教科書について
線形代数の基礎, 尼野一夫他, 学術図書出版社, 1997
工科系の数学5常微分方程式, マイベルク, ファヘンアウア著, 及川正行訳, サイエンス社, 1997
すぐわかる微分積分, 石村園子, 東京図書, 1993
基礎微分積分学 第2版, 江口正晃・久保泉・熊原啓作・小泉伸, 2002, 学術図書出版
常微分方程式(原書第5版), E・クライツィグ著・北原和夫訳, 技術者のための高等数学1, 1997, 培風館
線形代数の基礎, 尼野一夫他, 学術図書出版社, 1997
- 2004前期 数理構造演習I(岐阜大学工学部数理デザイン工学科1年)
- 2005前期 代数学I(岐阜大学工学部生命工学科1年)
- 教科書の構成
- 最初に平面・空間のベクトルについての幾何学的な考察。その後は一般次元。
- 次に数ベクトル空間。線形独立・基底・次元。内積・正規直交基底。
- 行列の演算をやってから、基本変形と連立一次方程式。
- 行列式。
- 線形写像。
- 対角化。対称行列の対角化。
- 一般のベクトル空間が出てくる。ここで初めて複素係数のベクトル空間。
- 固有値。正規行列のユニタリ行列による対角化。
- 感想
- 全体で180ページ弱と薄く、学生は読む前にうんざりしなくてすむだろう。
- その分、それぞれの項目があっさりしている。また応用についての記述はない。
強調したいところとそうでないところの区別があまりない(これはほとんどの教科書がそうだ)。
- 逆に言うと、この教科書を使って講義するときに教師の色が出しやすいともいえる。たとえば、ぼくなら講義時ははきだし法を少し詳しく説明するだろう。
- 章末の問題は、易しい問題から少し考える問題まで適度にそろっていると思う。
- 文中の問は、それまでの説明から解けるものと、特に説明しないとわかりにくいものが混じっているので、演習のときは注意が必要。
- 細かい点になるが、第2章に出てくる連立一次方程式の解空間は学生には理解しづらいようであった。
これは、第4章で解をパラメーターを使って表すことを学んでからにしたほうがよいかも。
- 今回の演習のためには適度な教科書であったと言える。
(2004/8/24)
- 今年も、使った手ごたえは昨年と同様。
- 昨年は気づかなかったが、行列式の定義に、第一行による展開を採用して、そののち、
どの行・列で展開しても同じと述べる。
置換を使って云々という話はどこにもでてこない。
これを載せるか否かの選択は、重要のように思う。
(2005/10/31)
工科系の数学5常微分方程式, マイベルク, ファヘンアウア著, 及川正行訳, サイエンス社, 1997
- 2004年前期 微分方程式(岐阜大学工学部数理デザイン工学科2年)
- 教科書の構成
- 序論として、基礎概念、幾何学的意味。
- 「解ける」1階方程式。完全微分方程式、変数分離、線形、積分因子。変換による解法。
- 定数係数2階線形。
- 数学的な定理たち。存在定理(連続なら解を持つ)、一意性(リプシッツ)、連続性。
- 数値解法。
- ラプラス変換。
- ベキ級数による解法。
- 連立、高階。
- 定数係数線形。
- 安定性など
- 境界値問題、固有値。
- 感想
- 一番の特徴は、豊富な応用例。本文中の例にも、章末の練習問題にも面白い例がたくさんのっていて、実に興味深く、微分方程式がいかに役に立つか理解できる。
- また、数学的にも基礎的な部分をなるべく省略せずに書こうという努力が見られる。
- 論理的に必要なことはほとんどすべてのっているが、初学者がいきなり読んで理解できるようには書かれていないようである。
- 一番の問題点は、簡単な練習問題が少ないことである。学生の練習のために、別に問題を用意しなければならない。
- 練習問題が難しいことと、多くのことが書かれすぎていることから、学生は難しい教科書という印象を受けているようである。(2004/8/26)
すぐわかる微分積分, 石村園子, 東京図書, 1993
- 2004年前期 解析学序論I(岐阜聖徳学園大学教育学部1年)
- 教科書の構成
- 1変数関数の微分。導関数の計算法(多項式、三角関数、逆三角関数、指数関数、対数関数、対数微分)。
- 高階導関数。
- 平均値の定理、ロピタルの定理。
- テーラー展開。
- 関数のグラフ。
- 1変数関数の積分(不定積分、置換積分、部分積分、有利関数の積分、三角関数の有利関数の積分、定積分、広義積分、面積)。
- 2変数関数の微分。
- 2変数関数の積分。
- 感想
- 教科書というより、主に自習を目的とした参考書。高校の数学プラス少々といった内容。
- 筋道だった展開や、将来の応用などは目的としていない。微積分の初歩的な計算に慣れることのみが目標。
- 学生の知的好奇心を満たすにはかなり物足りない。
- しかし、高校で数IIIをやっていない学生に対してはこれくらいから始めないとしょうがないか?
(2004/8/26)
基礎微分積分学 第2版, 江口正晃・久保泉・熊原啓作・小泉伸, 2002, 学術図書出版
- 2005年前期 解析学I(岐阜大学工学部数理デザイン工学科1年)
- 教科書の構成
- 実数と連続関数
- 1変数関数の微分
- 偏微分
- 1変数関数の積分
- 重積分
- 級数
- 微分方程式
- 感想
- ε-δは一応、書いてあるが、なるべく使わないようにしているようだ。
証明をはぶいてある定理も多い。
- 無限小数で表される数を実数と定義している。
(2005/10/31)
常微分方程式(原書第5版), E・クライツィグ著・北原和夫訳, 技術者のための高等数学1, 1997, 培風館
- 2005年前期 微分方程式 (岐阜大学工学部数理デザイン工学科2年)
- 教科書の構成
- 1階の常微分方程式
- 線形常微分方程式
- 連立微分方程式, 相平面, 安定性
- 微分方程式のべき級数解, 直交関数
- 感想
- 定番の教科書のひとつ。
この教科書に沿って教えれば、不満はないだろう。
応用問題も多いし、学生の自習用としても使えそう。
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updated 2005 Oct 31