2010年から2020年の10年間の岐阜県内120カ所の平均土壌環境および気象から,
2050年~2060年(中期将来),2090年~2100年(長期将来)の変化をシミュレーションしました.
Climate Change Impacts on Soil Moisture and Temperature in the Plain and Mountainous Regions of Gifu Prefecture, Japan
気候変動は土壌環境に影響を与え、地域ごとに異なる影響が現れる。本研究では、岐阜県の平野部と山間部を対象に、HYDRUS-1Dと農業気象グリッドデータを用いて、2011~2020年と2091~2100年の土壌温度、水分量、積雪深を解析した。その結果、将来の土壌温度は3℃上昇し、平野部の上昇幅が大きかった。土壌水分量は平野部で増加し、山岳部では減少した。降雪量の違いが水分量に影響を及ぼし、土壌温度は平野部、土壌水分は山岳部でより敏感だった。今後、岐阜県全体への解析を拡大する予定である。
Estimating soil hydraulic and thermal properties using publicly available soil information for future prediction of soil temperature and water content
本研究では、土壌水分量や地温の将来予測に必要な土壌水理・熱特性の推定法を検討した。公開土壌情報とペドトランスファー関数(PTF)を用い、複数のPTFで推定した土壌特性と既往研究のデータを比較し、誤差が最小の推定法を最適とした。その結果、地温や体積含水率の予測には差が生じたが、将来変化量の評価では大差がなく、公開データとPTFによる推定でも妥当な評価が可能であることが示された。
GCMの選択が岐阜県平野部および山間部の土壌環境将来予測に与える影響
気候変動による土壌環境の将来予測は,GCM種によって結果が異なる可能性がある.本研究では5つのGCMから得た将来気象データを使用して,岐阜県平野部と山間部の土壌環境の予測を行った.その結果,GCM種によって気象予測結果に比較的大きな違いがあり,それにより土壌環境,特に土壌水分量の予測結果がGCMごとに異なった.本研究により将来の土壌環境の予測には複数のGCMを用いて評価することの重要性が示された.
GCMのバイアス補正が土壌水分量と地温の将来予測に与える影響
土壌環境の将来予測に用いるGCMに含まれるバイアスによって将来予測の結果に影響を与える可能性がある.本研究ではバイアス補正前後の気象データを用いて土壌水分量および地温変動を解析した.その結果,バイアス補正により土壌環境の予測値は変化したが,現在と将来の変化量に着目するとバイアス補正の有無による差はほとんど見られなかった.したがって変化量評価に限定すればバイアス補正の必要がないことが示された.
気候変動による土壌環境への影響を面的に評価した「岐阜県気候変動影響予測マップ」 の作成
気候変動に適応した営農のために,将来の土壌環境予測が重要である.本研究では,岐阜県内における気候変動の影響を面的に評価し,「岐阜県気候変動影響予測マップ」を作成した.その結果,地温は気温の影響を受けやすく,県全体で3°C程度上昇した.体積含水率は,透水係数や風速の影響で乾湿傾向が強く出た地域があったが,県全体では湿潤傾向となり,最大で0.004 m3m-3の湿潤化が予想された.
透水係数・飽和体積含水率・乾燥密度