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Engemann(有機農産物生産会社)

Goettingen(ゲッチンゲン)市の西にある有機園芸農産物生産会社のEngemann社を訪問しました。
Engemann社は「Bioland」の認定を受けた有機園芸作物の栽培を行っている生産企業で、従業員は50人です。1876年に創立され、60haの農場で果樹と野菜の生産を行っている。野菜の栽培面積は16haです。ただし、果樹の中にはイチゴが含まれています。 

  

 生産されている野菜や果物の種類は多く、ジュースや果実酒などの加工品も生産されていました。生産された農産物などは事務所横の販売所で直販していますが、品揃えのために、他の農場の有機農産物も取り扱っていました。
 販売戦略として、@直販体制:販売所や宅配を行っていました。大都市のスーパーと対抗するのではなく、小都市の消費者をターゲットとして、消費者のニーズを直接することが重要と考えている。A有機農産物専門店での販売:現在53店と契約を結んで出荷している。ドイツには有機農産物専門店が各所にあり、スーパーなどの中にはテストケースとして有機農産物販売コーナーを設けているところも出てきた。B有機穀物販売:貯蔵可能なジャガイモなどの穀物は出荷調整が可能で、流通も確立しているため、安定した販売が可能。現在の売り上げは、@直販が約50万ユーロ、A専門店委託販売が約20万ユーロ、B有機穀物販売が30万ユーロ程度です。
 ドイツの消費者は「有機農産物」に対して的確な目を持っており、スーパーで販売される有機農産物は生産過程が不明であるため、専門店で購入する傾向がある。初期の段階では、消費者は「Bio」の保障マークで購入するが、2〜3年経つと保障マークではなく生産会社の名前を選択するようになるとのことです。
 下の写真は、事務所横の販売所で販売されていた野菜などです。

   
   
  

 訪問した6月はちょうど露地イチゴの収穫期をむかえており、新鮮なイチゴが販売されていました。販売容器は環境を考えて再生紙で出来たものを使用していました。
 昨年苗を定植したものは株が小さいのですが、果実は大きくて品質が良いものが収穫できます。通常はこのまま栽培を継続し、2年間収穫を行います。食べてみましたが、糖度も高く美味しかったです。

 
【栽培1年目のイチゴの結実状況(株は小さいが、果実は大きなものが収穫できます)】
 
【栽培2年目のイチゴの結実状況(株は大きくなりますが果実は小さ目です)】
 

 有機無農薬栽培の栽培上の問題点のひとつに雑草防除があります。Engemann社では雑草防除に熱処理装置を用いていました。下の写真の装置は大型バーナーで、ガスを燃焼させて雑草や種子を殺します。この装置を大型トラクターで牽引して圃場の除草を行います。TVショッピングで以前はやった雑草防除バーナーの大型版といったところでしょうか。

 後ほど説明しますが、Engemann社ではマッシュルームの有機無農薬栽培を行っており、マッシュルーム収穫後の菌床は蒸気消毒した後、優良な堆肥の素材となります。Engemann社の圃場にはこの優良堆肥が充分施されており、土壌は団粒構造をしており、大きな土塊も簡単にほぐれ、ホクホク・フカフカ状態でした。
 当然のことですが、連作障害を回避するために計画的な輪作体系が組まれています。例えば、イチゴ→インゲン→キャベツといった輪作体系が取られていました。このように有機質堆肥を充分施し、輪作を行っている状況では土壌病害の発生も極めて少ないと推定できました。

 

 Engemann社ではマッシュルームの有機無農薬栽培に力を入れており、生産施設を見学しました。生産技術はオランダより導入したとのことです。1作の栽培期間は6週間です。収穫期間は最終の2週間で、栽培室が6部屋あるため、周年生産体制で生産されており、生産量は160個/uです。14人の従業員で毎週200tの出荷を行っていました。マッシュルームの品種は「シャンピオン」で、生産者販売価格は5ユーロ/kgで、末端価格は8ユーロ/kg程度だとのことです。生産されたマッシュルームはドイツだけでなく、EU各国にも輸出しています。出荷販売容器は当然再生紙です。

  

 無農薬栽培のため、殺虫剤や抗生物質が使用できないため、生産施設は厳重に管理されています。温度や湿度の調整は当然で、キノコバエの侵入を防ぐ努力がされていました。

  

 Engemann社のマッシュルームの生産体系を下に紹介します。菌糸を発生させ、温度条件を調整すると菌糸体が成長し始めます。おとぎの国のキノコを想像させるかわいさです。収穫直前のものを食べてみましたが、ホノカに甘みがあり、噛みしめていると独特のうまみが口の中に広がりました。