命救急処置をして学生が当事者となっている。このチャンスを見計らって「あなたは、罪に問われません・・・」、善きサマリア人の法(good Samaritan law)の考えを紹介する。これで社会と医療のかかわりを、学生が根源的に考えるきっかけができる。
 
back もどる 
AEDの訓練 :於シミュレーション医療教育
AEDの日本語は自動体外式除細動器であり、文字通り、自動的に心室細動を除く医療機器である。心室細動、すなわち、心臓が痙攣し血液を流すポンプとしての機能を失って倒れた患者には、1分1秒でも早い除細動が必要である。現在、その場に居合わせた人が最善の救命者という考えで、一般市民でも使える状態にするための普及活動が行われている。
AEDの使用方法は簡単であるが、一定の訓練が必要である。このため、BLSと組み合わせての救命訓練として、大学、病院、企業、消防署などで行われつつある。学生は、自動車学校や初期体験実習で消防署へ行った時に訓練を受ける機会がある。
 
back もどる 
BLSの訓練 :於シミュレーション医療教育
BLSは、basic life supportの略。街中や家内で倒れた人を第一発見者として助けるための基本的な救急処置である。安全確認、倒れた人の状態把握、援助の確保、胸骨圧迫(心臓マッサージとして知られていた)、人工呼吸などを含む。
この時に用いるシミュレーターは、学習者が一方的に手を下す処置の受け皿の役目なので、単なるマネキン程度のものでも使用可能であるが、正しく胸骨圧迫や人工呼吸が行われたか、メカ的に表示する機能がついている場合もある。
現在、病院の職員、ホテルやレストランの従業員、公共施設などで働くひとびとが、第一発見者になりやすいので、BLSの訓練を受ける傾向が拡がっている。
 
back もどる 
救急のチーム医療訓練 :於シミュレーション医療教育
生命の危機に瀕した患者をどのように救うかの訓練である。この場合の患者は、通常、シミュレーターと呼ばれる全身の型のマネキンであり、血圧、呼吸、モニター心電図などのバイタル情報がコンピュターの画面上に示される。治療結果が時間軸に沿って画面上に示されるため、緊迫感に溢れる。
このシミュレーションを通して学習者は、医療チームの中で自分が果たすべき役割、行った治療の是非などを学習する。
 
back もどる 
シミュレーション医療教育
“シミュレーション”を“場”にして行う新しい医療教育を示す。“シミュレーション”の定義も、“場”の定義も、人によって若干意味合いが異なるが、すでに現実的には、救急のチーム医療、模擬患者参加型の医療面接(模擬診察)、モデルを用いた臨床技能訓練、コンピュターゲーム的なソフトによる臨床技能や思考の訓練などが教育に導入され、効果を挙げている。
 
back もどる 
医師の患者への接し方
模擬診察−医学生の間に患者へ接する方法を考えます−

自分の立場でしか考えないで育ってきた天使たち、このまま患者に接したら、小鬼になってしまいます。
人の立場を考える機会が、模擬診察です。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
テュトーリアル・システムの導入 (その4)
学生 「テュトーリアルになってから、先生が講義を忘れていることが多いです」
事務職員 「……」
学生 「今日も、私たちの班のテュータが現れません」
事務職員 「‥.…」
学生 「このごろ、講義室の変更、試験室の変更、突然の変更が多すぎます」
事務職員 「……」
学生 「グループの中に、非協力的な学生がいます。これでは、勉強ができません。グループの変更をして下さい」
事務職員 「……」

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
テュトーリアル・システムの導入 (その3)
学生 「テュトーリアル室の鍵を貸してください」
事務職員 「鍵の時間外貸し出しは、できません。時間内にすませてください」
学生 「それでは、勉強の時間がたりません」
事務職員 「残念ですが、鍵の時間外貸し出し禁止は、教務委員会の決定です。」
学生 「それは、管理上の都合ですか?」

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
テュトーリアル・システムの導入 (その2)
カリキュラムが変更となり、旧カリキュラムを走らせつつ新入生から新カリキュラムを導入することになった。
学務課長は困っている。その例を挙げる。
講義に担当の教員が現れない。
電話で尋ねてみると、「そんな講義のこと、連絡を受けていない、誰が決めた」と怒られた。「....私のせいじゃ無い」
一人の教員が、同じ時間に旧カリキュラムと新カリキュラムの両方で講義をする予定になっていたことが、その時になって判明した。 「もうちょっと、しっかりせい!!!」教員は怒っている。
「.・‥私のせいじゃ無い」

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
テュトーリアル・システムの導入 (その1)
中戸君は旧カリキュラムを最後に履修する学生である。彼は解剖学を合格できず、留年となった。
彼の大学の新カリキュラムはテュトーリアル体制であり、次年度からは解剖学という科目は存在しない。
中戸君は解剖学を再履修したいが、解剖学の教授は、彼一人の為に一年間解剖学を開講す気はない、と言っている。
ではこの学生、どうなるんでしょう?

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
クリニカル・クラークシップ (その5)
クリニカル・クラークシップ型の臨床実習をする事になった。資格試験に合格した学生だけが実習に参加できるらしい。
では、資格試験に不合格の学生は、見学型の実習を 受けるの?

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
クリニカル・クラークシップ (その4)
クリニカル・クラークシップ型の臨床実習をする事になった。
学生も必要な場合、病院に泊まるらしい。
男子学生は、そこらで寝かしておけば良いが、女子学生は..‥‥すみません、つい余計なことを考えまして。
でも、やはり、大事ですよネ。事故が起こってからでは、遅いですからネ。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
クリニカル・クラークシップ (その3)
クリニカル・クラークシップ型の臨床実習をする事になった。
学生が患者を診察する前に身分を明かして、「診察して良いか」、許可を患者からもらうらしい。
教員「学生に診察されるのを、モルモット代わりにされると勘違いして嫌う患者もいる。
それで、当院ではいちいち許可をもらわないことにしたい。」事務官「しかし、胸の名札を見たら、学生であると明示してあります。」

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務事務研修議論のための事例集
クリニカル・クラークシップ (その2)
クリニカル・クラークシップ型の臨床実習をする事になった。医師の免許の無い学生が医療行為をするらしい。
学生の書いたカルテも、正式なカルテとして使うらしい!? これで事故があったら、どうなるの?
水準1、水準2、水準3のランクがあるらしいが、良くわからない。
学生を指導する助手の先生に聞いてみても、シドロモドロ。実施の実情は、各科によって、まちまちらしい。
それでも、「クリニカル・クラークシップを導入しているか?」のアンケートには、大きく○印。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
クリニカル・クラークシップ (その1)
クリニカル・クラークシップ型の臨床実習をする事になった。
学生が患者の診察に使う使い捨ての手袋、キャップなどの費用を学務費で出して欲しいと激しい口調で要求された。
金額を聞いてびっくり、巨額。教務委員長に助けを求めたが「こんなに本当に使うの?」と言ったものの、具体的指示がない。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
学外実習の導入 (その5)
院外実習を外科の関連病院であるQ病院で行っている。そこでQ病院の外科部長を臨床客員教授に任命した。
内科は、他の大学の関連病院であるので、内科部長を臨床客員教授に任命していない。でもうちの学生の面倒を見てくれているらしい。
内科部長は、なぜ臨床客員教授に任命してもらっていないのか、口には出さないが不満そう。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
学外実習の導入 (その4)
院外実習を県内の10病院で行っている。某病院では、学生の飲食の提供が豪華で有名だ。C他の病院との釣り合いが取れない。
注意をしたいが、そこの院長は、ハイ。
結局、猫に鈴をつけられる人は誰もいない。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
学外実習の導入 (その3)
栗丹さんの大学では、6年生の院外実習をクリニカル・クラークシップ型で行っている。
栗丹さんは、院外実習で患者に注射を打ったが、患者はその後、「注射のせいで腕がしび れた」と訴えている。栗丹さんが学生である事を知った患者は、裁判に訴えると言って いる。逆に栗丹さんは、この患者からB型肝炎をうつされたと、怒っている。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
学外実習の導入 (その2)
初期体験実習で1年生の学生を老人保健施設に行かせているが、実習を受ける態度がとても悪いらしい。
遅刻、タバコを吸う、ボーと突っ立っ見ている、服装がだらしない、ジャンジャン電話がかかって来る。
一応は謝るが、「去年も注意したはずだ」のお叱りの 言葉が続く。
さらに「来年からは、教官の付き添いを付けて欲しい」
「!」

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
学外実習の導入 (その1)
塩木君は、初期体験実習で老人保健施設へ行く途中で交通事故を起こしてしまった。
大学は、学生が実習に行くのには、自家用車の使用を禁止しているが、この老人保健施設は郊外にあり、公共の交通機関で行くのはとても不便であり、事実上、自家用車の使用は黙認の状態であった。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
学生評価・成績評価・授業評価・OSCE・共用試験 (その3)
共用試験の試行が始まる。
うちの先生は、出題の問題を考えているらしいが、今まで の卒業試験に使った問題を練り直して提出しようとしている。しかも医局の机で問題を作っている。これでは、問題がジャジャ漏れ.試験の信憑性がなっていない。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
学生評価・成績評価・授業評価・OSCE・共用試験 (その2)
統合カリキュラムの科目が多くなった。たとえば「更年期の医学」は3時間のコマがあり、内科、産婦人科、生化学の先生が合同で運営している。
ところで、その成績は、内科、産婦人科、生化学のどれに付けるの?
私の大学では、全面的にテュトーリアルを導入して、解剖学、生理学、内科、外科が無くなった。
もし、学生が外国に提出する成績証明書を請求してきたら、どのような書式を使うの?

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
学生評価・成績評価・授業評価・OSCE・共用試験 (その1)
私の大学では学生が、教員の講義能力などを評価している。学生が書いた評価用紙に は、某先生の講義についてポロクソに書いている。
集計の担当者である私が、その評価用紙の束を机の上に置いていたら、「これは、個人 のプライバシーに触れる事項だ! 保管が悪い!」と怒られた。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
OSCEの導入 (その4)
いよいよ私の大学でもOSCEを始めた。
終わってみれば、嵐のような一日だった。疲れた。みんな機嫌が悪くなっている。
えッ、OSCE不合格の学生が居る?
まさか、後日、同じ試験を繰り返すの?

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
OSCEの導入 (その3)
Aさん 「OSCEって色々あるらしい。」
Bさん 「?」
Aさん 「たとえば、臨床実習資格試験レベルのOSCEとか… 医師国家試験(卒業試験) レベルとか… 研修医レベルとか…」
Bさん 「学務課が、全部所轄するの?」 Aさん 「したら、パンクだネ」

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
OSCEの導入 (その2)
いよいよ私の大学でもOSCEが始まる事になった。外部の先生を評価者として加えるらしい。それって、費用はどこから出すの? 非常勤講師? それなら、もう使い切っているよ。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
OSCEの導入 (その1)
いよいよ私の大学でもOSCEが始まる事になった。大勢の教員と事務官が動員される。誰が、何を、どのようにすれば良いのか、さっぱり分からない。
担当の教授は、OSCEには詳しいが、組織をオ-ガナイズする力に欠けている。当日が来た。やはり、大混乱。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
IT化と学習支援システム (その3)
最新鋭の便利な機械が、教育用にどんどん導入されている。使い方が難しい、ややこしいで、使うのは最初だけ。2-3年もすれば、放置されている。使用頻度が高いのは、マイクとスライド。
「画面が出ない」とか電話がかかってきて、講義室に行ってみたら、単に電池が切れただけ、コードがちょっと外れていただけ‥. ホントにお疲れさん。
「使い方がわからない」とか電話がかかってきた。「操作の仕方は、機械のところに書いてあるはず」と担当の職員は、言い返している。講義室に行ってみたら、なるほど、この書き方では、知らない人には分かり難い。そこで、マニュアル本をそばに置くことにした。しかし、せっかくの親切にもかかわらず、どういう訳か、誰か読んだ形跡がない。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
IT化と学習支援システム (その2)
ワープロって、便利だ。どんな書類もプロのように仕上がりがきれいだ。すばらしい。
人事異動で、新しい部長が着任してきた。この部長は「3つの”い”」と呼ばれている。すなわち、こまかい、うるさい、しつこい。私の作った内部書類の文章の頭の位置が、すこしずれているだけでも、指摘する。
またやり直し。これを訂正するのに、どれくらい手間がかかるのか?知っているのか!そもそも訂正して、何になる!?ワープロって、キライ。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
IT化と学習支援システム (その1)
C教授: 私の講義は、そこんじょらの講義とは、わけがちがう。理路整然として熱のこもった講義は、出席を取らんでも、学生は自主的に出てきて熱心に聴いている。 なにもtutorialなど、必要でない。
T教授: はい、先生の講義は、評判がいい事で有名です。
でも、その講義を聴いた学生がポリクリに行った時、「お前ら、基礎で何を習って来たんじゃ!」と言われるのは、なぜでしょうか?先生のお話は理路整然としているので、学生の頭にはスーツと入ります。
でも結局それは、学生の頭に文章として記録されただけで、実は、かならずしも役に立つ知識ではなかったのです。
いわば、床の間の飾り物のような知識です。ごめんなさい、言い過ぎました。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
コア・カリキュラムの導入・統合カリキュラムの導入 (その5)
私はあたらしく学務に配属された。運の悪い事に、今年から新カリキュラムが導入された。
新しい学務の事務を誰もはっきり知らない。判断に迷う場合、教務の教官に聞くが、聞く人により返事の内容が異なる。
その二人が反目する教員であったら…ああクワバラクワバラ
カリキュラム委員会に陪席するが、言葉も内容も新しすぎてさっぱりわからない。
後になって、君はあの委員会には陪席していたから知っているはず、と無能者呼ばわりされる。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
コア・カリキュラムの導入・統合カリキュラムの導入 (その4)
Aさん 「従来のカリキュラム内容の60%〜70%が、コア・カリキュラムの内容らしい」
Bさん 「エツ!減らす?! 医学の進歩で学ぶべき内容が多くなっているので、増やすはずではないのですか?」

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
コア・カリキュラムの導入・統合カリキュラムの導入 (その3)
Aさん 「従来のカリキュラム内容の60%〜70%が、コア・カリキュラムの内容らしい」
Bさん 「そうすると、授業時間が大幅に減りますネ」
Cさん 「ゆとりですネ‥‥ほら、小学校の教育で,流行の‥‥」
Aさん 「いや、それぞれの大学の特色を出すのに使うらしい」
Bさん& Cさん 「エツ!それぞれの大学の特色?、今まで無かったの?!」

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
コア・カリキュラムの導入・統合カリキュラムの導入 (その2)
Aさん 「今後、全国医学部でコア・カリキュラムを導入する事が必要らしい」
Bさん 「それって、義務なの?」
Aさん 「導入しないと、共用試験もできないでしょ!」
Bさん 「じゃ、今までのカリキュラムは、止めるの?」

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務研修議論のための事例集
コア・カリキュラムの導入・統合カリキュラムの導入 (その1)
Aさん 「平成13年3月に、コア・カリキュラムが発表になった」
Bさん 「エツ、あれは統合カリキュラムでしょう!?
Cさん 「統合カリキュラムと、コア・カリキュラムは、違うの?」
Aさん 「???」

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務系職員の支援の必要性 その6
周知徹底を目的に学習会(FD)を開くことはもちろん必要であるが、これだけでは不十分である。なぜなら全員を集めることは不可能。多くの情報を一時に与えても個人の頭に残るのはほんの少し。従って、必要な時に必要な情報のみを流すことが一番効率的である。そのためには、教務の教員と職員が良く話し合い、タイミング良く有益な情報を小出しするのが良い。
岐阜大学では教務構成委員会ニュースとしてA4版1枚の情報誌を学内に頻回に配布した。ここで心がけたことはニュースのタイミングを逃さない、内容は「パッと見」でわかる程簡単に・・・等である。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務系職員の支援の必要性 その5
新しいシステムの導入時には情報の伝達が極めて重要である。旧来のシステムであれば、学生も教員も職員も大抵のことを熟知しているために教授会→教授→教室員、教授会→事務員→学生のような情報の流れで充分に対応できた。
しかし、新しいシステムを教員、学生、事務職員あわせて1,000名を越える集団に周知徹底するためには情報の流れを工夫しないとシステムが機能しない結果となる。
すなわち、全教員、全学生、全職員が新しいシステムを熟知するための情報を流す必要がある。従来の情報の流れでは、医学部の全構成員に必要な情報が流れる保証は全くない。期待できない。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務系職員の支援の必要性 その4
新しいシステムには新しい予算項目が出てくる。一年毎の会計年度に基づく従来方式では思わぬ出費が必要な場合には素早い対応ができない。このような事態が続くと新しいシステムのスタートからしてトラブル続きとなる。臨機応変に対応できる工夫が必要である。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務系職員の支援の必要性 その3
国立大学の事務職員は2-3年で配置換えとなるOすなわち仕事に慣れた頃には次の仕事へ換わってしまう。これでは事務職員は、前任者の仕事を模倣するのが精一杯であり、既知への挑戦はできても、未知への挑戦は困難である。その困難な仕事ができる人材の配置が望まれる。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務系職員の支援の必要性 その2
新しいシステムを熟知する。それに基づいて状況判断をし仕事をこなす。新旧カリキュラムの移行をスムーズにするための移行処置を充分に熟知しておく。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務系職員の支援の必要性 その1
医学教育システムの劇的な改革により教務関係の事務は大幅に変わる。
この教務が円滑に運営されないと学内は大混乱に陥る。いかなる教育システムも万人が賛成しているわけではない。必ず反対する人がいる。導入に伴う混乱があると、新しいシステムそのものに欠陥があるように「それ見たことか」といった非難が始まり、計画が頓挫してしまう。それに伴う「しわ寄せ」は学生に行き、しかも学内には「わだかまりが残るでしょう。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
講義 or not 講義 その(3)
C教授: 私の講義は、そこんじょらの講義とは、わけがちがう。理路整然として熱のこもった講義は、出席を取らんでも、学生は自主的に出てきて熱心に聴いている。 なにもtutorialなど、必要でない。
T教授: はい、先生の講義は、評判がいい事で有名です。
でも、その講義を聴いた学生がポリクリに行った時、「お前ら、基礎で何を習って来たんじゃ!」と言われるのは、なぜでしょうか?
先生のお話は理路整然としているので、学生の頭にはスーツと入ります。
でも結局それは、学生の頭に文章として記録されただけで、実は、かならずしも役に立つ知識ではなかったのです。
いわば、床の間の飾り物のような知識です。ごめんなさい、言い過ぎました。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
講義 or not 講義 その(2)
B教授: tutorialでは1週に1症例のみ勉強する。しかも講義が減りすぎて、今まで教えていた分を全部教える事は無理だ。これでは教育に責任を持てない。
T教授: 先生、今までの講義で、学生の出席率は、どのくらいでした?
B教授: 出席を取らないので、20% ぐらいだ。
T教授: ほかの学生は、どうしていたんでしようか?
B救援: クラブやバイトか、または、下宿で寝ているんだろう。
T教授: そうすると、先生の今までの講義は、大方の学生には無かったに等しいですね。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
講義 or not 講義 その(1)
A教授: Tutorialでは1週に1症例のみ勉強する。しかも講義が減りすぎて、今まで教えていた分を全部教える事は無理だ。これでは教育に責任を持てない。
T教授: 先生、今までの講義で、学生の出席率は、どのくらいでした?
A教授: 出席を取るから、80%は出ていた。
T教授: その学生は、きちんと先生の講義を聴いていましたか?
A教授: いや。学生は居眠りか、ほかの勉強をしていた。 熱心に聴いているのは、一部のみだった。
T教授: そうすると、先生の今までの講義は、大方の学生には無かったに等しいですね。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
医学教育改革がうまくいっている大学
学生を育てる事に喜びを感じる教員が多い。
学ぶことの喜びを学生が感じる教育方法を取りいれている。
円滑な学務事務運営が行われている。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
医学教育改革がうまくいっていない大学 その9
I教授の大学では、教授選の“しこり”が尾を引いている。スキャンダルのマスコミ密告が横行しているらしい。
カリキュラム改革のようなまともな話でも、相手に譲歩を求める案なら、疑心暗鬼になってしまい、言い出せない。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
医学教育改革がうまくいっていない大学 その8
H教授の大学では研究業績が大学の、個人の最大課題である。医学生-の教育は片手間でやっており、お座なりになってしまっている現実を直視している教授は少ない。
多少の後ろめたさを感じているが、最近、医学部内に医学教育の専門部門を作ったのを免罪符にしている。自分達も学生時代、ほったらかしにされて育った。
うちの学生は優秀だから大丈夫と言うが、社会情勢、医学の質と量が激変してしまっている事に気がついていない。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
医学教育改革がうまくいっていない大学 その7
G教授は、某学会では権威とされている。最近の教授会では改革派の教授と、それに反対する教授が激しくやりあっている。
GIO? SBO? コア・カリ? 訳の分からない事で深みにはまりたくないので、「今まで通りの、どこが悪い?」の一点張りで反対する。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
医学教育改革がうまくいっていない大学 その6
F教授は、まだ若い。最近の教授会では改革派の教授と、それに反対する教授が激しくやりあっている。
何を言っているのか、良く分からないので、自分は黙っている。
教授会の間も彼の頭のなかは、実験・論文の事でいっぱいだ。黙っている教授が多く、いつも継続審議で終わる。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
医学教育改革がうまくいっていない大学 その5
E教授の大学には医学教育の大家がいる。
本人は、えらく熱心である。しつこい。医学教育に不熱心な教授の態度をなじるかのような言動さえある。
それゆえ、E教授の言う事が正しいものであるにしろ、皆さんソッポを向いている。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
医学教育改革がうまくいっていない大学 その4
D教授の大学では、教員が学生をバカにしている。
こんな出来の悪い学生は、無理矢理にでも講義に出席させ、とにかく知識を頭に詰め込んで、何回も国試の模擬試験を繰り返して鍛えあげ卒業させる、 これしか方法が無いと信じている。国試に受かってくれさえすれば、父兄は納得するのだ。当然のことながら、医学教育改革には及び腰なので、やっても中途半端に終わり手痛いやけどをしている。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
医学教育改革がうまくいっていない大学 その3
C教授は新しいカリキュラムを立案し、旧カリキュラムと同時平行で実施し、学年進行と共に改革を進めた。
しかし新カリと旧カリの移行が、実際やってみるとトラブル続きで、学内のあちこちから苦情が来た。教授会決定が、末端の教員に伝わっていない。事務職員は、どうして良いのかわからずオロオロ。
なにもC教授は学務の専門家ではなく、たまたま順番でカリキュラム委員長になっただけ。
お気の毒。もうこれ以上の改革は、コリゴリという心境になっている。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
医学教育改革がうまくいっていない大学 その2
B教授の大学では大幅なカリキュラム改革案が、意外にすんなり承認された。
カリキュラム委員長のB教授は、早速個々の教授室を訪ね、新しいカリキュラムの実行を求めたが、「そんなこと無理だ」、「聞いとらん、誰がどこで決めた?!」。
教授会では細かい字がいっぱい書いてある書類をじっくり読む人が少なく、教授の皆さんが良く理解しないまま、ス〜っと通ってしまったらしい。
B教授は、カリキュラム委員長を辞めたがってい る。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
医学教育改革がうまくいっていない大学 その1
A教授は、医学教育改革セミナーに出席するように学部長に言われて、2泊3日のコースに嫌々参加した。
ところが終了時には、医学教育改革の必要性を理解し、それまでの自分の姿勢を恥じるまでに変身していた。
自分の大学に帰り、カリキュラム改革の断行を教務委員会で熱っぽく訴えたが、他の委員はシ〜ラ〜。孤立したA教授は、最近おとなしい。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
教育改革での問答 その3
今までの医学教育は悪かった?

日本の医学校の原型が作られたころには従来の医学教育体制は最適であったはずです。
その後医学の発達、社会の変化に伴って数々の改善がなされて今日に至っています。
しかし、近年の変化はあまりにも大きく、小手先の改革だけでは対応が不十分な状況になっています。
新しい医学の分野の出現に対しては、免疫学、分子生物学、医療情報などの講座新設で対応できます。
しかし、医学の知識の爆発的な増加には従来の知識付加型では限界があります。
知識を詰め込むのは生身の人間の頭です。頭脳を成長させるべき若い人の頭にcapacityを考慮せずに知識を入れたら頭脳が思考能力を失います。
今までの医学教育が悪かったとは一概には言えませんが、そろそろ抜本的な改革を始めてもよい時期のはずです。
改革から結果までには十年単位の時間が必要です。後になってからあの時がTurning pointであったと気が付く場合も有り得ます。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
教育改革での問答 その2
医学部が育てるべきは臨床医か?医学者か?

