多様体の各点における接空間に内積が指定されている多様体を リーマン多様体という。アブストラクトに与えられたリーマン多様体は 十分次元の高いユークリッド空間内に内積を保ったまま埋め込む ことができるが、ユークリッド空間の次元が小さくなれば、必ずしも そこに実現できるとは限らない。内積を保ったまま埋め込めるための 条件は、多様体上の非線形1階偏微分方程式系の形で表現されるが、 余次元が小さい場合には、この方程式が解を持たなくなるからである。 与えられたリーマン多様体が実現可能となる最小次元のユークリッド 空間を決定する問題はリーマン幾何学における基本的な問題の一つで あり、本講演ではこの問題について微分方程式の可積分条件の 立場から解説する。埋め込みが存在するためのobstructionが 可積分条件から自然に導かれることを解説し、時間があればその 具体的な応用についても紹介したい。