円板上に固めた樟脳を水面に浮かべると,水面をすべるような 自発的な運動が生じる.樟脳円板はほぼ等速直線運動を行い, 水槽の壁に近づくと壁に衝突せずに反射し,再び等速直線運動を 行う.まるでビリヤード球のように直進と反射を繰り返す.我々は 長方形領域における樟脳円板の運動を記述する4次元常微分 方程式系を考える.領域が正方形のときは,通常のビリヤード問題 と異なり,各辺を順に巡るような極限周期軌道が現れる. 領域の縦横比を少し変えるとアトラクタは連続的に変形するが, それを大きく変えると,アスペクト比に応じて異なるタイプの周期軌道や 準周期的軌道やカオス的軌道がアトラクタとして現れる.本講演では, このようなアトラクタの変化が生じる理由を数値計算と力学系の分岐 理論によって説明する.