最高の人材は、臨床をすれば良い臨床医になれるでしょう。
医学研究をしたとしても立派な研究業績をきっと上げます。
医学部は常に最高を目指すべきであり、当初から臨床医養成、医学者養成などのように進路を狭める必要がありません。
しかし、現実にはある時点で、やはり臨床医に向いているとか医学者の方が良いとかの個人的資質による選別があることは確かです。
医学部は学生と教員に常に夢を与え続けるべきです。夢のないところに良い人材は集まりません。良い人材こそ医学部の水準を維持できるのです。夢と、限界に挑戦しましょう。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
教育改革での問答 その1
テユトーリアル教育の目的は臨床医養成ではありません。

テユトーリアル教育で使われるシナリオは臨床の症例であることが多いです。
日本の医学校を卒業する大部分の人は臨床の医師になります。
そのためテユトーリアル教育の目的が臨床医養成であり、 基礎医学者の養成を見捨てたかのような誤解を招いています。
テュトーリアル教育では基礎医学を学ぶきっかけとして症例を使っているだけであ り、学ぶ内容については従来の教育と大差はありません。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
医学教育の改革に向けて その7
岐阜大学の教育改革

モットー飾り物の知識より、使える知識を!
知識の量よりも、問題解決能力を!
キーワード: 小人数、問題解決型、自学自習、能動学習
方法: テュトーリアル、模擬診察、クリニカルクラークシップ

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
医学教育の改革に向けて その6
なぜ変化が遅い医学教育

1) そもそも体制の変化というものは、古今東西遅いのが普通
2) モチベーション不足
    良い物しか見ていない→ 現状だって決して悪くない、なぜ改革が必要?
    より良い物を見たら→ こうしちゃ、居られん。 何とかせねば…

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
医学教育の改革に向けて その5
意識の転換を!

医学上の重要事項
 教官だけが面白い、大事と思っている
 学生は、やらないと留年、だから勉強する
教えなきや覚えない vs. 学生は人間、勝手に成長する
大学が学生に与えるべき3要素
 勉強する場所、勉強の方向、勉強した評価

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
医学教育の改革に向けて その4
優秀な人材の育て方

優秀って? 知識の量? or 問題解決能力?
自分で考え、自分で行動し、自分で責任をとる
良いものを見せる、良いチャンスを与える、正しい評価を与える
何に留意すべき?

時代が激変している。しかも、これから更に。
18-24才の脳思考能力を身につける最後のチャンス

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
医学教育の改革に向けて その3
優秀な人材は

1) 問題解決能力がある
    困耗な問題でも、健全な解決が可能
    だから良い医療が出来る、医学上の貢献もできる
2) 優れた見識を持つ
    だから尊敬を集めることが出来、万事が良い方向に向かう
3) 基礎学力を築いている
    だから時代、国境、専門を超えて活躍できる

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
医学教育の改革に向けて その2
医学部が世の中に送り出すべき人材とは

1) 良い医療が出来る人材
    患者の心がわかる、水準以上の医療技術が提供できる
2) 医学者として医学の進歩に貢献できる人材

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
医学教育の改革に向けて その1
医学部-の外部評価

建物  お金さえあれば何とかなる
設備  お金さえあれば何とかなる
人材  どのような人材を持っているか→ 現世への学問的貢献
     どのような人材を育てているか→ 次世代への貢献
     人材を育てるには、長期にわたる真摯な努力の積み重ねが必要

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
テュトーリアルを受ける学生の皆さんへ:その10
テュトーリアル・システム−3

自分で考え、自分で勉強する癖がついたあなたには、能動学習ができます。
コース・ディレクターが到達目標を具体的に示していますので、 これを自学自習してください。
コア・タイムで鍛えたあなたには、できるはずです。

こうして、あなたは医学の一般的知識を広く学びます。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
テュトーリアルを受ける学生の皆さんへ:その9
テュトーリアル・システム −2

テユトーリアル教育ではQとAを自分で作ります。
(でも、普通の教育では教員がQを作り学生がAを作ります。)
その必要性を認識してから得た知識は、本物です。

こうして、あなたは医学の重要部分の一部だけを深く学びます。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
テュトーリアルを受ける学生の皆さんへ:その8
テュトーリアル・システム −1

コア・タイムでは、何がわからないのか?
何が面白いのか?
考えてください。 議論してください。
そしてQを作ってください。
自習の時間にAを作ってください。

この作業があなたの問題解決能力を鍛えます。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
テュトーリアルを受ける学生の皆さんへ:その7
テユトーリアル教育では、学生の自主性が最大限に尊重されます。
サボり倒して、インスタント知識で試験に合格することは、可能ですも本当に自分自身を鍛えようとしているのか、鍛えていると見せかけて進級しようとしているのか、あなた自身の心の持ちようが問われているのです。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
テュトーリアルを受ける学生の皆さんへ:その6
医学部での勉強は、自分の成長のために、自分の努力で行うものです。たとえば、筋力トレーニング、自分がせず、友人が代理でやってくれても、自分に筋力はつきません。
自明のことです。 学力トレーニング、他人の努力を自分の努力のように見せかけても、自分の成長には結びつかないのです。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
テュトーリアルを受ける学生の皆さんへ:その5
義父の家に伝わる昔話
昔々、あるところに、とっても優しいお爺さんがいました。可愛い孫が1ケ月の旅に出るので、1ケ月分の食料を持たせて送り出しました。孫は食料が重過ぎて、途中で歩けなくなり、その食料も腐ってしまいました。
昔々、あるところに、とっても厳しいお爺さんがいました。可愛い孫が1ケ月の旅に出るというのに、1〜2日分の食料しか持たせませんでした。でも森や川から食料を取る方法も教えていたので、孫は無事に旅を終えました。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
テュトーリアルを受ける学生の皆さんへ:その4
テユトーリアル・システムによる能動学習
大事なのは自分で疑問を持ち、自分で勉強する態度グループ学習への積極的な参加自分の考えを、他人に伝える言語能力大事でないのは、ただ単に身にくっついているだけの知識スプーンフィーディングは終わりました。自分が食べるものは自分で調達してください。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
アドレナリン
アドレナリンは副腎髄質より分泌されるホルモンであり、心拍数や血圧を上げ、瞳孔を開き血糖値を上げる作用などがあり、ストレス反応の中心的役割を果たすといわれる。
アドレナリンは医薬品として、心停止時、アナフィラキシーショックや敗血症に対する血管収縮薬や、気管支喘息発作時の気管支拡張薬として用いられる。
エピネフリンは米語名で、アドレナリンと同一物質である。1901年(明治34)高峰譲吉と助手の上中啓三がウシの副腎から世界で初めて結晶化に成功している。日本では興奮するという意味でかなり一般的に使用される。
 
back もどる 
テュトーリアルを受ける学生の皆さんへ:その3
自習の時間
コア・タイムの議論であなたの頭の中は、疑問でいっぱいになりました。
さあ、教科書を読んでください。図書館で文献を検索してください。それでも分からないことがあれば、教官に聞いてください。疑問氷解・・・・ 快い達成感
おめでとう !
あなたが得た知識は、使い物になる知識です。単に、記憶しているだけの知識ではありません。けっして分担学習をしないで下さい。岐阜大学医学部は、学生一人一人が一人前になる事を望んでいます。
グループ学習の時間 自分で勉強してきたことをグループの中で発表をしましょう。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
テュトーリアルを受ける学生の皆さんへ:その2
コア・タイム
まず(症例の)シナリオが渡されます。シナリオを読み、何を解決すべきか?そのためには何を知るべきか?グループで議論してください。
なに!?  知識が無くて議論できないって?
現有の知識で、「何が分からないか?」 を皆で議論するのです。知識があれば、知識の見せびらかしで終わってしまいます.疑問を持つ事、これが大切なのです。 全員の積極的な参加が必要です。あなたは、期待されています。活発な議論で、疑問と興味が、次々に、末広がりに・・・・
コア・タイムに教科書を読む必要はありません。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
テュトーリアルを受ける学生の皆さんへ:その1
テュトーリアル ???
学生が主人公の学習方法です。大学は、学生が勉強する場を提供します。勉強する方向を示します。勉強するのは、学生自身です。区切りがついたところで、大学は学生の評価をします。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
学生への訓示:学生に知っておいてほしいこと その7
もがき苦しむ、寝食忘れて没頭するこれがあなたを成長させる舞台そして、人生で一番美しい時代
(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
第四の発達障害
最近、「第4の発達障害」なる概念が話題となっている。
虐待された子どもたちは心だけでなく、脳の発達にも障害が生じ、その結果、自閉症などと極めて似た症状や問題行動が発現するとの説である。
発達障害の分類に関して、その第一を精神遅滞・肢体不自由などの古典的発達障害、第二を自閉症症候群、第三を学習障害・注意欠陥多動性障害などのいわゆる軽度発達障害と定義するなら、虐待による発達障害は、これらに加わる新たなものである。これが”第4の発達障害”とも称される所以である。この方面の教育は、精神科、小児科などで扱われるが、患児に最初に接する機会のある初等教育の教員や、カウンセラーなどが知っておきたい概念である。
詳細は「子ども虐待という第四の発達障害(杉山登志郎著)」を参照されたい。
 
back もどる 
LD:学習障害 (Learning Disabilities/Learning Disorders)
文部科学省の定義(1999)では「学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。ここで言う学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定される。視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない」である。
学習障害はもともとは医学で問題にされてきたものが、学校教育における課題として広く理解されるようになってきた。教育現場における個々への対応は十分に配慮されるべきことであるが、中枢神経系の高次機能の障害としての医学との関連も欠かせない。
LDの和訳として、学習障害は適切ではないという意見があり、言語のまま "LD" と表記することが多い。
 
back もどる 
ADHD (Attention Deficit Hyperactivity Disorders)
精神年齢に比して集中力が持続できず、注意が散漫になり、 絶えず落ち着かず動き回るといった多動性、不注意、衝動性を症状の特徴とする行動障害で、発達障害の一つである。注意欠陥多動性障害のこと。小学生の3〜5%にみられ、4〜9:1で男児に多くみられる。行動抑制の欠陥から生じる実行機能の障害である。LD(学習障害)、不器用さ、言語障害などの発達上の問題や、不安障害や気分障害などを併せ持つことも多い。
落ち着いて取り組むことが困難なため、失敗体験も累積し、周囲からの叱責や非難が多くなるため、自信や意欲をなくし、自己評価を低くしてしまうこともある。周囲が理解し、環境調整や行動コントロールをすることが必要となる。
 
back もどる 
自閉症 Autism
他者とのコミュニケーション能力の発達が遅滞する発達障害の一種である。
社会的な相互交渉の質的な障害、コミュニケーション機能の質的な障害、活動と興味の範囲の著しい限局性 の3つを主な特徴(ウイングの三つ組み)とする。
知的障害については、伴うものから伴わないもの(高機能自閉症)まで幅広い。
自閉症は3歳以前から何らかの症状があらわれるが、3歳頃から症状が現れるといわれるアスペルガー症候群とこの点で診断上区別される。
最近では自閉症やアスペルガー症候群などの広汎性発達障害は、個々の独立したものというよりも広く連続したものという捉えかたから、自閉症スペクトラム(スペクトル)とも呼ばれる。
医学生が医学部で習うのは、定型発達(いわゆる正常な発達)の人が病気になる症例が主であり、実習などの臨床現場で自閉症の方たちと初めて出会ったときは、どう接したらいいのかなどコミュニケーションの取り方について戸惑いが大きい。
 
back もどる 
アスペルガー症候群 Asperger syndrome
精神領域における広汎性発達障害の一種である。
対人関係やこだわり行動といった問題を抱えるが、言語発達や知能にはほとんど問題が見られない。また運動機能の軽度な障害(手先の不器用さ、ぎこちない動作など)が認められる場合もある。知的に遅れのない高機能自閉症とほぼ同じである。
1944年にオーストリアの小児科医師のハンス・アスペルガー教授の報告が始まりであるが、世界的に認知されるようになったのは1980年代になってからである。 振り返って見ると歴史上、天才として名を残している数多くの著名人がアスペルガー症候群だったとも考えられる。
いわゆる難関といわれる大学の学生や職員にも、アスペルガー症候群とも思われるケースがみられるといわれている。アスペルガー症候群の特性が入学試験での学力や、研究業務において有利に働いていると思われる。しかし対人関係やこだわりといった問題は、日常の生活や業務において仲間や同僚とのコミュニケーションに問題を起すことも考えられる。
 
back もどる 
学生への訓示:学生に知っておいてほしいこと その6
生涯学習の時代です
生涯学習の時代です。
科学は爆発的な発展を遂げています。専門家に必要とされる能力は、時々刻々変わります。学生時代に習った知識を元金にその利子で暮らせる時代は過ぎ去りました。働きながら勉強を続ける事が必要です。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
学生への訓示:学生に知っておいてほしいこと その5
変化に対応できる能力を
教えてもらった知識だけで世の中を渡っていけません。世の中が激変します。そしてあなたの置かれた状況も変わります。その変化を認識できる観察力、どう反応すべきかの判断力、さらに決断力と実行力を身につける必要があります。これが、求められている人材なのです。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
学生への訓示:学生に知っておいてほしいこと その4
思考能力の開発を-2
実戦で鍛えた能力こそが、本当に役に立つ能力です。医療の場合、いきなり実戦・・・させてもらえません。ですから医学生はシュミレイションで鍛えることになります。テュトーリアルは、一種のシュミレイションによる訓練です。「自分がその場に置かれたら、どうする」を真剣に考えて勉強する必要があります。緊張感がなくなった防災訓練にしてはいけません。
(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
学生への訓示:学生に知っておいてほしいこと その3
思考能力の開発を-1
実務能力のある人間は、単なる記憶マシーンではありません。思考によって、問題を解決できる人間です。思考能力は鍛えることによって得られます。体力と同じです。本人が苦しんで初めて得られる能力です。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
学生への訓示-学生に知っておいてほしいこと その2
「記憶しているだけの知識」と「使える知識」の差
もがき、苦しみ、考え抜いた結果得た知識は、使える知識として長期間頭に残ります。試験勉強用に覚えた知識は、日本語(英語でもよい)として記憶されているだけです。2年以内に忘却される運命にあります。かつ、このような記憶の値打ちはIT革命の現代にあっては、価値を失いつつあります。受動的な勉強で得た知識と、能動的学習で得た知識とでは、大きな差があります。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
学生への訓示-学生に知っておいてほしいこと その1
「知っている」と「できる」は別物
医師も医学者も実務の専門家です。「知っている」だけでは駄目です。専門家は、「できる」事が求められているのです。これが、単なる評論家や博学と異なる点です。 講堂で聞いた知識で医療ができるほど、世の中甘くありません。自動車学校で「頭では分かっているんだけど、手や足が思うように動かない」を経験しているはずです。
(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
剽窃、盗作、盗用 (Plagiarism) その3
ニューヨーク大学の Resource Guide for NYU International Students "Plagiarism"には、剽窃にあたる行為を例示しています。引用を明示せず、他人の著作物(レポート、コンピューターソフト、コンテンツ、実験結果など)を、あたかも自分の著作物のように発表する行為のほか、共同で行った仕事を、あたかも自分ひとりで行ったように発表するのも剽窃行為です。同じレポートを、その事実を告げないまま複数のコースに提出するのも、問題のある行為です。
著作の仕事は、大学に入学してから本格的に始まります。それゆえ、「学生は学術分野におけるルールを身に着けていない」と想定し、あらゆる機会に啓蒙の必要があります。
 
back もどる 
剽窃、盗作、盗用 (Plagiarism) その2
個人の意見に対する尊厳の重要性が認識される時代となりました。特にアメリカでは、個人の意見は、従来の価値観による所有物と同様、最初に述べた人が所有すると考えられ始めています。それゆえ、他人の意見を承認なしに自分の意見のように発表することは、学術上の品行方正さに欠く行為、剽窃とみなされます。
現実には、自分の文章の中に他人の意見を入れる事はしばしば必要で、禁止されているわけではありません。このときに、どこから引用したか原典を明記し、最初の意見発表者の所有権に敬意を払うべきなのです。
レポート書きは、大学の教育に必須ですが、無断引用を「学生のやることだから・・・」と、大目に見るのではなく、学生のうちから、厳格な引用の癖をつけさせる教育をすべき時代に突入しています。
 
back もどる 
剽窃、盗作、盗用 (Plagiarism) その1
「剽窃」とは、他人の作品・学説などを自分のものとして発表することをいう。盗作、盗用の類義語である。流行歌、商業出版などでは厳しい著作権が認識されているが、学術・学習上における「剽窃」は、日本では曖昧にされがちな行為である。
しかしアメリカでは非常に厳しく扱われ、犯罪行為としてみなされ、今後、世界的に認知される考えになると予想されるため、学生のうちからこの概念を良く理解して、剽窃と見なされる行為を行わないよう、十分気をつけなければならない。
 
back もどる 
事務系職員のブラッシュアップ その6
・再度聞きたい、学務事務職員はどうしたらいいの?
新しい医学教育の根本概念を学んでください。医学用語を覚えて下さい。
それをするのは、他ならぬあなたです。ブラッシュアップ!
ブラッシュアップできたら、教務委員会の決定を実行するための事務作業を立案する。立案に際しては、先進校の事例をヒントにする。
新しい事務手順を事務員・教員、学生の全員に周知徹底する。その時、分厚いマニュアルの配布は無駄である。やってみて、反省、改善。学生にモルモットであるかのような感じを与えては、いけない。
成功のそこに流れているのは、熱意だけである。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務系職員のブラッシュアップ その5
・臨床実習は?
従来のポリクリ(小グループの学生が臨床の科をまわりつつ実習を受ける)は見学型の実習が大部分であった。
これを学生が医療の一員としてチームに参加しつつ実習をする形(クリニカル・クラークシップ)に変える。
学生の各カルテは本物のカルテとして使用される。学生は実際の医行為を行う。当然医師の監視下に行うが、合法であるべきである。従って、大学が資格ありと認定した学生のみが実習に参加できる。
→共用試験、OSCE

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務系職員のブラッシュアップ その4
・内容の厳選
医師として本当に必要な内容だけに絞り込んで医学部で教育し、あとは生涯教育を通じて自分で成長するような基礎を学生時代に作る。
医学の内容で何が本当に必要かの選択にあたっては、技能、実務などを中心とした見方でまとめた概念で記載する。
→コア・カリキュラム、統合カリキュラム

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務系職員のブラッシュアップ その3
・ではどのように教育するの?
「専門家として直面する問題を解決できれば良し」と考える。
「知っていること」と「できること」は別。知っていなくても機に臨んで自分で調べて問題解決ができればOK。専門家として必要な知識は、その作業を通じて身につく。
それ故、出来上がった知識を学生の頭に移植するよりも、むしろ学生の頭の中に知識が自生するような教育の方法を採用する。それにはテュトーリアル教育や、クリニカル・クラークシップのような学生参加型教育を採用する。
 
back もどる 
児童虐待 (child abuse)
児童虐待とは、日本では「児童虐待の防止等に関する法律」(平成12年法律第82号)において、「保護者がその監護する児童に対し、次に掲げる行為をすること」と定義されている(第2条)が、これによると、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト(教育放棄)、心理的虐待、がその具体例として挙げられている。
法律用語の定義として、保護者とは、親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。児童とは、18歳に満たない者をいう。
患児が児童虐待を受けているか否か、医師が判断するのは、典型例を除き、困難である。
また典型例であっても、親権を主張されたとき、どこまで踏み込めるか、その場の判断も困難である。医療が医療職の範囲を超えてしまう例に、何が適切な対処となるのか、6年間の医学教育で教えきれる範囲ではない。
 
back もどる 
ネグレクト  (neglect)
ネグレクトとは、本来英語で「怠慢・無視・放置」の意味。
日本では主に、養育者による子供や高齢者・病人などに対する不適切な保護や養育のことを言う。 児童虐待、高齢者虐待のひとつ。著しい減食、長時間の放置、体罰などの虐待をさすことが多いが、子供に十分な医療を受けさせないこと、配偶者などからの虐待を見てみぬ振りすること、さらには甘やかしすぎなどの育児の責任放棄などもネグレクトにあたろう。
医学生はこの現代的な社会病理を、医学教育の正式カリキュラムの中で体系的に学ぶことなく卒業し、医師となる。
臨床実習の最中に、症例によっては患者の社会的背景を学ぶ機会も有るが、多くのの新卒医師は実際の診療に際して患者、および患家の悲惨な状況を知り、愕然となる。
 
back もどる 
事務系職員のブラッシュアップ その2
・では質問、なぜ医学教育改革?
日本の医学部では、講座毎の履修を積み上げ、それをもって卒業させていた。この体制は明治に作られ、昭和中期までは有効であった。しかし、その後の医学の進歩は大きく、この体制の修正、延長では良好な医学教育が困難となった。
・講座単位による教育では、なぜ困難?
ひとつひとつの学問が大きくなりすぎた。従って、ひとりの医学生にいままでと同じ数の履修を要求するには無理がある。
それだけの知識を無理やり積み込めば、学生の思考能力を開発できない。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
事務系職員のブラッシュアップ その1
・今何が起こっているの?
急激な医学教育改革が進んでいる。旧来の知識が無用、時には邪魔になってしまうほどの変化である。
・学務事務職員はどうしたら良いの?
医学教育の改革と実行を支えるべき学務職員の技能が追いつかず、現場の混乱がある。新しい医学教育にマッチした事務実務のノウハウの開発と蓄えが必要。

(高橋優三著 医学教育あれこれより)
 
back もどる 
医行為
医行為の定義は、簡単な様でいて簡単ではない。このため、境界例については、裁判で争われることが多く、医師法17条「医業」の解釈として、「医行為とは医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為」、などという分かりにくい判例が出てくる。
これを噛み砕いて言うと、医師が患者の健康を回復し、維持するために患者に行う、診察・検査・処置・治療・指導など全ての行為を指す。したがって医行為は医師もしくはその行為に関する免許を与えられた有資格者のみが行うことができ、無資格者が医行為を行う場合には、有資格者の監督下行うことができる。
ここに、医学生の臨床実習の現況が問題として出てkuる。 なお、医行為と医療行為との異同については、解釈が一定していない。
(→学生における医行為に関しては”水準I 水準II 水準III”を参照)
 
back もどる 
医原性疾患
医療行為によって起こる疾患のこと。医原病とも言う。患者は病気、怪我などを治療に医療機関へ行くが、そこでの医行為が原因となり、新たに生じた疾患である。おもな原因は、不適切な薬物治療、手術、検査などである。
従来の医学教育では、医原性疾患は、各臨床科で各疾患毎に、注意点として教えられて来た。最近は、薬害事故などが社会的な問題となり、独立して教える時間が確保されているカリキュラムが見られるようになった。
 
back もどる 
医療事故 Medical accident
医療事故とは、医療提供側の過失の有無に関係なく、医療において生じた事故すべての事象をさす。医療事故になる可能性があったが、結果的に至らなかったものは「ヒヤリ・ハット、Medical incident」と呼ばれる。
従来、医学教育における医療事故における系統的なカリキュラムは、ほとんど実施されていなかった。ほぼ各講座任せであった。近年の医療事故に対する社会の厳しい批判に答える形で、医療事故防止に関する教育が統合的に行われ始め、先進的な大学では実習を取り入れた試みが進行中である。
 
back もどる 
医薬分業
医師が患者に薬を投与するには、まず診療し、処方箋を書くが、患者はその医療機関から薬を受け取ることも可能であるし、外部の調剤薬局に処方箋を持ち込み、薬を購入することも可能である。後者の場合を、医薬分業と呼ぶ。
医療業務の中では基本的には与薬に関して医師と薬剤師の役割分担が決められている。したがって、大学病院などで医師の処方箋に基づき同じ病院内の薬剤部で薬を患者に渡すことも医薬分業とも言えなくはない。しかし近年推奨されている医薬分業とは、医師が発行する処方箋をもとに病院外の薬局で調剤される厳密な意味の方である。
なお、薬学部が6年生になるにあたり、臨床薬剤の実習カリキュラムの充実が図られている。そのため期間病院では、薬学生の実習受け入れの態勢を整えつつある。
 
back もどる 
一次医療
医院、診療所などにおけるプライマリケアなどを指す。プライマリケアとは、国民の健康や福祉に関わるあらゆる問題を、総合的に解決して行おうとする地域での実践活動のことであり、日本プライマリ・ケア学会では「国民のあらゆる健康、疾病に対し、総合的・継続的に、そして全人的に対応する地域の政策と機能」としている。なお地域の中核病院における医療を二次医療、大学病院などで提供する医療を三次医療と呼んでいる。
大学病院や中核病院などでの臨床実習で、一次医療を実体験させることは困難である。一部のカリキュラムでは、開業医などの施設に医学生を実習に出している。
 
back もどる 
安楽死
安楽死とは、耐え難い苦痛を訴えている患者に対して、第三者が同情し、患者を「死なせる行為」や「死に方」をさす。「薬を投与して死なせる」積極的安楽死、「治療を行わず死ぬに任せる」消極的安楽死がある。尊厳死と混同しがちであるが、異なる。
人生観や法律、医療技術水準などを総合的に考え合わせる必要があるため、医学生の倫理教育に、多用されているテーマである。
 
back もどる 
尊厳死
尊厳死とは、人が「不治かつ末期」になった時に、自分の意思で延命治療を中止し、安らかに、人間らしい死をとげること。医療の発達により、回復の見込みの無い患者に対する延命技術(心臓マッサージ、人工呼吸、高カロリー輸液など)が進歩し、ただ「生かされている」だけの状態となってしまうことが多くなった。これらの延命だけの治療を中止し、人間としての尊厳を保たせながら死を迎えてもらうことを望む人が多くなった。
医師は患者の命の選択に立ち会う機会が多いため、医学教育でも低学年のうちから積極的に取り上げている学習テーマである。
 
back もどる 
アルゴリズム algorithm
問題解決の手順のことであり、数学用語で言う算法(さんぽう)のこと。医学教育の議論でもよく流用され、出てくる言葉である。「・・・の問題解決の手順で・・・」と言えば、かなりわかりやすい日本語であるが、「・・・のアルゴリズムで・・・」と口から、つい出してしまう人々がいる。なお、相撲や碁、将棋の世界の用語も日常の言葉に流用、多用されている。たとえば黒星、布石、成金などは、すでに市民権を得ているが、アルゴリズムはどうなるのでしょうか?
 
