「模擬患者・標準模擬患者(SP)養成のカリキュラム」におけるSP養成プログラムtips集

はじめに

本教材開発・SP委員会は第16期委員会において全国の実態調査等に基づき、基本的な「模擬患者・標準模擬患者の養成カリキュラム」を策定し、SPになるために習得すべき内容を提案し「医学教育」誌に掲載して報告させて頂きました。この段階ではカリキュラムで示された具体的なSP養成方法に関しては各SP団体に任せておりましたが、第17期委員会において、全国のSP研究会の協力によりSP養成カリキュラムに沿った養成プログラムの事例を共有し公開することとしました。多くのSP養成者に活用して頂ければ幸いです。尚、本稿はSP養成に焦点をあてましたが、SPの処遇や保障については今後の課題として検討して行く必要があると考えています。

以下に「模擬患者・標準模擬患者の養成カリキュラム」(医学教育2012;43(1):33-36)の全体を載せてあります。1.緒言、2.カリキュラムの項目に該当するSP養成プログラムの具体事例についてはリンクから事例ページのPDFに飛べるようになっていますので、クリックして内容をご確認ください。また、各SP団体の養成プログラムの見学を希望される方は、所定の連絡先にお問い合わせください。

今回ご協力いただきましたSP団体の皆様に対して、この場を借りて心より謝意を表します。

日本医学教育学会
第17期教材開発・SP委員会
委員長 廣橋一裕
副委員長 藤崎和彦
担当委員 阿部恵子


使い方

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全プログラムはこちらから一括ダウンロードできます。  >> SP養成プログラム全原稿


1.緒言

 日本における組織的なSP養成は1992年に始まり,すでに19年が経過した.その間,医学教育におけるコミュニケーション,医療安全,生命倫理など,SPが参加する教育機会は増加し,研修医教育,歯科医学教育,薬学教育など他の分野への展開などにより,今後いろいろな教育場面でSPが必要とされることが予想される.また,共用試験OSCEにおける標準模擬患者の演技の標準化,Advanced OSCEの導入と医療面接における標準模擬患者の演技の標準化,わが国の実情に即した身体診察SPの導入などの問題点が課題として指摘されている.
 第16期教材開発・SP委員会は,「模擬患者・標準模擬患者養成および参加型教育に関する実態調査」を実施し,学内,学外にかかわらないSP養成の推進,SP養成の標準化の必要性を提言した.そして,医学教育におけるSPの意義・役割を社会,医学部の教員・学生等が理解し,SPが参加する教育が医学部教育に益々寄与するために,SPとしての活動目的を明示するとともに,SP養成のために到達目標,行動目標が示されたカリキュラムを策定する必要性を示した.
 SPは日本における医学教育を理解し,各医学部・医科大学の教育理念・教育方針に賛同し,患者のための医療を目指す医師を育てる人材として協力するものである.医療面接および試験等のプログラムにおいてSPとして患者役を果たし,医学生,研修医,医師およびその他の医療従事者等の技術およびコミュニケーション能力を向上させて信頼される医療人を育てることを目的とする.SPは患者役としての能力向上のために必要な知識と技術を習得し,常に自己研鑽に励むことが望まれる.
 第16 期教材開発・SP委員会は,全国の実態調査等に基づき,一般的なSP参加型教育のために模擬患者・標準模擬患者の養成カリキュラムを策定した.このカリキュラムは,医学部教育におけるSP養成を目的としたものであるが,研修医教育,歯科医学教育,薬学教育など他の分野にも応用できる基本的な内容とした.身体診察,身体援助に関わるSPの養成については,今後の課題とする.
 なお,共用試験OSCEの標準模擬患者については,医療系大学間共用試験実施評価機構が別途定めるものであるが,本カリキュラムは参考になるものと考えている.
 SPとなるために修得すべき必須項目として,T.対人コミュニケーション,U.医学教育におけるSP参加型教育,V.医学教育における医療面接を掲げ,SP活動の主体となる項目Vでは,医療面接の基本的事項,医療面接のシナリオの理解,役作りと演技,フィードバックと評価について習得すべき到達目標を示した.このカリキュラムに基づいて養成されたSPが実際の教育場面に参加するに当たっては,SPを養成する施設あるいは組織において適切な評価を行うとともに,その評価方法が明示される必要がある.

