最新更新日:2002/09/30

 川窪伸光                                戻る
 自然保護・自然環境教育への提言・資料
 
 小笠原諸島にみる移入生物の野生化問題
「小笠原諸島にみる移入生物の野生化」

=隔月刊『プランタ』No.83(2002年9月号)より転載=



川窪 伸光


 勝手なものである。20年ほど前、学生だった私は、初めて小笠原諸島に上陸した。海洋島独特の生物相に憧れてのことだ。そして人間が持ち込んだ移入生物*によって、ボロボロになった小笠原の自然を目の当たりにして、人間の諸行を恨んだのだ。私は、安全な定期船で上陸し、島の先人たちが築いた快適な生活を享受しておきながら、一歩、森に入れば原生自然を体験できる、と勝手に考えていた。

 小笠原諸島に限らず、私たちは、日常のいわゆる文化的生活と引き替えに、原生自然を破壊してきた。ところが、人工的環境、天然性をほとんど破壊尽くした環境に生活しつづけていると、自らの生活が自然破壊によって成り立っていることを忘れてしまう。また仮に、自然破壊を意識する場合があっても、開発工事などの直接的な破壊ばかりに目を奪われてしまう。そして、実際には重大な自然破壊を引き起こしている移入生物の問題は、あまり注目されない。

 道路建設、宅地造成、河岸海岸改変などの開発工事では、目の前で原生自然が裸地化されて消えていく。一方、移入生物の影響は目に見える現象としてなかなか現れない。多くの人々にとって、在来種でも移入種でも、虫は虫であり、緑は緑にしか見えないので、世間の注目度が低いのかもしれない。しかし、移入生物による自然破壊は、意識できないほどゆっくりと、じわじわと確実に進行してきたのである。

 本稿でこれから述べていく、小笠原諸島での移入生物の野生化に伴う自然界への影響は、日本中のどこでも、昔から起きてきた。そして現在も起こっているはずだ。ただその影響は、まだまだ自然が豊かな小笠原諸島だからこそ、他に類を見ない固有の大自然が残る小笠原諸島であるが故に、目に見える形で現れてくる。

 確かに、現在の離島での快適な生活は、先人たちが、試行錯誤の末、良かれと移入生物たちを利用してきた歴史の上に成り立っている。だから、かつての生物導入の歴史を非難する気は毛頭無い。しかし小笠原諸島には、都会の破壊尽くされた自然環境には望むべくもない希望が、つまり、豊かな大自然と一体となった人間生活の理想が実現できる可能性が見いだせる。だからこそ、現在、小笠原諸島で移入生物が引き起こしている問題を危機感をもって私は検討しようと思うのである。

 本稿では、私が海洋島の原生自然に憧れ上陸し、そして慣れ親しんできた小笠原諸島が、実は移入生物の野生化によってボロボロにされている事実を涙ながらに紹介して、この問題に私たちはどう対処すべきかを考えてみたい。

注:ここでの「移入生物」とは、その地域に他の地域から人間によって意図的もしくは無意識に持ち込まれた生物群とする。したがって「導入生物」は意図的に持ち込んだ生物群のみに該当させ、「移入生物」は「導入生物」と無意識に持ち込まれた生物の両方を含む。この稿での問題は「移入生物」が野生化した場合である。いわゆる「帰化植物」や「帰化動物」も、これに該当するが、この稿では国境を越えて移入され野生化した「帰化」生物に限定することなく、国内でも地域間で人為的に移動された生物個体がもとで野生個体群が成立した生物群を、その地域の移入生物野生化問題とした。


海洋島に上陸したヒト

 本誌5月号の小笠原特集ですでにご存じのように、海洋島には他の地域とは異なる独特の生物相が成立する。近隣の大陸の生物相にくらべると、全体として種類数が少なく、また大陸での普通種が欠けていたり、大陸では見られない種類が残存していたりする。そして海洋島独特の隔離環境下で進化した固有種が多数生息している。それは、ガラパゴス諸島やハワイ諸島と比較しうる世界でも稀な、生物学的に貴重な生物相であると言われている。しかし、その生物たちの暮らしは、近代になって急激に変化してきたと考えられ、そして残念ながら、海洋島独特の原生自然は崩壊しつつある。

