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農薬取締法の解説

 農薬取締法が2003年3月に改正される大きな契機となったのは、中国から輸入した冷凍野菜から「ダイホルタン」や「プリクトラン」などの失効農薬が検出されたことが挙げられます。さらに、その後に国内の生産農家においても失効農薬が使用されていたり、作目指定が行われていない無登録農薬の使用や個人輸入農薬の使用が明らかとなり、消費者からの農業に対する不信感が高まり、農水省としても国民の不満を解消するための方策として農薬取締法を改正する必要が迫られたと考えます。
 別の表現をするならば、生産農家があまりにもルーズな農薬の使用を行ってきたことが原因となったとも言うことができるでしょう。厳しい表現を敢えて使うならば、「自業自得」の結果であるかもしれません。
 実際に、10年ほど前に「殺虫剤の抵抗性」の講演を岐阜県内の各種生産団体に対して連続して行ったことがありますが、例えば稲作の生産団体では殺虫剤と殺菌剤の区別も付かない方がおられたり、使用量についても「今年の害虫被害がひどいような気がするので、農協から庭先配布された農薬に加えて、昨年の在庫も一緒にまいた」という答えにビックリした経験があります。
 これからの農業は「消費者からの信頼を得られない農業はありえない」といった考え方を強く持つことが第一であり、当然、環境に配慮したり、自分自身の農薬被爆に対しても充分配慮することが要求されます。

 このような情勢の基で改正された農薬取締法であるにも関わらず、農薬取締法の条文を読んだことのある方は極めて少なく、農薬取締法で農薬の使用にあたっての指導義務を持つ農業改良普及員や病害虫防除所員あるいは農協営農指導員の中にも「法律文章は難しくて読む気がしない」といった声も聞かれます。

 条文のなかの条項を参照した部分には、そこをクリックすると「その条文にジャンプする」機能や、私のコメントなどを入れて、なるべく使いやすくしましたが、疑問点などがありましたら「岐阜大学農学部 福井博一(fukui@gifu-u.ac.jp)」までメールをいただければと思います。

 以前の「農薬取締法解説」は、どちらかというと「農水省や都道府県の規制に関して一言」といった解説を行っていましたが、今回は「これを機会に生産農家の意識を改善して欲しい」といった姿勢で解説が行われています。

 農薬取締法は、「規制を強化する」目的で改正されたものではなく、「農薬使用にあたっての意識向上」を目的に改正されたものと考えることが重要ではないかと考えます。

 本法律改正は、国民の批判を受けて大急ぎで行われた経緯があるため、確かに不充分な点もあるようにも思いますが、生産農家の意識の低さが大きな引き金になったことを心に留めていただければ幸いです。

農薬取締法 条文の解説

「青字」で記載されたものは「条文」です。「赤字」で記載された部分は、福井博一のコメントです。

 (目的)
第一条 この法律は、農薬について登録の制度を設け、販売及び使用の規制等を行なうことにより、農薬の品質の適正化とその安全かつ適正な使用の確保を図り、もつて農業生産の安定と国民の健康の保護に資するとともに、国民の生活環境の保全に寄与することを目的とする。
この第1条は改正前と変わっていないのですが、良く読むと「心に響く」条文です。【国民の健康の保護】、【国民の生活環境の保全】に寄与することが目的です。生産農家として、生産効率を求めすぎて、この観点を見失っていたのかもしれません。
 (定義)
第1条の2 この法律において「農薬」とは、農作物(樹木及び農林産物を含む。以下「農作物等」という。)を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物又はウイルス(以下「病害虫」と総称する。)の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤(その薬剤を原料又は材料として使用した資材で当該防除に用いられるもののうち政令で定めるものを含む。)及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう。
農薬には、殺虫剤、殺菌剤、殺ダニ剤、殺線虫剤のほか、植物ホルモン剤やわい化剤などを含みます

2 前項の防除のために利用される天敵は、この法律の適用については、これを農薬とみなす。
天敵は生物であるが、農薬として取り扱われます

3 この法律において「製造者」とは、農薬を製造し、又は加工する者をいい、「輸入者」とは、農薬を輸入する者をいい、「販売者」とは、農薬を販売(販売以外の授与を含む。以下同じ。)する者をいう。
改正以前は、販売しなければ「農薬を製造・輸入・使用」しても問題とならなかったので、自分で使用する目的で個人輸入しても問題とはなりませんでした。今回の改正で、「個人輸入や海外で購入して持ち込むことも禁止」されます。また、製造することも禁止されていますので、「自分で特別調合した薬剤を作ることも禁止」されます。

4 この法律において「残留性」とは、農薬の使用に伴いその農薬の成分である物質(その物質が化学的に変化して生成した物質を含む。)が農作物等又は土壌に残留する性質をいう。
 (農薬の登録)
第2条 製造者又は輸入者は、農薬について、農林水産大臣の登録を受けなければ、これを製造し若しくは加工し、又は輸入してはならない。ただし、その原材料に照らし農作物等、人畜及び水産動植物に害を及ぼすおそれがないことが明らかなものとして農林水産大臣及び環境大臣が指定する農薬(以下「特定農薬」という。)を製造し若しくは加工し、又は輸入する場合、第15条の2第1項の登録に係る農薬で同条第6項において準用する第7条の規定による表示のあるものを輸入する場合その他農林水産省令・環境省令で定める場合は、この限りでない。
改正以前は、「製造業者」、「輸入業者」となっていましたが、今回の改正で「製造者」、「輸入者」に変更されました。したがって、農業者個人の輸入・製造(調合など)も登録手続きを経なければならなくなりました。
農業者が海外の生産地を視察して、効果のある農薬情報を得て、それを持って帰った場合にも適用されます。すなわち、海外からの農薬の持ち込みは基本的に全面禁止です。
ここでいう農薬とは、殺虫剤や殺菌剤だけではなく、わい化剤や生長促進剤など植物の生長に関わる薬剤全てを含みます。

【特定農薬について】(特定農薬リスト)
本文中の特定農薬の指定の検討に当たって、2002年11月から12月にかけて、2900件の情報が寄せられ、重複を整理した740種類について検討され、@重曹(食品であり、炭酸水素ナトリウムを主成分とする薬剤は農薬登録により効果確認済み)、A食酢(食品であり、食酢の活性成分である酢酸は過去に農薬登録により効果確認済み)、B使用される場所の周辺(「周辺」の定義としては都道府県とする)で採取された天敵 例)ナナホシテントウ(日本在来種の天敵であり、人畜に害を及ぼさない) 寄生バチ類(日本在来種の天敵であり、人畜に害を及ぼさない)が特定農薬(「特定防除資材」ともいう)として認定されました。
保留されたものの中で、「農薬としての効果に疑問が持たれたもの」については、農薬効果を謳って販売することは取り締まりますが、
「使用者が自分の判断と責任で使うことは可能」だとの見解です。
別紙のように、「特定農薬」として寄せられたリストをみると、種々雑多なものが挙げられているのが判ります。農薬取締法の改正は、「過度な農薬の使用」、「輸入野菜の残留農薬問題」、「無登録農薬や販売禁止農薬の国内での使用」を契機に行われたものと理解しています。この点において、「特定農薬」は伝統的な農業技術や生産農家の創意工夫を積極的に活用して、化学農薬依存体質を緩和しようとする意図で行われたものと思いますが、結果としては重曹、食酢、土着天敵しか認定できなかったことは、農水省の意図が反映されず、少々残念な気がします。
ただし、「特定農薬」の指定は販売目的を意図したものであり、その使用に関しては「使用者が自分の判断と責任で使うことは可能」という見解がだされており、生産農家の減農薬に対する意識向上を推進する上で意義があるとは思います。