>> SP憲章:東京SP研究会  >> 日本医科大学SPの会


2.カリキュラム

T.対人コミュニケーション  >> 岐阜大学模擬患者の会

SPが医学教育に協力するために、SPは基本的なコミュニケーションについて理解し、良好なコミュニケーションができる。

T−1 基本的な対人コミュニケーション  >> NPO法人響き合いネットワーク岡山SP研究会
 T−1−1 対人コミュニケーションの基本事項について説明できる(認知)。
 T−1−2 対人コミュニケーションの技法について説明できる(認知)(表1)。
T−2 良好なコミュニケーション
 T−2−1 学習者(学生など)、他のSP、教員に対して、良好なコミュニケーションができる(技能)。
 T−2−2 学習者(学生など)、他のSP、教員に対して、共感的理解の態度が取れる(態度)。
T−3 医療面接におけるコミュニケーション
 T−3−1 医療面接における患者-医師関係のコミュニケーションの特徴を説明できる(認知)(表2) 。


U.医学教育におけるSP参加型教育  >> 日本医科大学SPの会  >> 福島医大・模擬患者の会  >> 模擬患者つつじの会  >> 模擬患者グループ“のぞみ”  >> つくばSP会

SPは医学教育に協力するために、SP参加型教育について理解できる。

U−1 医学教育における模擬患者と標準模擬患者の違いを理解し、それぞれの役割と意義を説明できる(認知)。
U−2 SPとして、能力向上のため必要な知識と技術を習得し、常に自己研鑽に励む態度を持つ(態度)。
U−3 学習者(学生など)に対して適切な態度で接することができる(態度)。  >> 模擬患者つつじの会
U−4 教育の目的や対象によってSPの役割が違うことを説明できる(認知)。
U−5 当該教育機関の教育指針を理解し、その方針に従って行動できる(態度)。
U−6 実習、試験、講習等で得られた事項に関して、守秘することができる(態度)。


V.医学教育における医療面接

1.医療面接の基本的事項  >> 岐阜大学模擬患者の会  >> 九州大学SP登録模擬患者

V−1 SPにとって必要な医療面接の基本的な事項について理解できる。
 V−1−1 医学教育における医療面接の意義を説明できる(認知)。
 V−1−2 医学教育における医療面接教育の目的について説明できる(認知)。
 V−1−3 医学教育における医療面接教育のSPの役割を説明できる(認知)。

2.医療面接シナリオの理解  >> 日本医科大学SPの会  >> NPO法人ささえあい医療人権センターCOML  >> 福島医大・模擬患者の会

V−2 シナリオを理解できる。
 V−2−1 シナリオの目的を理解できる(認知)。
 V−2−2 シナリオの患者背景を理解できる(認知)。
 V−2−3 シナリオの病状・経過を理解できる(認知)。
 V−2−4 シナリオに書かれた用語を理解できる(認知)。

3.役作りと演技  >> 日本医科大学SPの会  >> NPO法人響き合いネットワーク岡山SP研究会  >> 静岡医療コミュニケーション研究会

V−3 医療面接のシナリオに基づいて、役作りと演技をすることができる。
 V−3−1 シナリオの内容を記憶し、設定されている背景や気持ちに基づいて役作りができる(技能)。
 V−3−2 医師役からの質問・説明に対して、シナリオで示されている方向性に則って適切に応答できる(技能)。
 V−3−3 シナリオに示されている患者を学習目的に沿った現実感のある演技ができる(技能)。

4.フィードバックと評価  >> 名古屋SP研究会  >> 秋田大学模擬患者の会

V−4 医療面接の場面で起きた患者の気持ちの動きを十分に伝えるようなフィードバックができる。
 V−4−1 医療面接教育におけるフィードバックの目的について説明できる(認知)。
 V−4−2 医療面接教育におけるフィードバックの教育上の効果を理解できる(認知)。
 V−4−3 医療面接の場面で起きた出来事と患者の気持ちの動きを記憶できる(技能)。
 V−4−4 医療面接の場面で起きた出来事と患者の気持ちの動きを適切に言語化できる(技能)。
 V−4−5 医療面接の場面で起きた出来事と患者の気持ちの動きをSPの視点から教育的にふさわしい形で学習者にフィードバックできる(技能)。
 V−4−6 評価の目的と方法について理解し、SPの立場から学生の評価ができる(技能)。