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Cv. Arjuna Flora
Batu, Indonesia

2010年8月30〜31日にインドネシアのArjuna Flora社を訪問しました。
Arjuna Flora社はジャワ島東部のMalang市の北西20kmのBatu市にあります。
主な生産品目はサンダーソニアで、カラーなどの球根生産・輸出入を行っています。この他、紅芋(サツマイモ)の冷凍加工品の製造と輸出、インドネシア国内での切花生産販売や公共緑化事業などを行っています。
標高3339mのArjuna山の南斜面中腹の標高1200m、1350m、1800mの3カ所に農場を持っています。標高1350mの農場の面積は1.2ha、1350mの農場は1.2ha+借地(年によって異なる)で、1800mの標高にある農場は開墾地で、今後借地を拡大予定とのことです。標高に応じて栽培品目や作型を変えることが可能で、今後の品目拡大が楽しみです。
従業員は6名で、パート労働者が65〜90名です。パート労働者の賃金は100〜200円/日、従業員の賃金は20000〜30000円/月です。農地の購入費は予想外に高く1000万円/ha、借地料は6万円/haとのことです。
Arjuna Flora社はインドネシア人1名と3名の日本人で2000年に設立した会社です。Arjuna Flora社は、(有)相模実業の野澤正勝氏が1995年にCv. Bromo Flora社を設立したことから始まります。当初はBromo山中腹でカラーの球根生産を行い、その後サンダーソニアの球根生産を開始しました。球根生産は順調にできたのですが、貯蔵技術や連作障害の問題から撤退を余儀なくされ、千葉県のアグリマツモト(有)の松本正氏の協力を得て新たにArjuna Flora社を立ち上げました。
私の友人であるアグリマツモト(有)の松本正氏がArjuna Flora社の出資者の一員であることから今回農場を訪問させていただきました。
現地代表者のLuki Budiartiさんに案内をいただきました。Lukiさんのお父さんはインドネシア現地出資者です。
主な生産はサンダーソニアの球根生産です。
種子からの球根生産に関して高い技術を持っています。年間120〜130kgのサンダーソニア種子を収穫し、播種しています。完熟して乾燥した果実を採取し、果皮殻を風選して除去し、水洗後に乾燥させます。種子は湿潤状態で低温処理を行います。種子の発芽には播種して30日程度を要しますが、ほぼすべてが発芽する場合もあれば、発芽率が半数にも満たない場合があり、種子の休眠打破が必ずしも確立されていないとのことです。現在は4℃での冷蔵処理を行っていますが、自然状態でもしばしばこぼれ落ちた種子の発芽が未あれるとのことですので、低温処理温度、処理期間、処理中の湿度、低温処理後の発芽適温など今後岐阜大学応用生物科学部と協力して処理条件の開発を進めることになりました。

 
10kgのサンダーソニア種子で、100万粒ほどあるとのことです

日本でサンダーソニアの種子を発芽させると、1作目では1g以下の種子が多く、切花収穫が可能な5〜10g程度の球根を生産するためには3作程度が必要です。しかし、年間の日平均気温が22℃前後で一定しているArjuna Flora社では発育が著しく旺盛で、種子発芽後の1作(5ヶ月)で1〜3gの球根が育成できます。

 
播種して1作後に収穫できた球根(1〜3g)

低温条件で貯蔵して休眠打破処理を行って定植し、2作目(4ヶ月)で4〜10gの球根を収穫することができます。やや小さい球根は再度栽培育成用に選別し、5g以上の球根を切花用球根として輸出します。

 
播種後、2作して収穫した球根(4〜10g)

赤道直下の1350mの農場の気候は、10月から4月の雨季と5月〜9月の乾季に分かれているものの、気温は年中最高気温22〜25℃、最低気温13〜15℃で一定しているため、サンダーソニアは年中成育開花します。したがって、種子の採取は年中可能です。

  

同じように、切花用球根生産も一年中可能で、球根輸出も年中できます。掘り上げた球根は冷蔵庫で低温処理を行います。冷蔵庫内の発泡スチロールの箱には、収穫した月毎に色分けしたシールが貼られており、まさに毎月球根が生産できることが実感できました。
現在、サンダーソニアの球根を日本向けに年間10万球輸出しています。

   

Arjuna Flora社ではサンダーソニアに適した気候を利用して、日本やニュージーランドなどで切花収穫された後の球根(切り下球)を輸入し、1作して再び切花用球根として再生して輸出するビジネスも行っていました。しかし、バイラス発生の問題から現在は行っていません。同様に、ニュージーランドで種子を発芽させ1作した1〜3gの球根を輸入し、4ヶ月後に5g以上の切花用球根として輸出するビジネスなど、熱帯高地の特異性を最大限に活かしたサンダーソニア球根生産体系が作られていました。

  

サンダーソニアの生産が順調に稼働し始めたため、球根だけではなく切花の輸出も計画しています。サンダーソニアの切花を旧正月の香港や上海に輸出する計画とのことでした。
土壌はArjuna火山の火山灰土で、耕作土は深く、数m以上あるとのことです。小石などは掘ってもほとんど見ることがなく、球根を掘り上げて生産を行うには極めて適した土壌だと思いました。土壌pHは6.5前後とややアルカリ性です。
土壌改良のために籾殻を施用していました。

  

Arjuna山の中腹に農場があるため、農場選択の最も大きな問題は潅水用水の確保です。1000m以下の標高の中腹地帯では湧水が豊富ですが、1300m以上の場所では用水の確保できる農場を探す必要があります。幸い1350mの農場は用水が確保できていますが、1800mの農場は難しそうです。原生林を開墾した農地は豊富にあるのですが、用水が確保できないため、1800mの農場では樹林の下を耕して、小さい球根の粗放栽培に取り組んでいました。

 
1350mの農場の貯水槽

 
樹林の下を開墾した畑でのサンダーソニア球根の粗放栽培

標高1200mの農場では年間平均気温が高いため、カラー球根・クリプタンサス球根(輸出・国内販売)、ヘデラ・アメリカンブルー・スマイラックスの生産を行っています。

  

  


この農場は標高が低いため地下水が豊富で、井戸水を貯水槽に溜め、ポンプアップして潅水用に使用していました。
標高1200mの農場ではサツマイモは一年中作付け、収穫ができます。この特長を活かして紅芋のペースト商品の開発・輸出にも取り組んでおり、蒸してペースト状にしたものを冷凍食品として日本に輸出しています。

 

1350mの農場ではカラーの球根生産も行われています。成育は良く、大きな球根が生産されていました。

   

トウガラシの栽培にも取り組んでいました。Batu市政府から補助金を受け、防虫ネットを張り巡らせたハウスにはスプリンクラーによる自動潅水設備が整備されていました。

ハウスの支柱が塩ビ管でできていました。強度に問題があるのでは?と質問したところ、「塩ビ管のの中に鉄筋を3本入れ、コンクリートを流し込むと充分な強度が確保できる」とのことでした。省コストでなかなかのアイデアです。

 

入り口にグランドカバーの落花生を見つけました。匍匐性が強く、黄色い花が5cm程度の高さに立ち上がります。果実は付かないため、挿し木で繁殖します。