2 前項の登録の申請は、次の事項を記載した申請書、農薬の薬効、薬害、毒性及び残留性に関する試験成績を記載した書類並びに農薬の見本を提出して、これをしなければならない。
 1 氏名(法人の場合にあつては、その名称及び代表者の氏名。以下同じ。)及び住所
 2 農薬の種類、名称、物理的化学的性状並びに有効成分とその他の成分との別にその各成分の種類含有量
 3 適用病害虫の範囲(農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる薬剤にあつては、適用農作物等の範囲及び使用目的。以下同じ。)及び使用方法
 4 人畜に有毒な農薬については、その旨及び解毒方法
 5 水産動植物に有毒な農薬については、その旨
 6 引火し、爆発し、又は皮膚を害する等の危険のある農薬については、その旨
 7 貯蔵上又は使用上の注意事項
 8 製造場の名称及び所在地
 9 製造し、又は加工しようとする農薬については、製造方法及び製造責任者の氏名
 10 販売する場合にあつては、その販売に係る容器又は包装の種類及び材質並びにその内容量
農薬製造・販売会社が農薬登録を行う場合には、複数の公的機関に依頼して、様々な試験成績を提出する必要があります。この試験を行う機関は公的機関と決められており、農薬の種類毎に依頼する機関の数が決まっています。当然、試験依頼は有償ですので、登録費用は数千万円に及ぶ場合もあります。
したがって、農薬の登録にあたっては、販売量が多いと想定される主要な作物が優先され、栽培例の少ない作物は登録しないケースが多くみられます。
対象作物を増やすには、費用と時間がかかりますが、【栽培例が少ない】=【使用量が少ない】→【売れない農薬】という図式が成り立ち、当然、採算が合わない農薬を登録する企業はないと考えます。国内の農薬メーカーで作る農薬工業会によると、「品種の追加には最低でも2―3年かかる。ある程度販売量が見込めなければ、対応は難しい」そうです。
一つの考え方として、地域特産作物の場合には、県が登録申請できるような仕組みも必要ではないでしょうか。


3の適用病害虫の範囲の考え方について
 農薬の作用として、「特定の菌(例えばBotrytis cinerea)に作用する」と考えるか、「病名(イチゴ灰色カビ病)に作用する」と考えるかによって考え方が変わります。「特定の菌に作用する」と考える場合には、Botrytis cinereaが原因である病気はすべて登録された農薬を使用することが出来ます。しかし、「病名(イチゴ灰色カビ病)に作用する」と考える場合には、原因菌が同じBotrytis cinereaであっても、「キュウリ灰色カビ病」には使用できないことになります。
植物病理学会には病名登録制度があり、これに従えば「特定の菌(例えばBotrytis cinerea)」ではなく、「病名(イチゴ灰色カビ病)」に従うことになります。しかし、花卉園芸のように毎年新しい作物が次から次へと導入される状況では、「病名」登録制度は現状にそぐわないように思います。基本は「特定の菌」による病気で、「発病作物」を追加する方法が現状にあっているように思います。
作物によって残留性が異なるため「特定の菌に作用する」という考え方に統一することに対して、異論がでるとは思いますが、この場合には、第3条1項4で規制をすることができると思います。

害虫の場合にはもっとわかりやすくなります。例えば、「オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum )」は何にでも寄生する害虫ですが、登録が「キュウリのオンシツコナジラミ」で取られている場合には「アドマイヤー」を使用できますが、登録が取られていない「ササゲ」では使用できません。たとえササゲに付いたオンシツコナジラミが隣のキュウリの温室から飛んできたものであっても、使用できないことになります。もし、登録が「オンシツコナジラミ」であるのならば、残留性は別として、作物に関係なく登録された農薬は使用できることになります。

法律では「病害虫の適用範囲の基準」として、どちらの考え方を取るのかの判断基準は指定していないように思いますが、恐らく植物病理学会の「日本有用植物病名目録」に従って、「病名」を指定していると思います。

「病害虫の適用範囲」と「残留性」、「土壌や水質などの環境汚染」、「薬害」とを区別する必要があるのではないでしょうか。

法文で適用農作物を指定しているのは、(4)の生長促進剤や抑制剤のみです。
以前から指摘されていた問題として、「適用農作物」の指定が「作物名」ではなく「品種名」で行われていたことでした。農水省の見解としては、「品種によっ濃度が異なるため、品種共通で濃度の幅を広くとると失敗する農家がでる恐れがあるため、品種ごとに登録がとられてきた。」ということでした。実際に、以前私が研究していた柿でも、「西村早生(9〜10月収穫の早生柿)」でジベレリンの登録が取られていましたが、「富有柿」では登録が取られていないため、普及員から「富有柿では使用禁止です」といわれたことがありました。こういう場合には、「農家の責任において使用する」ことを認めても良いのではないでしょうか。
今回の農薬取締法の改正を契機に、「ブドウのジベレリン処理ではメーカーに品種の限定をはずすよう指導した」ということですので、徐々にではありますが、改善されると思います。
ただし、法文では適用作物という指定ですので、品種ではなく作物名を指定させるよう指導していただきたいと思います。

もう一点ですが、『「アザミウマ」に登録がおりているですが「アブラムシ」に登録がない場合に、「アブラムシ」に使用できますか?』という質問が寄せられます。条文を読む限りは「使用できない」ことになるのですが、困った問題だと思います。『アザミウマの防除のつもりで散布したら、アブラムシも一緒に死んでしまった』といったところでしょうか・・・。


3 農林水産大臣は、前項の申請を受けたときは、独立行政法人農薬検査所(以下「検査所」という。)に農薬の見本について検査をさせ、次条第1項の規定による指示をする場合を除き、遅滞なく当該農薬を登録し、かつ、次の事項を記載した登録票を交付しなければならない。
 1 登録番号及び登録年月日
 2 登録の有効期間
 3 申請書に記載する前項第2号及び第3号に掲げる事項
 4 第12条の2第1項の水質汚濁性農薬に該当する農薬にあつては、「水質汚濁性農薬」という文字
 5 製造者又は輸入者の氏名及び住所
 6 製造場の名称及び所在地
4 検査項目、検査方法その他前項の検査の実施に関して必要な事項は、農林水産省令で定める。
5 現に登録を受けている農薬について再登録の申請があつた場合には、農林水産大臣は、これについて、第3項の検査を省略することができる。
6 第1項の登録の申請をする者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を納付しなければならない。
 (記載事項の訂正又は品質改良の指示)
第3条 農林水産大臣は、前条第3項の検査の結果、次の各号のいずれかに該当する場合は、同項の規定による登録を保留して、申請者に対し申請書の記載事項を訂正し、又は当該農薬の品質を改良すべきことを指示することができる。
 1 申請書の記載事項に虚偽の事実があるとき。
 2 前条第2項第3号の事項についての申請書の記載に従い当該農薬を使用する場合に農作物等に害があるとき。
 恐らく登録に作物名を記載する理由の一つとして、この項目が該当すると思われます。作物によって薬害の発生は異なるので、生産農家の保護の観点から見ると必要な項目であるとは思います。しかし、数十年前とは異なって、花卉のように種類が多いものについては作物名を指定するのが極めて難しい状況になっているのではないでしょうか。むしろ、生産農家の意識の向上(自立)を意図して、薬害の発生については「生産農家(使用者)の責任において判断する」という姿勢も必要ではないかと考えます。
生産農家にも技術水準にバラツキがあり、「農協の言われるままに病害虫防除をしている生産農家」から、「トラップを使って発生予察を自ら行い、天候や生育状況を判断して、薬害の発生テストをして農薬を使用する生産農家」まであります。
本来、薬害の発生は作物の種類だけではなく、天候や生育状態なども大きな要因になっています。登録当初から「薬害の発生が予測できる」ものについては、「農作物などに害があるような農薬の品質を改良するために指導する」必要があるとは思いますが、ある程度は生産農家の責任に委ねる必要もあると思います。
その点においては、今回「花き類(草本植物)・観葉植物」、「樹木類(木本植物)」、「野菜類」といったグループ化が行われ、このグループ(大分類)で登録されたものに関しては、使用する生産農家の責任において薬害の発生を防ぐように指導が行われています。プロとしての生産農家の意識を高めるという点において、大変良いことであると思います。
生産農家の意識の向上が「農水省の意識の変化」に繋がります。生産農家はもっと勉強しましょう。
ただし、販売農薬は商品であるので、使用にあたって被害がでた場合には、PL法に従って賠償問題に発展する可能性も否定できませんが、この点に対しては、最低限の指導を行うことで国の責任は回避できると考えます。