back もどる 
RA Research Assistant
研究補助業務を行う職種。正式の研究職に就けないが研究を続けたい人や、現役の大学院学生などが、このリサーチ・アシスタントになる。大学院博士課程に在籍する学生は、学生の身分でありながら研究者と同じ仕事をしている面が否定できない。このため、アメリカでは、学生が在籍する研究科に所属しながら特定の研究課題又はテーマに研究補助者として参画することが広く行われている。一種の奨学金の意味もある。日本でもこの制度が輸入され、研究活動の効果的推進、若手研究者としての研究遂行能力の育成に役立っている。各大学により、就業可能期間・賃金などが定められる。なお、日本の大学の教員である「助手」は、英訳でassistantと訳される場合があり、これではResearch Assistant、Teaching Assistant、lab technicianなどと誤解される恐れがある。→Teaching Assistant (TA)
 
back もどる 
デイサージェリー
比較的簡単な手術を、日帰りもしくは1泊の滞在で行うこと。外来手術とも言う。患者にとっては経費負担の軽減、早期の社会復帰、院内感染の危険性が減るなどのメリットが、 また病院側には病棟のベッド回転率が上がる、 外来患者数の増加が期待できるなどのメリットがある。医療費全体の減額につながることも期待でき、アメリカではデイサージェリー手術が急速に普及しつつある。日本でも、今後の増加が予想されている。
従来、日本の医学部の附属病院が教育病院として機能するためのベッド数は600床とされていた。デイサージェリーの普及により、さらにベッド数が少ない病院でも、教育病院として機能するかもしれない。
 
back もどる 
デイケア
高齢者や身体障害者などを昼間だけ施設に預かり、専門職員が介護するサービス。広義には要介護者がデイサービスセンター等に通い、入浴・食事の提供とその介護、生活等についての相談・助言、健康状態確認等の日常生活の世話と機能訓練を行うデイサービス(通所介護)と同義である。日中に患者の自宅を訪問し、医療や介護を行う意味でも使用される。
デイケア施設は、医学部の新入生に対するアーリーエクスポージャーのプログラムに組み入れられることが多い。
 
back もどる 
TA Teaching assistant
アメリカでは、比較的古くから大学院(修士課程・博士課程)に在籍する学生が、学部学生等の教育(講義・実習・演習など)で、教員の補助業務を行っていた。このような臨時の職種をTA Teaching assistantと呼ぶ。これにより少ない教員で大学教育の充実を図れる。同時に学生に教育訓練の機会を提供し、将来の大学教員としての資質を向上させることも目的としている。また手当てが支給されるので、学生の経済的支援を行う側面もある。
日本の医学部では、助手の数が多いため、TAの制度はなじみにくかったが、1992年から予算措置が講じられた。
 
back もどる 
地域医療
地域医療が強調される時代を迎えている。地域医療の定義は、議論が多いが、その地域住民の健康を守る第一線の医療ともいえる。都会の地域医療では医師の極度の専門化が問題となり、僻地の地域医療では、そもそもの担い手の医師不足が問題となっている。
医学教育のカリキュラムで、地域医療の講義を入れたり、地域医療の病院に実習に出したりするが、僻地の医師不足は解消が難しい。また総合診療部をつくり、幅広い疾患の患者を全人的に診れる医師の養成を目指している。
 
back もどる 
中間テスト
文字通り、プレテストと期末テストの間に行うのが中間テストである。
一般に試験は結果の使用目的により、総括的試験と形成的試験に分類される。前者は成績によって受験者に対する処置を伴う試験であり、入学試験、資格試験などが該当する。一方後者は試験結果を受験者や教員にフィードバックすることにより、学習法・教授法を修正することを目的とし、その結果は学生の当落といった処置には反映させない。
中間試験の主目的は、もともと形成的評価のはずであるが、現実には総括的な要素が加わる場合が多い。
 
back もどる 
チーム医療の法的側面
医療の高度化により、一人の医師が、患者に適切な医療のすべてを理解し、習熟した技術で、24時間体制で実施することが困難になった。この意味でチーム医療は、患者のニーズの実現に合致しているが、医療行為の役割分担について、現場の変化が早すぎて、必ずしも法的な制度面での整備が追いついている訳ではない。個々の事例に関しては、専門家の判断が分かれる場合が多い。日本の医学部のカリキュラムでは、医療の法的責任を体系立って教育しているのではなく、断片的な事例教育に終わっている。
 
back もどる 
チーム医療U
従来、医療を行うのは単独の医師であるという考え方が強かったが、現在では医療は複数の医師、および看護師、臨床検査技師、理学療法士、薬剤師等など医療関連職種のチームワークによって推進される状況に至った。
医学教育もこの状況に合わせたものにすべきであるが、医学が膨大になりすぎて、チーム医療の教育に割ける時間が限られており、実効を上げるのはやさしいことではない。また医学生自身は、現場での経験不足のため、チーム医療の重要性を在学中に実感するのが困難である。
 
back もどる 
単位制
大学でいう「単位」とは一定の学習量を意味している。学習時間(コマ数)を基準にし、例えば講義、演習、実習はそれぞれ15、30、45時間を1単位としている。医学部卒業のための必要取得単位数は188単位である。
最近テュトーリアルシステムを導入する医学部が増えたが、これにあたっては単位制への読み替えが必要である。
 
back もどる 
トリアージの方法
日本ではトリアージにSTART法を採用している。
これはSimple Triage And Rapid Treatmentの略であり、米国で考案された。
血圧計などの医療機器がなくとも行える簡便な方法として普及し、アメリカ同時多発テロの際にもSTART法でトリアージが行われた。
ちなみにイギリスでは”Triage Sieve”法であり、それがイギリス周辺国に広まり、今ではNATOでの標準トリアージ法となっているようである。
また、オーストラリアのトリアージはCareflight Triage法が使われている。
 
back もどる 
トリアージ・タッグ
トリアージタッグは患者情報記載欄の下に黒・赤・黄・緑の順に色別されており、トリアージ区分に基づき、ミシン眼で切り離せるようになっている。
トリアージ実施責任者が、トリアージタッグに必要事項を記入し、適当な切り取り線で切り取り、当該患者につける。
トリアージタッグは、原則として、右手首関節部につけるが、その部分が負傷している場合は、左手首関節部、右足関節部、左足関節部あるいは首の順でつける部位を変える。
このトリアージ・タッグは簡易カルテとして利用することも可能であり、また受け入れ患者数や傷病程度別の患者数をより的確に把握することも可能となる。
日本では平成7年の阪神・淡路大震災を契機にトリアージが注目され、平成8年に全国に統一規格のタッグが整備された。
 
back もどる 
トリアージの区分
傷病の緊急度や重症度に応じ、以下の4段階に分類する。

第1順位 最優先治療群(重症群) タッグの色:赤色(T)
直ちに処置を必要とするもの(救命可能なもの)。
窒息、多量の出血,ショックの危険のあるものなど。

第2順位 待機的治療群(中等症群) タッグの色:黄色(U)
多少治療の時間が遅れても、生命に危険がないもの。
基本的には,バイタルサインが安定しているものなど。

第3順位 保留群(軽症群) タッグの色:緑色(V)
上記以外の軽易な傷病で、ほとんど専門医の治療を必要としないものなど。

第4順位 死亡群 タッグの色:黒色(0)
既に死亡している者又は直ちに処置を行っても明らかに救命が不可能なものなど。
 
back もどる 
「医学教育を変えた報告書」シリーズ フレキシナー・レポートAの下
そして第三に現在に近い形での医学教育体制・制度を作り出したことで、それまでの医学校への進学方法を統一して、ハイスクール卒業後カレッジに行き、その卒業後に4年間医学校に行くようなシステムを確立することになった。
また、病院実習を中心とした臨床実習についても強調されるようになった。"
 
back もどる 
「医学教育を変えた報告書」シリーズ フレキシナー・レポートAの中
第二には医学に対して科学的な医学観を導入し、医学教育もそれに合わせて科学的なものへと変えていったことであり、これがフレキシナー・レポートの一番重要な特徴であるといわれている。「医学教育は徒弟教育ではない、技術者ではなく科学者を養成するものである」といった考えを生みだしたのがフレキシナー・レポートなのである。
 
back もどる 
「医学教育を変えた報告書」シリーズ フレキシナー・レポートAの上 
フレキシナー・レポートの特徴は三つある。第一は営利的な医学校経営や医師の粗製乱造に対して、医学校の設置規準をかなり厳しく定めたことにある。このため多くの医学校が規準に至らずに廃校に追い込まれ、医学史家のアッカークネヒトによると19世紀には400校近くもあった医学校が、フレキシナー後の1930年代には、何と76校にまで減ってしまっていた。そして残った医学校には、しっかりとした財政的保障を与えてその質を向上させていったのである。
 
back もどる 
「医学教育を変えた報告書」シリーズ フレキシナー・レポート@
現在の日本の医学教育に影響を与えた世界と日本の報告書類を順番に紹介していきます。
第一弾はフレキシナーレポートです。
フレキシナー・レポート@
1910年にアメリカで出された「フレキシナー・レポート」は、現在の医学教育の基本的な原型を作ったもと言われている。元来自由主義的な伝統が強く国家による規制や制限を極端に嫌うアメリカでは、この当時は特にその傾向が強く、医師の免許制度や国家試験までもが民主主義に反する規制だということで攻撃の対象となって教育システムも学校によりバラバラな一種の無政府状態であった。
そのため色々な流派の医学校が乱立し、それらが各々勝手に営利主義的な動機のもとに、医師の粗製乱造を行っていた。結果的には医師・医療・医学教育に対する評判はかなり悪化することになり、医学教育に対する国家規制は医療レベルの向上のためには止むをえないということでフレキシナー・レポートが出てきたのである。
 
back もどる 
トリアージ triage
選別、分類、整理を意味するフランス語(トリアージュ)。
医療においては、戦争、大事故、大規模災害などの際、多数の傷病者が発生した場合、救命救急活動の対象とすべき負傷者を重症度と緊急性により選別することの意味で用いられる。生存、回復の見込みが大きい負傷者を優先的に扱うためにランク付け(トリアージの区分)して選択する。災害時医療などにおいては人的、物的医療資源が不足するため、その有効利用を図るためのやむをえない措置。
この際、ランク付けが終了すると「トリアージ・タッグ」という識別表を患者さんの体に取り付ける。(原則として右手首関節部)トリアージ(Triage)は、治療(Treatment)、搬送(Transport)とともに、災害時医療で最も重要な3つの要素(3T)の一つである。
 
back もどる 
ターミナルケアー Terminal care
抗癌療法の効果が期待できないがん患者など、死が間近い末期患者への医療行為(終末期医療)のこと。
疾病の根治的治療を目的とするよりも、むしろ患者のquality of life(QOL)を高めるため、身体的苦痛 (痛み、吐き気、呼吸困難、便秘など)、精神的症状(不安、苛立ちなど)などを取り除くことを主眼にしている場合が多い。
医師は患者本人のみならず、家族のケアーにも注意を払わねばならず、他の医療スタッフとの良好なコミュニケーションも要求される。このような能力育成が求められても、従来の医科学中心の医学カリキュラムでは対応できない。このため最近の新しいカリキュラムでは、医学部の入学直後や、卒業前などにターミナルケアー考えさせたり、学ばせる機会を組み込む場合が多い。
 
back もどる 
タスクフォース Task force
事例シナリオに基づく討論では、学生の関心は今まさに目の前にある症状や治療といった臨床上の問題に向きがちで、その事例の中に存在する社会的、対人関係的問題については学生の社会経験の乏しさからもなかなか想像し得ずに不十分な議論に終わってしまいがちである。
特にハワイ大学方式のPBLのように臨床データが豊富にフルに提供されるような場合は、どうしても学生の関心は豊富なデータを使った疾病の診断、治療面に向かってしまいやすく、看護や福祉などで重視される全人的(holistic)な見方からの議論や問題抽出が欠落してしまうことが起きがちである。
その点、IBLではGuiding Questionがあるため、学生の議論の方向性を社会的、対人関係的問題の方にも確実に向けることが出来るというのが、看護学部でIBLが導入されていることのもう一つの理由であるとされている。
 
back もどる 
代替医療 Alternative medicine
現代社会は、西洋医学が主流である。これ以外の医療のことを、西洋医学者は代替医療と呼んでいる。補完医療、相補医療(Complementary medicine)とも呼ばれている。
いずれにせよ西洋医学を中心にした命名であるが、具体的には中国の漢方薬や鍼灸、日本の指圧や柔道整復、マッサージ、カイロプラクティックなどを示す。
最近、この代替医療がアメリカやヨーロッパ諸国で注目を浴びるようになったが、これは、西洋医学の限界を西洋医学者が感じているからである。日本では、漢方医学、東洋医学として医学部の正式カリキュラムに取り入れている大学が増えつつある。
 
back もどる 
医療面接 (medical interview、health care interview)
医師と患者は病気について、話を聞いたり、説明をしたりする。これを日本語で何と表現するか? これほど重要な事を表現する適切な用語が、見当たらない。英語圏にはmedical interviewなる言葉があったせいか、最近、専門用語で、医療面接という言葉が使われ始めた。かつて臨床の現場では、ムンテラなるドイツ語崩れの表現を隠語的に使っている場合があった。
患者ー医師間の医療面接は、患者の全体像を把握するために重要であり、また医師は患者だけでなく、医療従事者からの適切な情報交換も必要なので、医師の医療面接技法の向上が声高に叫ばれる時代になった。
その訓練として、標準模擬患者(SP;Standardized patient、Simulated patient)の協力を得つつ、医療面接の教育が医学部のカリキュラムの中で行われるようになった。また実技試験であるOSCEでも医療面接は、重要なステーションのひとつである。
 
back もどる 
IBL (9)
IBLとPBLとの違いのところで示された、PBLと比べてIBLは本当に少ない教育資源ですむのか、PBLは医学生など優れた学習者でなければ出来ないのか、PBLでは社会的、対人関係的問題が扱えないのか、チュートリアルを統合カリキュラムの中でなく通常カリキュラムの中で実施したり、複数のチュートリアルを並行したりして本当に学習効果が上がるのかといった問題、あるいはそもそもGuiding Questionを用いて効率よく学習課題を抽出させることが本当に学生の問題解決能力の養成に役立つのかといった問題は、今後、学問的に検証されることが必要であり、簡単にIBLとPBLを同等の成人学習理論に基づいた学習者参加型学習方法として並列的に扱ってしまっていいかについては議論の余地があるだろう。
しかし、一方でIBLの方が既成カリキュラムからの転換が少なくて済むため導入が容易であることも事実で、PBLとして中途半端な面もあるものの、今後のPBLチュートリアルという教育法の改良を考えるうえでも学ぶべき面が多いのかもしれない。
 
back もどる 
IBL (8)
「看護におけるIBL」という本を書いているCleverlyは、PBLは症例についてのすべての知識や診断がそろわないと解決に至らないという側面が強く、とりあえず手元にあるものからケアを始めなければいけない実践の現場との乖離が大きいと著書の中で述べている。
一方、IBLは半日単位でコアタイムを3〜4シナリオまとめて行い、その方が実際のケア現場に近いので看護教育に向いているというのだ(Dankay Cleverly ”Implementing Inquiry-Based Learning in Nursing” Routledge2003)。確かにそういう側面もないわけではないだろうが、PBLがすべて知識や診断がそろわないと解決に至らず、IBLの方がとりあえず手元にあるものから始める実践の現場に近いというのは少し極論のような気がする。そもそも、IBLとPBLとの違いのところで述べたPBLは臨床問題指向的、IBLは社会的、対人関係的問題指向的という対比も含めて、IBLを世界の看護系教育に向けて積極的に発信しているセンターであるハワイ大学看護学部からみた、ハワイ大学医学部のPBLのやり方に起因する問題と考えた方が良いのではないかと思えてくる。
PBL発祥の地であるマックマスター方式と比較しても、ハワイ大学方式のPBLのように臨床データを実際の症例そのものにフルに準備するシナリオは、臨床志向性がとても強いために基礎医学的テーマを主題としたPBLでは使いにくい面があることも指摘されており、まさにハワイ大学医学部のスタイルを反面教師として同地の看護学部でIBLが発展してきたという側面も否定し得ないのではないだろうか。
 
back もどる 
IBL (7)
1週間単位で学習を進めるPBLは必然的にカリキュラム全体が統合型カリキュラムになっている必要があるが、半日単位で進むチュートリアルであるIBLの場合、1、2週間に半日単位のまとまった時間さえ確保できれば、後の時間は通常通りの1コマ目○△学、2コマ目◇○学といったカリキュラムでも十分に実施可能である。 また、やり方しだいで工夫をすれば、学生は常時2、3の科目でのIBLを並行して受けることも可能である。
こういった通常カリキュラムとの両立可能性が高いことも、看護学部でIBLの親和性が高いことの理由だろう。
 
back もどる 
IBL (6)
事例シナリオに基づく討論では、学生の関心は今まさに目の前にある症状や治療といった臨床上の問題に向きがちで、その事例の中に存在する社会的、対人関係的問題については学生の社会経験の乏しさからもなかなか想像し得ずに不十分な議論に終わってしまいがちである。特にハワイ大学方式のPBLのように臨床データが豊富にフルに提供されるような場合は、どうしても学生の関心は豊富なデータを使った疾病の診断、治療面に向かってしまいやすく、看護や福祉などで重視される全人的(holistic)な見方からの議論や問題抽出が欠落してしまうことが起きがちである。その点、IBLではGuiding Questionがあるため、学生の議論の方向性を社会的、対人関係的問題の方にも確実に向けることが出来るというのが、看護学部でIBLが導入されていることのもう一つの理由であるとされている。
 
back もどる 
IBL (5)
Guiding Questionがあることは学習の方向付けにも役立つため、シナリオを与えられたら一から学習課題の抽出をしなければならないPBLと比較してより未熟な学習者でもコアタイムの討論が進めやすく、PBLが盛んな医学部ほど優れた学習者がそろっていない他の学科でも比較的導入しやすいとされている。
 
back もどる 
IBL (4)
IBLではGuiding Questionがあるため、ファシリテーターの援助が多少不十分でもコアタイムの討論を学習課題の方に促すことが容易であると考えられており、その分ファシリテーターが複数の班を掛け持ちすることも不可能でないため、少ない教員数で多くの学生を相手でき、医学部ほど教育資源が豊富でない看護学部でも導入しやすい方法であるとされている。
 
back もどる 
IBL (3)
IBLのもう一つの特徴はその名前がInquiry Based (質問に基づく)と呼ばれるように、コアタイムのセッション中に学習者の議論を導くGuiding Questionが3〜4つほど用意されていることである。
PBLチュートリアルの場合、シナリオが与えられたらまず小グループ討論をして、どんな学習課題があるかを自由に話し合う。 自己学習能力の開発にはこの問題発見のプロセスが重要であるため、チューターはあまり誘導をしないで、なるべく幅広い可能性を検討するよう促す方が望ましいとされている。
ところがIBLの場合は、事例に対して例えば「どうしてこんな症状が出ているのでしょうか」とか「この状態のAさんはどんな生活状況でしょうか」といったように議論を方向付ける質問を投げかけるのである。
半日単位でコアタイムを連続して持つため、多少、問題発見のプロセスを省略しても、効率よく学習課題の抽出が進むように工夫されているのである。
 
back もどる 
アイコンタクト (eye contact)
対人関係において、視線を合わせることを意味する。
「目は、口以上にものを言い」とは、よく聞く。
すなわち、アイコンタクトは非言語的コミュニケーションの典型例である。
医療の現場でも、同様である。
患者ー医師、教員ー医学生、医師ー医師、医師ー医療従事者間などにおいて、適度に行うことにより、スムーズな対人関係を築くことができる。
患者ー医師間のアイコンタクトについては、電子カルテの導入以来、大きな問題になりつつある。
アイコンタクトもタイミングと時間において「適度」が大切であるため、医学部における医療面接の実習では、おおきなチェックポイントである。
 
back もどる 
IBL (2)
PBLチュートリアルの縮小変形版とも言えるIBL(Inquiry Based Learing)であるが、 その大きな特徴は、PBLチュートリアルが1週間単位で学習を進めるのに対して、自己学習のサイクルが半日単位で進むという点である。
PBLチュートリアルの場合、 例えば岐阜大学では月曜日の朝に1時間のコアタイムがあり、 そこでコースに関連する事例のシナリオが与えられ、学生同士で小グループ討論をして学習課題を挙げる。
その後、学生はコースに関連する講義を受けたり、コアタイムで挙がった学習課題を自己学習しながら、 火、木曜日の朝のコアタイムでも事例の続きのシナリオが与えられ、同様に学習課題を挙げ自己学習を行いながら1週間を通じて学習するというのが通常のPBLチュートリアルである。
一方、IBLでは、このコアタイムのセッションをまとめて半日位で行う。
半日で3〜4シナリオを扱い、各シナリオにつき40〜60分で小グループ討論を行い学習課題を挙げていく作業を集中的にやっていく。
半日で終わったらあとは通常の授業が続き、学生は学習課題を宿題のようにこなして、数日〜1週間後にまた半日時間を取って集まって、各人の学びをグループで共有し、グループの学びをクラスで発表し、最後にまとめの講義を行って終了という具合に進んでいく。
 
back もどる 
コミュニケーション その3
3) 非言語コミュニケーション
言語、文字などによらない、人間の感性を表現する顔の表情、姿勢、ジェスチャーなどの非言語メッセージのやり取りで相互作用する過程。
医学部におけるコミュニケーション技能の教育は、重要テーマのひとつである。
低学年ではコミュニケーション一般に関する内容が扱われ、高学年では、模擬患者による医療面接という形で行われる。
なお、異業種間(医師、看護師、薬剤師など)のコミュニケーション技能の教育の必要性も力説されている。
 
back もどる 
コミュニケーション その2
2) 準言語コミュニケーション
会話に声の調子、トーン、早さ、強弱、などから伝わるメッセージによる相互作用する過程。
 
back もどる 
コミュニケーション その1
言語、あるいは言語によらないメッセージのやり取りを通して、当事者がお互いに何らかの影響を及ぼし合う過程。
メッセージの種類により3つのコミュニケーションに分類される。
1) 言語コミュニケーション
言葉のやり取りによってメッセージを送ることで相互作用する過程。
言葉は使う人の考えかた、価値観、文化などに大きく作用されるので、自分が意味することや気持が必ずしも相手に忠実に伝わるとは限らない。
この点がコミュニケーションの行き違いを生む原因の一つになっている。
 
back もどる 
オリエンテーション
新入者が学校、組織、集まりなどに早く適応できるようにはかること。通常は授業や集まりの初めに今後どのようかことが行われるのか、手順や内容などを説明する。
医学部の入学直後に行われるオリエンテーションは、必須である。
学内講義型、合宿型、ハイキング型など、各大学が工夫を凝らして実施している。
内容は学業関連以外に、準社会人として自分の生活管理の仕方、順法、詐欺などからの身の守り方、さまざまであり、入学学生の変化、社会の変化に対応している。
 
back もどる 
アイスブレーキング
直訳をすれば氷の壁を壊すことであるが、見知らぬ人と初めて会った時とか、それまで話す機会が少なかった人と隣席した場合の緊張を「氷」に例え、「氷を壊す」行為、すなわち、その緊張をほぐすような行為を指す。
医学教育関連のFDやセミナーでは、アイスブレーキングが重要視されている。
一見、時間の無駄のように思われがちであるが、アイスブレーク後の知的合同作業は、質と量ともに格段にあがる。具体的には、他己紹介、じゃんけん、ゲームなどが行われる。
 
back もどる 
大学院大学
大学院の重点化により大学院を部局化して学部をその下に置いた大学、あるいは学部を持たず大学院のみの大学のこと。
従来、日本の大学院は学部の上に乗った付属機関的な扱いを受けていたが、大学院大学化の組織改変は、1990年代に旧帝国大学から始まった。
特に医学部を持つ大学では、旧帝国大学以外の大学でも医学研究科単独、または歯学部、薬学部と合同で大学院大学化が進んだ。
 
back もどる 
大学院 Graduate School
一般には大学の学部の上に設置される教育機関。大学学校教育法では大学院を「学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ文化の進展に寄与することを目的とする。」と定めている。
なお大学院のうち、学術の理論及び応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とするものは、専門職大学院とよぶ。
大学院には修士課程と博士課程とがあり、原則として前者は学士の上に2年、後者は学士の上に5年(医学士の場合は4年)または修士の上に3年の課程となる。
最近は大学院を重点化(部局化)し、学部を付属のようにした大学院が増えている。
 
back もどる 
大学 University
学校教育法では大学を「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、 知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。」と定義している。
広義には大学院、短期大学も含まれる。大学の修業年限は基本的に4年とされているが、医学、歯学、獣医学を履修する課程については6年、薬学も2005年度入学生から6年制を併設している。
短期大学を除く大学を卒業した者に対しては学士の学位が与えられる。
本法には医学部が医師を養成する機関である旨の規定はなかったが、1968年に制定された医学部設置審査基準要項に初めて記載された。
 
back もどる 
臨床教授 Clinical Professor
医療系大学(医師・歯科医師・薬剤師・看護師・臨床検査技師などの養成を目的とした大学、短大、専門学校など)の教員の充実のために各校が文科省とは独自に所属外の専門家を対象に資格認定する際に用いる称号。
例えば学生を卒前実習・研修の目的で受け入れる学外の病院などの施設において教育を担当する専門職員を任命する場合などに用いる。
最近は大学などの内部で、教授ではない教員(助教授、講師等)を診療専門の教授などとして任命する際にも用いることもある。この場合給与は本来の給与体系のままであることが多い。
 
