★用土
用土としては、サバ土:バーク(レッドウッドバーク):粒状ロックウール:パーライトが3:3:3:1の割合で混合された人工培土を使用します。この用土の3層分布は固相:液相:気相が25:35:40で、気相率と気相率が高く、比重が低いことが特徴です。気相率は柿の根が成長するための空間となり、重要な要素です。また、自動潅水を基本とするため、液相率についてはあまり高くする必要はありません。また保肥力(CEC)についても、定期的に施肥を行い、8月には着色向上を目的とするため窒素施肥を控える処理を行うため、高くする必要はありません。
★容器
基本としては、不織布を用いることを推奨します。プラスチックの容器を用いることもできますが、不織布の場合には容器の側面からの蒸発が期待でき、地温の上昇を抑えることができると共に滞水が抑制されるため、根の成長が良好です。
★潅水
タイマーによる自動潅水を基本とします。潅水量は葉数によって調節する必要があり、成木(葉数450枚程度)の場合には1鉢あたり4リットル/日で、1日5回程度の潅水を行います。したがって、ノズルからの吐出量に応じて1回の潅水時間を調節して下さい。冬季についても一定の潅水を継続する必要があります。
★施肥
幼木期は、3月から10月まで定期的に(月2回程度)の置き肥を行うか、潅水時に液肥を施用します。成木(3年生以降)では8月以降は施肥を控え、着色向上を図ります。
★整枝・剪定
成木(3年生以降)の樹高が背丈+70p程度に収まるように樹高を制限します。樹形は主幹形(スレンダースピンドル)を基本とし、主幹から側枝を直接発生させ、側枝には2〜3本の結果母枝を着生させます。1本の側枝に果実が3〜5個程度着果させることを念頭におきます。1果あたりの葉数(葉果比)は20枚程度と考えましょう。したがって、450枚の葉数を持つ成木では20〜30果を着果させることになります。
★配置
鉢間隔は80pで、2列の千鳥でボックスを配置します。列間は60p程度とします。通路は2m程度は取るようにして下さい。鉢から50p程度は側枝が成長しますので、2mの通路で実質の通路が1mとなります。この間隔で、10aあたり約500株を配置できます。1株から20個収穫したとして、約10000個の果実が収穫できます。
圃場の通路には不織布マットを敷き、防草と作業性の向上を図っています。
★品種
現在、岐阜柿生産研究会では「次郎」を中心に、「富有」、「太秋」がボックス栽培で栽培されています。各々の品種で生育特性が異なるため、整枝・剪定、誘引などの方法を開発しながら生産技術を開発しています。
★果実肥大および成熟
春季から夏季の充分な潅水と施肥のため、果実肥大は露地栽培と比べて極めて良好で、「次郎」では2L〜4Lの出荷となります。また8月以降に施肥を控えることにより、成熟期が露地栽培より1〜3週間早くなり、糖度は16〜20度と極めて高くなります。
ボックス栽培の7月の結実状況。
ボックス栽培における特殊技術の1つとして、摘心があります。新梢の伸長停止直前に摘心を行い、シュートの長さを調節します。
ボックス栽培の容器としては、現在「不織布」と「プラスチック容器」の2種類が用いられています。鉢内の温度を測定した結果、「不織布」が明らかに低く、根の生長が良好でした。「不織布」を容器として用いた場合には、鉢側面からも蒸発が行われ、気化熱によって鉢内温度が低下します。「プラスチック容器」に比べて、潅水量がいくらか多くなるので、灌水タイマーの設定を多くする必要があります。したがって、「不織布」と「プラスチック容器」を混在させると潅水量に適不適が発生するため、いずれかに統一する必要があります。「不織布」の問題点として、写真のようにゼニゴケが表面に繁茂することがありますが、実質的な問題となることはありません。
栽培されている主な品種は「早生次郎」ですが、糸貫町の「丸金青果(株):太田義浩氏」では、岐阜県特産の「富有」のボックス栽培も行われています。
左の柿がボックス栽培で収穫された柿で2001年度の最大の「500g」。
右の柿の大きさが「2L」程度の普通栽培の富有です。
ボックス栽培で結実した富有は「3L」クラス以上が多く、糖度も普通栽培より+2度以上です。
2001年度は全般に糖度が高く、普通栽培で16〜17度でしたが、ボックス栽培では18〜20度でした。
一般に、富有は3L以上の大きさになると「ヘタすき(隙)」が多くなりますが、ボックス栽培では初期肥大での生育が良いため、
4L以上の大きなものでもほとんど「ヘタすき(隙)」は見られません。
富有は次郎と異なり結果母枝の先端に花芽が着生するため、樹が横に広がりやすい特徴がありますが、剪定で調整が可能です。
また、次郎に比べて樹が大きくなるため、樹あたりの収穫果実数は、30〜40果/樹以上と次郎の1.5倍程度です。
したがって、栽培面積あたりの収穫量は次郎と同じで、3.0〜4.0t/10aとなります。