 3 当該農薬を使用するときは、使用に際し、危険防止方法を講じた場合においてもなお人畜に危険を及ぼすおそれがあるとき。
 4 前条第2項第3号の事項についての申請書の記載に従い当該農薬を使用する場合に、当該農薬が有する農作物等についての残留性の程度からみて、その使用に係る農作物等の汚染が生じ、かつ、その汚染に係る農作物等の利用が原因となつて人畜に被害を生ずるおそれがあるとき。
この条項が残留性に関わる条項です。ただし、農作物を一つずつ限定して残留基準の検定を行う必要はないと考えます。特に近年は花の品目数が著しく増加していますし、野菜でも同様に品目が増えている状況で、細かく分類しすぎるように感じていました。
今回、野菜に関しても適用拡大にむけた「グループ化」が積極的に取り入れられたことは、高く評価できます。花卉についても、「花卉類(草本植物・観葉植物)」と「樹木類(木本植物)」が新たに設定され、適用拡大が容易になりました。
花卉類については、「残留性」が人畜に与える影響は少ないと思いますので、さらに改善されることを期待しています。


 5 前条第2項第3号の事項についての申請書の記載に従い当該農薬を使用する場合に、当該農薬が有する土壌についての残留性の程度からみて、その使用に係る農地等の土壌の汚染が生じ、かつ、その汚染により汚染される農作物等の利用が原因となつて人畜に被害を生ずるおそれがあるとき。
収穫された農作物の残留性だけではなく、土壌等に対する汚染についての記載項目です。1960年代まで果樹の殺虫剤として農薬登録されていたヒ酸鉛が、果樹園土壌の鉛汚染を引き起こした事例があります。予想外の汚染につながる可能性もあるため、充分な検討が必要と思います。

 6 当該種類の農薬が、その相当の普及状態のもとに前条第2項第3号の事項についての申請書の記載に従い一般的に使用されるとした場合に、その水産動植物に対する毒性の強さ及びその毒性の相当日数にわたる持続性からみて、多くの場合、その使用に伴うと認められる水産動植物の被害が発生し、かつ、その被害が著しいものとなるおそれがあるとき。
この項は魚毒性に関わるものですが、「水産動植物」と規定していますので、単純に「魚」だけではなく「両生類」や「ミジンコやエビなどの「節足動物」、「水草」などへの影響も検討する必要が出てきました。これまで登録がおりていた農薬を更新する場合には、これまでの試験結果に加えてこれらの影響も試験する必要があり、農薬製造販売会社が負担する登録費用が増加しますので、今後、効果が高くて安全性も高いのだけれども、売れ行きが悪いため登録更新が行われない農薬が増加するのではないかと心配しています。
使用者としての生産農家においても、水質汚染の影響は当然考慮するべきことであり、これからの農業は環境対策を充分考える必要があると考えます。


 7 当該種類の農薬が、その相当の普及状態のもとに前条第2項第3号の事項についての申請書の記載に従い一般的に使用されるとした場合に、多くの場合、その使用に伴うと認められる公共用水域(水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)第2条第1項に規定する公共用水域をいう。第12条の2において同じ。)の水質の汚濁が生じ、かつ、その汚濁に係る水(その汚濁により汚染される水産動植物を含む。第12条の2において同じ。)の利用が原因となつて人畜に被害を生ずるおそれがあるとき。
この項は使用した農薬によって水質汚染が発生することを防止するための項目です。
水質汚染については農薬だけに限らず、硝酸制窒素についても10ppm以下という基準があり、色々な面で環境対策を講じる責務が生じています。


 8 当該農薬の名称が、その主成分又は効果について誤解を生ずるおそれがあるものであるとき。
 9 当該農薬の薬効が著しく劣り、農薬としての使用価値がないと認められるとき。
 10 公定規格が定められている種類に属する農薬については、当該農薬が公定規格に適合せず、かつ、その薬効が公定規格に適合している当該種類の他の農薬の薬効に比して劣るものであるとき。

 農薬使用にあたり、残留性や環境汚染、人畜に対する有毒性、品質の安定性などについて規制を行うことは極めて重要と考えます。問題は、このような規制が登録に付随しているにも関わらず、使用者である生産農家のなかに、これらの点(特に残留性や環境汚染、人畜に対する有毒性など)に対して無関心で使用基準を守らない人達が多いことだと思います。

2 前項第4号から第7号までのいずれかに掲げる場合に該当するかどうかの基準は、環境大臣が定めて告示する。
 農薬登録については、この「農薬取締法」以外に、環境省「登録保留基準」や厚生労働省の「食品衛生法http://www.jfha.or.jp/eiseihou/」などで規制されています。2003年5月に「食品安全基本法」が制定され、環境省、厚労省、農水省の連携が強化されます。農産物を生産するためには色々な知識や情報がより必要となりますので、生産農家の皆さんはさらに勉強する必要があると思います。