 今から170年ほど前から、ヒトも海を乗り越え小笠原諸島に到達し生活しはじめた。オガサワラオオコウモリに次いで、2種目の陸産哺乳類の定着である。ただ、ヒトはすでに文化的生活を営む人間であり、自然状態では起こりようもない速度で周囲の環境を改変できる能力を持っていた。その上、人間は、衣食住の充実のために、島外から多くの生物を持ち込んできた。そして、一部が野生化したのである。

 いままでに、小笠原諸島に人間によって持ち込まれた生物は非常に多種にわたる。意識的に導入した作物・家畜の生物種をはじめ、無意識に人間の衣服や靴に付着させたり、また建築資材等に紛れ込んで島に侵入した生物も数多い。生物種の導入の経緯に関しては、多くの文献に記録があり、整理されつつある。また、持ち込まれ野生化した移入生物による脅威は、多くの研究者によって報告され、その問題性に警鐘が鳴らされ続けてきた。したがって、ここでは、小笠原固有の自然に脅威を与えていると確認できる移入生物の問題についてのみ、その概要を紹介しよう。


移入動物の野生化

 まず哺乳類である。家畜として導入されたヤギ、ウシ、ブタをはじめ、導入資材に紛れ込み侵入したと考えられるネズミ類、また愛玩動物としてのイヌ、ネコである。この中で、現在、野生化し、問題が深刻化しているのは、なんと言ってもヤギである。そもそも、小笠原諸島にはオガサワラオオコウモリ以外の哺乳類が存在していなかったところに、突然、大型で草食性のヤギが現れたのであるから、小笠原の植物相は甚大な被害を受けてきた。

 小笠原諸島の北部を形成する聟島列島の聟島では、野生化したヤギの被害が最も視覚的に理解できる。記録によると、1935年時点では島の多くの部分が森林に覆われていたという。しかし現在、ほとんどが草原化して森林はわずかしかない。戦前の放牧の影響に野生化したヤギの食害が加わって森林が消失したのだ。これは森林の林床の芽生えや稚樹をヤギが食べ尽くし、次第に草原化させてきたためである。

 また、父島をはじめ他の島々でも野生化したヤギは、岩場や林床で固有に進化してきた植物種の多くに食害をあたえている。例えば、キキョウ科の大型草本、オオハマギキョウをはじめ、オガサワラアザミ、シマカコソウ、ヘラナレン、ウラジロコムラサキ、ムニンツツジなどは、ヤギの食害で激減し、現在では多くの地域で絶滅し、そしてわずかに残った個体群も絶滅の危機にある。

 ヤギの食害は、森林全体、固有構成種など植物相に直接的な打撃を与えただけではない。なぜなら破壊された植物相は、一次生産者として動物種に食料を与え、また彼らの生息環境全体を構成していたはずだからだ。したがって、野生化したヤギは、小笠原の動物相にも間接的だが重大な被害を与えたはずである。その被害の規模は計り知れないと言わざるを得ない。

 また、ネズミ類や野生化したネコは、固有鳥類10種のうち、4種を絶滅させたと考えられている。飛翔力の弱いオガサワラマシコや、オガサワラガビチョウ、オガサワラカラズバト、ハシブトゴイの成鳥や雛、卵を捕食し、絶滅に追いやったと言われている。

 移入され野生化した哺乳類以外の脊椎動物では、爬虫類の小型トカゲのグリーンアノール、両生類のオオヒキガエルが問題だ。特に、父島・母島の森林では普通に見かけ、昼間に盛んに活動しているグリーンアノールは、旺盛な昆虫食で、木々の枝や葉の上で、昆虫の飛来を待ち受け、実に見事に昆虫を捕らえる。このトカゲは相当数の個体が生息していると考えられ、その捕食によって繁殖が抑制されている昆虫種は想像を絶する。特に小笠原固有の昆虫種のうち、昼光性の昆虫である固有トンボ類、小型膜翅目、小型鱗翅目の各地での絶滅もしくは著しい個体数の減少は、このグリーンアノールの捕食が要因の一部となっている可能性が指摘されている。

