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Greenheart Farms, Inc.
902 Zenon Way
Arroyo Grande, California USA


 第4回国際バラシンポジウム(4th International Symposium Rose Research and Cultivation)が2005年9月18〜22日にアメリカ・サンタバーバラで開催され,産地視察でGreenheart Farms, Inc.を訪問しました。
 Greenheart Farms, Inc.は1979年に設立された会社で,カリフォルニア農場の他に,砂漠地帯のアリゾナ州ユマにも農場を持っています。ハウスの総面積は40万エーカー(16万ha)で,アメリカでも最も大きい生産会社の1つです。
 とにかく広大なハウス群でした。

 

 バラの他,ポインセチアなどの鉢花物や,野菜の苗など,年間10億ポットを生産しており,2日で5万ポットを出荷しています。
 バラでは,ポットローズを68品種,年間500万ポットを生産しています。

 以前までは,ミニバラを主体に生産していましたが,近年はフロリバンダ系などの中輪系のバラの鉢物が生産の主体となっており,「病気に強い」ことを特徴とした「ガーデンミニバラ」の名前で昨年から生産を開始した。最近は,スタンダード仕立てのミニバラにも力を入れていた。

 

 主に,11月から7月にかけて野菜苗を生産し,8月から11月にかけて同じ温室でポインセチアを生産します。野菜はブロッコリー,キャベツ,カリフラワー,セルリー,トマト,ピーマンのセル苗を生産していました。

  

 生産量が多いため,出荷のための移動は運搬専用車を使ってトラクターで牽引していました。

 ウドンコ病は重要病害で,3日間で全滅したこともあるそうです。頭上潅水をすることでウドンコ病の防除も兼ねていました。

 挿し木繁殖温室は二重被覆で,さらに内部にビニル被覆した挿し木スペースを設置しています。
 ハウス内は霧(fog)で80%以上の湿度を維持しており,白いL字パイプから霧(fog)を出しています。さらに,挿し木スペースをビニル密閉することで100%の湿度を維持可能です。日本でのミニバラの挿し木では密閉挿しが一般的ですが,Greenheart Farmではなく湿度コントロールにこだわっており,温度,湿度,風速を制御して計画的な挿し木繁殖を行っていました。発根率を高めるために,人工光で照度を確保していました。
 挿し木室の温度は18〜21℃で管理しており,地温は温床線を使って加温しています。

 霧(fog)のノズルの詰まりを防ぐために,フィルターを4重に通していました。

  

 挿し木効率が100%ではないため,ある程度成長した段階でプラグの並べ替えを行っていました。

  

 発根したものは底面吸水で管理していまする。下からビニル−吸水不織布−防根シートの順にマットが敷かれています。

  

 パイプハウスでの育苗施設にも補光ランプが設置されており,育苗期間中は夜間6時間,11000ルックスの補光を実施していました。

 

 大鉢のミニバラポットは,穂木採取のための親株維持として管理しています。

 

 ガーデンミニバラを生産していました。5〜7回ピンチを繰り返して株をしっかりさせて出荷します。ガーデンミニバラはzone4でも栽培が可能で,鉢で楽しんだ後,地植えにしても病気やダニがつかないほど丈夫とのことです。
 直販体制で販売しており,卸売はしていません。ちなみに卸価格は販売価格の50%前後だそうです。

  

 野菜のプラグ苗にはバーミキュライトが使用されていた。施設の側面にはスリップス防除のための黄色防虫シートが設置されています。

  

 1987年までは切花生産もしていたが,現在は行っていないとのことです。
 農場が広いため,管理担当者間は携帯無線を使っている
 新型温室では,ミニバラの挿し木,育苗が行われていました。
 プールベンチ(ムービングベンチ)が導入されており,オランダからポッティング機械,自動ピンチ機械を導入していました。
 ポッティング機械の横にバットがありました。きっと袋から培土が出ない時には叩いているのでしょうか



   

 挿し木の方法は,挿し穂を24時間殺菌液に浸けて消毒し,挿し穂を切り取り,挿し木しています。挿し木培土はココピート,ピート,パーライトを混合していました。
 ダニは天敵を導入して防除しています。11〜2月は暖房して,21〜22℃に維持します。暖房は地温と気温の併用です。
 ウドンコ病に対する抵抗性の問題から,生産するバラをミニバラからフロリバンダやポリアンサに徐々に変更している。独自に育種も行っており,ガーデンローズから耐病性の品種を選抜していた。耐病性の品種を交配して,新たな品種の育種についても試みている。

 

 作業効率を上げるために,立って仕事が出来るように工夫をしており,毎週1万ポットを生産しています。生産体系として,3か月で出荷できるように計画生産を行っています。
 デンマークからの技術指導を受けて挿し木コントロール室の精密管理しています。。遮光資材で被覆したハウス内で,霧(fog)加湿装置(黒いL字パイプから霧(fog)が発生)で80%以上の湿度を維持し,さらにプールベンチにビニルで挿し木スペースを作って100%を維持しています。温度はベンチ下の加温パイプと気温維持のための上部加温パイプで制御していました。

 挿し木施設では10日間で挿し木が完了し,発根,発芽が認められた状態で発根施設から出して育苗段階に入ります。
 プラグの挿し木は1本と3本。1本挿しの場合にはポットに4株定植しています。日本と同様に,粉状IBAを挿し穂の基部をつけて挿し木をします。

 
   

 メキシコ人労働者が挿し穂の調整をしていました。日本でのミニバラの挿し木に比べて,挿し穂の調整はいい加減でした。

 

90%の水をリサイクルして,循環方式を採用しています。土壌病害対策として,2週間ごとに殺菌剤を養液に投与しているとのことです。

ビニールは3年で張り替えを行います。張り替え時にキャプタン剤で温室全体を消毒していました。

 

 野菜の苗は専用の20フィートコンテナで出荷していました。
 新規事業として,空いた施設の有効利用としてカットパックでのレタスの生産を企画開発していました。魚の抽出液を利用した有機肥料で生産しており,カットパックのまま食用として販売します。

  
  


【露地栽培】
 ブロックを利用した簡易なベンチ施設が行われていました。
 自動潅水ウイング機械で潅水を行い,露地栽培では50万ポットを生産しています。

 ただし,1〜6月はトマトの苗生産を行います。この時期は霜が降りることがあるため,防霜ファンを設置してありました。
 ハウスとハウスのスペースを有効に利用して,栽培期間の短い野菜のプラグ苗を生産しています。