3 第1項の規定による指示を受けた者が、その指示を受けた日から1箇月以内にその指示に基づき申請書の記載事項の訂正又は品質の改良をしないときは、次条第1項の規定により異議の申出がされている場合を除き、農林水産大臣は、その者の登録の申請を却下する。
 (異議の申出)
第4条 第2条第1項の登録を申請した者は、前条第1項の規定による指示に不服があるときは、その指示を受けた日から2週間以内に、農林水産大臣に書面をもつて異議を申し出ることができる。
2 農林水産大臣は、前項の申出を受けたときは、その申出を受けた日から2箇月以内にこれについて決定をし、その申出を正当と認めたときは、すみやかに当該農薬を登録し、かつ、当該申請者に登録票を交付し、その申出を正当でないと認めたときは当該申請者にその旨を通知しなければならない。
3 異議の申出をした者が、前項後段の通知を受けた日から1箇月以内に前条第1項の規定による指示に基づいて書面の記載事項の訂正又は品質の改良をしないときは、農林水産大臣は、その者の登録の申請を却下する。
 (登録の有効期間)
第5条 第2条第1項の登録の有効期間は3年とする。
 (承継)
第5条の2 第2条第1項の登録を受けた者について相続、合併又は分割(その登録に係る農薬の製造若しくは加工又は輸入の事業の全部又は一部を承継させるものに限る。)があつたときは、相続人(相続人が2人以上ある場合において、その全員の同意によりその登録に係る農薬の製造若しくは加工又は輸入の事業を承継すべき相続人を選定したときは、その者)、合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人又は分割によりその登録に係る農薬の製造若しくは加工若しくは輸入の事業を承継した法人は、その登録を受けた者の地位を承継する。
2 第2条第1項の登録を受けた者がその登録に係る農薬の製造若しくは加工又は輸入の事業の全部又は一部の譲渡しをしたときは、譲受人は、その登録を受けた者の地位を承継する。
3 前2項の規定により第2条第1項の登録を受けた者の地位を承継した者は、相続の場合にあつては相続後遅滞なく、合併及び分割並びに事業の譲渡しの場合にあつては合併若しくは分割又は事業の譲渡しの日から2週間以内に、その旨を農林水産大臣に届け出て、登録票の書替交付(1の農薬の製造若しくは加工又は輸入の事業の一部につき分割により事業を承継し、又は事業の譲渡しを受けた者にあつては、登録票の交付)を申請しなければならない。
4 前項の規定により登録票の書替交付又は交付の申請をする者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を納付しなければならない。
 (登録を受けた者の義務)
第6条 第2条第1項の登録を受けた者(専ら自己の使用のため当該農薬を製造し若しくは加工し、又は輸入する者を除く。)は、農林水産省令で定めるところにより、登録票を、製造者にあつては主たる製造場に、輸入者にあつては主たる事務所に備え付け、かつ、その写しをその他の製造場又は事務所に備え付けて置かなければならない。
2 第2条第1項の登録を受けた者は、同条第2項第1号又は第4号から第10号までの事項中に変更を生じたときは、その変更を生じた日から2週間以内に、その理由を付してその旨を農林水産大臣に届け出、かつ、変更のあつた事項が登録票の記載事項に該当する場合にあつては、その書替交付を申請しなければならない。
3 登録票を滅失し、又は汚損した者は、遅滞なく、農林水産大臣にその旨を届け出で、その再交付を申請しなければならない。
4 前2項の規定により登録票の書替交付又は再交付の申請をする者については、前条第4項の規定を準用する。
5 第2条第1項の登録を受けた者がその登録に係る農薬の製造若しくは加工又は輸入を廃止したときは、その廃止の日から2週間以内に、その旨を農林水産大臣に届け出なければならない
6 第2条第1項の登録を受けた法人が解散したときは、合併により解散した場合を除き、その清算人は、その解散の日から2週間以内に、その旨を農林水産大臣に届け出なければならない。
(申請による適用病害虫の範囲等の変更の登録)
第6条の2 第2条第1項の登録を受けた者は、その登録に係る同条第2項第3号の事項を変更する必要があるときは、農林水産省令で定める事項を記載した申請書、登録票、変更後の薬効、薬害、毒性及び残留性に関する試験成績を記載した書類並びに農薬の見本を農林水産大臣に提出して、変更の登録を申請することができる。
2 農林水産大臣は、前項の規定による申請を受けたときは、検査所に農薬の見本について検査をさせ、その検査の結果次項の規定による指示をする場合を除き、遅滞なく、変更の登録をし、かつ、登録票を書き替えて交付しなければならない。
3 農林水産大臣は、前項の検査の結果第3条第1項各号の1に該当する場合は、前項の規定による変更の登録を保留して、申請者に対し、申請書の記載事項を訂正すべきことを指示することができる。
4 第1項の規定により変更の登録の申請をする者については第2条第6項の規定を、第2項の検査については同条第4項の規定を、前項の規定による指示があつた場合については第3条第3項及び第4条の規定を準用する。
 (職権による適用病害虫の範囲等の変更の登録及び登録の取消し)
第6条の3 農林水産大臣は、現に登録を受けている農薬が、その登録に係る第2条第2項第3号の事項を遵守して使用されるとした場合においてもなおその使用に伴つて第3条第1項第2号から第7号までの各号のいずれかに規定する事態が生ずると認められるに至つた場合において、これらの事態の発生を防止するためやむをえない必要があるときは、その必要の範囲内において、当該農薬につき、その登録に係る第2条第2項第3号の事項を変更する登録をし、又はその登録を取り消すことができる。
2 農林水産大臣は、前項の規定により変更の登録をし、又は登録を取り消したときは、遅滞なく、当該処分の相手方に対し、その旨及び理由を通知し、かつ、変更の登録の場合にあつては変更後の第2条第2項第3号の事項を記載した登録票を交付しなければならない。
3 農林水産大臣は、第1項の規定による処分についての異議申立てを受けたときは、その申立てを受けた日から2箇月以内にこれについて決定をしなければならない。
 (水質汚濁性農薬の指定等に伴う変更の登録)
第6条の4 農林水産大臣は、第12条の2第1項の規定により水質汚濁性農薬の指定があり、又はその指定の解除があつたときは、現に登録を受けている農薬で、その指定又は指定の解除に伴い水質汚濁性農薬に該当し、又は該当しないこととなつたものにつき、遅滞なく、その旨の変更の登録をしなければならない。
2 農林水産大臣は、前項の規定により変更の登録をしたときは、遅滞なく、当該農薬に係る第2条第1項の登録を受けている者に対し、その旨を通知し、かつ、変更後の第2条第3項第4号の事項を記載した登録票を交付しなければならない。
 (登録の失効)
第6条の5 次の各号のいずれかに該当する場合には、第2条第1項の登録は、その効力を失う。
 1 登録に係る第2条第2項第2号の事項中に変更を生じたとき。
 2 第2条第1項の登録を受けた者が、その登録に係る農薬の製造若しくは加工又は輸入を廃止した旨を届け出たとき。
 3 第2条第1項の登録を受けた法人が解散した場合において、その清算が結了したとき。
 (登録票の返納)
第6条の6 次の各号のいずれかに該当する場合には、第2条第1項の登録を受けた者(前条第3号の場合には、清算人)は、遅滞なく、登録票(第3号に該当する場合には、変更前の第2条第2項第3号又は同条第3項第4号の事項を記載した登録票)を農林水産大臣に返納しなければならない。
 1 第2条第1項の登録の有効期間が満了したとき。
 2 前条の規定により登録がその効力を失つたとき。
