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(株)アサオカローズ(八ヶ岳農場)
 【バラ切花生産】
 (長野県富士見町)

 2006年5月23日に,世界バラ会議で来日された中国江蘇省林業科学研究員副所長の王国良氏を案内して浅岡バラ園八ヶ岳農場を視察しました。王氏は以前浅岡バラ園に研修生として滞在しておられたとのことです。
 浅岡バラ園の西尾農場へは1999年に訪問したことがありますが,八ヶ岳農場は初めての訪問でした。西尾市は宅地化が進み,区画整理の対象となると共に,都市計画の対象地域となったことによって,切りバラ生産を今後継続して行うことが難しくなってきています。また,暖地での切りバラ生産は冬季の生産が中心で,希少価値のある夏季の生産・出荷が困難であったことも長野県での農場開設の要因であったとのことです。新たな生産施設を求めて,複数の候補地の中からカーネーション生産農家が離農した600坪の生産施設を購入し,長野県に農場を開設しました。2005年5〜7月に苗を定植し,生産を開始しました。八ヶ岳農場の標高は1,000mです。

  

下のバスは八ヶ岳農場のマスコットです。バスの正面には寄せ植えのバスケットが飾ってありました。

 

カーネーション切花生産のベッドをそのまま活用してバラが定植されています。

 

 土耕栽培ですので,シュートの長さは少々短いですが,太いシュートで素晴らしい花が着いています。
 浅岡バラ園で収穫したバラは市場に出荷していません。ブライダル企画を中心に,ネット販売や独自店舗販売ですべてが販売されます。訪問した時期が5月であったこともあって,毎週複数の結婚式の企画を請け負っているとのことでした。独自店舗としては名古屋市の名古屋港イタリア村に店舗を開設しました。

  

 生産している品種は,花き市場で必ずしも高く評価されている品種ではありません。通常では生産されない品種を中心に,特徴があり,夏の気候が冷涼で日射量が確保できる長野県の特性を活かした「夏に大輪系となる品種」が生産されていました。岐阜県が育成した「ハイネス雅」も植えられていました(下右写真)。
 浅岡バラ園で販売する品種は,春から初夏の花保ちは1か月,冬季には2か月を確保できる品種と品質を目指しています。社長の浅岡正玄氏は「お金を払ってバラを買ってくれる消費者は,普通のバラには飽きてきています。品種や品質など,何かにこだわりを持った特別な消費者に応えられるバラを供給できる生産会社を目指したい」と述べておられました。

   

 これまで切りバラを生産・販売してきた経験の中で,「蕾の状態で収穫したバラが開花した」ものと「温室の樹で咲ききったバラ」との違いを常に感じ続けていました。生産者が体験している「樹で咲ききったバラ」が持つバラ本来の力を消費者の何とか味わってもらいたいとの気持ちが市場を介さない販売体系確立の大きな原動力になっています。
 また,バラが持つその力を実感してもらえる機会として,お客様の人生の中で最も感動的なイベントである結婚式に焦点を当てて企画を立てています。バラを買ってくれる消費者にとって結婚式という特別なイベントに特別な思いのバラで飾る重圧感や責任感,満足感は,これまで市場出荷を行ってきた切花生産者の立場では味わえない充足感を感じるとのことです。結婚式場でのバラの装飾企画は,まさに消費者と一体感を共有する切りバラ生産者でありたいという浅岡正玄氏の真骨頂といえると思います。
 現在目指しているバラの結婚式の方向性としては「バラの香りの結婚式」とのことでした。

 1999年に訪問した時に見かけた浅岡バラ園特製のバケットを見つけました。今でこそ当たり前となったバケット輸送を「消費者が長くバラを楽しんでいただく」ために10年前から独自に始めていた浅岡バラ園だからこそ,今の進化形態があるのだと思います。

 除草の省力化のために信州名産のソバ殻をベッドに敷き詰めたところ,ソバの実生が生えてきていました。なかなか面白い取り組みと感じました。