イヌの祖先 − オオカミ?コヨーテ?ジャッカル?


  現在、私たち日本人にとって一番身近な家畜はおそらくイヌでしょう。イヌは、最も早く家畜化された動物だと考えられています。では、イヌの祖先はどんな動物だったのでしょうか。昔からイヌの祖先の候補として挙げられてきたのが、オオカミ、コヨーテ、ジャッカルです。確かにどれも外見はよく似ています。しかし、DNAの研究が進んだ結果、イヌの祖先はオオカミであることがほぼ確実になりました。

なぜDNAを調べると祖先がわかるのでしょうか。DNAは、生物の遺伝情報を担っている物質です。私たちの持っているDNAの半分は父親のDNAのコピーであり、残り半分は母親のDNAのコピーです。父親や母親は、その父親と母親からコピーを受け取っています。このように、DNAは先祖から子孫へ、家系に沿って連綿と受け継がれていきますから、DNAを調べると誰と誰とが親戚であるかがわかります。同じように、DNAを調べることで動物の種と種の親戚関係も明らかにすることができるのです。

では、イヌはいつ頃どこでオオカミから家畜化されたのでしょうか。これについてはまだ定説がありません。この研究室のメンバーも参加している国際共同研究グループは、2009年末に論文を発表しました。それによると、イヌが家畜化されたのは今から11,500〜16,300年前頃、その場所は中国南部から東南アジアにかけての地域です。でもDNAを調べるだけで、どうして「いつ」「どこで」までわかってしまうのでしょうか。これについては、また別の機会に説明したいと思います。

(2010年3月)



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