 3 第6条の3第1項又は第6条の4第1項の規定により変更の登録がされたとき。
 4 第6条の3第1項又は第14条第1項の規定により登録が取り消されたとき。
 (登録に関する公告)
第6条の7 農林水産大臣は、第2条第1項の登録をしたとき、第6条の3第1項の規定により変更の登録をし、若しくは登録を取り消したとき、第6条の4第1項の規定により変更の登録をしたとき、第6条の5の規定により登録が失効したとき、又は第14条第1項の規定により登録を取り消したときは、遅滞なく、その旨及び次の事項を公告しなければならない。
 1 登録番号
 2 農薬の種類及び名称
 3 製造者又は輸入者の氏名及び住所
最近のインターネットの普及によって登録農薬の一覧を容易に見られるようになったことは、農薬を使用する生産農家にとっても利便性が向上しました。しかし、多くの生産者はインターネットを利用する割合が低く、仮に利用できる環境にあってもホームページで自分が使用している農薬が登録農薬であるかどうかを確認しないのは、残念な状況であると感じます。これからの生産農家にとって、情報はきわめて重要な経営要素であると考えます。定期的に確認する姿勢が必要ではないでしょうか。登録農薬の一覧はhttp://www.maff.go.jp/nouyaku/(農林水産省生産局生産資材課農薬対策室)、あるいはhttp://www.acis.go.jp/(独立行政法人農薬検査所)で確認することができます。
 (製造者及び輸入者の農薬の表示)
第7条 製造者又は輸入者は、その製造し若しくは加工し、又は輸入した農薬を販売するときは、その容器(容器に入れないで販売する場合にあつてはその包装)に次の事項の真実な表示をしなければならない。ただし、特定農薬を製造し若しくは加工し、若しくは輸入してこれを販売するとき、又は輸入者が、第15条の2第1項の登録に係る農薬で同条第6項において準用するこの条の規定による表示のあるものを輸入してこれを販売するときは、この限りでない。
 1 登録番号
 2 公定規格に適合する農薬にあつては、「公定規格」という文字
 3 登録に係る農薬の種類、名称、物理的化学的性状並びに有効成分とその他の成分との別にその各成分の種類及び含有量
 4 内容量
 5 登録に係る適用病害虫の範囲及び使用方法
 6 第12条の2第1項の水質汚濁性農薬に該当する農薬にあつては、「水質汚濁性農薬」という文字
 7 人畜に有毒な農薬については、その旨及び解毒方法
 8 水産動植物に有毒な農薬については、その旨
 9 引火し、爆発し、又は皮膚を害する等の危険のある農薬については、その旨
 10 貯蔵上又は使用上の注意事項
 11 製造場の名称及び所在地
 12 最終有効年月
 (販売者の届出)
第8条 販売者(製造者又は輸入者に該当する者(専ら特定農薬を製造し若しくは加工し、又は輸入する者を除く。)を除く。次項、第13条第1項及び第3項並びに第14条第4項において同じ。)は、その販売所ごとに、次の事項を当該販売所の所在地を管轄する都道府県知事に届け出なければならない。
 1 氏名及び住所
 2 当該販売所
2 販売者は、前項の届出事項中に変更を生じたときもまた同項と同様に届け出なければならない。
3 前2項の規定による届出は、新たに販売を開始した場合にあつてはその開始の日までに、販売所を増設した場合にあつてはその増設の日から2週間以内に、第1項の事項中に変更を生じた場合にあつてはその変更を生じた日から2週間以内に、これをしなければならない。
 (販売者についての農薬の販売の制限又は禁止等)
第9条 販売者は、容器又は包装に第7条第15条の2第6項において準用する場合を含む。以下この条及び第11条第1号において同じ。)の規定による表示のある農薬及び特定農薬以外の農薬を販売してはならない。
2 農林水産大臣は、第6条の3第1項第15条の2第6項において準用する場合を含む。第16条第1項において同じ。)の規定により変更の登録をし、又は登録を取り消した場合、第6条の4第1項第15条の2第6項において準用する場合を含む。)の規定により変更の登録をした場合その他の場合において、農薬の使用に伴つて第3条第1項第2号から第7号までの各号のいずれかに規定する事態が発生することを防止するため必要があるときは、その必要の範囲内において、農林水産省令をもつて、販売者に対し、農薬につき、第7条の規定による容器又は包装の表示を変更しなければその販売をしてはならないことその他の販売の制限をし、又はその販売を禁止することができる。
3 前項の農林水産省令をもつて第7条の規定による容器又は包装の表示を変更しなければ農薬の販売をしてはならない旨の制限が定められた場合において、販売者が当該表示をその制限の内容に従い変更したときは、その変更後の表示は、同条の規定によつて製造者又は輸入者がした容器又は包装の表示とみなす。
4 製造者又は輸入者が製造し若しくは加工し、又は輸入した農薬について第2項の規定によりその販売が禁止された場合には、製造者若しくは輸入者又は販売者は、当該農薬を農薬使用者から回収するように努めるものとする。
登録農薬として販売されていた農薬が登録抹消となった場合には、製造会社や販売会社が回収する必要があると既定しています。しかし、「努めるものとする」という表現は少々腰砕けの感は否めません。
この解説の最後に書きましたが、「登録抹消」となった農薬は、いわゆる「無登録農薬」になるものと思いますが、農薬製造販売業者の都合で登録を更新しなかったもので、「安全性に問題がなく」、「効果も認められる」農薬を生産農家が使用できなくなることに対しては疑問を感じます。
 (帳簿)
第10条 製造者、輸入者及び販売者(専ら自己の使用のため農薬を製造し若しくは加工し、又は輸入する者その他農林水産省令で定める者を除く。)は、帳簿を備え付け、これに農薬の種類別に、製造者及び輸入者にあつてはその製造又は輸入数量及び譲渡先別譲渡数量を、販売者(製造者又は輸入者に該当する者を除く。第14条第2項において同じ。)にあつてはその譲受数量及び譲渡数量(第12条の2第1項の水質汚濁性農薬に該当する農薬については、その譲受数量及び譲渡先別譲渡数量)を、真実かつ完全に記載し、少なくとも3年間その帳簿を保存しなければならない。
 (虚偽の宣伝等の禁止)
第10条の2 製造者、輸入者(輸入の媒介を行う者を含む。)又は販売者は、その製造し、加工し、輸入(輸入の媒介を含む。)し、若しくは販売する農薬の有効成分の含有量若しくはその効果に関して虚偽の宣伝をし、又は第2条第1項若しくは第15条の2第1項の登録を受けていない農薬について当該登録を受けていると誤認させるような宣伝をしてはならない。
2 製造者又は輸入者は、その製造し、加工し、又は輸入する農薬について、その有効成分又は効果に関して誤解を生ずるおそれのある名称を用いてはならない。
 (使用の禁止)
第11条 何人も、次の各号に掲げる農薬以外の農薬を使用してはならない。ただし、試験研究の目的で使用する場合、第2条第1項の登録を受けた者が製造し若しくは加工し、又は輸入したその登録に係る農薬を自己の使用に供する場合その他の農林水産省令・環境省令で定める場合は、この限りでない。
 1 容器又は包装に第7条の規定による表示のある農薬(第9条第2項の規定によりその販売が禁止されているものを除く。)
 2 特定農薬
登録農薬以外の農薬は使用してはいけません。
 しかし、2003年の改正前後で膨大な数の農薬が「登録の更新」が行われないままに「失効農薬」となっています。その変化の急激さには私でも付いていけない状況で、毎日毎日確認しないと法律違反で「3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金」を科せられることになります。