 人間は無脊椎動物も、小笠原諸島に持ち込んでいる。ここではセイヨウミツバチとアフリカマイマイについてのみふれよう。まず、養蜂のために導入され野生化したセイヨウミツバチである。現在、開花した固有植物の花に最も頻繁に訪れるのはセイヨウミツバチである。つまり、セイヨウミツバチ移入以前に花で吸蜜していた小笠原に自然の昆虫たちは、食料他を奪われている。特に植食性の小型膜翅目昆虫は、その個体数を激減させているはずであり、絶滅の危機におかれているであろう。

 アフリカマイマイは1935年頃、薬用、食用として小笠原諸島に持ち込まれた。この野生化したマイマイは農作物をはじめ、さまざまな植物を食害したが、特に母島独特の森林である石門地域で、固有ラン科植物でエビネ類のホシツルランを食い尽くした。戦前は石門の林床にはエビネの花が咲き乱れたと言われているが、15年ほど前には自生株が2株で、それもマイマイよけのネットで保護されていた。残念ながら現在では石門自生株は消滅し、他の地域に緊急非難させた数株が生き残っているだけで、ほぼ絶滅状態にある。芽生え、草本に甚大な影響を与えてきたアフリカマイマイではあるが、最近は、驚くほど数が減り、最近はかつてのように猛威をふるっていないのは幸いである。


移入植物の野生化の影響

 本雑誌の読者の多くが最も興味ある植物でも、移入され野生化した種が同様に脅威となっているのである。トウダイグサ科の大型木本、アカギをはじめ、リュウキュウマツ、ギンネム、シマグワ、アオノリュウゼツラン、セイロンベンケイソウなどなどである。もう一々挙げないが、本土や琉球列島でなじみ深い多くの帰化植物も、小笠原諸島の集落周辺を中心に生育している。

 実際、小笠原諸島に観光に訪れ、観光用の周遊路を巡っている限り、街路樹として植栽された植物や道路工事で導入され野生化した移入植物ばかりを見ていると言っても過言ではない。それほど、多くの移入植物が小笠原諸島にはもたらされてきた。しかし、野生化した植物のすべてが、小笠原の天然林侵入しているのではないのも事実ではある。多くの移入種は人間が開墾した土地の周辺でのみ生育し、そこでのみ天然更新しているか、異なった要因によって衰退さえしている。

 このうち、小笠原諸島の移入され天然林に直接的に脅威を与えて、深刻な状態になっているのは、アカギとシマグワである。しかし脅威の内容が、移入動物種の場合とは異なっている。動物種の脅威の多くが他の動植物の捕食に由来しているのに比べ、移入植物の脅威は、生育環境が似ていた別種数種との完全な置き換わりと、近縁種との交雑による遺伝的汚染という現象として捉えることができる。

 アカギは、トウダイグサ科の高木種で、明治期に造林樹種として小笠原諸島の各地に導入された。湿潤で肥沃な土壌を好み、稚樹の耐陰性が強く、萌芽再生能力にすぐれ、その上、非常に生長が速い。また、島内島間での分布拡大に最適な鳥散布される果実を大量に付ける。だから当初の植林地から、鳥散布によってあらゆるところに、短期間で逸出していった。

 乾燥傾向がつよい小笠原諸島の気候にあって、湿潤な地域は、多くの固有種が残存し、独特な森林を形成してきた場である。皮肉なことに、アカギはそのような湿潤な森林好んで侵入し、在来樹種と置き換わっていくのである。したがって、小笠原諸島でも、特に固有植物の宝庫、母島の石門・桑の木山地域は、現在、アカギによって直接的に破壊され、アカギの巨木で占められつつある。ヤギの場合と同様に、アカギの天然林侵入によって、森林の質が急変することからすれば、間接的に影響を被っている在来生物種は計り知れないであろう。

