研究内容・プロジェクト

研究内容

現代の情報通信の核であるInternet of Things(IoT)や来る6G世代に資する情報デバイス、さらには環境分野の技術において、デバイスの高速化や低消費電力化が求められています。特にエッジコンピューティングにおける省電力プロセッサーや小型センサーは急激に需要が増加してきており、集積回路に用いられているシリコンテクノロジーとは異なる、新原理・新材料の探索が盛んになってきました。本研究室では、新材料の創製や、その特性評価、さらにはデバイス化に向けた研究を行っていく予定です。

1)新材料”ゲルマナン”の創製と機能探索
 炭素六員環シート・グラフェンは超高速動作の電界効果トランジスタ(FET)のチャネル材料として長年期待されています。しかし、バンドギャップを持たないグラフェンのFET利用は消費電力の面で問題をかかえています。そこで、バンドギャップを持ち、かつ高速動作が可能なFET材料として六員環構造を持つゲルマニウムの2次元シート “ゲルマナン” を溶液プロセスで作製し、その物性評価を基に、デバイス応用に向けた高品質材料創製を目指します。

2)ミスト化学気相成長法による機能性薄膜創製
 二酸化バナジウム(VO2)は金属―絶縁体転移(MIT:68℃以上で金属、以下で絶縁体)となるユニークな材料であり、無電力の遮熱フィルム(スマートウィンドウ)などへの利用が期待されています。一方で、均一性の高い薄膜の作製はいまだに困難です。そこで本研究室では、真空等の大掛かりな装置不要の結晶性薄膜作製手法であるミスト化学気相成長法を用いたVO2薄膜の作製に取り組みます。最近では電界によっても金属―絶縁体転移を起こすことが報告され、高速FET材料としても期待しています。

3)ナノマテリアルの極限計測技術の開発と応用
上記で挙げた新しい材料の特性評価手法として走査プローブ顕微鏡(SPM)を基盤とした極限計測技術の開発を行います。SPMとは、光学顕微鏡や電子顕微鏡のように光や電子線を用いることなく、ナノスケール空間の形状や各種の物理量を計測できる装置です。各種の物理量を計測するセンサーの役割を果たす「プローブ」を複数本用いることで、既にカーボンナノチューブ1本の電気抵抗測定を実現しており、他に類を見ない新材料の電気特性評価手法として利用していきます。

〈研究キーワード〉

薄膜・表面界面物性、2次元層状物質、マルチプローブ計測

プロジェクト