内田セミナー 2002年度後期第1回 (2002年4月11日) 発表者:内田勝


イメージをたどって物語を掘り起こせ


[問い1]内田セミナー的な「物の見方」とは何か。

[答]一年ほど前に配布した資料「内田セミナーって何をやればいいの?」によれば、それは次のようなものである。

(1)人は「幻想」の掟に縛られている。

(2)人は「編集」せずにいられない。

(3)人は「物語」によって考える。

(4)いろんな「声」がせめぎ合っている。

(5)意外なものに「つながり」がある。


[問い2]人は「物語」によって考える、とはどういうことか。

[答]日々の暮らしで出合う複雑な出来事を解釈するために、現実の出来事を単純な物語の筋書きにあてはめてみることである。


[問い3]この場合「物語」とは何か。

[答]単純化された、ひとつながりの出来事である。


[問い4]その具体例はどんなものか。

[答]たとえば次のようなものである。

・マジメに勉強する→いい大学に入る→いい企業に就職する→幸せに暮らす

・居場所をなくす→すさんで街をさまよう→居場所を見つける→社会に復帰する

・お年寄りに席をゆずる→お年寄りが喜ぶ

・親友ができる→卒業して離ればなれになる→友情を保ち続ける

・友情を裏切る→仲間外れになる。

・それほど好きでない人に告白される→とりあえず付き合う→もっといい人が現われる→乗り換える

・未熟である→家を出て旅をする→成長して戻ってくる

・やられたら→やり返す

・邪魔者は→消す

・努力すれば→報われる

・痛みに耐えて構造改革する→みんなが幸せになる

・何をすればいいのか分からない→学校に行く→なすべきことが分かる

「出る杭は打たれる」「芸は身を助ける」「朱に交われば赤くなる」


[問い5]そうした「物語」はどのような機能を果たすのか。

[答]人は、何らかの物語の途中を生きていると感じ、今後の展開を期待/予測している。物語は、人の行動の規範や判断の基準になっている。


[問い6]物語は現実とどう違うのか。

[答]物語においては、複雑な現実を単純化するために、その物語を覆しかねない要素は切り捨てられている。


[問い7]ある出来事を解釈するための物語は一つだけなのか?

[答]決してそんなことはない。ある出来事を語るための物語はいくつもあり、互いにせめぎ合っている。


[問い8]内田セミナーで何かを研究するとき、まず解明すべきことは何か。

[答]その何かが人々にどんな物語を与えているのか、である。

××の送り手は、人々にどんな夢(幻想)を見させようとしているのか、人々をどう操作しようとしているのか。

××の受け手は、どういう筋書きを夢見ているのか、どうなることを期待しているのか。


[問い9]そうしたことを考える際に、気を付けることは何か。

[答]初めから大きなテーマを抽象的に考えようとせずに、まず具体的な個別の事物・事例を詳しく分析してみることである。


[問い10]個別のものごとを分析するとき、まず行う作業は何か。

[答]そのものごとが人々に与えているであろう「イメージ」を思い付くままに拾い上げることである。いくつかの部分に分けられるものであれば、それぞれの細部が持つイメージを考えてみる。


[問い11]イメージを拾い上げるためには何をすればいいのか。

[答]あなた自身がそのものごとをどう感じているかを把握したうえで、さらに他のさまざまな人々がそのものごとをどのように語っているかを集めてくる。


[問い12]しかし、どうしてそこまでイメージにこだわるのか。

[答]《真面目そう》《不良っぽい》《懐かしい》《派手》《親しみやすそう》《まるで〜みたい》……そうしたイメージの集まりが、おのずとある種の物語を形作ってゆくからである。


[問い13]物語を掘り起こすとき、注意すべきことは何か。

[答]その物語が現実から何を切り捨てているのかも同時に考えることである。


[問い14]さらに話を広げていくにはどうすればいいか。

[答]その事物のイメージや、それらが醸し出す物語が、過去の時代の何に似ているか、別の分野の何に似ているか、を考えてみればよい。


[問い15]それからどうするのか。

[答]その事物が、似ているものとはどこが違うのかを考えてみる。


[問い16]その次は?

[答]なぜ他のものと違うのか、を考えてみる。なぜ違うのか、なぜ変ったのか、を考え、そうした違いの要因・変化の要因について語っている言葉を集めてくる。


[問い17]さらにその次は?

[答]その事物と似て非なる事物とをすべて取り込んでしまうような、一段階上の大きな物語が存在しているかどうかを考える。


[問い18]最終的にできあがる論文じたいの筋書きはどんなものになるか。

[答]一例として、次のようなパターンが考えられる。

××という文化事象は××という物語をはらんでいる。→

そのことは個別の事例××、××、××などから推測できる。→

一方、似た現象に××などがあるが、××の点で異なっている。→

しかしそれらすべてを包み込む××という物語が存在する。


(c)内田勝(uchida.masaru.m7@f.gifu-u.ac.jp) 更新日: 2015-4-13

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