 一方、シマグワの脅威は、比較的最近になって判明してきた。戦前に養蚕のために導入され、その後野生化してしまったシマグワが、小笠原諸島固有種のオガサワラグワと雑種を形成していたのだ。これは分子遺伝学的解析が野生植物でも可能になった最近の生物学の進歩によって判明した事実である。オガサワラグワは小笠原諸島の良く保たれた森林の構成種で、巨木になり、材が緻密で硬いことから、明治期に小笠原諸島の各地から切り出され、本土に搬出されたほどの良材を提供する。切り出され根回り直径2mほどの切り株となった姿が、母島の石門域で、100年以上たった現在でもはっきりと見ることができる。したがって切り出されていた当時は、石門地域などに多くの巨木が生育していたはずである。

 しかし、現在残存するオガサワラグワと考えられていた株の多くが、すでにシマグワとの雑種であり、純粋なオガサワラグワはほんのわずかであるという。オガサワラグワの純血株と識別された株は、なんと母島で約20株、父島で数株までに減少している。弟島では純血の40株ほどの生育が確認されているが、父島、母島でのオガサワラグワの自然状態による純血維持は、すでに広域に拡大しているシマグワの分布域からすると、困難な状況である。

 オガサワラグワが雌雄異株であり、したがって自殖できない宿命にあることを考えると、少数の自然残存株間での交配・繁殖はほとんど見込みが無い。このままでは、確実に、純粋なオガサワラグワは絶滅するであろう。それも、かつては予想もしなかった過程を経て。オガサワラグワの遺伝子が、バラバラとなり、シマグワの遺伝子のなかに組み込まれて滅んでいくのだ。事態は、オガサワラグワに対するシマグワの単純な遺伝子汚染のレベルを超えている。



駆除される移入生物

 このままでは、移入生物の野生化によって、小笠原諸島で生き残り進化を遂げた多くの固有種が絶滅してしまい、小笠原独特の自然環境は崩壊してしまう。そこで、いくつかの移入生物種の積極的な駆除が、近年行われはじめたことを報告しよう。

 父島の南西に位置する小さな島である南島は、現在、小笠原諸島の観光スポットの一つである。そこに観光で上陸する人々の多くは、隆起石灰岩でできた島の異形に感嘆し、島の美しい緑を小笠原諸島の原生自然の姿であると感じるであろう。しかし、それは全くの誤解である。南島には、1956年頃ヤギが放たれ、1969年の段階では、島内の植生はほぼ草原化していた。ヤギ侵入以前の南島は、モンパノキやクサトベラ、タコノキなどの海岸植生に覆われていたと伝えられているが、それがヤギによってほぼ食い尽くされていたのである。

 それを1970年から71年にかけて、ヤギが完全駆除されたのである。そのおかげで、1969年では16種しか生育が確認できなかった植物種が、1993年の段階では65種になり、徐々に植生は回復してきたのである。もっとも南島への種子の主な供給源は父島南部であるから、父島に野生化し繁殖していた移入植物も当然のように侵入してきた。しかし、今では、固有種のなかでも絶滅が危惧される植物が南島で回復してきており、現在でもヤギの脅威にさらされている父島の植物の避難所ともいえる役割を果たしつつある。

 また、先に述べたヤギの被害が甚大な聟島でも、2000年に約650頭、01年には約230頭のヤギが捕獲駆除された。聟島はヤギが約900頭野生化していると予想され、30頭ほどが残っているだけであるという。この駆除は環境省の依頼で東京都が行っているもので、聟島のヤギ駆除のあとには、嫁島のヤギも駆除する予定であるという。

 移入植物で問題となっていたアカギは、ここ数年、駆除方法が研究されてきた。その結果、樹皮を環状に剥いで、活発な維管束(師部)を広域に切断し、アカギを立ったまま徐々に枯死させる処理が最良と判断されている。伐採では、手間がかかる上、隣接して生育する天然木を傷つける可能性がある。また森林の林冠ギャップが突然、広域にわたって生じる点を考慮しての対策であろう。また旺盛な萌芽については切断する対策もとられている。

 このアカギ駆除に関しては、今年7月、小笠原原生植生回復ボランティアとして、関東森林管理局東京分局がアカギ駆除小笠原ツアーを企画し、一般市民に参加を呼びかけ実行した。東京からの参加費として参加希望者1人あたり78000円の参加費自己負担を明示したが、募集開始からすぐに定員の100名を超える希望者が申し込み、一部抽選も行われたという。ニュース報道によれば、このアカギ退治ボランティアツアーは成功裏に終了したという。

駆除すれば良いのか?

