岐阜大学 工学部 化学生命工学科 生命化学コース

X線小角散乱とは SAXS

■主なテーマ

▼散乱データに基づくタンパク質複合体のマルチスケールモデリング
▼タンパク質折れ畳み反応の小角散乱時分割測定
▼化学反応装置の開発

タンパク質の3次元構造


http://www.rcs.org/pdb/home/home.doより転載

 タンパク質の立体構造はその機能発現を決定しています。立体構造を知ることによりタンパク質機能を理解し、最終的に病気の分子理論的理解やタンパク質の新規設計などが可能となるのです。タンパク質の立体構造から得られる情報としては、
■薬剤などの基質結合部位
■相互作用を行う特定領域での物理化学的性質
■機能に対する全体構造の重要性
などがあります。その中でも私たちが最も着目しているのは機能に対する全体構造の重要性です。
 コラーゲンなどのタンパク質は3本の鎖がよりあわさった形をしていますし、解糖系の酵素などでは非常に対称性の高い形をしています。また、非常に細くなっている部分はその部分で大きく分子が動くことが予想されます。お互いに結合するタンパク質の部分同士は近接していなければなりません。タンパク質の形にはその「情報」が含まれているのです。

X線小角散乱による構造生物学


タンパク質溶液散乱(小角散乱)の原理

 タンパク質の構造を決定する方法としてX線結晶構造解析法や高分解能NMR法などがよく知られていますが、X線小角散乱法もその一つです。
 X線小角散乱法は、結晶構造解析と全く同じ物理現象、「散乱」に基づいています。X線では、電子が散乱源となり トムソン散乱と呼ばれる現象が起こります。電子の空間分布すなわちタンパク質の立体構造にあわせて散乱の 「模様」が変わり、それを解析することにより構造を決めます。
 X線結晶構造解析と小角散乱の最大の違いは、試料です。小角散乱では、主にタンパク質溶液が使われ、 結晶や同位体で置換した試料を用意する必要はありません。見える精度はその分劣りますが 大きく運動している部分も観測することができるのです。
 従って、X線小角散乱法は水溶液中でのタンパク質の「姿」の変化を探ることに向いています。例えば、タンパク質の 構造形成反応を「その場」で観測するようなことも可能です。

X線小角散乱の今後


トロポモジュリンのドメインマッピング

 近年、小角散乱を取り巻く環境が大きく変わりました。世界中いたるところで小角散乱を測定できる施設が建設され、 無料の解析ツールも整備されたことにあります。多くの他分野の人が小角散乱を道具として使うようになり、 それに伴い高速時間変化測定や高分解能NMRデータを併用した原子レベルの構造解析といったハード・ソフト両面で新たな 試みが行われています。
 しかし、小角散乱法においては結晶構造解析と違って解析方法が未だ確立していません。例えば、小角散乱解析結果が どれぐらい正しいか評価する方法は専門家の中でも意見が統一されていません。逆に言うとやることがまだまだあると言えます。 今後の課題としては立体構造情報に基づく最新の立体構造の性質をどのように取り込んでいくかということにあるでしょう。

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