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Ethiopassion Agro Plc.
Menagesha, Addis Ababa, Ethiopia

 Ethiopassion Agro Plc社は2004年に設立された生産会社でエチオピア資本の会社ですが、フランスのメイアン社の関係者も出資しています。首都アジス・アベバの西20kmにあり、標高は2,300mです。周囲は緩やかな丘陵地です。

 

 訪問した農場は6haで、この他に4haの農場を経営しており、生産面積は10haで、従業員250人です。6haの農場は1ha前後の温室7棟で構成されており、温室はフランス製です。

   

 フランスのバラ育種会社メイアン(Meiland社)の品種比較試験および展示農場にもなっており、3,500uで品種展示が行われていました。

 土耕栽培で、養液を点滴潅水するシステムです。潅水のための用水は地下水を用いています。
 生産しているバラは大輪系と中輪系が主体ですが、スプレー品種も生産していました。品種はすべてメイアン社の品種で、品種の選定にあたって生産性、耐病性、輸送特性、日保ち特性などについて試験すると共に、輸出先の需要を考えて選定しています。
 品種ではムーランルージュが最も多く1haで、Samurai、Black Baccaratなどが0.5haずつ生産されていました。台木はナタルブライヤーを用いたミニプランツをEthiplants社から購入しています。
 生産本数は7,000,000本/6haです。坪当たりに換算すると385本/坪で、それほど生産性は高くありません(日本と同じくらいですが・・)。到花日数は60日程度で、切花長の長い品種は80日程度かかるものもあります。

 養液土耕栽培ですが、土壌改良を目的に牛糞堆肥を150t/ha(15t/10a)しているとのことですが、日本の畑作での堆肥施用基準が4〜8t/10aであることから考えると、かなり多量の堆肥が投与されています。
 土の表面に塩類集積がみられていました。これは、大量の牛糞堆肥の施用に加えて液肥を点滴施与していることによる施肥過剰の状態といえます。畝間が湛水している所もあるほど加湿状態で、過剰に施与された養液が溜まっており、地下水汚染につながることが危惧されます。

温室内の通路はきれいに清掃されており、清潔でした。収穫したバラは人力で選花場まで運ばれます。

 選花場には20人程度の従業員が働いていました。切花長の長い70cmの切花が収穫されており、花形も大きく6〜7cm程度はありました。選花台には鏡が取り付けられており、長さの選別をしながら開花状態も同時に選別できます。
 選花時の切花の取り扱いに特に注意を払っており、選別にあたって切花の基部以外を触れないように徹底していました。従業員には「花の傷は10¢、葉の傷は5¢の低下をもたらす」と伝えてあるそうです。マネージャーの言葉「ポストハーベストの取り扱いは、生産過程よりも最も重要な過程です」が印象的でした。

  

 60uの冷蔵庫を2基設置してあり、温度は2段階に設定されている。採花した切花は4〜5℃の冷蔵庫に入庫し、選花、梱包した後には2℃の冷蔵庫に入れて出荷温度を下げています。
 輸出を行っている会社の多くは箱に詰める花の数をいかに多く詰めるかに注意を払っていて、これが輸送経費の削減に関係しています。しかし、Ethiopassion社では箱詰めの際に「花と切花上部の葉の傷は日保ちの低下につながる。無理に箱に押し込むために箱を上から押さない」ことを徹底して従業員に実行させていました。

 箱詰めは壁が炭でできた特別室で行われていました。昼間乾燥しているため、炭に水を含ませて湿度調節ができるシステムです。しかし、冷蔵庫の中ではなく室温でした。

  

梱包された切花は保冷車に積み込まれますが、冷蔵庫からの直接搬送ではないため、品音管理が充分ではないと感じました。

 輸出先はフランス、ロシア、ドイツなどです。日本への輸出は2007年から開始しており、日本への輸出は特定の輸入商社との契約ではなく、複数の商社と取引を行っています。日本への輸出について聞いたところ、「日本と着実な関係を持って輸出の拡大をしていきたい」とのことでした。
電力供給状態が不安定なため、発電機が設置されていました。

熱帯高地のエチオピアは季節風がないと思っていましたが、結構強い風が吹くようで、強風によって温室の被覆資材が破れていました。

 害虫の発生に対しては配慮が行き届いており、温室側面にはメッシュネットが付けられており、外部からの害虫の侵入を防いでいます。エチオピアのバラ生産地は熱帯高地であるため、昼夜の温度差が大きく、昼に高温乾燥、夜に多湿条件となるため害虫ではダニが多発します。天敵を用いた生物防除に積極的に対応し始めており、現在4,000uで実用試験を行っており、2009年にはすべての温室に導入したいとのことでした。