back もどる 
IBL (1)
Inquiry Based Learingの略。
基本的には成人学習理論に基づいた学習者参加型学習方法で、PBL/IBLと並列で扱われることも多い。
PBLチュートリアルの縮小変形版とも言える。
1992年よりIBLを開始したハワイ大学看護学部が、継続的に活発にIBLのFD活動を行っており、その影響を受けて(わが国を含めて)看護系の教育い広がっているようだ。
 
back もどる 
標本誤差 sampling error
サンプルを測定するとその値にはかならず誤差が生じ、その原因には測定誤差と標本誤差があること、そして測定誤差についても前述した。 次に標本誤差について説明すると、これはサンプルのもととなる測定対象の集団(母集団)からの標本(サンプル)を抽出する際に生じる誤差である。母集団全体を調べるときには、標本誤差は生じない。 母集団の一部分だけを調べるときに、この標本誤差が発生する。この誤差は、サンプルの抽出方法や母集団の大きさなどにより、大きさや性質が異なってくる。  医学部で行われる試験では、学習すべき内容のすべてを試験で調べるのではなく、ごく一部を試験問題として出す。この成績をもって成績判定としている。試験問題によって、成績が大きく左右されることは、誰しもが学生時代に見聞している。  CBT関連で、項目反応理論の研究が行われている。これは、CBTでは試験問題が個々の学生で異なるため、平等性が確保されているか否か、統計学的に検討をする必要があるからである。
 
back もどる 
測定誤差 measurement error
自然科学の領域でサンプルの重さ、高さ、長さなどを測定するのは簡単のようであるが、実はそうでない。
測定値には、必ずばらつきが生じる。これを誤差という。それを原因で分けてみると、測定誤差と標本誤差とがある。
測定誤差には、
1)測定に際して偶然生ずる偶然誤差と、
2)方法や分析機器の違いや測定した人の違いなどにより生ずる系統誤差がある。
前者は値が平均値の両側にばらつき、値の精密さ(精度:precision, 再現性: reproducibility)に影響し、後者は値が一定方向にかたより、正確さ(accuracy)に影響する。(→標本誤差)
ところで医学教育の分野で、学生の学力を測るのは、正確に行われているのだろうか?
学力とは何か?
それをどのように測るべきか?
測って、それを何に利用するのか?
肝心なポイントが曖昧のまま医学部ではMCQのペーパーテストが行われ、その結果が学生の運命を大きく左右している。
 
back もどる 
レジデントと医学生の関係
クリニカル・クラークシップでレジデント(若手医師)と学生をチームにしても、レジデントの負担が増えるし、レジデントに学生教育はできないという誤解がある。実際にはその多くは杞憂であり、逆にいろいろな良い面がある。
1) 学生が来てくれたほうが、レジデントの仕事が軽減される。
2) 学生は忙しいレジデント(主治医)と患者の間に立って、患者の状態や情報をいろいろ伝えてくれ、患者のチームに対する信頼を高めてくれる。
To teach is to learn twice学生のいろいろな質問に晒されるレジデントの実力が向上する。屋根瓦方式の教育である。
 
back もどる 
トリプルジャンプ (その7)
トリプルジャンプで測定可能な学習者の能力は、1)課題に関連する知識や病態についての理解の程度、2)問題解決(臨床推論)の能力、3)自己学習能力、4)自己評価の能力、等である。
通常のトリプルジャンプの場合、テュータ(評価者)が関わって進めるステップ1とステップ3は、各々1時間ないしは1時間半位づつであるが、学習者が自分で進めるステップ2は2時間〜まる1日とバリエーションがあることが多い。
一般的には、1人のテュータ(評価者)が1日で3、4人の学習者の評価を行い、マクマスターの場合、多くのテュータは年に1、2日はトリプルジャンプの評価者が回って来るということである。
 
back もどる 
トリプルジャンプ (その6)
信頼性や妥当性という点では今一つの評価であるトリプルジャンプであるが、だから と言ってトリプルジャンプの意味がないという訳ではない。
試験としての信頼性や妥当性が問題となるのはいわゆる総括評価(入試や学年末テストのように試験の結果が合否や成績評価に直結するために高い精度が求められる評価)の場合であり、形成評価(学習途上で出来るようになったこと、まだうまく出来ないことを確認して次の学習に備えるための評価)としてトリプルジャンプを用いることは、PBLチュートリアルを通じて自己学習能力を養成していくうえで、依然として大きな意味があると考えられている。
 
back もどる 
トリプルジャンプ (その5)
次にトリプルジャンプの試験としての妥当性について見てみよう。
妥当性というのは、この試験で本来測定したい学生のPBLチュートリアルを通じて養成された自己学習能力が本当に評価できているのかという点である。
Chapman等(1993)はトリプルジャンプの成績と臨床問題に関するレポートの成績、PBLチュートリアル時の学生の態度評価の3者を比較することで、トリプルジャンプの試験としての妥当性を検討している。
その結果は、トリプルジャンプとレポート成績の間には統計的に有意な相関は認められず、一方、トリプルジャンプとチュートリアル時の態度評価と間には1年生では統計的に有意な相関(相関係数0.57)が認められたものの、2年生では認められなかったというものである。
残念ながら妥当性が十分認められたというにはほど遠い結果であるが、これは単一課題で行うトリプルジャンプの限界であり、課題数を増加させなければ十分な妥当性の確保も難しいと考えられている。
 
back もどる 
トリプルジャンプ (その4)
トリプルジャンプの課題数を増やして信頼性を上げる現実的な唯一の方法は、各ステップの試験時間を思いっきり短くして3〜5分単位にしてしまうことである。 Nuville(1995)は実際にそのような条件で複数課題のトリプルジャンプを1時間半の試験時間で実施し、一定の信頼性を確保できる結果を報告している。
面白いことには受験した学生たちが、こっちの短時間版のトリプルジャンプの方が通常のトリプルジャンプよりもより公平な試験という感じがすると答えていたということである。
 
back もどる 
トリプルジャンプ (その3)
トリプルジャンプの試験としての信頼性については、同じ学生を複数の評価者で評価したときの一致度で見る限りはある程度の信頼性は確保されていたのであるが、問題は課題ごとの一致度が低いことである。
トリプルジャンプのステップ1で与えられる課題(事例)によって、同じ学生でも得意、不得意のテーマがあるために、ある課題でよい評価を受けた学生が別の課題では必ずしも優れた評価を得るとは限らないということである。
理論的にいえば、信頼性を上げるためにOSCEの場合ステーション数を増やすように、トリプルジャンプでも課題数を10〜12に増やせば良いのであるが、ただでさえ1課題のトリプルジャンプで1日仕事になるところを10〜12課題というのは、まったく非現実的で実現可能性がないということにほかならないことになる。
 
back もどる 
トリプルジャンプ (その2)
トリプルジャンプが、PBLチュートリアルを通じて養成された自己学習能力を測る唯一の評価法である一方、評価者の負担が大きいことがネックになっているということを前回書いたが、今回はトリプルジャンプの試験としての信頼性についてである。
トリプルジャンプの評価は、ステップ1の学習項目の設定の部分とステップ3の得られた情報に基づいた仮説の検証部分で評価者と討論することで行われるが、この際、評価者によって評価が上下するようでは試験としての信頼性は確保できない。
同じ学生を複数の評価者で評価したときの評価者間の相関係数は、一般的にどんなタイプのトリプルジャンプであれ0.60から0.90(1に近い程評価がぴったり一致しており0に近いほどバラバラ)位はあり、ある程度の試験としての信頼性は保たれるとされている。
また、評価表を整備したり、評価者のトレーニングをすることで、評価者間の一致度は向上することが多くの報告で示されている。
 
back もどる 
トリプルジャンプ (その1)
PBLチュートリアルにおける評価法の一つ。
学習者がPBLを通じて自己学習能力が十分に獲得出来たかどうかをperformanceレベルで評価する(おそらく)唯一の評価法。
分かりやすく言えばPBL版のOSCEのようなもので、「PBLでグループで行う作業を、1人で行って評価を受ける」実技試験である。
トリプルジャンプは以下の3つのステップに別れており、それが呼び名の由来にもなっている。
ステップ1: 課題ないし事例が提示され、また模擬患者などから必要な情報をさらに追加で得たりしながら、課題で示された状況を説明するための仮説(hypothesis)について検討し、仮説を検証するために必要な情報(学習項目)を学習者自身が設定する。
ステップ2: 与えられた時間制限のなかで図書館その他で自由に学習し必要な情報を収集する。
ステップ3: 得られた情報に基づいた結論を提示し、仮説の検証内容について評価者と討論する。
ステップ1と3での評価者とのやりとりを通じて思考過程や情報の得かたなどを様々な観点から評価を行う。
基本的なスタイルは上記の形だが、大学によっては、これをコンピュータ化したり、ステップ2に1日以上をかけたり、ステップ3でもなお課題の続きが提示されたり、色々なversionが工夫されている。
PBLを通じて獲得された自己学習能力の評価法にはこれしかないが、 評価者への負担が過大な(10人足らずの評価に丸1日かかったりする)ため、あまり幅広くは用いられてはいないようである。
(協力:大野良三)
 
back もどる 
患者は学生実習をどう受け止めているか?
臨床実習で学生を患者の受持にすると、患者からの不満が多く出るのではないかと心配している教員が多い。
しかし適切に対応すれば患者の大半は学生が受け持つことを歓迎してくれる。
◆ 患者が学生を歓迎する理由
--- 話し相手になってもらえる
--- 医療のちょっとした相談ができる(主治医の補足をしてくれる)
--- 学生の診察でもありがたい
◆ 患者が学生を敬遠する理由
--- 態度が悪い、挨拶しない
--- 訪室時間がばらばら、長々と訪室する
--- 病歴を聞かれること、診察への抵抗感(プライバシー)
 
back もどる 
ログブック
ログブックとは、もともと業務日誌、旅行記、航海日誌などを意味し、 日々の行動や学習を記録し、振り返りながら、目標の達成に役立てるものである。
◆ ログブックに含まれるもの
--- ログブックの目的と使い方
--- 学習目標(全体目標を簡潔に記載するにとどめる)
--- 実習スケジュール
--- チェックリスト(自己評価、指導教員のチェック)
--- ふりかえり記載欄(実習全体の)
◆ ログブック作成に当たって注意すべきこと
--- 詳しすぎるものは読まれず、使われない
--- 簡単すぎるものは学習の向上に役立たない
--- 学生の自己評価は正直に記載してもらうことが大切
--- 合否判定に使うと、学生の正直な記載が期待できなくなる
--- ログブックに基づいてフィードバックをすると効果的
 
back もどる 
成人学習者への配慮
◆ 学習環境と雰囲気に気を配ることが重要
--- 学習者が安心して、ありのままの自分でいられる雰囲気
--- 身構え、緊張し、失敗を恐れるのは良くない
◆ カリキュラムの立案・改善に際し、学習者の意見を反映させる
--- 成人は自分で計画することを好む
--- 計画に参画することで責任感が生まれる
◆ 学習目標をしっかりと理解できるように促すと、動機付けが高まる
--- 目標は多すぎず、常に意識できる範囲に
--- ログブックを活用する
--- 断片的な知識の記憶より、概念の理解を好む
◆ 学習者自身も自己評価を行うことが重要
--- 成人は他人からの評価より自己評価を好む
--- 自己評価のほうが行動変容(学習の向上)につながる
--- 省察(ふりかえり)は人間的成長と職業倫理の向上に役立つ
 
back もどる 
外来でのクラークシップ
病棟実習では、既に診断がついている患者や、診断がついていなくても、検査や治療方針が既に決定されて入院してくる患者を受け持つ場合がほとんどである。
これに対し外来では、患者と初めて接し、主訴から現病歴を聞き(医療面接)、鑑別診断を考えながら診察を行い(臨床推論)、検査・治療計画、入院の必要性の有無など、プライマリ・ケアと初期医療の一連の流れを学習することができる。
外来は多くの患者が訪れ、臨床実習にとって、時間的にも空間的にも制約の多い場所であるが、なるべく臨床実習に組み入れていくことが望まれる。
 
back もどる 
病棟でのクラークシップ
クラークシップといっても診療科ごとにカリキュラムの特徴があり、一律ではないが、基本的なスタイルがある。クラークシップで最も重要とされるのは、チームの一員として患者を診察し、プレゼンテーションすることである。プレゼンテーションするためには患者とコミュニケーションを図り、診察を行い、検査結果を確認して、患者の状態を把握する必要がある。実習ではレクチャーや見学などもありうるが、これが主たる内容ではなく、医療チームでの活動が中心となる。
 
back もどる 
クリニカル・クラークシップにおけるチーム
クラークシップでは学生が医療チームの一員として診療に参加することが必要である。
医療チームは通常は学生、研修医、主治医、指導医、専門医などから構成されるが、チーム構成は病棟にいる医師や研修医の数で変わってくる。
アテンディング: 専門医としてチーム全般の診療を指導する (日本では講師・助教授クラス)
チーフ・レジデント: 受持患者の入院から退院までのマネージメント全般を行いながら、学生のプレゼンテーションや臨床判断について指導する (日本では助手・講師クラス)
シニア・レジデント: 主治医をしながら基本的診療技能(問診、診察、処置など)を指導する (日本では医員、大学院生、助手クラス)
クラークシップ・ディレクター: 各科のクラークシップ責任者。カリキュラム作成、学生評価を行う。
 
back もどる 
クリニカル・クラークシップの学習目標
クラークシップでは何か特別なことをしないと従来の臨床実習と区別できないと考えて、採血とか処置を教えることに熱心になってしまう傾向がある。
学生もそれを期待する傾向が強い。
しかし米国において、クラークシップを指導している医師に<クラークシップで教えるべき項目>を調査した結果は、
第1位 「受持患者を的確にプレゼンテーションできること」
第2位 「臨床判断」(臨床推論)
第3位 「医療面接と身体診察」
となっている。 日本で人気のある採血や点滴といった手技Basic proceduresは第10位である。
 
back もどる 
教授錯覚
教員が授業さえすれば、学習者はその内容の全てを理解学習できたと錯覚してしまうこと。
「私がちゃんと講義をしたのに、学生はちっとも理解していない」と、学習効果が上がらなかった原因を学生に求める教員を良く見かけるが、これは大きな錯覚である。特に伝統的な講義一辺倒のカリキュラムで著しい。問題基盤型学習では、学生が自ら疑問点を持ち講義に臨むので、かなりこの現象は改善される。
 
back もどる 
教育学 Pedagogy
Pedagogyのpedは小児を表す言葉であり、もともと教育学の主流は小児教育理論を基盤としたものであった。
しかし、医学生は成人であることから、最近は成人教育andragogyの考え方が導入されるようになった。
成人学習者は
1)自己決定的であること、
2)蓄積されてきた経験が活かされること、
3)社会的役割が学習準備状態をもたらすこと、
4)速やかに応用できる成果を求めること、
5)教科中心でなく問題解決が中心となること、
などが特徴である。
 
back もどる 
患者中心型医療 その2
従来のパターナリズムによる医師中心型医療に対する言葉。
インフォームド・コンセントの徹底、患者の自己決定権の尊重、患者の医療への参加、などが重要な鍵を握っている。
 
back もどる 
医学部認定医委員会
カナダや米国には医学部の設置基準を制定し、資格認定を行っているNGOがあり、大学医学部の水準向上を図っている。
米国はLiaison Committee on Medical Education (LCME)、カナダはCommittee on Accreditation of Canadian Medical Schools (CACMS)と呼ばれる組織である。わが国には大学基準協会があるが、医学部に特定した団体は存在しない。
 
back もどる 
悲しみの教育 grief education
身近な人の死という喪失の苦悩に沈む人々が、悲嘆のプロセスを乗り切るのを助け、悲嘆の過程の不完全な消化から起こる障害を未然に防ぐために、医療従事者は、そのプロセスや障害を理解し、悲嘆にくれる人々に寄り添い、ともに歩みを進める姿勢を学ぶことが求められている。
 
back もどる 
学習意欲
何かを学び取ろうとする積極的な気持ち。人間特有の本能である。教育の本質は学習者に学習意欲を鼓舞することである。体験学習、問題解決型学習が学習意欲を高めることが多い。外的要因によって発せられた学習意欲(外発的学習意欲)より、自らの内的欲求によって発せられた学習意欲(内発的学習意欲)が望ましい。
 
back もどる 
学習
経験や練習の結果として生じ、その学習者に行動や能力の変化を起こすプロセスを言う。
 
back もどる 
外来診療
外来は地域住民が通って診療を受ける場所であるので、プライマリケアの教育には外来診療が重要な位置を占めている。卒前の臨床実習にせよ、卒後の初期研修にせよ、first visitの対応、急性疾患、軽症患者、コモン・ディジーズの学習のためには、従来型の入院中心の教育から外来重視の教育に変更してゆくことが望まれる。
 
back もどる 
回診
回診というと教授回診や部長回診と同義語に受け取られやすいが、教育的には病棟医長回診、専門診療グループのチーフ回診、指導医回診など、種々の形態がある。回診を受ける側も、担当医、研修医、医学生など様々である。充実した回診によって診療の質は向上する。回診者の目的意識、診療能力とともに受ける側のプレゼンテーション能力が重要である。
 
back もどる 
MCQの選択肢
MCQ (Multiple Choice Question) は、いわゆる筆記試験の一種であり、問題に対する解答がいくつか設定され、受験者はその中から正しい解答を選択する。その解答肢を、選択肢と呼ぶ。
解答形式には、各項目がそのまま選択肢になるAタイプ(真偽択一式)の他に、K2タイプ、K3タイプ、X2タイプなどがある。今のところ共用試験のCBT(Computer Based Testing)にはすべてAタイプが使用されている。
(→真偽択一形式)
 
back もどる 
絶対評価 その2
相対評価と絶対評価は、学習者の学習成果を評価する際の基本的な概念である。絶対評価は、学習者の学習成果を評価するのに、テストの点数などを用いる方法である。この評価は相対評価と異なり、他の学習者の成績をまったく考慮には入れない。
医学部の学内定期試験では、絶対評価を使う場合が多い。ただし、絶対評価の点数の合計をもって卒業時の成績とする場合、これは相対評価となる。
医学部の試験は、資格試験の色合いが濃いため、あらかじめ一定基準を決め、これを超えた者のみ合格として評価する場合が多い。その一定基準として、60点を設定する場合があるが、60点という設定の是非は科学的に証明されているわけではない。
 
back もどる 
相対評価
相対評価と絶対評価は、学習者の学習成果を評価する際の基本的な概念である。相対評価は、学習者全体をみたうえで個々の学習者の評価を行う方法である。つまり、学習集団内でどの順位にあるかによって評価する。
例えば、小学校の通知表(通信簿)の5段階評価において、5…7%、4…24%、 3…38%、 2…24%、1…7%など、あらかじめ定められた一定の割合で評定をつけているのは、周知のごとくである。 この方法だは、学習者全体のレベルがいくら高くとも、必ず評価1が存在することになる。日本の医学部では、ほぼ用いられない。
 
back もどる 
全人的医療
医療おいて、患者の疾病のみに注目するのではなく、疾病を有する人として医療を行うこと。こんな当たり前のことが、医療技術の長足の進歩に驕った時代には、忘れられがちであった。
すなわち、生物学に重点をおいた医学を学んだ医師は、とかく疾患に診療の重点を置きがちとなっていた。患者が望んでいるのは、あたたかい人間的な治療行為であり、そのためには患者を一人一人の人生を背負った人間としてみる事が肝要である。「病気を診るのではなく、人を診る」事は、今の医学教育で力説されている。
 
back もどる 
ワークショップ(WS) その2
ワークショップは、作業 work してプロダクトを作り出す shop が原意。
転じて、参加者が自ら参加・体験し、グループの相互作用の中で、プロダクトを作り出し、特定にテーマについて学びあう学習方法を示す。
講義のような一方的な知識伝達のスタイルではなく、ワークショップは自ら参加することによる楽しさ、自分らしさの発見、主体性の確立などが経験できるなどの利点があるといわれる。
なお、ワークショップの進行役を、促進者という意味でファシリテーターとよぶ。
 
back もどる 
セミナー seminar
セミナーとは、もともとは大学における教育法の1つであり、教授が学生のグループを対象に特定のテーマについて議論していく方式である。ドイツ語のSeminarが語源であり、わが国ではゼミナール、輪講とも呼ぶ。
現在では講習会のような教育形式もセミナーと称している。MEDC主催の医学教育セミナーとワークショップでは後者の意味で使用している。
 
back もどる 
絶対評価 absolute evaluation
評価基準定め、それを超えた場合にのみ合格とする評価法のこと。科目ごとの評価では全体の出来不出来に関係なく、60点を超えたもののみ合格となる。これに対し、入学試験は初めから合格者数が設定されており、相対評価といえる。
 
back もどる 
総合内科医
日本の総合診療部門は米国の家庭医学(Family Medicine)と異なり、小児科や産婦人科、外科などの領域を扱わないところが多く、実質上「総合内科(General Internal Medicine)」に相当するといえる。
総合内科医について、米国総合内科学会がまとめた「総合内科の将来展望」の中にこう述べられている。
「総合内科医とは複数の慢性疾患を有する大人の患者を長年にわたって担当するために必要な知識、技量、態度を有する医師であり、小児科医Pediatricianに対して、Adulttician (doctors of adults)といわれるゆえんである。」
 
back もどる 
総合診療部、総合診療科
患者を「総合的」に診る科。医療(特に内科)はあらゆる分野が臓器別・専門分化してしまい、臓器別・専門診療の谷間に 入ってしまう患者は少なくない。人を診ずに臓器・病気を診ると揶揄されるように、患者を「総合的」に診療することが 改めて必要と認識された。
1976年の奈良県天理よろづ相談所病院に、総合外来と総合診療方式によるレジデント制(卒後臨床研修制度)が 設立されたことが、今日使用されている総合診療という名称の嚆矢である。その後、川崎医科大学に大学として初めて 総合診療部と総合臨床医学教室が設立され、次いで各地の大学、研修病院に総合診療部が開設された。
 
back もどる 
セカンド オピニオン second opinion
医師は、患者の臨床データを基に、治療方針などを示すが、医師も患者も判断に迷うことがある。この場合患者は、 同じデータを別の医師に分析してもらい、判断の意見を求めることがある。これがセカンドオピニオンの概念である。
セカンドオピニオンを得るためには、自分の臨床データを、最初の医師から借り出すことが必要である。この借り出しを 受けることが、いわゆるドクターショッピングと異なる点である。
患者がセカンドオピニオンを求めるのも、医師がそれを許可するのも、心理的抵抗が大きかったが、日本では徐々に 定着しつつある。セカンドオピニオンをにこやかに受け入れる精神風土は、若い医学生がその手本を見る学習環境から 生まれる。その意味で教育病院の医師の診察態度の教育的影響力は、大きい。
 
back もどる 
インフォームド コンセント informed consent
「説明と同意」と表されることがあるが、適切な訳がなく、一般にはインフォームド コンセントとして外来語のまま使用 したり、ICと略されたりして、使われている。
医療の世界では、診療行為を患者に十分説明したのち、患者が内容をよく理解し、納得し、同意した上で医療を受けることを意味する。
同意の意思表明が、口頭だけの場合と、書面で記録に残す場合とがある。
医学部の附属病院の臨床実習で、医学生による診察が行われる場合、指導医が患者から口頭でインフォームドコンセントを得るのが普通である。
 
back もどる 
想起 Recall
過去の出来事、学習内容など記憶していることを思い起こすこと。追想ともいう。
すなわち、想起は記憶を単純に思い出す事なので、教育目標分類の一つである認知領域行動で言う所の、「想起」、 「解釈」、「問題解決」のうちでは、最も”低次”の行動といえる。
医師国家試験で用いられる多肢選択問題において、以前は想起問題が75%前後を占めた。これでは、暗記勉強のみを 促進し、思考能力を付与できないため、現在では、解釈や問題解決レベルの問題の増加が図られている。
(参考→教育目標分類、 タキソノミー)
 
back もどる 
総括的評価 Summative Evaluation
総括的評価とは、学習成果の達成度を総括的に把握する目的を持つ。
この結果の利用は、履修単位や資格の認定・進級・合否判定などである。また形成評価と同様に、教育プログラムへの 人的・物的・時間的配分などの判断資料ともなる。
総括的評価の項目には、知識のみならず、技能や態度・マナーなどの実技の評定も含まれ得る。
(参考→形成的評価、教育評価)
 
back もどる 
形成的評価 Formative Evaluation
学習者の学習の過程で学力の変化を、テストなどの方法でモニターすること。
具体的には、授業毎、あるいはユニット毎 などに小テストなどを行い、学習者に、どの程度学習できたか、進捗状態をフィードバックするために実施する。
また、カリキュラムなどを改良する目的で教員に学生の学習状況をフィードバックする目的にも利用される。以上の如く、 形成的評価とはフィードバックの目的でおこなわれるものであるので、評価結果を学習者の正式記録とはしないとされている。
(参考→総括的評価、教育評価)
 
back もどる 
正答率
学習者が、一定のテストにおいて全問中の何問に正答したかをあらわす比率(得点/満点)のこと。
これにより学習者の学習能力、修得度や到達度を知ることが出来る。学習評価において汎用されるのみならず、 カリキュラムの良否を判断する場合の指標ともなる。
通常、試験では偶然の正解も正解と判断され、このため、従来の正答率だけでの分析では、学習者の真の学力を 誤評価してしまう恐れがある。これを回避する目的で、どの程度確信して回答したかの要素を勘案する正答率の 研究が進みつつある。
 
