装置の概要
この度、電子顕微鏡観察時に必要な導電性コーティングを行う新機種が導入されました。従来の導電性コーティングはカーボンや白金-パラジウム合金で行ってきました。これらのコーティングは、良好な“回り込み”が期待できず、凹凸の激しい試料ではチャージアップが生じきれいな顕微鏡像が得られない原因となっていました。今回導入されたオスミウムコーターは試料への回り込みが非常に良くなっており、薄いコーティングでもチャージアップが生ぜず、非常にきれいな像が得られるようになりました。
【特徴】このコーティング装置は、試料室を真空にした後四酸化オスミウムを昇華させた蒸気を導入し、その後放電して試料表面に金属オスミウムのコーティング層を得るものです。真空にした後に四酸化オスミウム蒸気を充満させますので、凹凸の激しい試料表面にもガスが行き渡り均一なコーティングが可能になりました。
従来のカーボンや白金-パラジウムのコーティングは、試料の上からこれらの成分が“降り積もる”様にコーティングします。従って、右上図にあるような粒子では、試料台に接している場所に、コーティングされない部分ができてしまいます。このような部分があると、顕微鏡によって照射された電子がアースされずに試料が帯電してしまいます。これがいわゆるチャージアップで良好な像が獲られません。
これに対して四酸化オスミウム蒸気は試料の凹部や陰の部分にも行き渡るので右下図のように非常に均一にコーティングできます。従ってコーティング厚さも5-10 nm程度で薄くても十分であり、さらにこの厚さのコーティングは5-10秒と非常に短時間です。また、コーティング層が薄いことから試料の表面構造が失われることがなく、非晶質のコーティングであるためにコーティングしたものの島状構造も観察されません。
注意点】原料となる四酸化オスミウムは毒劇物や消防法による危険物には指定されていませんが有毒です。ガスが漏れないように十分に注意をしてください。従って、この機器は指導教員の責任のもとで使用するものとします。なお金属に還元されたオスミウムは全く無害です。
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