当科の研究の特徴

当教室で行われている研究は、臨床研究から純粋な基礎的研究まで多彩ですが、中でも対象として小児期に発症することが多い遺伝性疾患を扱う研究が特徴です。特に先天性代謝異常症や原発性免疫不全症(自己炎症性疾患を含め)の多くは単一遺伝病であり、患者の確定診断のために遺伝子解析が必要となるが、多くはコマーシャルベースでは解析することができません。また得られた遺伝子変異の情報の解釈のために、なんらかのin vitroの機能解析が必要となることがあります。こういった一般医療機関では診断することが困難な疾患・症例について、臨床研究として診断・病態解析を行うことで、その先の治療につなげることができます。また、先天性代謝異常症、自己炎症性疾患、アレルギー疾患、腫瘍性疾患についてそれぞれの分野で新規治療法の開発にも取り組んでいます。

ケトン体代謝異常症、脂肪酸代謝異常症、有機酸代謝異常症

ケトン体代謝異常症のβ-ケトチオラーゼ欠損症、サクシニル-CoA:3-ketoacid CoAトランスフェラーゼ(SCOT)欠損症、HMG-CoA合成酵素欠損症、HMG-CoAリアーゼ欠損症の分子病態解析を中心に行っていますが、最近の臨床的成果として、日本で初めてのHMG-CoA合成酵素欠損症、HSD10病を診断し、その後も症例が蓄積されていることです。β-ケトチオラーゼ欠損症、サクシニル-CoA:3-ketoacid CoAトランスフェラーゼ(SCOT)欠損症については世界の症例の解析を行っており、最近ではベトナムのβ-ケトチオラーゼ欠損20例ほどの解析から非常にコモンな変異がベトナムにあることを明らかにし、同様にインドにおいても同様のことを明らかにしつつあります。1塩基の置換が疾患を引き起こしうることは当たり前といえばそれまでですが、いろいろなメカニズムで酵素の欠損をきたします。それを分子レベルで明らかにしていくことは他の疾患にも繋がることであり、蛋白3次構造上の変化、スプライシング異常のメカニズムなどに興味を持って取り組んでいます。また進化と疾患に影響を与えてきたと考えられるAlu配列にも取り組んでいます。  最近は新生児マススクリーニング対象疾患の診療ガイドライン作りなど臨床面で重要なことにも取り組み、臨床的な貢献も行っています。 (文責:深尾)

Medical Note 深尾敏幸教授インタビュー:
先天性代謝異常症は代謝酵素の機能不全が原因 検査や治療
(公開日2017年06月26日)

自己炎症疾患

自己炎症疾患は膠原病類似の臨床症状(発熱, 関節炎, 皮疹など)を示すが自己抗体は検出されず、自然免疫系の制御異常により発症する疾患群の総称です。当教室では、厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業の自己炎症性疾患研究班と連携し、診療ガイドラインの策定、患者の遺伝子診断、サイトカインプロファイル分析、患者迅速スクリーニング法の開発、in vitroでの変異解析、新規治療法の開発等を行っています。(文責:大西)

免疫不全症

近年エクソーム解析等の遺伝子解析技術の発展に伴い原発性免疫不全症の新規責任遺伝子の同定が相次いでいます。すでに200種類以上の責任遺伝子が明らかとなっていますが、いまだ未解決の症例も多くあります。当科では厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業の原発性免疫不全症研究班、Primary immunodeficiency database in Japan (PIDJ)と連携し、診療ガイドラインの策定、フローサイトメーターを利用した詳細なリンパ球サブセット解析、自然免疫不全症の迅速診断スクリーニング、患者遺伝子診断、in vitroでの変異解析等を行っています。(文責:大西)

アレルギー疾患

当教室のアレルギー疾患研究の伝統を引き継いで、遺伝子・細胞機能などを含めたトランスレーショナルリサーチを進めています。特に最近では、低親和性IgE抗体についての研究や、T細胞免疫に関連した研究など様々な研究を行っています。また、緩徐法による経口免疫療法、特に世界初の「食べて治す」食品の開発を進めており、患者さんの治療への応用を進めています。(文責:川本)

神経疾患

脊髄性筋萎縮症に対してTRH療法を行い、3次元運動解析を用いた治療評価を開発しています。亜急性硬化性全脳炎ではインターフェロン、リバビリン脳室内投与併用療法を行い、憤怒けいれんにおいては、新しい診断、治療指針を確立し、鉄欠乏、自律神経異常、治療について進めています。(文責:久保田)

ムコ多糖症

ムコ多糖症の骨関節症状の治療薬としてポリ硫酸ペントサンナトリウム製剤の有効性および安全性に関する研究をおこない治療薬開発を行っています。ムコ多糖症の新生児マススクリーニング法の開発による早期診断、早期治療を目指した研究および中枢神経症状に対する治療薬についての研究をおこなっています。(文責:折居)

腫瘍性疾患

日本小児白血病リンパ腫研究グループなどの全国多施設共同研究グループに属して小児がんに対する標準的治療法の確立に貢献しています。また疾患の原因遺伝子などの解析など、新しい診断法や治療に関わるような「橋渡しになる研究」も行っています。(文責:小関)