back もどる 
スキルスラボ skils laboratory
臨床技能を学習する施設のこと。初心者が病院で患者を稽古台にして技能を得る時代は過去のものになりつつある。
各種の人体モデルを用いて採血、穿刺、挿入などの検査技法を練習したり、模擬患者の参加で医療面接・身体診察 技法を習得するなど、基本的な臨床技能を学ぶ備品とプログラムが用意されている。基礎医学教育における実習室と 同等、あるいはそれ以上の位置を占めるべきものである。
この種の施設は、オランダのマースリヒト大学での成功事例に倣い、世界中で急激に普及しつつあるが、わが国でも、 小規模のものが各大学に設置されつつある。
非常に多くの備品が設置されるため、管理体制の確立が課題である。
 
back もどる 
真偽択一形式
多肢選択式の客観試験(MCQと呼ばれている)において、正しい、あるいは誤りの選択肢を1つ選択させる問題形式のこと。
わが国の医師国家試験には5肢択一形式問題が用いられているが、その解答形式には、真偽択一形式(Aタイプ)の他に、K2タイプ(二真偽形式:5肢選択の解答コードが2つ)、K3タイプ(三真偽形式:5肢選択の解答コードが3つ)、X2タイプ(5肢選択から任意の2つを選ぶ)がある。
Kタイプは、選択肢の正誤が部分的に分かれば正しい知識がなくても消去法で正解できる欠点があり、近年、国家試験では減少してきている。
なお、共用試験のCBT(Computer based testing)にはすべてAタイプが使用されている。
 
back もどる 
インパクトファクターと研究者の評価
インパクトファクターは、科学界における雑誌の重要度を示す指標である。その学術雑誌に掲載された1論文あたりの引用の平均回数を算出したもので、批判も多いが、それなりの価値が認められている。
研究者の研究活動(業績)を正当に評価するのは難しいが、しばしば日本の巷にあふれている基準は、過去に書き上げた論文の質と量である。 論文の量の判断は簡単であるが、質の判断は難しいので、インパクトファクター○○の雑誌に掲載された論文、という数字が代用される。
具体的には、インパクトファクター2.0の雑誌に掲載された論文を3つ持っていれば、その研究者のインパクトファクターは6.0とも表される。
これは研究者の研究活動(業績)の評価を、雑誌のインパクトファクターを使って表すという滑稽な話である。
 
back もどる 
インパクトファクター
学術雑誌を評価する数字の1つ。 学術雑誌を正当に評価するのは困難であるが、科学情報研究所(Institute for Scientific Information Inc.) が毎年、インパクトファクターとして発表している。
これは、いわば学術雑誌ランク付けの数字であるが、算出根拠は、その雑誌に掲載されている論文が引用された回数である。この考えの基本にあるのは、論文が優秀であれば、他の論文に数多く引用されるであろう、そのような論文を掲載している雑誌は優れている、ということである。
Cell,、Natureなどはインパクトファクターが高い雑誌として有名である。一般に他の学問分野との重なりが多い生化学、分子生物学、免疫学の分野の雑誌や総説雑誌のインパクトファクターは、高くなる傾向がある。
 
back もどる 
診断 Diagnosis
患者のどこに(部位)、何がおこり(病理)、どのような段階(stage)かを決定する事。
臨床診断の方法として、問診による病歴聴取、身体診察、臨床検査、画像検査などが行われる。クリニカルクラークシップでもっとも重要な学習分野である。病理診断は、生検材料や剖検材料を、顕微鏡や肉眼で見た結果に基づき下される。
医学生は、CPC(clinical pathological cnference)などで病理診断を学ぶ。
X線診断は、X線写真の所見に基づく診断である。医学生は、これを臨床の症例検討会、CPC、放射線学のカリキュラムなどで学ぶ。
 
back もどる 
身体診察 Physical Examination
患者の現症を把握するために行うもので、視診、聴診、打診、触診、血圧測定、神経学的所見などにより診察すること。
なお、身体所見とは身体診察により得られる所見の総称。
医学教育的には、クリニカルクラークシップ型臨床実習を実施する場合に、医学生が患者の身体診察を出来ることが前提条件であるため、臨床医学実習入門のコースで、これを十分に訓練される必要がある。
 
back もどる 
診断書
診察結果を記載した証明書のこと。
医師法第9条2項に「診察もしくは検案をし、又は出産に立ち会った医師は、診断書もしくは検案書又は出生証明書もしくは死産証書の交付の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」とあるように、患者に依頼された場合には交付しなければならない。
生命保険や各種資格取得に必要な診断書まで含まれる。
医学部の6年間に、診断書の書き方 を体系的に学ぶ機会はない。医師になってからも、診断書の書き方には困惑することが多い。
なお、死亡診断書については、臨床医になれば書く必要に迫られるので、法医学のカリキュラムの中で学ぶのが普通である。
死体検案書は、医師が警察の要請に応じて死体の外表を検査して書くが、これも医学部のカリキュラムで学ぶ。死体検案の時、死因に不審点があれば、司法解剖となる。
 
back もどる 
医師臨床研修マッチングプログラム
医師臨床研修マッチングプログラムとは、日本全国の研修希望者と研修病院を、それぞれの希望が合致する組み合わせを探し、決めるものです。
翌年度に研修を希望する医学生が8000名なので、膨大な量の作業となり、安定マッチングのアルゴリズムを組み込んだコンピュータソフトにより、実施します。 医師臨床研修マッチング協議会のウエブサイト(http://www.jrmp.jp/)に、すべての情報が掲載されています。
 
back もどる 
チーム医療T
医療は医師のみが行うのではなく、一人前の医師、研修医、薬剤師、看護師、臨床検査技師、放射線技師、理学療法士など多くの職種に支えられて成り立っている。これが、チーム医療の考えである。
ところが医学教育では、医師に関することのみを教える。
同様のことは、他の職種についても言える。その結果、医療の現場では、互いに立場を知らないもの同士が、顔を付き合わせることになりかねない。
そのため、最近、医学教育でもチーム医療の内容がカリキュラムに盛り込まれつつある。
なお、クリニカル・クラークシップは、医学生がチーム医療の一員として加わることにより、行われる。
 
back もどる 
聴診
打診、視診、触診などとともに理学的診察法の一つである。
心臓収縮、弁の開閉や血流に伴う音、呼吸運動・腸の運動に伴う音などを聴診器を介して聴取し、体内の状況を推測する手技。
患者の負担が少なく貴重な情報が得られるため、医師が熟練すべき技術である。
医学教育では、臨床実習入門で学生同士で練習のし合いをするが、これを嫌う学生が出始めている。 病院での実習では、医学生に胸部を聴診されるのを嫌う患者もいる。
現在、聴診練習用の患者モデルが市販されている。
 
back もどる 
シラバス
授業要目あるいは授業時間割のことであるが、これらを記載した冊子などをシラバスと称することも多い。
最近はCD化などした電子シラバスも普及している。同様な意味で「カリキュラム」が「用いられることがあるが、こちらは単なる授業時間割りではなく、教育活動のすべてを含んだ計画書をさし、シラバスよりももっと広範な意味合いを持つ。
 
back もどる 
症例報告
個々の患者の臨床経過、病理所見などを報告すること。目的は、医学の発展のための知識共有と、類似の疾患を集めての科学的分析のための基礎情報の提供などである。
一般には学会誌や学術集会での発表が多い。珍しい疾患や、稀な経過を取った症例の場合には、1例でも発表の対象になる。最近、症例報告のあり方は患者のプライバシーの保護、個人情報保護の観点から、議論がなされている。
 
back もどる 
共用試験に関する遵守事項 (4)
共用試験OSCEについても、CBTの場合と同様に厳重な秘密保持が必要です。
すなわち、共用試験実施機構の委員会などにおいて使用したOSCE課題に関する資料等は持ち出せませんし、メモの持ち帰りもできません。 機構が非公開とした資料について、もし委員の所属大学・組織等において問題が流出して使用・検討された場合、前出の(3)と同様の処置がとられます。 各大学の事務組織においては、「取り扱い注意」として配布した資料の管理を厳重にする必要があります。

(参照:臨床実習開始前の共用試験 第2版)
 
back もどる 
共用試験に関する遵守事項 (3)
共用試験CBTについて、厳重な秘密保持が必要です。
共用試験実施機構の委員会などにおいて使用したCBT試験問題に関する資料等は持ち出せませんし、メモの持ち帰りもできません。 委員の任期終了後にも秘密保持が求められています。
もし委員の所属大学・組織等において問題が流出して使用・検討された場合は、当該大学等からの委員は試験実施委員会および事後評価委員会委員を降りることのなります。さらに以後その大学からは委員を出せなくなります。

(参照:臨床実習開始前の共用試験 第2版)
 
back もどる 
共用試験に関する遵守事項 (2)
具体的には、委員が作製したトライアル出題問題およびプール候補問題を、委員の当該大学での使用が出来ません。 教員が幅広い発想の問題作製をするのは、なかなか難しいのが現状ですので、誤解が生じないように留意が必要でしょう。 委員は、当該大学での共用試験実施責任者になれません。  さらに原則として厚生労働省国家試験出題委員(または厚生労働省CBT委員会委員)との併任・兼任は避けることになっています。

(参照:臨床実習開始前の共用試験 第2版)
 
back もどる 
共用試験に関する遵守事項 (1)
共用試験実施機構では、共用試験CBTの公正な準備、実施および維持管理のために、遵守事項を定めています。
これは、試験問題の作成および評価には共用試験の信頼性と成否がかかっているため、機構の委員に任命された教員は、参加全大学を代表して作業する作業責任をもつものと考えているためです。
すなわち、委員はそれぞれの所属大学・学協会等の利益代表的立場をとらず、医学教育全般および共用試験全体 の公共性に配慮して良質な問題作成に努めることが求められています。

(参照:臨床実習開始前の共用試験 第2版)
 
back もどる 
ML (MLMailing List、メイリングリスト)
E-mailの配布方法のひとつである。グループ内での意見交換、情報共有に用いられる。
具体的には、MLを使って岐阜太郎さんから来たメイルに返信モードで返信すると、返信のメイルは岐阜太郎さんだけでなく、そのMLグループの全員にメイルが配布される。グループに登録された人だけが、情報の受信と発信が出来る。
この特徴を利用し、非常に安価で即時的な会議を、大規模かつ国際的に行うことも可能である。
ただ、欠点としてメイルの数が増えて、メイルの整理に疲れる場合もある。
なお、花子さんから来たメイルであってもMLのメイルなら、ラブレターを返信モードで送らないように、ご注意を。
あなたの熱き思いが、グループ内でバレバレに。
 
back もどる 
OSCEのモニター
共用試験は、全国レベルで規定の通り行われる必要がある。しかるにOSCEは、CBTより試験の運営が技術的に難しく、全国で同じ条件で行うのは容易ではない。
さらにOSCE自身、研究開発の途中であり、試験として改良に余地がある。
現在トライアルとして、共用試験OSCEが全国的に行われているが、本格導入時での改善に向けての情報集めのために、この実施状況をモニターする試みが始まった。
当面のモニターの役割としては、1.実施校へのフィードバックを行う、2.OSCE最終トライアルの問題点を抽出する、3.今後のモニタリングシステム自体について検討する、の3点が挙げられている。
モニターとしては共用試験実施機構OSCE試験実施小委員会の委員が、各大学の試験場へ派遣されることになっている。
 
back もどる 
プロジェクトsiX
OSCEのステイションの数はいくつが最適か?
ステイションの数は、いわば試験問題の数に相当するので、単純に考えると数が多いほど、客観性が増す。
しかしOSCEの運営には、多数の教職員が長時間にわたって動員されるので、試験の目的と効果をも考え合わせてステイションの数を決める必要がある。共用試験OSCEでは、6つとなった。
 
back もどる 
OSCEの外部評価者
従来、学生を教育した内部の教員によって、進級試験などのテストが行われて来た。より好ましい教育の推進のためには、内部の教員のみならず、外部の教員による評価も、大切であると認識され始めている。特に共用試験OSCEについては、テスト結果の互換性の確保のためにも参加校間に実施方法、採点基準等に差がある事は好ましくないため、外部の教員を評価者として迎え入れる事が望まれる。
この考えに基づき、共用試験OSCのトライアルの段階から、近隣の大学の間で外部評価者の相互乗り入れが行なわれている。また、正式トライアルに向けた外部評価者の養成と認定が、平成16年から本格的に開始される。
 
back もどる 
共用試験システム
「臨床実習開始前の学生評価のための共用試験システム」は、医学生が効果的な臨床実習を行うために、臨床実習開始前に臨床実習に必要な基本的知識・技能・態度について適正な評価を、各医学部の協力のもと行う試験のシステムである。
知識レベルについてはcomputer-based testing(CBT)、技能・態度については客観的臨床技能試験(OSCE)で行う。
試験の実施時期については、それぞれの大学のカリキュラムにより異なるが、4年生から5年生に進級する頃が多い。
平成17年度から本格実施されるが、それまではトライアルとして行なわれ、研究・開発が共用試験実施機構の小委員会で行なわれている。
 
back もどる 
OSCEのテスト課題
臨床技能をみるOSCEのテスト課題として医療面接や診察や外科処置等が用いられる。
課題の設定については、種々の研究・開発がなされつつある。共用試験OSCEについては、共用試験実施機構の小委員会が「共用試験OSCE共通課題」として作成されている。
現在のところ、日本全国で共通に行う事を考えると6課題(胸部診察、腹部診察、神経診察など)が妥当とされている。 課題の内容は、試験問題そのものであるため、現在のところ、学生には公開しない方針である。
ただし、OSCEは資格試験として実技試験であるため、自動車の運転免許の実技試験と同じく、問題が公開されていてもかまわないとする考えもある。
 
back もどる 
OSCEの評価項目
OSCEは、臨床技能および態度を客観的にみる実技テストである。
これは、診察や処置等の課題を与え、実技を行わせ、チェックポイント毎に採点するものである。このチェックポイントとは、評価項目の事であり、課題と並んでOSCEの根幹をなす。
共用試験レベルのOSCEの評価項目については、共用試験実施機構の小委員会が全国の大学の教員の意見をもとに研究・開発し、「診療参加型臨床実習に参加する学生に必要とされる技能と態度に関する学習・評価項目」にまとめている。
この内容は、OSCEの実施そのものの他に、OSCEに先立つカリキュラム、すなわち臨床実習入門において指導教官の教えるべき内容の指針として役立つ。 また、医学生にとっても臨床実習を受けるためには、何を学んでおくべきかを知る材料と なる。
 
back もどる 
バリント法 (Balint法)
M.Balintによって創始された全人的な患者理解のための医療面接法とグループワークの総称。Balintは患者自身による問題解決を支持するのが医師の役割と考え、こうした医師の態度を「医師という薬」(doctor as a medicine)の効果とよんだ。医学教育における態度教育においてBalint法は卒前、卒後で多用されており、特に英国においては医学部の必修科目とされている。
 
back もどる 
全日本医学生自治会連合 (医学連)
医学生の自治会、自治組織の全国的な連合体。学生運動の中で1968年全日本医学生連合(旧医学連)が崩壊した以降、医学生自治会連絡会議を通じて1984年に全日本医学生自治会連合として再建された。毎年夏に全国の医学生の自主的学習交流活動の場である全国医学生ゼミナール(医ゼミ)を開催するほか、全国の医学生の要求実現のためのさまざまな活動に取り組んでいる。
 
back もどる 
全人的医療を考える会
「全人的医療」について学生の立場から学ぶ全国の医療系学生(医学生、看護学生、PT、OT、MSW、福祉系学生、鍼灸等の学生)の集まり。ワークショップ形式の参加型の学習法を医学生の間にも普及しようと、1984年3月に医学教育学会行動科学ワーキンググループ(主任:中川米造)が協力して日本大学軽井沢研修所第1回ワークショップが開催されたのが始まり。毎年夏に全国から集まるサマーワークシップ、春や秋には地域ごとの地区ワークショップが開かれている。
 
back もどる 
スモールグループダイナミクス (またはグループダイナミクス)
小集団における集団内の動的過程を明らかにする学問領域をいい、K.Lewinによって提唱された。集団の動的過程の解明を通じて、集団活動の改善をはかり、個人と集団との融和、個人の気づきや活性の増幅を目指す種々の技法が編み出されており、ワークショップにおける小グループ討論(Small Group Discussion)や、問題解決型チュートリアル学習(PBL:Problem Based Tutorial)などもグループダイナミクスの成果を取り入れたものである。
 
back もどる 
交流分析
米国の精神科医E.Berneによって創始された人間の心と行動に関するパーソナリティ理論。心療内科などで心身症の治療に用いられる事が多い。人間の自我状態は「批判的親(CP:Critical Parent)」「保護的親(NP:Nurturing Parent)」「成人(A:Adult)」「自由な子供(FC:Free Child)」「順応的子供(AC:Adjusting Child)」の5つの自我状態からなり、「エゴグラム」によりそれらのパターンを目に見える形で明らかにする事が出来る。幼児期の決断(人生脚本)に気づき、新しい適応の方法を学ぶ(再決断)ことへの援助が交流分析の目標となる。
 
back もどる 
行動療法
行動科学的技法を用いて不適切な行動を修正するための理論と方法の体系をいう。B.F.Skinnerによってこの用語が用いられ、H.J.Eyesenckによって「学習心理学に基づく実験に基礎をおいた行動修正法の総称」として定義された事で一般的に用いられるようになった。@自己監視・自己記録、A正の強化・条件付け、B欲求刺激のコントロール、C反応妨害・習慣拮抗法、D行動自体の修飾、E社会技術訓練(SST)、F認知的再構成法、Gソーシャルサポート、H再発防止訓練などが具体的な技法としてよく使われる。
 
back もどる 
LEARNのモデル
患者教育や行動変容をLEARNの5文字から始まる5つのステップで説明するモデル。まずは患者の思いや考えを傾聴し(Listen)、次に医学的な事実を患者に説明し(Explain)、さらに患者の思いや希望と医学的な見解との一致点や相違点を相互に認め合ったうえで(Acknowledge)、患者にとって最適と思われるプランを勧め(Recommend)、実際に何に取り組んでいくかを患者と交渉する(Negotiate)という5段階ステップで進めることで、患者教育が効果的に行われるといわれている。
 
back もどる 
行動変容
飲酒や喫煙、過食などの健康に不適切な行動生活スタイルを、行動科学的な技法を用いて、健康的な望ましい行動スタイルに修正する事。K.Lewinは行動変容の過程を解凍、変容、最凍結の3過程に分類しており、行動変容の第一段階では、従来の固定した行動スタイルが流動化するための氷溶かし(アイスブレーキング)が、十分に実現されることが必要となる。そのためには「北風と太陽」の寓話ではないが、ポジティブな姿勢でまず受容的にリラックスさせることが重要で、脅迫や説教によって無理やり新しい行動を強制するやり方は望ましくないとされている。
 
back もどる 
行動分析
行動療法や行動主義心理学において、行動に関わる「刺激」−「反応」−「強化」の関係を記述し、行動を予測し、制御することをいう。行動主義を提唱した心理学者B.F.Skinnerによって創始された。
 
back もどる 
行動科学
基礎医学が解剖学や生化学、生理学、病理学などを通じて、人間の身体の正常な構造と機能、病的な状態に陥った時の異常なありようについての知識を学ぶのと同様に、社会心理的な側面から、正常な状態の人間行動とそれが病気を得ることでどう変化するのか、病的な人間行動とはどうなっているのか、健康教育や患者教育など行動変容を働きかけるためにはどんなことが必要か等、人間行動をめぐる様様な領域に関わる学問分野。心理学、社会心理学、社会学、文化人類学、経済学、政治学、精神医学、心身医学、言語学、哲学、倫理学、歴史学などの人間行動に関する知見を統合させた学際的学問で、第2次世界大戦後、米国を中心に急速に発展し、企業活動や宇宙開発、軍事部門、そして保健医療分野などで活発に活かされている。1960年代以降、北米の医学教育に本格的に導入されることになり、現在では米国の医師国家試験の中で基礎医学分野の1科目になっている。医学教育の中には、教科目として行動科学が導入されるだけでなく、教育技法としても模擬患者や問題解決型チュートリアルなど、行動科学に基づく参加体験型の教育法が多面的に導入されており、さらには教員に対する組織開発(FD)としてもワークショップ形式などの行動科学的技法が導入されている。
 
back もどる 
グループ討論
グループで討論することによって、取り組むべき課題・問題を発見・解決したり、討議結果をまとめて成果とするもので、医学・医療教育においても重要な学習法の1つである。推理力・洞察力や問題解決能力など高いレベルの知的技能の開発および態度の養成、コミュニケーション技能やリーダーシップを修得する点でも優れている。指導者はグループ討論の方向が極端にはずれるときには軌道修正したり、情報源としての働きをすることもあるが、討論そのものに多くの口を挟むべきではない。
 
back もどる 
クリニカル・クラークシップ
医学教育における臨床実習のひとつである。学生が臨床の現場において、医師の秘書のごとくに働いて仕事を覚えるという意味の言葉。
教員が行う診療を医学生が見学し、説明を受けて学ぶという臨床実習は、導入当時には画期的であった。しかしこれは見学型の域を出ず、効果に限界がある。これを打破するため参加型の臨床実習が考案された。すなわち、医学生が、教員の監督のもと、医療チームの一員として実際の診療に参加して、臨床実習を受けるのである。学生の書くカルテも練習版ではなく正式書類である。医師で無い者が医療行為をするので、法律上クリアすべき点がある。
まず、(1)患者に対する侵襲が一定以下である、(2)指導教官の監督下で行われる、(3)学生の知識、技能が適切に評価されている、(4)患者の同意を得る、を満たす必要がある。
(1)に対して学ぶべき医行為が、その危険度に応じて水準1 水準2 水準3などに分類された。 条件(3)を担保するものとして共用試験(CBTとOSCE)の導入が急がれている。
 
back もどる 
くさび型カリキュラム
第二次世界大戦後、日本の医学部教育は長い間、2年間の教養課程と4年間の医学課程に分かれていたが、1973年以降、6年一貫教育課程としてもよいことになった。医学部に入学した早い時期に医学の雰囲気に触れることを目的として、早期体験学習や医学専門学科の一部の講義が開始され、教養課程のなかに専門教科がくさびを打ち込むような形のカリキュラムを採用する大学が一般的になった。逆に一般教養とされる医療倫理や医事法学などを専門課程の中に組み入れる大学も増えている。
 
back もどる 
禁忌肢
基本的な問題のなかで明らかに医師として選択すべきでない選択肢を禁忌肢という。禁忌肢は患者の死亡や不可逆的な臓器障害に直結する事項で、それを選択すると通常の誤答以上に厳しい評価を受けることになる。わが国の医師国家試験では、第91回医師国試(1997年)から禁忌肢が導入され、禁忌肢の選択率が合否判定の基準に組み入れられている。
 
back もどる 
共用試験
文部科学省の医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議が報告した「21世紀における医学・歯学教育の改善方策について;学部教育の再構築のために」に基づいて、臨床実習開始前の学生の評価のために行われる総合試験のことをいう。医学教育(歯学教育)モデルコアカリキュラムに引き続いて提案されたもので、臨床実習が開始される前に、コンピュータを用いた多岐選択形式試験computer based testing (CBT)と客観的臨床能力試験objective structured clinical examination (OSCE)からなる各大学の共同利用試験である。2001年度からトライアルが開始され、2005年度から正式に実施される予定。国家試験とは異なり、成績の扱いは大学に任される。
 
back もどる 
教養教育
J.S. Millが1931年にSt.Andrews大学総長就任に際して「大学は生計を立てるための知識を授けるためにあるのではない。技能がすぐれた法律家、医師、技術者を作ることが目的ではない。有能で教養ある人間を作るのが目的である」と述べた言葉が有名であるが、科学の著しい進歩とともに、教養教育と専門教育との間にさまざまな軋櫟が生じてきた。1991年大学設置基準の改正により、一般教育科目と専門教育科目の区分が廃止されたため、教養教育は後退したが、近年ふたたび教養教育の重要性が論じられるようになってきた。
 
back もどる 
教員評価
従来、教員の評価は研究業績(論文)中心であったが、最近は教育や診療能力も対象となり、さらに管理(マネージメント)能力も重要視され始めた。評価するのは自己(自己評価)であったり、同僚・上司(同僚評価)であったり、最近では学生による授業評価も試みられ始めている。患者やコメディカルスタッフによる医師の診療態度評価も、形成的評価として重要である。さらに教員の教育評価の一面に教師教育の実績が注目され始めた。すなわち全国レベルをはじめ各機関における医学教育ワークショップのタスクフォースとしての貢献が、教育評価の参考資料になりつつある。
 
back もどる 
教員中心型教育
学習者中心型教育の反対の概念。教員が学習者を無視ないし軽視して、一方的に教育することをいい、望ましくない教育とされる。学習者が学習目標に到達したかどうかのフィードバックに乏しく、教育の効果が疑わしい。
 
back もどる 
教育予算
近年の国立大学医学部・医科大学の標準的な教育予算(歳出)は平均60-80億円である。国公私立を問わず医学部学生の直接・間接の教育に関する経費は、年間1人約1,000万円を超えるといわれている。
 
