装置の概要 電子材料、セラミックス、超伝導材料等の先端材料や生体試料中に存在する微量元素、水、土壌、大気など環境中に存在する元素を解明することが、物質の諸性質を研究する上でしばしば必要となる。誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)は、このような目的に対して有用である。この方法では多元素を同時に極微量から高濃度までの広い濃度範囲にわたって定性的ならびに定量的に分析することができる。
誘導結合プラズマ(ICP)を励起源に使用した原子発光分析法は、R. W. BunsenとG. R. Kirchhoffがセシウム(1860年)とルビジウム(1861年)の二つの新元素を発見したときに用いた方法と本質的に同じである。すなわち、励起源(ICP)に試料を導入し、その時発光する光を適当な方法(回折格子を使用した分光器)で分光する。分光して得られた光のスペクトルを光電子増倍管を用いて電気信号に出力される。
発光スペクトルの波長より試料中に存在する元素を特定することができ、その発光強度はその元素の原子数に比例する。それゆえ、個々の波長で光を検出することによって試料の定性分析を、その強度を測定することによって分析対象元素の定量分析を行うことができる。ICP-AESでは、ほとんどの金属元素およびホウ素、炭素、ケイ素、リン、イオウなどのいくつかの非金属元素を含めた70以上の元素を一斉に定性・定量分析することが可能である。
ICPでは、高周波の誘導コイルを使用してアルゴンガス流中に6,000-10,000 Kの温度に加熱されたアルゴンイオンを作る(誘導結合プラズマ、ICP)。その高温プラズマが原子の励起を促進し、測定感度を向上する。そのため、測定条件を変更することなしに、1
ppb以下の極微量から1000 ppmまたはそれ以上の濃度範囲にある元素を検出可能である。また、高い温度の励起源を用いることで、ほとんどすべての化合物をその構成元素に分解することができるため、他の原子スペクトル法で問題となっていた共存物質の影響や、分子種由来のバックグランドの影響を大幅に低減することができる。また、これまで困難で時間のかかった試料の前処理を、ICP-AESでは簡便・迅速化することができる。
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