無登録農薬と失効農薬についての区別について曖昧さが残ります。
 2002年に大きな問題となったダイホルタンやプリクトランは、発ガン性や催奇形性などの観点から厚生省食品衛生調査会からADI(一日摂取許容量 )が取り消され、使用禁止薬剤(販売禁止農薬)に指定されたため、当然のことながらこれを使用した農産物や検出された農産物は販売してはいけないことは理解できます。
 しかし、α−ナフタレン酢酸(ナフサク)はメーカーの経営的な理由で登録が継続されず失効したもの(失効農薬)であって、問題があるとは考えられないにもかかわらず、無登録農薬として使用したリンゴなどが廃棄処分となりました。
 同様に、過去に登録されて安全性が確認されている「生長調整剤」も、そのほとんどが『無登録農薬』になってしまい、生産に重要な支障を来しています。農薬製造販売会社の勝手な都合で「登録が更新されなかった」ものまで『無登録農薬』として使用を禁止することは、生産農家の正当な生産活動を阻害することになりかねないような気がします。
 最後に「登録農薬の問題点」を記載しましたので、参考にしてください。

 (農薬の使用の規制)
第12条 農林水産大臣及び環境大臣は、農薬の安全かつ適正な使用を確保するため、農林水産省令・環境省令をもつて、現に第2条第1項又は第15条の2第1項の登録を受けている農薬その他の農林水産省令・環境省令で定める農薬について、その種類ごとに、その使用の時期及び方法その他の事項について農薬を使用する者が遵守すべき基準を定めなければならない。
2 農林水産大臣及び環境大臣は、必要があると認められる場合には、前項の基準を変更することができる。
3 農薬使用者は、第1項の基準(前項の規定により当該基準が変更された場合には、その変更後の基準)に違反して、農薬を使用してはならない。
農薬の使用基準(使用時期や使用方法など)が変更された場合には、生産農家は自らの責任でその変更点を確認し、変更に従って農薬を使用する義務があります。これまでのように「知らなかった」では済まされない事態となっていますので、充分な対応が望まれています。
しかし、インターネットができない高齢者はどうしたらよいのでしょうか・・・。
 (水質汚濁性農薬の使用の規制)
第12条の2 政府は、政令をもつて、次の各号の要件のすべてを備える種類の農薬を水質汚濁性農薬として指定する。
 1 当該種類の農薬が相当広範な地域においてまとまつて使用されているか、又は当該種類の農薬の普及の状況からみて近くその状態に達する見込みが確実であること。
 2 当該種類の農薬が相当広範な地域においてまとまつて使用されるときは、一定の気象条件、地理的条件その他の自然的条件のもとでは、その使用に伴うと認められる水産動植物の被害が発生し、かつ、その被害が著しいものとなるおそれがあるか、又はその使用に伴うと認められる公共用水域の水質の汚濁が生じ、かつ、その汚濁に係る水の利用が原因となつて人畜に被害を生ずるおそれがあるかのいずれかであること。
2 都道府県知事は、水質汚濁性農薬に該当する農薬につき、当該都道府県の区域内における当該農薬の使用の見込み、その区域における自然的条件その他の条件を勘案して、その区域内におけるその使用に伴うと認められる水産動植物の被害が発生し、かつ、その被害が著しいものとなるおそれがあるか、又はその区域内におけるその使用に伴うと認められる公共用水域の水質の汚濁が生じ、かつ、その汚濁に係る水の利用が原因となつて人畜に被害を生ずるおそれがあるときは、政令で定めるところにより、これらの事態の発生を防止するため必要な範囲内において、規則をもつて、地域を限り、当該農薬の使用につきあらかじめ都道府県知事の許可を受けるべき旨(国の機関が行なう当該農薬の使用については、あらかじめ都道府県知事に協議すべき旨)を定めることができる。
 (農薬の使用の指導)
第12条の3 農薬使用者は、農薬の使用に当たつては、農業改良助長法(昭和23年法律第165号)第14条の2第1項に規定する改良普及員若しくは植物防疫法(昭和25年法律第151号)第33条第1項に規定する病害虫防除員又はこれらに準ずるものとして都道府県知事が指定する者の指導を受けるように努めるものとする。
生産農家は、農薬の使用に当たって、農業改良普及員や病害虫防除所職員に何事も相談して下さい。逆の言い方をすれば、農業改良普及員や病害虫防除所職員は生産農家からの問い合わせに対して全面的な協力体制を取り、農薬使用に当たっての指導をする義務があります。最近の農業改良普及員のなかには少々頼りない方も見受けられますが、頑張ってください。
 (農林水産大臣及び都道府県知事の援助)
第12条の4 農林水産大臣及び都道府県知事は、農薬について、その使用に伴うと認められる人畜、農作物等若しくは水産動植物の被害、水質の汚濁又は土壌の汚染を防止するため必要な知識の普及、その生産、使用等に関する情報の提供その他その安全かつ適正な使用の確保と品質の適正化に関する助言、指導その他の援助を行うように努めるものとする。
 (報告及び検査)
第13条 農林水産大臣又は環境大臣は製造者、輸入者、販売者又は農薬使用者に対し、都道府県知事は販売者に対し、第2条第1項第3条第1項第6条の2第3項第6条の3第1項第6条の4第1項第7条第9条第1項及び第2項第10条の2第11条第12条第3項第12条の2第1項並びに第14条第1項及び第2項の規定の施行に必要な限度において、農薬の製造、加工、輸入、販売若しくは使用に関し報告を命じ、又はその職員にこれらの者から検査のため必要な数量の農薬若しくはその原料を集取させ、若しくは必要な場所に立ち入り、その業務若しくは農薬の使用の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。ただし、農薬又はその原料を集取させるときは、時価によつてその対価を支払わなければならない。
この項の規定によって、生産農家は使用した農薬について「使用簿」を作成することが義務づけられました。「作目ごと」に、「使用期日」、「使用濃度」、「使用量」を記帳して、提出命令が出された場合には速やかに提出しなくてはいけません。農薬だけのために使用簿を作成するのは大変面倒くさいので、作業日誌を毎日つける習慣をつけることをお勧めします。
また、この帳簿に記載された農薬が実際に使用されたことを証明するためにも、農薬の在庫管理表を作成することをお勧めします。
 『面倒くさい』などと言っている状況ではありません。消費者から「トレーサビリティー」が要求されている状況で、これに応えられない生産農家は産業としての農業から退場していただくことになりかねません。