back もどる 
教育目標分類 タキソノミー
人間の行動は、知、情、技の3要素からなるという考えに基づき、それに対応した3領域、すなわち、1)認知領域、2)情意領域、3)精神運動領域、について教育目標分類することが行われている。これをタキソノミーという。認知領域はさらに細分化され、浅いほうから順に「想起」、「解釈」、「問題解決」のレベルに分けられる。同様に情意領域は「受け入れ」、「反応」、「内面化」に、また精神運動領域は「模倣」、「コントロール」、「自動化」のレベルに分類される。医師国家試験において、以前は想起問題が75%前後を占めたが、現在では解釈や問題解決レベルの問題が増加している。
 
back もどる 
教育目標
教育とは学習者の行動に価値ある変化をもたらすプロセスである。学習者は学習によって、「より望ましい状態」に行動を変容する。この「より望ましい状態」が「学習目標」として学習者にわかりやすく明示され、学習者自身がよく理解している必要がある。「学習目標」は教育者側からみれば「教育目標」である。目標に到達するのは学習者であって教師ではない。一般目標general instructional objective(GIO)はどのような能力を修得するかを包括的に示すもので、行動目標special behavioral objectives (SBOs)は観察ならびに測定可能な行動を示す動詞で終る短いセンテンスで具体的に記したもので、知識、態度・習慣、技能の3領域にわたることが望ましい。
 
back もどる 
教育評価法
学習者の行動が適切に測定されるように、妥当な試験が行われなければならない。認知領域(知識)の評価では論述試験や口頭試験が妥当性が高いとされるが、信頼性においては客観試験が優れている。精神運動領域(技能)と情意領域(態度・マナー)の評価ではシミュレーションテストや実地試験が行われ、観察記録が測定資料となる。これらの評価の際に評定尺度やチェックリストによる評価シートを使用すると信頼性、客観性の保持に役立つ。客観的臨床能力試験objective structured clinical examination (OSCE) は技能や態度・マナーのテストとして普及してきた。
 
back もどる 
教育評価
教育評価には(1)学生を評価するという側面と(2)教育プログラムを評価するという側面がある。
いずれの場合でも、まず学習者の行動・成果を測定し、その結果の価値判断を行い、判断に基づいての意志決定・次の行動計画作成、が行われる。学習者の行動を測定するために各種の試験が行われるが、観察記録やレポートも測定資料となる。また評価は目的によって形成的評価と総括的評価とに大別される。形成的評価では学習や教育過程の改善に向けてフィードバックされ、総括的評価では単位認定・進級・合否判定や教育プログラムへの人的・物的・時間的配分の判断資料となる。
 
back もどる 
教育心理学
教育に関する諸事象を心理学的に研究し、教育実践に生かしてゆく基礎研究。
日本の医学教育においては、教育心理学は従来ほとんど省みられることがなかった分野である。ともすれば「そんなことも知らないのか」「それではダメだ」などと学習者心理を無視し、やる気を削ぐような教員の言動がまかりとおってきた。しかし最近では学習者の学習心理を考慮した指導法の工夫が行われはじめている。医療面接実習における教員ファシリテーターの助言、テュートリアル教育におけるテューターの助言などは、学習者の動機づけ学習意欲を高めるように工夫されている。
 
back もどる 
教育業績
わが国の大学教員は研究指向が高く、教育指向が低く、これまで大学教員の採用や昇任の人事は研究業績を中心に行われてきた。
しかし1991年の大学設置基準改正により、教員の教育業績が評価の対象としてクローズアップされ、「大学は教育機関であり、研究はその機能の一つ」という認識が広まりつつある。
2001年の改正では、「大学教員の資格基準」が「教育研究上の能力」から「教育を担当するにふさわしい能力」と規定された。今後は全国共通の教育業績の基準を作成し、教員採用に生かしてゆくことが大きな課題であろう。
 
back もどる 
教育技法
教育技法は精神・心理的な面と技術的な要素とからなる。
前者は「教育の主体者は学習者である」ことを教育者がまず認識し、学習者を動機づけ、学習者が気づき、やる気を起こすよう指導することである。技術的な要素としては、学習者の立場に立って学習目標を明示し、学習者が能動的に学習できるよう、学習方法の種類と順序を練り、それらに適する資源(人的、物的)を用意することである。統合カリキュラム、問題解決型学習(チュートリアル学習)、ロールプレイ、ディベート、基礎配属、スキルスラボ、シミュレーション模型、クリニカルクラークシップなど、学習者の意欲を高める技法が活用され始めた。適切な評価方法(総括的評価のみならず形成的評価の導入)も重要である。
 
back もどる 
客観試験
採点者が異なっても同一の採点結果が得られる、言いかえれば出題時にすでに正答が決定しているタイプの試験を総称して客観試験という。
客観試験は主として知識の想起と解釈について評価することが可能であるが、学生の能力に応じて正しく評価できる問題を作成することは意外と難しい。あて推量によって正解できる可能性があり、5肢択一の場合、このチャンスが20%にも達する。
 
back もどる 
基本的臨床技
コミュニケーション技能、医療面接技能、身体診察技能、基本的検査手技、基本的治療・処置手技などが含まれる。医学教育の先進国では、入学と同時に教育し始め、卒業までずっと一貫して教育するカリキュラムになっている。
 
back もどる 
技能 skill
医学生(研修医)がある医療技能を身につけようとしたときに、指導者の技能を見学したり解説書を読むだけでは、身についた技能にはならない。
対人技能(コミュニケーション技能)についてはロールプレイや模擬患者を利用した実習でトレーニングを積んだ後に実際の患者との面接に臨むことが望ましい。診察技能や採血・救急蘇生技能などは学生同士の実習や模型を利用してトレーニングを積んで現場へ出ることが必要である。技能のレベルとしては、模倣(まねできる)、コントロール(じぶんなりにできる)、自動化(無意識のうちにうまくできる)という3段階がある。
 
back もどる 
気づき
今までの医学教育では教員が一方的に講義を行い、学生は学習することを押しつけられる傾向が強かったが、学生が疑問にぶつかり、それを解決するために学習の必要性に「気づく」ことが効果的な学習を生む。
こうして得た知識や技能は忘れにくく応用がきくものである。医療の場面においても「気づき」は大切である。生活習慣病の患者教育において食習慣や喫煙習慣などを変えさせようとする(患者の行動変容を起こす)には、本人がその必要性に気づかない限り難しい。
 
back もどる 
基礎医学配属実習
卒前の医学教育で、基礎・社会医学の学習ならびに研究の動機づけを目的として行われる実習で、現在、約7割の医学部・医科大学で実施されている。学年は3年あるいは4年が大半で、期間は1週〜30週(平均5-10週)、時間は最長で30時間/週である。
その間、学生が自ら選んだ基礎・社会医学系講座で実験、研究、フィールドワークなどを体験する。評価方法としては、自己評価、教員評価、成果発表会、論文集作成などがある。自主的学習意欲の向上、問題解決能力の習得、研究に対する理解などが期待される。
 
back もどる 
基礎医学実験・実習
医学は実証的学問であり、効果的な実験あるいは実習が知識の習得に役立つ。系統解剖学実習は多くの医学生にとって人体を観察する最初の機会であり、医学を学ぶ大きな動機づけとなる。病理解剖や病理組織実習では疾病による臓器や組織の形態学的変化を観察する機会が与えられる。生理学や生化学などの実習では生体現象の定性的・定量的な把握の方法、結果の分析と考察の方法を習得する。これらの実習は知識の習得だけでなく、問題解決能力・思考力の養成にも役立つ。
 
back もどる 
基礎医学
医学は基礎医学、臨床医学、社会医学に大別されてきた。基礎医学とは、臨床医学において疾病の診断および治療を学ぶうえでの基礎の知識として位置づけられる医学で、解剖学、生理学、生化学、病理学、免疫学、細菌・ウイルス学、薬理学などが含まれる。しかし近年の学問・研究の進歩によって、それぞれの学問分野の境界は不明瞭となりつつあり、医学教育のなかでも従来の基礎医学の学問体系にとらわれず、チュートリアル方式などを用いた統合的な学習が広まりつつある。
 
back もどる 
記憶
医学知識は年々膨大になってきており、それをすべて記憶することはできない。また動機や経験なしに記憶しようとしても、それは単なる暗記であって、すぐに忘却してしまう。
記憶は心理学的には、(1)学習や経験の記銘、(2)保持、(3)再生、(4)再認の4つの経過が含まれ、生まれつきの能力にも依存するが、記憶する対象にどのくらい関心があるか、記憶(学習)する方法がどのようなものか、にも大きく左右される。従って、まず学習意欲を刺激すると同時に、自らが動機づけすることが必要で、それがあってはじめて記憶方法も体得され、記憶の量と質が高められる。テュートリアル教育は学生自らが疑問や学習事項を発見することにより学習の動機づけを高めている。
 
back もどる 
患者中心型医療 patient centered health care
従来は医師主導で患者に対して「〜しなさい」「〜すべきだ」といった、いわゆる「ムンテラ」が行われ、あまり患者の考えや意見を取り入れた医療は行われてこなかった。
このような姿勢をパターナリズムpaternalismという。これからの医療はインフォームドコンセントの徹底により、患者の考えを認め、患者が自分の健康について自己決定してゆける医療に変えていく必要があるといわれており、これを患者中心型医療という。最近ではチーム医療の一員として患者が位置づけされるほどになってきている。
 
back もどる 
カリキュラムプランニング
カリキュラム立案に際しては、カリキュラムに対するニ一ズと現実的制約を考慮することが必要である。
従来は教育機関・教員サイドのニーズと制約が重視されてきたが、最近は社会・患者・学習者のニーズを重視する姿勢が望まれている。カリキュラム立案に際しては、教える側と学ぶ側、双方の意見が反映され、立案されたカリキュラムは双方で共有されねばならない。
 
back もどる 
カリキュラム委員会
教育カリキュラムの調査、立案、評価などを対象とする委員会である。
実務的な色彩の強い教務事項と、中長期にわたるカリキュラム関連事項とは、別組織で担当するのが適当である。カリキュラム委員会は教授・助教授・講師・助手など実際の指導にあたる各層から構成されるだけでなく、学習者(学生や研修医)も参加させたり意見交換の場をもつことが大切である。
 
back もどる 
カリキュラムU
カリキュラムは単なる授業時間割ではない。
(1) 教育に関する一般目標・各授業科目のより具体的な行動目標が明示され、(2)それを達成するための学習方略(方法の種類と順序、人的資源、物的資源、時間、予算)が立てられ、(3)評価方法についても明示された一連のものである。
これによって学生は「何を学習すべきか」を理解し、期待される目標に到達することが容易になる。カリキュラムにとって目標・方略・評価は必須の3要素である。またカリキュラムは学習成果やカリキュラム自体の評価によって、見直され改変されなければならない。
 
back もどる 
家庭医
第一線の医療現場で、患者や地域住民の抱えるあらゆる健康問題を解決する基本的な医療を行う医師を家庭医、プライマリ・ケア担当医、かかりつけ医などと呼んでいる。「プライマリ」には「第一」という意味のほかに「基本的」という意味が含まれ、「ケア」には患者の面倒をみ、世話するという意味が含まれている。
家庭医は内科、小児科、精神科、外科、眼科、耳鼻咽喉科、産婦人科などの基本的医療を提供し、必要なときは各専門医に紹介相談しつつ、ターミナルケアをも提供する。国民は専門医の存在価値は十分に認めながらも、「いつでも、どこでも、何でも診てくれる」家庭医を求めている。
 
back もどる 
課題学習
課題学習というと、教員から「?について調べよ」「?の原因は何か?」などといった質問形式の課題が出され学習する、というイメージを抱きがちであるが、それは本来の課題学習ではない。それは単なる宿題である。本来の課題学習は、学生が臨床症例や実験結果などの事例をもとに自由な発想をしながらグループ討論を行い、学習すべき課題を見いだし、自己学習を行うことをいう。こうした学習を小人数のグループで行い、各グループに教員がついた学習形式をテュートリアルと呼んでいる。
 
back もどる 
学習方略
学習を効果的に行うために、教育目標ごとに適切な学習方法の種類・順序・資源(人的、物的)を選択し、具体的に示した計画のこと。テュートリアル教育を例にとると、学生自らが学習課題を見いだすための症例、グループ討議に必要な部屋と物品の確保、関連する講義、自己学習教材、学生の質問に対応できる教員の配置など一連の計画をいう。
 
back もどる 
学習評価
学生がどのように学習し成果を挙げたかを評価すること。その評価が学生の今後のより良い学習につなげられるようにフィードバックに利用される場合を形成的評価formative evaluationという。一方、合否、進級、卒業、免許取得などの重大な決定の評価に利用される場合を総括的評価summative evaluationという。評価というと一般的に総括的評価を思い浮かべやすいが、形成的評価をうまく取り入れることが重要である。
 
back もどる 
学習者中心型教育 learner (student) centered education
従来の医学教育は教員が一方的に講義を行う教員中心型教育teacher centered educationが主体であった。しかし医学生抜きで一方的に行われる教育は効果的でないとの反省から、医学生が自ら学習するのを最大限支援する学習者中心型教育が広がりつつある。テュートリアル教育はこの思想に基づいた教育方法である。
 
back もどる 
学士入学
成熟した学生が入学することを期待して、学士取得者(大卒者)を再度、医学部に編入学させる制度。国立大学では定員の5-15%程度で、2年次または3年次に編入させるところが多い。学士入学者は人間的に成熟し学習意欲が高いという評価がある一方、「鉄は熱いうちに打て」(若いほうがよい)という考え方もあり、高校卒の受験者を排除してまで学士を入学させることには慎重な意見も根強い。
 
back もどる 
学外実習
地域に根ざし、人間性や全人医療の教育を目的として種々の学外実習が行われるようになった。社会医学分野では以前から保健所、福祉施設、地域保健施設などでの実習が行われてきたが、最近では入学直後に種々の医療・保健・福祉施設での実習(アーリーエクスポージャー)を行い、医学生の動機づけを高めたり、病院実習を学外の地域病院や診療所で行い、プライマリ・ケアや一般的疾患の診療能力の向上を図ったりしている。
 
back もどる 
学位
学術に関する深い学識と研究能力のある者に授与される特定の呼称。1991年から学士も学位として扱われるようになり、学士(医学)(英語表記M.D.)、修士(医科学)、博士(医学)(英語表記Ph.D.)などと呼ぶことになった。博士には大学院を修了して授与される課程博士と、論文審査に合格した者に授与される論文博士がある。近年、大学院教育が重視され、大学院の昼夜開講制や夜間大学院が普及しつつある。
 
back もどる 
外来実習
臨床実習でポリクリという言葉をよく耳にするが、これはドイツ語で「外来患者診察」の意味で、ドイツ医学を採用した我が国ではもともと外来実習が中心であったことの名残である。戦後、米国医学の影響で病棟実習が主体となったが、最近、プライマリ・ケアの重要性から外来実習が再認識されるようになった。
ところが大学病院では特殊な患者が多く、プライマリ・ケアを目的とした外来実習が難しくなっている。そこで関連病院や診療所での外来実習が強化されるようになりつつある。
 
back もどる 
開放型質問
医療面接における概念のひとつ。「痛みがありますか」「眠れましたか」など、回答者がyes、noでしか答えられないような質問を閉鎖型質問closed questionと言うのに対して、「どのような痛みでしたか」「どのようなことを考えていて眠れなかったのですか」など、回答者が自分の言葉で自由に回答できるような質問を開放型質問open-ended questionという。面接のはじめに開放型質問を用いて、相手の言いたいことを引き出し、後半に閉鎖型質問を用いて確認するとよい。
 
back もどる 
解釈モデル
医療面接における概念のひとつ。患者が自分の病気の原因をどうとらえ、なぜ発症したのか、どの程度重いのか、予後はどうなのか、どんな治療が必要なのか等、患者自身が考えている自分の病気の解釈。これを患者に話してもらうことで、患者と医師のコミュニケーションギャップを少なくし、患者にとってより納得、満足のいく診療が進めていけるようになる。
 
back もどる 
文献検索システム (literature retrieval system)P250
必要な文献(一般的には研究の参考資料となる書物や文書、論文のこと)を、キーワード・論文名・雑誌名・書名・著者名などを手がかりに探し出す情報検索の方法で、医学教育への導入の必要性が力説されている。
今日文献の量は膨大となっており、従来の雑誌の引用文献や図書カードから検索する方法に取って代わって、コンピューターによる文献検索システムが繁用されている。原著論文を検索するデータベースとしてMedlineやEMBASEが知られている。しかしこのようなデータベースは多くの分野を網羅しているため、検索にかかる労力が大きく、また個別の臨床的疑問点との関連性や妥当性の検討に手間がかかる。
従って臨床現場では、まず専門家の手で妥当性が吟味済みの2次資料(Cochrane libraryなど)を利用し、それでうまくいかない場合に限って利用することが多い。
 
back もどる 
ドイツの医師免許
医師国家試験は全部で4回。2年終了後に「医師前期試験」という1回目の国家試験を受験する。合格率80%程度。合格すると臨床課程に進むことができる。4年終了後に「第2期医師国家試験第1部」、さらに5年終了後に「第2期医師国家試験第2部」がある。6年の臨床実習終了後の「第3期医師国家試験」に合格すると医師資格が与えられる。どの試験も3回まで受けることができるが、いずれかを3回不合格になれば生涯受験資格は失われる。
 
back もどる 
ドイツの医学教育制度 (medical education system in Germany)
ドイツの医学教育は13年間の一般教育を終了した高等学校卒業資格をもつ者が対象である。医学部入学志願者は、志望大学の順位を書き、大学入学資格試験であるアビトウア(Abitur)の成績、全国一斉試験(日本のセンター試験に相当する)の結果などを添えて、ドルトムント(ドイツの都市)の学生分配機構に願書を提出し、入学先の決定を受ける。履修年数は日本同様6年であるが、一般教養教育はない。大学は学期制で、4月および10月に入学し、1学期、2学期と半年を単位にして数える。ドイツの大学は一部を除いてほとんど国立で、国立大学の授業料は学部を問わずドイツ連邦政府の負担である。
 
back もどる 
パネル ディスカッション (panel discussion)
公開討論会の1形式。特定のテーマについて専門的知識をもち、しかも異なった立場や意見をもつ数名のパネリスト(パネラーともいう)とコーディネーターと呼ばれる進行役が、多数の聴衆を前にして舞台上のテーブルにつき、座談会形式で討議を進め、のちには聴衆が質問を通して討論に参加する方法。これは、パネルという「閉じた」議論をすることによって、その後聴衆に「開かれた」議論をしてもらうためのものである。
一方シンポジウムとは、いっしょにsyn-飲むposisの意のギリシャ語symposision(饗宴/きょうえん)が語源。特定のテーマについて数名のシンポジストがまず自分の意見や研究報告を発表し、そのあとにフロアの参加者や司会者の質問について答える討論形式の一つ。
現在日本で行われているいわゆるシンポジウムはほとんどがドライな会場でお偉い先生方の話を静粛に聞く形式のもので、これでは本当のシンポジウムではない。
 
back もどる 
認定医制 (medical specialty borad)
学会認定医制協議会に所属している、臨床医学の各専門領域の学会が発行する資格のこと。
各専門医学会では、4〜7年の研修指定病院での修練を経た医師に対して、筆記試験、口頭試問、面接などの自主的な試験を行っており、これに合格した者を各科の認定医という。
しかし医療制度改革が進むなかで、医師の専門性を明確にすることが必要とされ、各学会制度の見直しや統一化などの調整作業を強化していくために学会認定医制議会は2003年1月に専門医認定制協議会と改称、さらに2003年4月有限責任中間法人日本専門医認定制機構となった。
 
back もどる 
バイオエシックス (bioethics)
ギリシャ語で「生命」や「生活」を意味するbioと「倫理」を意味するethikeからつくられた合成語であり、「生命倫理(学)」と訳される。生命諸科学とヘルスケアの道徳的諸次元を学際的に、多様な方法論を用いながら取り扱う体系的な研究とその実践である。
医学では、診断・検査・治療・緩和ケアなどの臨床の場において、患者の人間性や人権を倫理的、道徳的にどのように実現するか具体的に検討する。その他研究領域には「受精と生殖」「臓器・組織移植と人工臓器」「人間の福祉と動物の取り扱い」などがあり、生命に関わる様々な問題を広範かつ多岐にわたって取り扱う。バイオエシックスのルーツの一つは、第二次世界大戦中のナチスの残虐な人体実験を糾弾した裁判で定められたニュールンベルグ綱領(1974年)といわれる。
 
back もどる 
内科学 internal medicine、medicine
今日誰もが知っている診療科である、近代西洋医学の導入とともに、日本人に広く認識された。 医学の本家本元のような存在であるが、その後の医学の発展は、一部の領域において内科という概念の妥当性を揺るがしつつある。
第一内科、第二内科などという名称がある。内科があまりにも膨大であるので、数名の教授の分担が必要なため、複数の講座を並列させているための命名である。内科全体をカバーするが、特に○○の分野に重点を置いている、というのが一般的な認識である。
 
back もどる 
公衆衛生学 public health
環境衛生を整える事により疾病が激減する。医学的知識に基づき、行政レベルでの環境対策が取られるようになった。この分野を担う新しく、しかも守備範囲が広い学問である。日本では、医学部の中に設置されているが、諸外国では、公衆衛生の大学院(School of Public Health)として独立している例が散見される。
 
back もどる 
微生物学 microbiology 細菌学 bacteriology
日本の医学部では、必ず存在する講座(部門、分野)である。20世紀の医学は、病原体の発見の歴史であった。光学顕微鏡の発達により、次々に病原体が発見され、それまでは原因がわからなかった病気も、あれも感染症これも感染症と判明し、驚きの連続であった。
この領域で教える病原体は、細菌、真菌(カビ)、ウイルスなどである。これらの感染を受けると、人間は免疫を持つようになる。
免疫学は、微生物学者によって研究されたので、伝統的に免疫学の教育を担うのは微生物学の講座が多い。
 
back もどる 
免疫学 (immunology)
免疫、すなわち疫から免れる。
一度罹った感染症(疫)は、二度目からは罹っても軽症であることを、人々は経験的に知っていた。しかしこの免疫の機構が明らかになったのは、つい最近のことである。人はなぜ感染症から身を守る事ができるのか?
こればかりでなく、病原体に感染するとなぜ人は病気になるのか?
さらに自分の身を守るべき免疫機構が自分自身を攻撃する場合がある、アレルギーの仕組み、など種々の病気が次々に明らかにされた。まさに革命的な医学の進歩であり、免疫学の存在は医学界で急速に着実に認知されていった。
 
back もどる 
フィードバックは「タイミング良く」
フィードバックはなるべく早く与えるほうが良い。何日も経ってしまうと、学習者自身が何のことか忘れてしまっている場合も多い。しかしマイナスのフィードバックの場合、直後のフィードバックが好ましくない場合もある。個人的な問題の場合は人目に付かない落ち着いた環境でフィードバックすべきである。
 
back もどる 
フィードバックは「具体的に」
「患者さんの不安な気持ちに気を配っていましたね」だけでは今ひとつ具体性に欠け、いわば「お世辞」的フィードバックになっている。「患者さんが黙ってしまった時、『何か気になることがおありですか?』と尋ねたのは、患者さんの不安を配慮した良い質問でした。」というように、具体的に学習者の行動をあげてフィードバック すると良い。
 
back もどる 
法医学 (forensic medicine, legal medicine)
文字通り法律と医学の接点に関する学問である。日本では社会医学に分類される。不審な死に方をした場合、遺体は法医学者により司法解剖、法医解剖される。学ぶ内容としては、死亡診断書の作成、死体検案書作成、検死に関する基本的知識、医事法、親子鑑定、個人同定など多様である。ひと通りの臨床医学を知ってから学ぶ必要があるため、5〜6年生にカリキュラムが組まれている場合が多い。
 
back もどる 
衛生学 hygiene
人体は外からの化学物質や微生物からの障害を受ける。このような外的要因による疾病の予防に関する教育と研究は、医学の重要な分野であり、日本の医学部では、かなり早期から講座として設置されていた。公衆衛生学との区別が不明瞭になりつつある。
 
back もどる 
寄生虫学 parasitology 医動物学 medical zoology
寄生虫学では、人体に寄生する寄生虫の生物学、寄生虫症の病理、診断、治療、公衆衛生対策について学ぶ。諸外国では、臨床感染症の一部として教育されている場合が多い。また人に直接危害を加える昆虫などについて学ぶものを医動物学と称するが、これは日本独自の概念である。
 
back もどる 
薬理学 pharmacology
医学部における薬剤関連の学問である。もともと内科医の起源が薬師である事から、近代医学と薬剤とは深い関係がある。幅広い薬剤学の中から、薬と生体反応など、医学に直接関係している事を教える、という意味で薬理学という言葉が、日本で新たに作られた。
その後、薬理学の研究は臨床方面と共に、極めて基礎的な方面にまで範囲が拡がってしまったため、臨床医のニーズに直結するものに重点を置いた臨床薬理学(clinicalpharmacology)の必要性が認識されつつある。
 
back もどる 
フィードバックは「描写的」に
学生が採血に失敗したとき「君は不器用だね」というのは「評価的」コメントであり、学習者には良い影響をもたらさない。「針を挿入する角度が大きすぎたね」というのは「描写的」コメントであり、学習者が次に何を直せばよいかが判る良いフィードバックである。
 
back もどる 
フィードバック
プラスのフィードバックは学習者の好ましい行動をさらに促すために、マイナスのフィードバックは好ましくない行動を改めるために行われる。プラスのフィードバックを「お世辞」と、またマイナスのフィードバックを「批判」と混同してはいけない。日本人は概してプラスのフィードバックが苦手のようである。
 
