Motivation
課題は、「星の一生」を理解することにある |
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夜空に煌めく星にも生と死があり、数千万年から百億年という長い生涯をかけて循環しています。星間空間中の水素ガスが集まって星が作られると、星内部では炭素や酸素などの元素が合成されます。一生の最期には形成された元素を放出し、それが新しい星の「種」となるのです。
私たちの体を構成する元素も、この輪廻のなかで生み出された、という事実を知ったのは、私が中学生の時でした。時間も空間のスケールも異なる宇宙と私たちが、目に見えなくても確実に繋がっていることに、身震いを覚えた記憶があります。「自分の人生のすべてを懸けて、この繋がりの一端でも解明できたら、どんなに素晴らしいことだろう」。そう思ったのが、この研究者の道を志したきっかけでした。現在私は、星の一生の未解明部分のひとつである「星の消滅の現場(超新星残骸)」の研究を進めています。
Research Interest
多波長解析で探る超新星残骸の素顔 |
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近年、複雑な天文現象を理解する手法として、2つ以上の観測波長データを組み合わせた解析(多波長解析)が注目されています。これは、観測波長ごとに捉えられる物理現象が異なることを利用して、ひとつの天文現象を多角的に分析する試みです。例えば波長 2.6 mm の電波では、星の元になる水素分子ガス雲 (−263度) を捉えられますが、エックス線では1000万度のプラズマや宇宙線電子からの放射を検出できます。
超新星残骸 (※1) は、電波からガンマ線までほぼ全ての波長で明るく輝くため、多波長解析に適した天文現象です (図1)。私は、従来ほとんど行われてこなかった、電波とエックス線やガンマ線データの組み合わせに着目し、宇宙物理学100年来の謎である、宇宙線の起源とその加速機構を探る研究を進めています。
※1: 星の一生の最期の爆発で作られる高温の膨張ガス球。
毎秒1万㎞の衝撃波や重元素放出、粒子加速などを伴って、宇宙空間に多大な影響を与える。