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JAふくおか八女 八女電照菊部会
 【輪菊切花生産】
 (福岡県八女市)

 イシグロ農材(株)福岡営業所の野口謙司氏の案内でJAふくおか八女 八女電照菊部会を視察しました。八女電照菊部会の延べ総面積は485,000坪とのことで,国内最大の輪菊切花産地です。
訪問した中園泰二氏は八女電照菊部会支部長で,施設面積は2,000坪,軒高の高いフェンロー温室です。
 ハウスごとに時期を変えて定植し,毎週ハウスごとに切花収穫ができるように計画生産を行っています。収穫は一斉収穫を目標にしています。切前段階2〜3では採花時期に少々バラツキがでるが,切前4段階での収穫であれば一斉収穫が可能であるとのことです。現実的には切前を3程度で行っているため,1ハウスの収穫は3〜5回で切り上げているとのことです。

  
   

 生産品種は,冬季には神馬が主体で秀芳の誠が若干導入されています。冬季以外は精興の秋を生産しています。生産する品種数が少ないため,高度な栽培管理ノウハウを蓄積することが可能となり,斉一な生育管理による一斉切り上げの高度な栽培技術による計画生産・出荷が可能となっています。また,品種導入にあたっても一斉収穫に向いた品種を選抜・導入しています。
 800luxの補光を試験的に開始し,日射量の少ない時期に補助的に活用しています。循環扇を積極的に活用し,軒高の高い温室内の環境を均一にするための努力が払われていました。

  

 肥料管理は養液土耕で行われていますが,頭上灌水によるスプレーノズルも設置されており,定植後のしばらくは頭上灌水で管理されています。

 

 環境対策についても積極的に導入が図られており,サイドには害虫侵入防止のための防虫ネットが張られていました。

 

 温室の柱に国際衛生(株)のDDVPくん蒸剤パナプレートが設置されていました。

 

 主力品種である神馬は突然変異が起きやすいため母株の維持が極めて難しく,常に切花収穫したものから母系を選抜し,2年間かけて苗生産用母株として維持増殖を行っています。
 輪菊の国内需要は主に葬儀用に偏っています。この点についての将来構想について話を伺いました。
 
 芽かき作業は過大な生産労力を要する管理作業で,人件費の高い日本国内でコスト低減を図るためには最も課題となる作業工程です。八女電照菊部会ではこの芽かき作業の省力化を図るために,神馬の芽なし品種「アラジン」の導入を検討しています。
 キク業界の中で,スプレーキクは消費方法が広いため国際商品となっており,日本国内へもマレーシアや韓国などから大量に輸入されています。また,ケニアやベトナムでも生産が行われており,国際競争力の観点から,人件費の高い日本でスプレーキクを生産することは極めて不利な立場に置かれています。この点では,その需要が中国,韓国,日本の東アジアに限られ,かつ葬儀などに需要が限定されている輪菊は地域性が高いことから,品質向上や品種の限定に務めることで日本での生産にも将来戦略がたてやすいといえると思います。
 面白い話を伺いました。「神馬は紫外線に反応するため,ガラスハウスでの生産は難しい」とのことです。そういえば,輪菊生産者の施設はガラスハウスがないように思います。研究上でも光質と植物の生育との関係は色々と面白そうな話題だと思います。
 中園泰二氏いわく,「キクは作る」,「バラはできる」だそうです。この言葉通りであれば,キクは商品となる能力を持ち,バラは農作物になるのでしょうか・・。