back もどる 
成人学習の原則(4) フィードバックされることを好む
学習者の現在の仕事ぶりを直接本人に伝え、それによって学習者の今後の成長を促す過程を「フィードバック」という。これは合否判定や資格判定などにおこなわれる試験(総括的評価)とは異なり、学習効率を高めるために行われるもので、「形成的評価」とも言う。
 
back もどる 
成人学習の原則(3) 自分自身で学習目標を立てることを好む
「いったい、そんなことができるのだろうか?」と思う方もあるかもしれないが、一方的に「・・・・しなさい」と言われるより、教育者と学習者が話し合いながら学習目標を立てることは有効であることが証明されている。
 
back もどる 
成人学習の原則(2) 知識の詰め込みよりも概念や原則の学習を好む
「知識の詰め込みは、オタマジャクシに甲状腺ホルモンを投与するようなものである。すぐにカエルになるのは良いが、小さめのカエルしかできない。」(Smith 1985)
問題基盤型学習(テュトーリアル教育)は知識の詰め込み学習よりも臨床問題解決能力を重視する教育法であり、この成人教育の原則に沿ったものである。
 
back もどる 
成人学習の原則(1) 学習したことを直ちに実践したいと思う
学習したことが実践に結びつかない時、学習者はフラストレーションがたまる。
講義で聞いた内容が実際、どのような意義があり、臨床的に応用されているのか、学習者が納得できるようにしなければならない。臨床の場においても、なるべく実際の症例にもとづいた学習を行うことが望ましい。
 
back もどる 
成人学習の原則
医学生やレジデントは大人の学習者であり、医学教育は成人学習の原則に従ったものでなければならない。医学教育者の中にはこの原則を知らずに、まるで小学校の教員が生徒を教えるように教育を行っている場合がある。医学生を成人学習者として尊重する姿勢が教員にも事務官にも求められる。成人学習の原則としては以下のようなものがある。
(1) 学習したことを直ちに実践したいと思う
(2) 知識の詰め込みよりも概念や原則の学習を好む
(3) 自分自身で学習目標を立てることを好む
(4) フィードバックされることを好む
 
back もどる 
病理学 pathology
なぜ病気になるのか? 病気になった体には、どのような変化が起こっているのか?昔から人々は不思議に思っていた。 次々に解明されていったが、関連の学問の進歩に伴い、さらに奥深く解明されつつあり、留まるところを知らない。 すなわち古くて新しい学問である。病死した人間を解剖する病理解剖や、患者の組織の一部を切り取り顕微鏡で観て診断する事(生検)が主な研究業務である。 病理解剖したあと、患者の臨床所見と病理解剖所見との総合的な検討(CPC)が行われる。
 
back もどる 
生化学 医化学 (biochemistry)
人間の活動は、膨大・複雑な化学反応の結果である。難しい事を考えるのも、ご馳走を美味しいと認識して幸せを感じるのも、すべて化学反応で説明できるはずである。 西洋医学は、化学の発展により、大きく成長した。化学のすべてではなく、医学に直結したものを抜粋したものが、生化学とされている。
近年の医学の教科書で、いちばん量が増えたのは、生化学である。
 
back もどる 
生理学 (physiology)
生体の機能に関する古典的な学問である。人間が生きていくために必要な生理作用を扱う。体温調節、血圧調節、呼吸、神経、ホルモン、など膨大な範囲に及ぶため、日本の医学部では通常2人以上の生理学の教授いる。 医学を分けるとき、生理系と形態系、生理系と病理系、などの分け方がある。生理系と形態系という分類の場合、判断基準は、その扱う内容が機能か形態かである。生理系と病理系という分類の場合、判断基準は、その扱う内容が正常か病的かである。
 
back もどる 
機能解剖学 functional anatomy
動物の体では、当たり前のことであるが、形態と機能は密接に関連している。このため、形だけを論じて無味乾燥な講義にするのではなく、生理機能と結びつけて形態を論じる(機能解剖学)事がある。顕微鏡レベルの形態学と生化学が結びついたのが、今の医学の多くの分野で流行となった細胞生物学(cell biology) である。
さらに、蛋白質や遺伝子レベルでの統合的な研究は、分子生物学(molecular biology)である。
 
back もどる 
系統解剖学 systemic anatomy 局所解剖学 surgery anatomy
系統解剖学は、骨、神経、消化器、呼吸器などのように、系統たてて、その形態を記載する学問である。
日本の医学部の解剖学が、伝統的に大事にしてきた考えである。 これに対して、局所解剖学は、頭部、上肢、骨盤、などのように体の一部に注目して形態を記載する学問である。
外科医にとって、手術をする上で重要な情報である。人体を実際に解剖する解剖学実習では、局所解剖学が教えられる。
 
back もどる 
発生学 embryology 奇形学 teratology
受精卵から出産までの間における人体の形成(手足、脳、内臓など)を形態的に記載した研究(発生学)も、医学を学ぶ上で重要な学問分野である。日本では、解剖学の一分野として教えられている。人体の形成の過程で、胎児の外見的な奇形や、内臓の奇形が生じる事がある、これを扱うのが奇形学である。
解剖学に含まれるが、教育的には、病理学やそれぞれの臨床の科目の中で教えられている。
 
back もどる 
肉眼解剖学 gross anatomy 組織学 histology
解剖学の主な内容は、肉眼で区分できる人体構造である(肉眼解剖学)。そのほかにも、体の表面の形態(表面解剖学surface anatomy)も重要であるが、西洋では画家の基礎能力として発達した。日本では冷遇されていたが、医学生が自分の体から学べる解剖学として利用されている。
さらに、顕微鏡で見た形態を記載するのが、組織学である。光学顕微鏡では、一つ一つの細胞が観察できる。組織学の一分野とされているが、電子顕微鏡で見た形態を記載するのが、細胞学(cytology)である。
電子顕微鏡では、細胞内の小器官が観察できる。 組織学も肉眼解剖学と同じく形態に関する学問(morphology)であり、日本では解剖学で教育が行われている。
 
back もどる 
人体解剖学 human anatomy 比較解剖学 comparative anatomy
医学部で教えるのは、人間の形態である(人体解剖学)。 解剖の学名を決めるのは、国際解剖学会の中の用語委員会である。
日本語訳に関しては、日本の解剖学会が役割を担っている。人間も他の動物と祖先を共有しているので、他の動物の相同器官との比較で、さらに人体解剖学の理解を進める事が出来る(比較解剖学)。
 
back もどる 
解剖学 antomy
体の形に関する学問である。西洋医学教育の根幹を成す。解剖学は、人体を分ける(腑分け)のが出発点である。西洋科学は、まず分ける事から始まる。
解剖学は、西洋医学教育の根幹を成しているのである。これが、解剖学を持たない漢方医学と、根本的に異なる点である。
解剖学で扱う内容が膨大であるため、日本の医学部では、解剖学の講座(分野)の数は2〜3であるのが普通である。
 
back もどる 
観察力
観察力は、医療を行うにも医学研究を行うにも、絶対に必要な能力である。人間の場合、視覚が発達しているため、観察力とされているが、聴覚、嗅覚等に関する"観察力"も重要である。観察力は見えているものを認知し、他の物との差を理解する能力である。我々の見ているものは無数にある。しかし、その大部分は意識に上っていない。意識に上げてこそ、判断と分析の対象になるのである。この能力は知識と結びついている事が多いので、知識量が増える思春期以降にも発達する。医学の分野で言うなら、医学の知識を与え、なおかつ観察眼の大切さを示す具体例を示しつつ、学生の教育を行えば、観察力の開発は可能である。また、学生自身がその分野に興味があれば、その分野の観察力はますます発達する。夫婦でドライブしていて、妻が地図を読めない事を夫がなじる。帰宅したその夫が冷蔵庫の中のバターを見つけられないのを妻がなじる。興味のない分野に観察眼は、発達しない。
 
back もどる 
決断力
判断ができたら決断し、実行せねばならない。しばしば経験する事であるが、判断力は正常でも、結果の重大さに不安で、その決断ができない人がいる。いわゆる優柔不断の人物である。逆に結果の重大性に気づかず、安易に決断する人もいる。これは蛮勇とも評価される。決断には理性的な判断と、心理的な背中押しが必要である。後者に関しては、その人物が種々の修羅場をくぐり抜けて、結果的に成長するしかない。医師が実際の医療現場で決断を下すためには、その人物が責任者に置かれたという経験が必要である。医療の結果責任が厳しく追及される現在、若い医師が責任者に置かれる機会は徐々に少なくなり、決断力を育成できる年齢を通り過ぎた年齢になってから、その立場におかれる傾向にある。
 
back もどる 
判断力
複数の事柄につき、量的な要因、質、頻度、確率、結果の価値などを考慮しつつ判断を下す。ありとあらゆる分野で重要な分野であり、医療を行う上でも医師の判断力は、最重要である。実務においては判断が本当に良かったか悪かったか、科学的な検証ができる場合が少ないが、判断の評価はなおざりにできない。古代中国では、戦争を指揮する将軍の判断力の育成に囲碁が用いられたという。囲碁では局地戦を戦いつつ、全体を見極める能力が求められる。さらに全体を見つつ局地戦を戦うのである。現在の医学教育では、バランスのとれた判断能力の育成が求められるが、演習を正規のカリキュラムに取り入れるのは容易ではない。
 
back もどる 
視野
理解、思考のためには、複数の事柄を想起する必要がある。どの範囲、どの程度の事柄まで思考に入れるかは極めて重要である。そのためには、その事柄を知っている事はもちろん、思考にあたって関連事柄の想起を初めから除外してしまわない事も大切である。すなわち、人間の思考においては、知らない事は初めから思考に入れないし、知っていても固定観念が強すぎると、思考すべき関連事柄として想起されないのである。思考にあたり、多くの事柄を想起し、検討できる場合、視野の広い人と呼ばれる。逆にほんの身近な事柄しか考慮に入れない、また頑ななに思い込んでいて少し異なったことは関連事柄として想起できない人、この場合、視野の狭い人とされる。この視野の広さは、種々の社会体験をしてから、すなわち失敗をくり返して学ぶものである。年齢を重ねる毎に視野が広くなり、体力、記憶力などの減弱があってもそれを補い、総合能力として人間は成長する。
 
back もどる 
記憶力
記憶力は、人間の能力の中でも重要な能力であり、しかも客観的に測定しやすため、入試でも大きなウェイトを占めている。記憶は、五感(視覚・聴覚・嗅覚など)と結びついているが、人間の場合、言葉と結びついた記憶、すなわち知識が圧倒的である。大学入試でみるのは、主に知識である。この知識の量が、その人の頭の良さと短絡的に判断されてしまう傾向さえある。しかし、そもそも言葉は実体や概念に対応してはいるが、実体や概念そのものではないため、言葉との乖離が起こる事は、しばしば経験される事である。すなわち、言葉としては知っているが、その内容を全く知らない状態は多々ある。このため、入試では満点を取ったはずの人、が実際には何も知らない状況も有り得る。
 
back もどる 
独創力
創造力の一極端の能力である。いかに他人と異なっているかが大切であり、しかもそれが意味あるものでなければならない。創造性に富むべき芸術作品も、人を感動させられなければ単なる奇抜である。時代と場所が変わればその奇抜性が受け入れられる場合があるので、独創性と奇抜性は紙一重であるが、社会に対するその価値には大きな差がある。
医学の革命的な進歩には独創性が必須であるが、独創性に富んだ人物は日常の行動にも独創性が多く、すなわち奇行が多く、周囲の者はへきへきしてしまう。 医療を行う者は、他職種の人々との共同作業で患者を助けるのが業務である。ここには特別の独創性は不必要である。この意味においてなら、医療の実行と医学の進歩を厳然と分ける必要がある。これは、医学生にしっかり認識させるべき概念である。
 
back もどる 
創造力
新しい概念を作り出す能力である。
芸術の方面では必須の能力である。また、新分野の開拓困難な状況からの脱却などにおいても必須である。
創造力は、日常の医療の実施よりも医学の発展において求められる。この能力を入学試験で検定するのは容易ではなく、現在の入試(ペーパーテスト)を突破する学生が創造力に優れている保証はどこにもない。創造力も思春期以降に大幅に開発するのは容易ではないが、大学教育において適切な教育を行えば、すなわち“新しいものが評価される”という価値観を与えれば、今まで脳のどこかに眠っていた創造力を開花させる学生が多く居る事は確かである。
医療において知識の量は大切であるが、量的な事を求めるあまり、医学を理解させる事を優先させ、時間と手間のかかる創造力育成がおろかになるのは残念である。
 
back もどる 
理解力
種々の情報を、互いに意味のある形に関連づける能力である理解力は、高度の知的活動に必須の能力であり、現在の日本の入学試験を突破するには、卓越した理解力が必要である。膨大な量の医学の知識を学び医療に生かすためには、基礎能力として充分な理解力が求められる。思春期以後に理解力の大幅な開発は難しい。そのため入試の段階で理解力に優れている学生を集める事は重要な事である。
しかしながら、理解力は現在ある情報を関連づける能力であるので、これに固執すると新しい概念を生もうとする能力、すなわち創造力の開発がおろそかになる恐れがある。
 
back もどる 
CBTの問題のブラッシュアップ
CBTの問題はいわゆるMCQ(多肢選択問題)であり、出題者側が用意した解答の中から受験者が解答をひとつ選び出すものです。この形式で学力を正しく試験するためには、適切な問題を作製する必要があります。
この問題作製は決して簡単ではなく、教員なら誰にでもできるようなものではありません。
このため候補として提出された問題も経験を積んだ教員により磨きをかけ、完成度を上げる必要があります。これをブラッシュアップと呼びます。学内委員会のレベル、CBTの専門委員会のレベルの二段階あります。
 
back もどる 
CBTトライアル
共用試験は平成17年度の本格運用の予定ですが、医学知識・問題解決などの知的能力については、CBT形式で試験されます。
そのCBTの問題やシステムを作り上げ、さらにその運用が適切に行われるように準備をするため、最初の3年間はトライアルとして行われる事になりました。
第1回は平成14年2〜5月の間に77の医学部が参加しました。
臨床実習前の資格試験が、今までのカリキュラムにない大学の場合、平成14年度入学生に対して入学時に、平成17年度以降に臨床実習を受けるためには共用試験合格が条件である事が、伝えられました。
 
back もどる 
教育目標のRUMBAのAは、AchievableのA
教育目標で書かれている内容は、使える教育資源(設備、教員等)や学習者個人の能力から判断して、実行可能なものであるべきです。すなわち、見栄ばかり張った内容、建前優先ではなく、記載が現実的な内容になります。
 
back もどる 
教育目標のRUMBAのBは、BehavioralのB
教育目標で書かれている内容は、抽象的ではなく表現ではなく、個人の行動的(Behavioral)の具体的な表現であるべきです。 学習して得られる行動には、認知、情意、精神運動などの領域に分類することができます。
 
back もどる 
教育目標のRUMBAのMは、MeasurableのM
教育目標は、測定可能(Measurable)であるべきです。すなわち、目標に達したか否か判定できないと、客観的に評価できず、どうにでも解釈されたり、学習者に真意が伝わらなかったりで、せっかく示した目標が有効に働かなくなります。 それゆえ、学習者の行動を示す単語で、教育目標を書き上げることになります。その例は、「...できる。」 「... を理解している。」などです。
 
back もどる 
教育目標のRUMBAのUは、UnderstandableのU
教育目標は、学習者である学生に理解可能(Understandable)であるべきです。しばしば教員は、自分が分かっていることは学生も分かっていると思い込み勝ちです。また専門用語では、一言で言える内容も、分かりやすい表現に置き換えるのは、書く人自身が内容を相当しっかり理解している必要があります。このため、初心者にも分かる内容に書き上げるのは、以外に困難です。
 
back もどる 
教育目標のRUMBAのRは、RealのR
学生の勉強意欲を促進するために教育の目標を設定します。その目標はまず学生にとって現実的(Real)であり、学生が納得して受け入られる魅力的なものにすべきです。このためには、その時代のニーズとその時代の学生の状況から、教育目標を柔軟に決める必要があります。
 
back もどる 
教育目標のRUMBAって?
Real:教育目標は現実的(Real)であらねばならない。
Understandable:教育目標は理解可能(Understandable)であらねばならない。
Measurable:教育目標は測定可能(Measurable)であらねばならない。
Behavioral:教育目標は行動的(Behavioral)であらねばならない。
Achievable:教育目標は到達可能(Achievable)であらねばならない。
 
back もどる 
ミスター
ミスター ジョンソンがイギリスで医師となりますと、ドクター ジョンソンと呼ばれます。 さらに修業を積んで外科専門医になりますと、またミスター ジョンソンと呼ばれることになります。 この不思議な話は、外科医が、散髪屋に起源を持つためです。 散髪屋のジョンソンがミスター ジョンソンと呼ばれていた名残です。イギリスの外科医がミスターで呼ばれることに、専門家である誇りを感じるとのことです。
 
back もどる 
病院立脚型医学教育
世界各国、色々な医学教育の方法がある。 現在の日本では医学部が付属病院を持つのが常識であるが、これは、世界普遍というわけではない。 例えばイギリスの医学部では、付属病院が存在しない。医学部の臨床実習はNHS(National Health Service)の病院で、病院の医師によって行われる。これが、イギリスの医学教育が病院立脚型と呼ばれるゆえんである。
 
back もどる 
臨床実習入門
医学部医学科の学生定員は60名から100名程度である。臨床科の数は約20ほどである。臨床実習で一つの臨床科に配属される学生は4〜5名となる。このグループが各科を順次まわる事になるが、最初に内科で実習を受け、内科診断学などの実習を受けるのが望ましい。しかしながら教育資源の都合上、その逆のケースも多々ある。これを解決するために、全学生が病院実習を受けるに必要な基本中の基本を学ぶ機会が作られた。臨床実習入門がそれであり、内容的には内科診断学が主である。
 
back もどる 
アドバンストOSCE
OSCE(客観的臨床能力試験参照)は臨床技能を客観的な数値として評価する試験である。その実施時期はその試験の目的と密接な関係がある。アドバンスドOSCEと俗称されているものは、ある程度の臨床実習を受けた者が次のステップへ進む時期、すなわち卒業前後に行われると考えられる。卒前なら卒業試験として用いられる。卒後なら国試の一部として用いられる。2002年現在の日本では、アドバンスドOSCEは開発の途上にある。
 
back もどる 
プライマリ・ケア教育
医学部での臨床実習では、附属病院が高度に専門性の要求される疾患を主に取り扱うために、学生は難しい疾患に触れる機会が多い。しかし臨床の現場ではこのような疾患は稀である。 医師となって中小の病院に赴任した時に接するはずの地域包括・家庭医療(プライマリ・ケア)などに触れる機会があまりにも少ない。このため、医学部での正式な実習の一部として、地域医療機関での実習を取り入れる医学部が増加しつつある。
 
back もどる 
総合診療部
医学には内科、外科、小児科・・・などの専門があり、その内科の中でも呼吸器内科、血液内科などと細分化され、この行き過ぎた専門診療に対する是正の意味も込めて、総合診療部が川崎医大、佐賀医大で設置された。この設置をきっかけに、総合診療部が日本各地の大学に設立されつつある。総合診療部は、臨床一般を把握できる人材が配置されるため、臨床実習教育の司令塔的な役割をも要求されている事が多い。
 
back もどる 
臨床実習
医学部学生の臨床実習を3型に分ける事ができる。見学型、模擬診療型、診療参加型である。従来のポリクリと呼ばれる実習は、見学型が大部分である。
クリニカルクラークシップは診療参加型であり、学生が実際の医療チームの一員として患者の診療にあたる。
模擬診療型も医学生が患者を診察するが、正式の医療行為とは見なされず、記載されたカルテも練習版である。
 
back もどる 
アテンディング
アテンディング・フィジシャンという言葉が、アメリカの臨床医学教育の現場で用いられている。クリニカル・クラークシップ型の臨床医学教育が日本に導入されたため、アテンディング・フィジシャンの概念の導入も必要となったが、適切な訳語がない。
アテンディング・フィジシャンとは一人前の臨床医であり、教育病院において医学生や研修医への臨床実習を担当する医師である。これは役割を示す言葉であり、正式の身分を示す言葉ではない。アテンディング・フィジシャンの正式身分は教授、助教授、インストラクター、臨床客員教授(日本の非常勤講師みたいな身分)などである。
 
back もどる 
医学部医学科
医学部は長らく医学科のみであったが、最近、他の学科も含まれつつある。看護学科、保健学科の場合が多いが、その他、総合薬学科(広島大学医学部)、生命科学科(鳥取大学医学部)、栄養学科(徳島大学医学部)などがある。なお、日本の医師国家試験の受験資格は、単に医学部卒業ではなく、医学部医学科を卒業して得られる。
 
back もどる 
医学教育者のためのワークショップ
富士山の裾野で開かれるため通称、富士研、富士ワークショップと呼ばれている。1974年より開始され、日本の医学教育のFD(ファカルティ・ディベロップメント)の草分けである。ワークショップ形式の研修会は目新しく、多くの共感を得た。比較的小人数で長期間(約1週間)行われるのが特徴である。主催は厚生労働省と文部科学省。後援はWHO(世界保健機構)。日本医学教育学会が実際の運営に協力している。
 
back もどる 
学士編入学
一度学部を卒業してから、他学部に入学する事を学士入学という。医学部入試では多くの学士が入学試験を突破するが、彼等は他の学生と共に医学部の一年生に入学する。彼等は教養教育や医学部の専門基礎教育に相当する科目(生物学、化学など)の履修を終了している場合が多く、医学部の一年生から再スタートさせるのは気の毒な面がある。そのため学士用に別枠で定員を設けて入試を行い、三年次などへの編入学を制度的に認めている場合がある。これを学士編入学という。
 
back もどる 
院外臨床実習
大学の付属病院以外の医療施設で医学生が臨床実習を行う例が、日本全国80校の医学部の9割以上で見られる。その期間は平均8.6週である。学生が実習病院へ行く交通費に関しては、学生が自分で支払う例がほとんどである。従って実習病院の選択に関しては、公共の交通期間で、安価に行ける施設が望まれる。遠方の施設に関しては、学生の自発的な希望によるものに限るべきであろう。なお、海外の病院で実習をする機会があるのは、2001年には80校中31校である。
 
back もどる 
基礎配属
基礎配属という言葉は、医学部の学生が基礎医学や社会医学の教室に“出入り”しつつ、すなわち医学の研究に直接触れて学ぶ教育形態に用いられる。一般に正式のカリキュラムの一部であり、長期間(1〜数ヶ月),5名程度の学生グループが希望の教室に配属される。2001年には、80校中58校で採用されている。実施学年は3年生が29校、4年生が23校である。
 
back もどる 
Early Exposure (早期体験実習)
Early Exposureは入学後の早い時期に医療、医学の現場を見学、体験させて、勉学の動機づけを目的とした学習企画である。これは80校ある医学部のほとんど全校で行われている。その期間は平均8.2日間である。最多日数は40日間である。学外で行う実習であっても正規のカリキュラムの一部であるので、種々の責任は大学が負う事になる。実習前に安全と規則に関する説明が必要である。学生に任意保険に加入する事を勧めるのも必要である。
 
back もどる 
新入生に対するオリエンテーション
大学での学習は高校の場合と大きく異なり、学生による科目履修の選択の幅が広がり、迷いがちである。また生活においても自由度が大きくなるため、とんでもない被害にあったりしやすい。それゆえ新入生に対しては、学業と私生活の両面にわたってのオリエンテーションが必要である。現在全国の医学部で行われているが、1日が27校、2日間が30校、3日間が6校である。合宿して行う例も34校でみられるが、国立大学の場合、学生の合宿の食費と宿泊費を捻出するのは難しい。
 
back もどる 
インターン
第二次世界大戦後、日本ではアメリカ医学の影響が強くなった。1946年に医学校卒業後に、1年間の病院で医療技術をインターンとして学んでから医師国家試験を受け、正式の医師免許を与えられる事になった。インターンは、医師でも学生でもない身分のまま、臨床の数科をローテーションしながら学ぶ事を求められていた。これには種々の問題が指摘され、結局、大学紛争の1968年にインターン制度が廃止された。
 
back もどる 
日本への西洋医学の伝来
中世の大航海時代、宣教師一行は未知の土地へ布教に行った場合、医療活動をも行った。これは現地の人間に目に見える利益を与え、異人の一行が歓迎される事につながった。日本へは、16世紀にポルトガルの宣教師により西洋医学が伝えられた。西洋人による布教を嫌った徳川幕府は、商売に徹するオランダ人の往来だけを許した。さすがのオランダ人も遠方の異国の地へ行くのに、自分達の医療を担ってくれる医師が必要であり、その結果長崎にはオランダ医学が伝わった。明治政府は日本に輸入する医学をドイツ医学と決定し、以後ドイツ医学が日本中に広がった事はあまりにも有名である。アメリカ医学が日本に本格的に入って来たのは、第二次世界大戦後である。
 
back もどる 
代替医療・補完医療
現在は西洋医学が世界の医学の主流となっている。しかしながら、西洋医学は万能ではない。技術的な限界で西洋医学でも治癒しない患者がいる。また、治療費があまりに高額で西洋医学の恩恵にあずかれない場合があって、病に苦しむ患者がやはり多くいる。このような時、西洋以外の医学が役立つ場合がある。この事が欧米人に認識され始め、代替医療(alternative medicine)、補完医療(complementary medicine)と呼ばれている。その代表例は、中国医学(漢方、針、灸など)である。
 