2 都道府県知事は、農林水産省令・環境省令の定めるところにより、前項の規定により得た報告又は検査の結果を農林水産大臣又は環境大臣に報告しなければならない。
3 第1項に定めるもののほか、農林水産大臣又は環境大臣は製造者、輸入者又は農薬使用者に対し、都道府県知事は販売者又は水質汚濁性農薬の使用者に対し、この法律を施行するため必要があると認めるときは、農薬の製造、加工、輸入、販売若しくは使用に関し報告を命じ、又はその職員にこれらの者から検査のため必要な数量の農薬若しくはその原料を集取させ、若しくは必要な場所に立ち入り、その業務若しくは農薬の使用の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。ただし、農薬又はその原料を集取させるときは、時価によつてその対価を支払わなければならない。
4 第1項又は前項の場合において、第1項又は前項に掲げる者から要求があつたときは、第1項又は前項の規定により集取又は立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を示さなければならない。
 (検査所による検査)
第13条の2 農林水産大臣は、前条第1項の場合において必要があると認めるときは、検査所に、製造者、輸入者、販売者若しくは農薬使用者から検査のため必要な数量の農薬若しくはその原料を集取させ、又は必要な場所に立ち入り、農薬の製造、加工、輸入、販売若しくは使用の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。ただし、農薬又はその原料を集取させるときは、時価によつてその対価を支払わなければならない。
2 農林水産大臣は、前項の規定により検査所に集取又は立入検査を行わせる場合には、検査所に対し、当該集取又は立入検査の期日、場所その他必要な事項を示してこれを実施すべきことを指示するものとする。
3 検査所は、前項の指示に従つて第1項の集取又は立入検査を行つたときは、農林水産省令の定めるところにより、同項の規定により得た検査の結果を農林水産大臣に報告しなければならない。
4 第1項の場合において、同項に掲げる者から要求があつたときは、同項の規定により集取又は立入検査をする検査所の職員は、その身分を示す証明書を示さなければならない。
 (都道府県が処理する事務)
第13条の3 第13条第1項及び第3項の規定による農林水産大臣又は環境大臣の権限並びに第14条第2項の規定による農林水産大臣の権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。
 (権限の委任)
第13条の4 第13条第1項及び第3項並びに第14条第2項の規定による農林水産大臣の権限は、農林水産省令の定めるところにより、その1部を地方農政局長に委任することができる。
 (監督処分)
第14条 農林水産大臣は、製造者又は輸入者がこの法律の規定に違反したときは、これらの者に対し、農薬の販売を制限し、若しくは禁止し、又はその製造者若しくは輸入者に係る第2条第1項の規定による登録を取り消すことができる。
2 農林水産大臣は、販売者が第9条第1項若しくは第2項又は第10条の2第1項の規定に違反したときは、当該販売者に対し、農薬の販売を制限し、又は禁止することができる。
3 農林水産大臣は、その定める検査方法に従い、検査所に農薬を検査させた結果、農薬の品質、包装等が不良となつたため、農作物等、人畜又は水産動植物に害があると認められるときは、当該農薬の販売又は使用を制限し、又は禁止することができる。
4 都道府県知事は、販売者がこの法律の規定(第9条第1項及び第2項並びに第10条の2第1項の規定を除く。)に違反したときは、当該販売者に対し、農薬の販売を制限し、又は禁止することができる。
5  前各項の規定による処分についての異議申立てがあつた場合には、第6条の3第3項の規定を準用する。
 (聴聞の方法の特例)
第14条の2 前条第1項の規定による登録の取消しに係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。
 (登録の制限)
第15条 第14条の規定により登録を取り消された者は、取消の日から1年間は、当該農薬について更に登録を受けることができない。
 (外国製造農薬の登録)
第15条の2 外国において本邦に輸出される農薬を製造し、又は加工してこれを販売する事業を営む者は、当該農薬について、農林水産大臣の登録を受けることができる。
2 前項の登録を受けようとする者は、本邦内において品質の不良な農薬の流通の防止に必要な措置を採らせるための者を、本邦内に住所を有する者(外国法人で本邦内に事務所を有するものの当該事務所の代表者を含む。)のうちから、当該登録の申請の際選任しなければならない。
3 第1項の登録を受けた者(以下「登録外国製造業者」という。)は、前項の規定により選任した者(以下「国内管理人」という。)を変更したときは、その変更の日から1月以内に、その理由を付してその旨を農林水産大臣に届け出なければならない。
4 登録外国製造業者は、帳簿を備え付け、これに第1項の登録に係る農薬の種類別に、その製造数量及び譲渡先別譲渡数量(本邦に輸出されるものに限る。)を真実かつ完全に記載し、その記載した事項をその国内管理人に通知するとともに、少なくとも3年間その帳簿を保存しなければならない。
5 国内管理人は、帳簿を備え付け、これに前項の規定により通知された事項を記載し、少なくとも3年間その帳簿を保存しなければならない。
6 第2条第2項第3項及び第6項第3条から第5条まで、第6条の5並びに第6条の7の規定は第1項の登録に、第2条第5項第6条の3及び第6条の4第1項の規定は第1項の登録に係る農薬に、第5条の2から第6条の2まで、第6条の4第2項第6条の6及び第7条(ただし書を除く。)の規定は登録外国製造業者に、第9条第4項及び第10条の2の規定は第1項の登録外国製造業者及びその国内管理人に準用する。この場合において、第2条第2項第1号中「氏名(法人の」とあるのは「第15条の2第1項の登録を受けようとする者及びその者が同条第2項の規定により選任した者の氏名(法人の」と、同項第9号中「製造し、又は加工しようとする農薬については、製造方法」とあるのは「製造方法」と、同条第3項第5号中「製造者又は輸入者」とあるのは「第15条の2第2項の登録を受けた者」と、第3条第3項中「1箇月」とあるのは「2月」と、第4条第1項中「2週間」とあるのは「1月」と、同条第3項中「1箇月」とあるのは「2月」と、第5条の2第1項中「製造若しくは加工又は輸入の事業」とあるのは「製造業(農薬を製造し、又は加工してこれを販売する事業をいう。以下同じ。)」と、「製造若しくは加工若しくは輸入の事業」とあるのは「製造業」と、同条第2項中「製造若しくは加工又は輸入の事業」とあるのは「製造業」と、同条第3項中「2週間」とあるのは「1月」と、「製造若しくは加工又は輸入の事業」とあるのは「製造業」と、第6条第2項中「2週間」とあるのは「1月」と、同条第5項中「製造若しくは加工又は輸入」とあるのは「製造業」と、「2週間」とあるのは「1月」と、同条第6項中「2週間」とあるのは「1月」と、第6条の5第2号中「第2条第1項」とあるのは「第15条の2第1項」と、「製造若しくは加工又は輸入」とあるのは「製造業」と、同条第3号及び第6条の6第1号中「第2条第1項」とあるのは「第15条の2第1項」と、同条第4号及び第6条の7中「第14条第1項」とあるのは「第15条の5第1項」と、同条第3号中「製造者又は輸入者」とあるのは「第15条の2第1項の登録を受けた者及びその者が同条第2項の規定により選任した者」と、第7条中「その製造し若しくは加工し、又は輸入した農薬を」とあるのは「第15条の2第1項の登録に係る農薬で本邦に輸出されるものを製造し、又は加工してこれを」と、第9条第4項中「製造者又は輸入者が製造し若しくは加工し、又は輸入した」とあるのは「当該登録外国製造業者が製造し、又は加工して販売した」と、第10条の2中「その製造し、加工し、輸入(輸入の媒介を含む。)し、若しくは販売する農薬」とあり、及び「その製造し、加工し、又は輸入する農薬」とあるのは「第15条の2第1項の登録に係る農薬で本邦に輸出されるもの」と読み替えるものとする。 
 (国内管理人に係る報告及び検査)
第15条の3 農林水産大臣又は環境大臣は、国内管理人に対し、その業務に関し報告を命じ、又はその職員に必要な場所に立ち入り、帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。
2 農林水産大臣は、前項の場合において必要があると認めるときは、検査所に、必要な場所に立ち入り、帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。
3 第13条第4項の規定は第1項の規定による立入検査について、第13条の2第2項から第4項までの規定は前項の規定による立入検査について、それぞれ準用する。
 (外国製造農薬の輸入者の届出)
第15条の4 第15条の2第1項の登録に係る農薬の輸入者は、次の事項を農林水産大臣に届け出なければならない。ただし、当該輸入者が当該農薬の登録外国製造業者又はその国内管理人である場合は、この限りでない。
 1 輸入する農薬の登録番号
 2 輸入者の氏名及び住所
2 前項の規定による届出をした輸入者は、同項の届出事項中に変更を生じたとき及びその輸入を廃止したときもまた同項と同様に届け出なければならない。
3 前2項の規定による届出は、新たに第15条の2第1項の登録に係る農薬の輸入を開始する場合にあつてはその開始の日の2週間前までに、第1項の事項中に変更を生じた場合又はその輸入を廃止した場合にあつてはその変更を生じた日又はその輸入を廃止した日から2週間以内に、これをしなければならない。
 (外国製造農薬の登録の取消し等)
第15条の5 農林水産大臣は、次の各号のいずれかに該当するときは、登録外国製造業者に対し、その登録を取り消すことができる。
 1 農林水産大臣又は環境大臣が必要があると認めて登録外国製造業者に対しその業務に関し報告を求めた場合において、その報告がされず、又は虚偽の報告がされたとき。
 2 農林水産大臣又は環境大臣が、必要があると認めて、その職員又は検査所に登録外国製造業者から検査のため必要な数量の当該登録に係る農薬若しくはその原料を時価により対価を支払つて集取させ、又は必要な場所においてその業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件についての検査をさせようとした場合において、その集取又は検査が拒まれ、妨げられ、又は忌避されたとき。
 3 国内管理人が欠けた場合において新たに国内管理人を選任しなかつたとき。
 4 登録外国製造業者又はその国内管理人がこの法律の規定に違反したとき。
2 前項の規定により登録を取り消された者は、取消しの日から1年間は、当該農薬について更に登録を受けることができない。
3 第6条の3第3項の規定は第1項の規定による登録の取消しについて、第14条の2の規定は同項の規定による登録の取消しに係る聴聞について準用する。
 (検査所に対する命令)
第15条の6 農林水産大臣は、第2条第3項及び第6条の2第2項(これらの規定を第15条の2第6項において準用する場合を含む。)の検査、第13条の2第1項の集取及び立入検査、第14条第3項の検査並びに第15条の3第2項の立入検査の業務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、検査所に対し、当該業務に関し必要な命令をすることができる。
 (農業資材審議会)
第16条 農林水産大臣は、第1条の2第1項の政令の制定若しくは改廃の立案をしようとするとき、第1条の3の規定により公定規格を設定し、変更し、若しくは廃止しようとするとき、第6条の3第1項の規定により変更の登録をし、若しくは登録を取り消そうとするとき、第9条第2項の農林水産省令を制定し、若しくは改廃しようとするとき、又は第14条第3項に規定する農薬の検査方法を決定し、若しくは変更しようとするときは、農業資材審議会の意見を聞かなければならない。
2 環境大臣は、第3条第2項(第15条の2第6項において準用する場合を含む。)の基準を定め、若しくは変更しようとするとき、又は第12条の2第1項若しくは第2項の政令の制定若しくは改廃の立案をしようとするときは、農業資材審議会の意見を聴かなければならない。
3 農林水産大臣及び環境大臣は、第2条第1項の規定により特定農薬を指定し、若しくは変更しようとするとき、又は第12条第1項の農林水産省令・環境省令を制定し、若しくは改廃しようとするときは、農業資材審議会の意見を聴かなければならない。 
 (協議)
第16条の2 農林水産大臣は、水質汚濁性農薬について、公定規格を設定し、変更し、若しくは廃止しようとするとき、又は第9条第2項の農林水産省令を制定し、若しくは改廃しようとするときは、環境大臣に協議しなければならない。
 (適用の除外)
第16条の3 農薬を輸出するために製造し、加工し、又は販売する場合には、この法律は、適用しない。
 (事務の区分)
第16条の4 第13条第1項及び第2項の規定により都道府県が処理することとされている事務は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第2条第9項第1号に規定する第1号法定受託事務とする。
 (罰則)
第17条 次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 1 第2条第1項第7条第9条第1項第10条の2(第15条の2第6項において準用する場合を含む。)、第11条又は第12条第3項の規定に違反した者
生産農家に関して、この項で罰せられるのは以下の者です。
●「海外から農薬を輸入した者(海外での購入、持込を含む)」(第2条第1項)
●「無登録農薬を使用した者」(第11条)
●「農業改良普及員や病害虫防除所職員に相談なく農薬を使用した者」(第12条第3項)
農薬を使用するに当たって、農薬登録の確認を必ず行ってください。さもないと100万円の罰金です。
農薬の使用に当たっては、農業改良普及員や病害虫防除所職員に必ず相談して下さい。さもないと100万円の罰金です。★しかし、このようなことが本当に可能なのでしょうか。近年、どの都道府県も農業改良普及センターの広域化が進み、職員自体も削減されていますし、指導に不安を感じる普及員もみられるように思いますが・・・。


