ここからは,特に高校生以下のみなさんを対象にロボット研究の歴史を紹介します.
クイズもあります.挑戦してみてください.

ロボット研究の歴史

 みなさんはロボットという言葉を聞いてどのようなものを想像しますか? おそらく多くの人は,アニメーションに出てくるような人型の巨大なものを想像されるでしょう. これらのロボットは人間と同じような手を持ち,様々なものを持つことができます. また人間同様,2本足であるいたり,走ったりします. 中には,人間のような感情を持ったロボットまであります. しかし現在,このようなロボットは存在しません. では,このようなロボットを作るのは無理なのでしょうか? その答えを探るべく,ロボットがどのように発展してきたかを見ていきましょう.

 ロボットという言葉が最初に使われたのは,1921年,旧チェコスロバキアの劇作家 Karel Capek の R.U.R.(Rossum's Universal Robots) という作品の中でした. ロボットとは,もともとチェコ語で「働く人」という意味です. 劇中,科学者のロッサム氏が,人類を助けるためにロボットを作りますが,次第にロボットを武器として使うようになり,挙げ句の果てにロボットたちは反乱を起こして人類を滅亡させてしまします. この物語は,後のSF小説や映画の基となりました.

 1950年,アイザック・アシモフは,SF小説「私はロボット」の中で次のように書いています.
 

ロボットの3原則
第1条
ロボットは,人間に危害を加えてはならず,また人間に危害が加えられるのを見過ごしてはならない 
第2条
ロボットは,第1条に反しない限り人間に服従しなければならない 
第3条
ロボットは,第1条と第2条に反しない限り,自身の生命を守らなければならない 

 では,話を実際のロボットに戻しましょう.産業用ロボットの概念の始まりは,1954年米国の G.C.Devol が教示再生型の 「Programmed Article Transfer」 についての特許出願が最初とされています. その概念を具体化したものとして,1961年に米国のエンゲルバーガーらによるユニメートと呼ばれる産業用ロボットの実用機が最初に発表されました. このユニメートは,ジョイスティックなどにより操作し,その動作を記憶させて,それを何度でも繰り返し実行するという点で反響を呼びました.

 その後,日米欧で盛んにロボットの研究が行われ,ロボティクスという工学分野が形成されました. そして,ロボットの研究は,当初のロボットマニピュレータの運動等の研究から,ロボット言語,ロボットの知能化,ヴァーチャルリアリティ,その他様々な分野にまで広がっています. またロボット自体も腕のような形のものから,手の形のものまで様々な形状を有するようになりました.
 

 ここで,JISによる産業用ロボットの分類を参考にロボットの世代を考えていきます.
 

操縦ロボット 行う作業を,人間が直接操作するロボット.
シーケンスロボット ・らかじめ設定された情報に従って,動作するロボット.
プレイバックロボット 人間がロボットを動かすことによって,順序・位置などの情報を教示し,
その情報により繰り返し動作するロボット.
数値制御ロボット 順序・位置などの情報を数値・言語などで教示し,
その情報により繰り返し動作するロボット.
感覚制御ロボット 感覚情報を用いて,動作するロボット.
適応制御ロボット 環境の変化などに応じて制御などの特性を変化させる制御機構を持つロボット.
学習制御ロボット 作業経験を蓄積・学習し,次の作業に反映させる機能を持つロボット.
知能ロボット 認識能力・学習能力・抽象的思考能力・環境適応能力などを
人工的に実現した人工知能によって行動決定するロボット.

 この中でシーケンスロボット,プレイバックロボット,数値制御ロボットに共通することは,あらかじめ定められた通りの動作を繰り返し行うことにります. これらのロボットはまったく自立的機能はありません.これを「第1世代ロボット」と言います.

 「第2世代ロボット」は,何らかの感覚情報をもち,この感覚情報をもとに自己の行動をある程度修正する機能を持つもので,感覚制御ロボット・適応制御ロボットがこれに相当します.現在のロボットの多くはこれに当たるといえるでしょう.

 つづく「第3世代ロボット」は,作業経験を学習し行動に反映させる学習制御ロボットが相当します. また,これに加え複数のロボットが協調して作業をする機能を持つ協調制御ロボットもこれに当たるでしょう. この世代のロボットは,まだ研究の段階で,世界各国で盛んに研究が行われています.

 「第4世代ロボット」は,まだまだ未知の領域です. この世代のロボットは,人工知能によって自らの行動を判断・決定し動作します.

 では今後,ロボットの研究を進める上でどのようなことが必要となるでしょうか?以下にそれを示します.
 

頭脳 作業計画,行動計画,並列計算処理,言語
感覚 視覚認識,識別,視覚・触覚センサ技術
運動 移動技術,マニピュレーション技術
身体 アクチュエータ,構造材料,エネルギ源

 みなさんには少し難しいかもしれませんね. しかし,これ以外にも解決しなければならないことがたくさんあります. これが解決されたとき,ロボットはより人間に近づくことでしょう.


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