第131回GMSセミナー 日時:2025年4月25日(金)16:30- 場所:岐阜大学工学部101番教室 講師:樋口 健太 氏 (岐阜大学 教育学部 数学教育講座) 題目:行列シュレディンガー作用素の半古典極限における散乱問題と一般化古典軌道 概要:シュレディンガー作用素に現れるプランク定数(を粒子の質量の平方根で割ったもの)を微小パラメータとみなした際の極限は半古典極限とよばれる. ボーアの対応原理は,量子力学の物理量が半古典極限の下で古典力学の物理量へと回帰すると主張する. この対応は(半古典)擬微分作用素とそのシンボルとの対応として数学的に定式化・一般化され,盛んに研究されている. 本講演では,量子化学の文脈で現れる行列値のポテンシャルをもつシュレディンガー作用素(行列シュレディンガー作用素)を扱う. 固有値や量子共鳴,散乱行列といった物理量の半古典漸近挙動に関する結果を紹介する. 特に,行列シュレディンガー作用素には,行列の次数に応じて複数の古典力学系が対応する. これらの複数の古典力学系をそれぞれ別に扱うのではなく,“連立系”として一般化古典軌道を導入することで,物理量の半古典漸近挙動を説明する.