 2 第9条第2項の農林水産省令の規定による制限又は禁止に違反した者
 3 第12条の2第2項の規定により定められた規則の規定に違反して都道府県知事の許可を受けないで水質汚濁性農薬に該当する農薬を使用した者
都道府県から、使用禁止通達がなされた農薬を無断で使用した者は100万円の罰金です。

 4 第14条第1項から第4号までの規定による制限又は禁止に違反した者
第18条 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 1 第6条第2項第8条第1項若しくは第2項第10条第15条の2第5項又は第15条の4第1項若しくは第2項の規定に違反した者
 2 第13条第1項若しくは第3項の規定による報告を怠り、若しくは虚偽の報告をし、又は同条第1項若しくは第3項若しくは第13条の2第1項の規定による集取若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
●「農薬使用簿」を付けないでいたために、農薬の種類や使用量、使用期日が判らない場合には30万円の罰金です。
●農薬の種類や使用量、使用期日が判らないために、「適当にごまかして報告した」場合も30万円の罰金です。


 3 第15条の3第1項の規定による報告を怠り、若しくは虚偽の報告をし、又は同項若しくは同条第2項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
第18条の2 第5条の2第3項第6条第1項第3項第5項若しくは第6項又は第6条の6の規定に違反した者は、30万円以下の罰金に処する。 
第19条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前3条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して次の各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
 1 第17条第1号第2条第1項又は第9条第1項に係る部分に限る。)又は第2号 1億円以下の罰金刑
 2 第17条(前号に係る部分を除く。)、第18条又は第18条の2 各本条の罰金刑
●法人化された生産組織の場合には、上記の第17条および第18条に違反した場合、個人に30万円あるいは100万円の罰金が科せられ、さらに法人に対しても同じ額の罰金刑が科せられます。
●1億円以下の罰金は、「農薬を製造・販売する法人」に限るので(第17条第1号(第2条第1項又は第9条第1項に係る部分に限る)、生産法人は「1億円以下の罰金」を受けることはありません。
第20条 第17条の犯罪に係る農薬で犯人の所有し、又は所持するものは、その全部又は一部を没収することができる。犯罪の後、犯人以外の者が情を知つてその農薬を取得した場合においても同様とする。
2 前項の場合において、その農薬の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。
第21条 第15条の6の規定による命令に違反した場合には、その違反行為をした検査所の役員は、20万円以下の過料に処する。
附則 略

農薬取締法の問題点

◎農薬取締法改正を契機に「これからの農業」を考えよう

 今回の農薬取締法改正は、消費者(=国民)から「今の農業が信頼できない」という評価が下ったことに端を発していることを充分認識する必要があると思います。「お客様は神様です」と言った方がおられましたが、お客から信頼されない産業が発展した例はありません。今回の農薬取締法の改正を『消費者への信頼確保のスタートライン』という気持ちで是非取り組んでいただきたいです。
 農薬の使用規制に困った顔をするのではなく、『これを契機に【環境を考えた生産(総合防除)】に取り組んでみよう』という前向きな気持ちを持つことが重要ではないかと考えます。消費者から理解される産地は必ず発展すると思います。

◎農薬問題は「消費者対策」ではなく、「生産者対策」である

 残留農薬問題に対して「ウルサイことを言う」と困っていて良いのでしょうか。消費者にとっては「残留農薬」ですが、それを散布している生産農家はその農薬を直接かぶっていることに気が付いていただきたいと思います。殺虫剤のほとんどは「神経毒」で、その多くが「大量殺戮化学兵器」の開発過程で作られたものであり、「化学兵器」と従兄の関係にあることを認識してください。消費者よりも生産者にとって「農薬の使用」は大きな問題であると考えます。
 少なくとも、消費者から「農家の自家用野菜は無農薬で栽培しているらしい」とか、「海外からの輸入農産物はポストハーベストで危険らしいが、国内の野菜も農薬漬けで信用できない」などという「もっともらしい噂」が流れること自体が消費者からの信頼を得ていない証拠といえるでしょう。

◎薄かった生産農家の安全意識

 良く聞く言葉として「基準通りに使っても効果がうすいので倍の濃度で散布したことがある」。「抵抗性が付いてくるので、ついつい高濃度で使ったことがある」。「農薬が余ったので、適当に処分した」。
 「夏の農薬散布は暑いので、半袖でマスクだけして済ませた」。「面倒くさいので、農薬を手で混ぜたことがある」。「面倒くさいので、ゴーグルや防御マスクなどしたことがない」。
 こんなことが思い当たる生産農家は、「これからの日本の農業」を支えていく資格がありません。オランダが志向している「環境を考えた農業のすすめ」のなかで、『環境を知る農家が未来を作る』というスローガンをみましたが、これからの日本の生産農家にピッタリのスローガンといえるのではないでしょうか。

◎「無登録農薬」について (農水省の皆様へ)

 日本国内で一度も登録がされていない農薬は、当然「無登録農薬」であると思いますが、『登録の更新が行われずに失効した農薬』も「無登録農薬」になるのは納得できないのではないでしょうか。その点においては、「一度も登録されていない農薬」は『未登録農薬』というべきではないかと思います。
 2002年に問題となった「クリプトラン」や「ダイホルタン」のように、発ガン性や催奇性が確認されて販売・使用が禁止となったものについては、「販売・使用禁止農薬」として区別する必要がありますが、例えば「ナフサク(ナフタレン酢酸)」のように安全性に問題がなく、「売れないから登録更新が行われずに登録抹消」となった農薬まで、同じように使用禁止となることには少々疑問を感じます。
 過去に登録が行われて、その後抹消となった農薬に対して、農薬検査所の見解として「その理由は確認されていない」というコメントしか出してもらえないのは、使用者として納得できないと思います。
 下の図のどの農薬までが使用できるのかが明確になっていないように思います。当然、「B:未登録農薬」や「G:販売・使用禁止となった農薬」は使用してはいけないことまでは理解できるのですが、「C〜F」の農薬について、どのように対処したらよいのでしょうか。
 特に、今回の改正(第3条第1項6)の「水産動植物への影響試験」のように新たな試験成績が必要となったために登録更新が行われない農薬が毎月のようにでてくる状況で、生産農家はどのように対応したらよいのかが明確になっていません。