装置の概要
これまで電子顕微鏡の前処理装置としては、生物等軟らかい試料は切片を作成する装置があり、透過型電子顕微鏡用には、デュアルイオンシニング装置がありました。しかし走査型電子顕微鏡用にはこの様な試料作成装置が無く、種々の導電膜コーティング装置があるだけでした。今回、走査型電子顕微鏡の試料作成用にアルゴンイオン(ガス)で試料を研磨する、イオンミリング装置 E-3500が導入されました。
この装置はイオンガン中でアルゴンガスを放電・イオン化し、高電圧を印加してイオンを引き出して試料に衝突させ、研磨するものです。試料の一部は遮蔽板で保護し、この遮蔽板によってきれいな断面の形成が可能になります。また研磨速度も、条件にもよりますが、ガラスやシリコンなどでは1時間に100 mmと、現有のイオンシニング装置よに格段に大きいミリングレートが得られています。また、研磨された面は非常に平滑です。
下の写真は、ガラス基板上に製膜した強誘電体膜を観察するために、矢印の位置にイオンビームを3時間照射してミリングした試料のSEM観察写真です。照射位置のガラス基板が凹んでおり、その部分が非常に平坦であることが分かると思います。この表面にデポした膜の観察写真が前のページものであり、『研磨面』が出来ていることが分かります。
この様に従来の機械研磨では不可能であったごく薄い試料でも、端面の『ダレ』もなくまた傷のない非常にきれいな研磨面が得られます。薄膜の観察や、もっと長時間研磨することで傷などのない表面が得られます。この様な面では結晶方位によって明るさが異なる『チャンネリングパターン』が得られることも知られています。
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