今回導入されたプローブ式分光計は、反応溶液にプローブを差込み、溶液の中で起こる様々な変化を赤外スペクトルとして連続的にモニターする。また、顕微・接触式分光計は、晶出してきた固体成分を光学顕微鏡による形状観察とともに赤外スペクトル測定するシステムであり、これまでブラックボックス化されていた反応溶液中での分子の挙動の一端を赤外スペクトルにより理解することができます。このシステムは、大きく2つの独立したフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、(1) プローブ式分光計(米ASI社製ReactIR 4000)、(2) 顕微・接触式分光計(米SensIR社製IlluminatIR)で構成されており、それぞれは独立して使用可能です。いずれの分光計も測定方法は試料にセンサーを接触させて測定するATR (Attenuated Total Reflection:全反射吸収)法であり、従来のFT-IRのように分析のための前処理や特殊なステージは必要ありません。
・ReactIR4000ユニット
React IR(プローブ式分光計)は、棒状のプローブ(φ6mm)を溶液中に差込んで赤外吸収スペクトルを測定する装置であり、指定する時間単位(1秒から)で連続的に測定を続けることにより、分子の溶液中での動的な変化を定量的に可視化してくれます。例えば、化学反応中にのみ存在する反応中間体の同定や原料の消失速度、生成物の生成速度をピーク強度の変化から定量的に観察することができるため、化学反応機構、次数の解析に多いに役立ちます。プローブ部の材質は化学的に極めて安定なダイヤモンド結晶と耐腐食性のハステロイです。ダイヤモンドの赤外吸収帯2200-1900cm-1付近の測定は原理的に制限されてしまいますが、温度範囲-80−120°C、圧力範囲0−7気圧、pH範囲1-14と極めて幅広い範囲の条件で測定できます。測定は、Windows2000上で動作するオペレーティングソフトウェアにより簡単に行えます。測定後は、通常の赤外スペクトルに奥行として時間軸を追加した三次元のチャートが得られ、スペクトルの継時変化が視覚的に容易に理解できます。また、このソフトウェアは、種々のスペクトル解析も可能であり、例えばある波長のピークの増減についての継時変化を二次元のグラフに表すことも容易にできます。
・Illuminat IRユニット
Illuminat IR(顕微・接触式分光計)は、顕微FT-IRの一種であり、12−100mmの微小・微量サンプルや不均一試料中の特定部位の非破壊測定が可能です。この装置は、オリンパス社製の一般的な光学顕微鏡にIR測定ユニットとCCDカメラを追加しただけであり、操作方法が理解しやすいのが特徴です。この装置も接触式のダイヤモンドATRセンサーで測定するため、赤外反射板などの特殊なステージは必要ありません (通常の反射測定モードもあります)。また、測定部はダイヤモンドを通して直接目視することができるため正確な位置情報が得られ、またその映像はCCDカメラによりデジタルデータとして保存もできます。WindowsXP上で動作する簡単なオペレーティングソフトウェアで操作できますので、初心者でもすぐに使いこなすことができます。
どちらの機器も使用用途は限定されておらず、ユーザーのアイデア次第で様々な場面で活用できます。
|