 私たち人間は勝手なものである。実際、こうした移入生物の駆除については、賛否両論が存在する。「駆除は人間の身勝手な行動の結果の後始末であり、移入された生物には罪はなく可哀想だ」といった論や、「人間が過ちを犯した壮大な野外歴史博物館として、他の地域で二度と過ちを繰り返さないために現状を維持すべき」という論もある。

 しかし、私はこれらの論を認めるわけにはいかない。なぜなら、すでに移入生物の野生化が引き起こしている諸問題は、人間にお灸をすえるがごとくの生やさしい問題ではないと思うからである。事態はもっと深刻で、問題を放置しておけば、豊かな人間生活の存亡にまで波及する恐れがあると考えるからだ。

 ただ、駆除だけでは、問題の本質は解決されないのも事実だ。なぜなら、上記のようなヤギやアカギの駆除は、私たち自らが引き起こした問題が、あたかも安易に解決できると感じさせてしまう可能性があるからだ。また、駆除は問題自体の発生を未然に防ぐ防止策とはなりえないからだ。駆除をしないですむように、今後は、島への持ち込み生物の制御、野生化の制御こそが、問題を未然に防ぐ対策であることを忘れてはならないと思う。

 現在、植物防疫では、本土の農作物の被害回避の観点から、小笠原諸島からの一部生物種の持ちだしが制御されている。しかし、今後は、逆方向、本土側から小笠原への持ち込みに付いても、早急な対策が望まれるであろう。

海洋島固有の自然を守るために

 ところが、小笠原諸島独特の自然を守るためには、同諸島への生物の持ち込みと野生化に対する注意だけでは足りない。実は、諸島内の島の間での、野生生物の人為的移動も注意する必要がある。多くの固有種は、世界で小笠原諸島にしか分布しないばかりでなく、同じ種ではあっても、個々の島々の個体群は、諸島内で相互に海峡で地理的に隔離され、遺伝的に分化している。現在でも、多くの野生生物が海洋島独特の進化の過程にあることが、最近の研究で明らかになりつつあるのである。

 同諸島内であっても、特に固有種の島間の人為的移動は、外部からの移入生物の問題と同様の問題を引き起こす。つまり、諸島内での遺伝的多様性の崩壊、遺伝的均質化である。これでは、海洋島固有の、生物進化の実験場とまで言われる自然環境は維持できない。

 特に、ヤギ駆除後の植生回復過程において、他の島からの植物株の移植栽など、過度な人為干渉は、植生回復の名の自然破壊になりかねない。この問題は、非常に難しい問題ではある。しかし、生物の人為的移動が、移入生物の野生化で教訓を得たように、予測できないさまざまな問題を引き起こす可能性に留意し、場合によっては、駆除後、自然状態での植生回復を気長に待つ必要性がある。島ごとに遺伝的に異なった生物相の維持こそが、海洋島である小笠原諸島の自然を守ることにつながる。自然を守ろうとする関係者の良心・善意が、新たな自然破壊を招くような悲劇だけはないようにと切に願う。


参考文献(一部のみ)

小笠原研究年報(1978-2002)の各記事 東京都立大学小笠原研究委員会発行

小笠原研究 Ogasawara Research(1997-2002)の各記事東京都立大学小笠原研究委員会 発行

岩槻邦男・下園文雄 (1989) 滅びゆく植物を救う科学−ムニンノボタンを小笠原に復元する試み− 研成社

清水善和 (1988) 小笠原諸島母島桑ノ木山の植生とアカギの侵入 地域学研究 1: 31-46

岩槻邦男 (1990) 日本絶滅危惧植物 海鳴社

小野幹雄 (1994) 孤島の生物たち−ガラパゴスと小笠原− 岩波書店

遺伝 Vol.49, No.6 (1995) 特集 島にみる進化 裳華房

プランタNo.81 (2002)特集 小笠原の自然 研成社

河原孝行・吉丸博志 (2002) オガサワラグワ 森林科学 34: 14-18