back もどる 
医学教育の言語
日本の医学部では日本語を使って医学教育が行われる。アメリカでは医学の新歩と共に新しい概念が次々に生まれ、それに対応する医学専門語が次々に発表される。
日本ではそのアメリカ生まれの単語がそのまま日本語の文章の中に取り込まれてしまう。日本語は世界中の単語を外来語として吸収する能力を持つ。日本語の強みは英語を同じく、左から右に向かって書く事である。日本語の中に正体不明の外来語がちゃんと入ってしまう。中国語は上から下に向かう。縦書きである。無理やり横書きにした場合、右から左に向かう。これではなかなか英単語が入り込めない。ついに横書きの中国語は左から右の表記になった。(日本も第2次世界大戦後に左から右への表記に変わりました) アラビア語は右から左の横書きであり、英単語は入り込めない。このため医学をアラビア語で習うか、英語で習うかの二者択一である。医学のような高度の専門内容を本にするにはかなりの文化力が必要である。自国の言語にそれだけの力が無い場合、医学教育を英語で行わざるを得ない。その場合、医学生の英語力は相当のものとなる。
日本の医学部では今も、これからも、日本人の書いた日本語の教科書が用いられる。医師というインテリでありながら、英会話能力は他国の医師に比して低い。
 
back もどる 
教員の区分
日本の教員は教授、助教授、講師、助手に分類される。アメリカではprofessor、associate professor、assistant professor、lecturerなどに分類される。
日本の医学部の教授は、講座の主任であることが多く、英語で言うとchairman and professorである。主任でない教授は英語で言うとprofessorである。このprofessorはassociate professorやassistant professorと区別するためにfull professorとも言われる。
アメリカではprofessorの適格者であればprofessorになれる。日本では定員の関係で教授になれる人の数は限定的であり、アメリカではprofessorになれるほどの人材でも、日本では助教授、講師のままの場合がある。
日本の助教授はassociate professor、講師、助手はassistant professorと訳するのが実情をよく表しているのかもしれない。
英語を日本語に訳する時associate professorを准教授、assistant professorを助教授としている場合がある。
タイ国の医学部では、教授に昇進する事は日本以上に厳しい。定員が空いていても、教授として最高の適格者でないと教授の称号を与えない。
 
back もどる 
6年一貫教育
戦前の日本の医学教育は旧制高校から医学部に入学する学生、旧制中学から医学専門学校に入学する学生を対象としていた。
戦後は新制高校卒業してから2年間の教養課程(予科、進学課程)を経て4年間の学部教育が行われるようになった。さらに最近は6年間一貫教育と称して、6年間に亘っての専門教育が行われつつある。いわゆる専門教育の前倒しである。教養に相当する教育は、低学年に主に行われ、高学年になって行うのも良いとされるが、その時間数は減少している。
 
back もどる 
日本の医学部
日本の医学部は、旧帝大時代からの医学部、太平洋戦争前からの官立医科大学に起源を持つもの、戦争中の医専に起源を持つもの、戦後に設立された東京医科歯科大学、昭和40年代以降の新設の医学部、私立の医学部などに分類されている。
日本の医学部の学生定員はおよそ60名から100名である。かつて40名定員の医学部もあったが、医師不足が社会問題化し新設医大ブームであった頃に定員増が行われ、一時は120名定員の医学部も出現した。
現在日本には80の医学部があり、8000名弱の新卒者を出している。外国の医学部の学生定員は各国の事情に応じて様々であるが、日本の医学部における定員よりも多いのが普通である。
 
back もどる 
第96回医師国家試験結果
厚生労働省は4月25日に第96回医師国家試験(3月16日〜18日に実施)の合格者の発表を行った。受験者数は8719名、全体の合格率は90.4%であった。ちなみに過去の合格率は第95回:90.4%,第94回:79.1%,第93回:84.1%,第92回:89.6%、第91回:88.1%、第90回:89.3%,第89回:86.0%,第88回:86.2%,第87回:90.0%であった。
医師国家試験の問題作製の研究は大幅に進歩し、重箱のスミをつつく問題は姿を消し、考える必要がある、臨床的視点が必要であるなど、医療の技術者として認定するにふさわしい試験になりつつある。
医師として絶対に行ってはならない医療行為に関する問題(学生が地雷と呼ぶ問題)で禁忌肢を選択した場合は、合格基準から外れる。
 
back もどる 
相互評価
従来日本では自分の大学の学生の評価は、自分の大学の教員が行ってきた。最近医学部において、他校の学生の評価を互いに行う試みがなされつつある。これには、学生の品質保証の透明性を高める効果が期待されている。具体的な例は、OSCEの評価教員を相互に派遣する、共用試験に参加するなどである。
 
back もどる 
記憶できる期間
電話帳で電話番号を調べ、電話をかける。その瞬間に番号を忘れる。超短期記憶である。
昨日のご飯を思い出せても、1週間前のご飯を思い出せない。短期記憶である。
講義で覚えた内容、試験が終われば減衰が始まり、2ヶ月以内にかなり忘れてしまう。中期記憶である。
死ぬまで忘れないのが初恋の人の名前。長期記憶である。長期記憶の特徴は感情が伴った記憶ということである。
講義の内容を学生に忘れないようにさせるためには、講義の内容を言語だけで覚えさせるだけではなく、学生に感動などの感情を伴って覚えさせるように仕向ける。
 
back もどる 
講義の意義
医学部が期待するような独立した能力を持つ人材を育てるためには、多面的な教育方法が必要である。講義だけで人を育てようとした所に問題があるのであって、講義が他の教育方法と補完しつつ適切に行われている限り、講義はその意義を持ち続ける。さらに教授の話し方によっては熱意、情熱、興味などが学生にひしひしと伝わる。これこそが人間である学生が、教授に期待するものである。
 
back もどる 
言葉で伝えられるもの伝えられないもの
講義は、主に言葉による伝達である。
世の中で実際に起こっている出来事は、大きさ、形状、距離、重さ、匂い、温度、色、明るさ、実に様々な感覚が総合して表現されるものである。これを言葉だけで他人に伝えるのは至難の業である。講義ではそれを伝えようとするのである。従って実体が伝わらず、言葉のみが学生の記憶に残り、教員もペーパーテストでその記憶を調べるのである。実体の感覚が伴わない言葉だけの記憶は、テストが終われば忘れられる運命にある。
講義は有効である。しかし限界もある事を認識せねばならない。
 
back もどる 
学生の反乱
教授による知識の一方的な垂れ流し。このような講義を誰が楽しいと思うか? NO!誰も出たくないが、しかし、やはり学生は講義に出る。教授は意識していないかもしれないが、卒業証書をちらつかせつつ学生を講義室に縛り付けているのである。
講義室に姿を見せるが、学生は静かなる反乱を起こしていたのである。いねむり...無関心、...携帯電話。
近頃の学生は!! 結果が悪いのを他人のせいにするのが一番簡単な逃げ道であり、本人の精心衛生上も良い。しかし自分の教育の限界を感じていた教授がいた事も確かであった。 そして医学教育の改革のうねりが始まった。
 
back もどる 
知識詰め込み型教育
ひとりの教授、そして多勢の学生が向かい合っている。量的には効率が良い。しかし、このような講義の設定では、教授から学生への一方的な知識の移行になる危険性をはらんでいた。この量的効率が良い教育が、ペーパーテストでの評価一辺倒の時代には、良い教育方法と誤解されてしまいがちで、それは知識偏重の教育の始まりとなる。
親方から弟子への全人的教育、遊びながら、体験しながら、の教育は遠ざけられがちであった。 こうして育った人々の能力はいかに...。 知識の詰め込み型教育で成績優秀者は、世の中に出てからも成功できる人材ではなかった。
医学部の場合、卒業生が実務に携わる技術者である、そして音信が取り易い、などの理由で学業成績と実務能力の不相関を実感し易かった。
 
back もどる 
教育に使う道具
黒板にチョーク、教壇、学生用の机、そして講義室。この御ぜん立ては近代教育に大きな力を発揮した。本が貴重で学生に行きわたってなかった時代には、優秀な教授の講義を多くの学生が書き写せるという意味で、唯一の効率的な教育法であった。
印刷本が安価に多量に出回り、ビデオで講義が聴けて、インターネットでいつでもどこでも誰でも専門知識に触れるようになった現在、新しい教育法が模索されている。
 
back もどる 
レジデント (resident)
新米の医師をどのように教育するのか?難しい問題である。ある病院で新米の医師が通勤せずに病院の一室に住み込んで働いたところ、学習効率の著明な向上がみられた。以降、新米の医師は病院に住み込むこととなり、彼らは居住者(レジデント)と呼ばれた。
研修医がレジデントと呼ばれる語源はここにあるが、24時間体制の学習が求められる程厳しい訓練が人生の一時期に必要なのである。
 
back もどる 
CBT (computer-based testing)
最近話題になっている臨床実習資格試験が共用試験として行われようとしているが、用いるのはこの方式である。
コンピューターの画面に向かって受ける試験であるが、単に試験用紙をコンピューター画面に置き換えただけではなく、コンピューターが持つ能力を利用したものである。
すなわち、プールされた問題から個人個人に、別のセットの試験問題をその場で用意することができる。受験生全員一律の試験でない。従って日や場所を変えての分散受験も可能であり、隣の受験生と問題が異なるので「隣をのぞき見」式の古典的なカンニングは意味を成さない。その他、できる受験生は早々に試験が終わってしまうなど、種々の工夫が用意されている。CBTは、アメリカの運転免許試験にも用いられている。
 
back もどる 
CPC (clinico-pathological conference) 臨床病理学カンファレンス
患者が死亡する、病理医が解剖(剖検)する。その症例の臨床所見、治療などを主治医が呈示し、その剖検結果を病理医が発表し、診断や治療の妥当性を検討する会。臨床医と病理医が症例に基づいて医学医療の発展に寄与するカンファレンスであるが、医学生の教育にも充分活用できるため、医学教育にも利用されている。
 
back もどる 
CBE (community-based education) 地域立脚型教育
CBL(community-based learning)、CBT(community-based teaching)と呼ばれる場合もある。 PBL(problem-based learning)の一種であり、地域社会における医療の問題を中心にそえて医学を学ぶ。応用的な能力の開発が期待される。
 
back もどる 
BST (bedside teaching) ベットサイド指導
アメリカ・メリーランド州・ボルチモア市にあるジョンズホプキンス大学で最初に用いられた医学教育の方法。患者のベット側で教員が小グループの学生に臨床医学を教える。それまでは講堂で多人数の学生を相手に講義をしていたが、このBSTにより講義を上回る教育効果が得られたため、医学教育の技法として全世界に普及した。
 
back もどる 
USLME (United States Medical Licensing Exam)米国医師免許試験
三段階から成っており step1、step2、step3と呼ばれている。全てを合格して医師免許が与えられる。日本の一部の医学部で臨床実習前に行われていた資格試験が、共用試験として全国レベルで行われようとしている。この試験は米国医師免許試験のstep1に相当する。
 
back もどる 
択一制 selective
学習する科目をひとつひとつの科目で選ぶのが選択制である。大学がある科目群を複数用意し、この科目群を学生が一括して選ぶのが択一制である。食堂で例えるならば、前者はアラカルト方式、後者は定食Aコース、Bコース、Cコースからの選択である。
 
back もどる 
EBM evidence-based medician 根拠に基づく医療
俗に「病気は神様が治す、金は医者が取る」という揶揄がある。たいていの病気は日薬(日が経てば自然治癒する、の意味)で治る。従って医師はペテン師まがい、偽薬を使ってさえ、かなりの患者のニーズに応えられるのである。
これに乗じて、国家試験に合格した医師が医学的根拠に基づかない医療を行っても、病気が治って患者が満足する事態もある。このような状況は医療全体から見ると医療の質を著しく低下させる。
EBMとは、医師による医療が科学的な根拠に基づいて行われるべきことを、再度強調する言葉である。
 
back もどる 
カリキュラムT
外来語であるが、実態は教育計画である。その教育計画は総論ではなく、教育内容(科目名、時間数)、学習内容(講義、実習)、学習成果、評価を具体的、明確に示す。
普通、入学時のカリキュラムが卒業まで適応されるべきであるが、教育改革が激しい現在、学年の途中でカリキュラムの変更が行われるケースも散見される。留年した学生が、「そのカリキュラムはありません」状態になったときには、新カリキュラムの科目で「読み替え」される場合が多い。
 
back もどる 
選択制 (elective)
大学の教育科目には、必須科目、選択科目などがある。日本の医学部の専門教育の科目は必須が原則であった。アメリカの医学部では、外科、内科、小児科、産婦人科などを必須科目とし、他の科目を選択制にしている場合がある。
日本でも最近、臨床実習において選択制の導入が検討され始めている。
 
back もどる 
MCQ multiple choice question
多肢選択試験。多くの選択肢より問題で求められている肢を選ぶことにより回答する。試験に要求されている事項は多いが、少なくとも採点は客観的であらねばならない。「・・・について述べよ」式の記述式の問題には長所も多いが、採点については、その基準の明確化が難しく、しばしば客観性に欠け、僅差を争う試験のときには、よほどの手間をかける必要があり、多人数の試験には不向きかもしれない。
MCQ試験は一度問題さえ作れば、採点についてはコンピューター処理さえ可能である。受験生の“本当の実力”を見る、すなわち試験の妥当性のために、種々のMCQが研究されている。日本の医師国家試験は、昭和48年ごろよりMCQ形式で行われている。
 
back もどる 
ロールモデル role model
医療においては個々の技術に関して種々の意見があり、どれが“正解”であるか断定できない場合が多い。そのような状況下でも医学生を教育する必要がある。そのため客観的に見て手本になるような人の具体例を見せることにより、教育を行う方法が用いられる。このような人の具体例をロールモデルと呼ぶ。
 
back もどる 
医師国家試験問題の回収
平成13年度の医師国家試験より、試験後に問題用紙が回収され、受験生が持ち帰れなくなりました。この理由は過去に出題された試験問題をプールしておき、いつか再利用するためです。
単なる記憶を試す問題は作成が簡単ですが、思考を試す問題はなかなか作れるものではありません。その思考を試す問題も一度公表されますと、単なる記憶を試す問題になり下がってしまいます。もはや思考を試す問題の新規作成に限界が見え始めていますので、ついに試験問題の公表を中止したわけです。
 
back もどる 
マックマスター大学医学部
1967年に新設されたカナダのマックマスター大学医学部でテュトーリアル教育が開始された。それまで世界中の医学部は整然としたカリキュラムに沿って学生に講義と実習で医学教育を行っていた。しかしこの医学部では講義を廃し、呈示された問題を解決しつつ自分で勉強する方法が用いられた。これがproblem-based experimental self-learning(問題立脚型体験自己学習法)であり、その有効性が注目されPBL、テュトーリアルとして世界中に広まりつつある。
 
back もどる 
医師の起源
世界の民族それぞれが医術を持っていましたが、21世紀の現在、まともな形で残っているのは西洋医学、漢方医学、インド医学でしょう。西洋医学は散髪屋起源の外科医、薬剤師起源の内科医、眼鏡屋起源の眼科医から成ります。お産が修道院で行われていましたが、修道女は産婦人科医ではなく看護婦となりました。それ故看護婦の白衣は修道女の服装に似ています。歯科医は傘職人を起源としています。また、アメリカの一部の整体師の学校を卒業しますと医師と同等の資格が与えられます。
漢方医が使う漢方薬は近年になって西洋医学によって研究されました。インド医学の生薬も研究されつつあります。アマゾンにはジャングルの中の薬草に熟知している医術師が居ます。今、彼らの知識が注目を集めています。アラビア医学はアルコール以外には残りませんでした。インカの脳外科手術はまったく伝承されていません。
 
back もどる 
KJ法
川喜多二郎氏が考案した創造性開発の技法で、小グループでの議論の場合に、全員の意見を能率よく集めるのに用いられる。医学教育のワークショップによく用いられる。
用意するものは3分割の線を書き込んだ紙切れ(B5程度)を人数の3倍程度。これをグループの全員に配布する。議論すべき内容に関する自分の意見を、紙の1/3を使って書く。書いたら右隣の人に渡す。左の人からは、すでに意見が書かれた紙切れが来るので、書かれた意見を読みつつ更に自分の別の意見を書く。書いたら同じく右の人に渡す。これを繰り返すと、一枚の紙切れに3つの意見が書かれることになる。
完了したら、この紙を3分割する。B紙を用意し、係の者が読み上げつつ、カードをB紙に貼り付けていく。この時、似た意見毎にまとめて“島”を作るように貼り付ける。こうしてグループ内の意見をまとめる。
詳しくは http://www.kj-method.jp/ を見てください。
 
back もどる 
ワークショップ (WS)
ワークショップ(Work Shop)とは、参加者の共同作業で新しいもの(Product)を作り出す集会である。この作業を通して参加者が成長することを期待する。従来の研修会は講師の一方的な知識の垂れ流しに近い状態であった。これでは知識を覚えても、本当の内容がしっかり身につかないという危惧がある。これを打破するために研修生自身の参加により研修生が考えつつ研修を進める形が注目されるようになった。これがワークショップ形式の研修である。
 
back もどる 
教育目標分類 (Taxonomy、タキソノミー)
教育するには、教育の目標をはっきり認識する必要がある。この目標はよく検討してみると認知、情意、精神運動の3つの領域 (Three Domains)に分けることが出来る。これが教育目標分類である。
認知領域:「記憶する」「理解する」「知識を応用し、問題解決する」などの知的な能力。
情意領域:態度・習慣など。
精神運動領域:体を動かしての技能。
臨床教育の目標は、医学の知識が十分にあって(認知領域)、患者に優しく接し(情意領域)、上手な手術が出来る(精神運動領域)医師を作ることである。
 
back もどる 
MD
Medical Doctorのこと。アメリカでは4年制の大学を卒業してから医学校に入学するのが一般的である。したがって医学校は職業訓練目的の大学院である。大学院卒業であり、しかも医師は伝統的にDoctorと呼ばれていたため、アメリカでは医師の呼称をMDとしている。
日本の医学部を卒業し医師になった者も英語表記ではMDと呼称される。医学博士は直接英訳するとMedical Doctorとなり、医師と同じ意味になってしまう。医師は職業名、医学博士は学位、異なるものである。そこで日本の医学博士は、Ph.DまたはDoctor of Medical Scienceなどと英訳されている例が多い。
 
back もどる 
初期体験実習
アーリィ・エクスポージャーとか言われている外来語の日本語訳である。医学部の低学年(1〜2年)のうちに、医療の現場を体験させて、勉学の動機付けを狙ったものである。医療の現場としては、介護施設、授産所、消防署の救急、福祉施設、病院などである。
内容としては、単なる見学、職員の手伝い、付属病院の外来患者に来院から帰るまで付き添って患者が置かれた立場を知る、などがある。また、基礎系の教室に長期に配属されて、研究の手伝いを通して研究を学ぶ場合(基礎配属)もある。
これは従来、医学生が医学部に入ってきて、医学とは直接関係のないカリキュラムの連続に目的意識を失いがちのため、この状況を打破するために立案された。
 
back もどる 
Faculty Development, FD, ファカルティ・ディベロップメント
聞きなれない言葉の代表。FDはフロッピィ・ディスクの略と覚えたばかりなのに・・・。
今のところ、日本語の正式な訳語がない。ありていに言えば、医学教育資源としての品質アップのための学習。
従来、大学の教員が教育能力アップの為に学習会を開くことは思いもつかなかった。教育能力アップは、個人の努力でシコシコやっていた。それでは時代の変化に追いつけないし、また、大学教育を学部全体で教員が協調しつつ行う傾向が強まりつつあるため、学部としての学習会も必要になった。すなわち、FDとは、教員個人レベルと学部レベルの2つの話である。何の偶然か、誰かの意図か、英語のFacultyには「教員」と「学部」の2つの意味がある。
 
back もどる 
tutorial
日本語では、テュトーリアル、テュートリアル、チュートリアル、いろいろな表記がされている。英語では、PBL(problem base learning)と呼ばれることが多い。
実態を表すキーワードは、問題解決型学習、自学自習、少人数グループ学習、能動学習である。すなわち、問題をグループの力を利用して解決しつつ学ぶ学習方法である。与えられた事例で何が問題なのか?それを解決するには何を、どう学ぶべきか?グループで議論し、自分で勉強し、発表する。
従来の講義型教育がteachingなら、これはlearningである。教育の主体が教官から、学生に移ったのである。
テュトーリアル・システムは、テューターを交えた議論の時間(コア・タイム)、自習時間、実習、講義を有機的に組み合わせて、学習効果の促進を狙ったものである。
 
back もどる 
ファシリテイター
今までの教育の現場では、知識・技能が教員から学生へ一方的に移動する面のみが強調され、教える側と教えられる側と、はっきり立場の差があった。しかしながら、近年の教育においては、学生の自己成長を促進するのが本当の教育であるとの認識が高まりつつある。特に模擬診察のように、学生が考える場を与えられるという教育現場では、教員が求められているのは「教える」機能より「促進する」機能の方である。この考えを前面に打ち出したのが、ファシリテイターという名称である。ファシリテイト(促進)する人という意味である。
日本語で言えば「促進者」でしょうか?もともとの概念が外国由来であり、適切な和訳を見つけるのに苦労しているのが、悲しい。「助言者」かな?「仲人」では、まずいな。
カリキュラム委員会で「ファシリテイター」などの言葉を用いると、「また訳のわからん横文字を・・・」と嫌われそう。
 
back もどる 
模擬患者
SPとも呼ばれるが、これは英語の standardized patient、または simulated patient からきている。
役割については、大きく分けて2つある。
一つはOSCEにおける医療面接の患者役である。模擬患者の愁訴・応対は試験問題そのものであるので、相手の学生にかかわらず、一定の応対ができて、一定の評価を下せる能力が求められる。それゆえ、標準模擬患者ともいわれる。
もうひとつは、臨床実習において態度教育が行われるときの患者役である。これはシナリオに沿って模擬診察を行い、医学生がつとめる医師役のコミュニケーション能力を向上させるものである。このとき、教員のみならず、患者役をつとめる模擬患者からの意見を聞いて、学生は自分の技能の反省ができる。
 
back もどる 
水準T 水準U 水準V
クリニカル・クラークシップ型臨床実習で学生が実施・見学・指導を受け得る医行為の目安が、水準I 水準II 水準IIIのランクで示されている。以下に示すのは、某大学医学部・内科学実習での一例。

水準(T):指導医の指導・監視のもとに実施するもの
・全身の視診、打診、触診
・簡単な器具(聴診器、打腱器、血圧計など)を用いる全身の診察
・直腸診
・心電図
・腹部超音波検査
・耳朶、指先などの毛細血管および静脈(末梢)からの採血

水準(U):状況によって指導医の指導・監視のもとに実施するもの
・消化管透視
・胃液検査、十二指腸ゾンデ検査(Meltzer-Lyon法)
・筋電図、末梢神経伝導速度検査
・動脈血採血(末梢)
・胸、腹腔穿刺
・消化器内視鏡検査(粘膜生検を含む)

水準(V):原則として指導医の実施の介助または見学にとどめるもの
・腹腔鏡、肝生検
・経皮経肝エタノール局注療法(含 ラジオ波)
・腹部血管造影
・食道静脈瘤硬化療法
・腰椎穿刺
・胆道ドレナージ
・患者、家族への病状説明
 
back もどる 
コア・カリキュラム
医療は医学を基に成り立っている。医師が学ぶべき医学として解剖学、生理学・・・、内科、外科、小児科・・・などが挙げられ、医学部のカリキュラムが構築された。その後の学問の進歩につれて、個々の学問の量が膨大になった。これをそのまま医学生に教育するのは、人材を育てる意味で有害の面が目立つようになり、医学部で教えるべき範囲の再考が求められた。また共用試験の開始に当たり、その出題範囲の制定も必要になった。
このような状況下で、日本の医学生が最小限学ぶべき内容が示された。これは、コア・カリキュラムと呼ばれている。内容は○○学のように記載されず、統合カリキュラムの形で書かれている。各医学部はコア・カリキュラムの分を教えると共に、独自の特色ある教育を工夫するように求められている。
 
back もどる 
客観的臨床能力試験 (OSCE)
一口で言えば、医学生(研修医)の診察能力を、点数化して評価する試験のこと。診察能力という掴み所のない技術能力を客観的かつ合理的な試験で評価する新たな取り組みである。
診察能力を試験するのが困難ってない?困難です。例えば、事務職員の能力を試験するとしたら、どんな項目を見ますか?試験ですから客観性が必要です。しかも内容が合理的であり、結果に再現性があらねばなりません。
OSCE(日本ではオスキーと読む人が多い)は、まだまだ研究の余地がある。主なものは、(1)課題の作成と、(2)実際に評価する人の能力を一定に揃える。 実施時期としては、(1)臨床実習試験に入る前、(2)医師国家試験、(3)研修医終了後、などが考えられる。試験の内容、レベルはそれぞれの段階で異なるので、OSCEを話題にするときには、どの段階の話かを確認する必要がある。
事務的には80〜100名の学生を1〜2日で試験するため、場所の確保(体育館を区切るか、病院外来を利用か)と教員の大量動員(通常30名以上)が必要である。診察話題を5つ、それを2列作ったら10の小試験場(ステイションと呼ばれている)が必要。これは最小の見積もり。学生は5つの試験場を順番に訪れて受験する。それぞれの試験場に評価者である教員を2〜3名配置する。
ありていに言えば、大学入試センター試験の実施を思い出したくなる位の機動性が求められる。
 
back もどる 

ページ上へもどる