はじめに
  1. 嫌気性菌とは、どのような細菌だろうか?
  2. 酸素はなぜ嫌気性菌に有害なのか?
  3. 正常細菌叢ってなに?
  4. 嫌気性菌が原因となる病気にはどんなものがあるの?


1. 嫌気性菌とは、どのような細菌だろうか?

 嫌気性菌とは、酸素分子のない環境で生活をしている細菌である。偏性嫌気性菌と耐気性嫌気性菌がある。偏性嫌気性菌とは酸素分子20%を含む環境(大気)中では全く発育しない細菌のことで、耐気性嫌気性菌とは、酸素に抵抗性を獲得したため大気中でもある程度増殖できるようになった細菌である。今話題の大腸菌(O-157)やブドウ球菌(MRSA)も酸素の無い環境で発育できる菌ではあるが、嫌気性菌と異なり、酸素のある大気中でも十分発育できるので、単に好気性菌と呼ばれている。



2. 酸素はなぜ嫌気性菌に有害なのか?

 酸素の嫌気性菌に対する毒性は静菌的な第一段階と殺菌的な第二段階の2段階で発揮されるらしい。
 第一段階とは、細菌の正常な発育に必要な電子が、その菌に有害な酸素分子の還元解毒に使用されている段階である。
 第二段階とは、酸素の還元によって生じたスーパーオキサイド・過酸化水素・ハイドロキシラジカルのような毒性産物がDNA,蛋白などに損傷を与え、細胞を殺してしまう段階である。



3. 正常細菌叢ってなに?

 正常細菌叢とは、健康な人や動物の皮膚や粘膜のある部位に定着している細菌の集団である。嫌気性菌と好気性菌が存在し、一過性に定着するものと永久的に定着するものとがある。通常嫌気性菌が好気性菌より10倍から1000倍多い。
 人や動物の粘膜表面にある細菌叢の構成する嫌気性菌を内因性嫌気性菌という。これに対して、動物の皮膚粘膜以外の部位(土壌や泥)に存在する嫌気性菌を外因性嫌気性菌という。

< 資料 >

  1)内因性嫌気性菌にはどんな細菌がいるのか?
Bacteroides, Prevotella, Porphyromonas, Fusobacterium, Peptostreptococcus, Veillonella, Bifidobacterium, Eubacterium, Propionibacterium, Clostridium その他
  2)外因性嫌気性菌にはどんな種類があるか?
主にClostridium


4. 嫌気性菌が原因となる病気にはどんなものがあるの?

 嫌気性菌による病気は、大別して、次の4つのグループに分けることができる。
  1) 粘膜上の内因性嫌気性菌が組織に侵入し起こる病気
慢性中耳炎・慢性副鼻腔炎・嚥下性肺炎など慢性化膿性感染症
  2) 環境中(土壌など)の外因性嫌気性菌が組織に侵入して起こる病気
ガス壊疸・破傷風・ディフィシル病がある。
  3) 嫌気性菌が原因となる食中毒
ボツリヌス中毒,Clostridium perfringens による食中毒
  4) 嫌気性菌を中心とした正常細菌叢の乱れが原因となる病気
歯周病、細菌性膣症
  5) 嫌気性菌による院内感染症
偽膜性大腸炎,化学療法薬関連下痢症

Parent Page