<研究紹介>


2.核酸代謝酵素(SAH hydrolaseなど)を標的とする
酵素阻害剤の開発

 SAH加水分解酵素(SAH hydrolase)は生体内のメチル化代謝に不可欠な酵素です。このためSAHHを阻害すると、生体内物質として重要なDNAやmRNAのメチル化を阻害するためにウイルスにとって致命的となります。ゆえに、SAHHは抗ウイルス薬や抗がん剤の開発に繋がることが期待されています。

 この考えをもとに当研究室ではマラリアの病原体、熱帯性マラリア原虫のSAH Hydrolaseに焦点を当て、抗マラリア薬の開発を指向した研究を行ってきました。

 生体内メチル化に関与する核酸代謝酵素SAH hydrolase に関する研究は、酵素阻害剤の分子設計からタンパク質の構造解析に基づく創薬研究、即ち構造生物学的創薬研究にまで研究領域を広げています。平成16年には熱帯熱マラリア原虫のSAH hydrolaseのX線結晶構造解析(J. Mol. Biol.)に成功し、ヒト酵素とマラリア酵素の構造の違いを明らかにしました。本研究では、基質であるアデノシンの結合部位近傍の一つのアミノ酸残基の相違がマラリア酵素に対して特異的阻害剤の分子設計を可能にすることを証明しています。また最近では、英国寄生虫学会誌(Parasitology)の表紙を飾り、新聞報道でも紹介されました。

Kandeel, M., Ando, T., Kitamura, Y., Abdel-Aziz, M., and Kitade, Y., Mutational, inhibitory and microcalorimetric analyses of Plasmodium falciparum TMP kinase. Implications for development of a new drug target, Parasitology, 136, 11-25 (2009).



マラリア

Model of the structure of Plasmodium falciparum thymidylate kinase(A) and crystal structure of human thymidylate kinase; PDB ID 1e2f (B)


*マラリアとは*

 マラリアは、マラリア原虫がハマダラ蚊を介してヒトに寄生することで感染する世界最大の感染症です。熱帯・亜熱帯地域に広く分布する重要な感染症で、世界100カ国余りの国々で流行しています。WHOの推計では、全世界で現在の患者数は約3億人、年間死者数は100万人にものぼると報告されています。またそのうちの90%はアフリカ熱帯地方であると報告されています。
マラリア治療には古くから化学療法剤が用いられていますが、その化学療法剤に耐性をもつマラリア原虫が確認されており、新規抗マラリア薬の開発が強く望まれています。


研究紹介