岐阜大学 工学部 化学生命工学科 生命化学コース

高静水圧 High hydrostatic pressure

■主なテーマ

▼タンパク質の会合状態と活性の研究
▼高静水圧を利用したタンパク質凝集体からのタンパク質再生
▼高圧電気泳動装置を用いたアミロイドシスの研究

高静水圧の特徴


圧力の効果

 溶液中に静水圧力をかけるとその力は等方的に伝わります。水深10m深くなるごとにおおよそ1気圧の圧力がかかることになります。このような圧力エネルギーは化学エネルギーに換算することが可能で、計算上水を2000気圧まで加圧すると水分子の実効上の濃度(活量)は4倍になります。つまり、タンパク質を水和しようとする水分子の化学力がより強くなるのです。

意外に密接な高静水圧力と生物の関係


麻酔剤の圧力拮抗

 皆さんは、「圧力と生物」と聞くと深海生物のようなものを思い浮かべるかもしれません。しかし、我々の身近な生命現象にも圧力は大きく関わっています。例えば、麻酔をかけた魚に圧力をかけると覚醒します。(圧拮抗)
 また、圧力下では微生物の生育が抑制されます。1969年、1500mの深海に沈没していた潜水艦「アルヴィン」号を引き上げたとき、船内に残されていたサンドイッチが腐敗していなかった事実から明らかになりました。
 一般に圧力の効果は、小さなタンパク質よりも大きなタンパク質。さらには細胞へと体積が大きくなりにつれてその効果が顕著になります。この性質を利用すると、変性したタンパク質凝集体を可溶化し、再生することなどが可能となります。

高静水圧力は熱力学的ピンセットである


タンパク質複合体に対する圧力効果の原理

 タンパク質溶液に高静水圧を加えると、その状態、酵素反応の平衡、反応速度が大きく変化します。ル・シャトリエの原理によれば、圧力を上げると体積が減少する方向に平衡がシフトします。化学薬品や温度でも平衡はシフトできますが、シフトの変化を微妙に調整できるのが圧力の利点です。従って同一サンプルに可逆的にエネルギーを出し入れし、分子の選択が可能となります。「高静水圧力は熱力学的ピンセット」といわれる所以です。

タンパク質活性と会合状態


高圧X線小角散乱測定の実際

 タンパク質の形、特に会合状態及び様式は、多くの場合その活性と深く関わっています。活性をする際になぜ会合する必要があるのか?どの会合状態のときに最大の活性を得るのか?どのように会合とかい離が平衡しているのか?
 これらの疑問を、反応を「かく乱」する高静水圧力という技術と溶液状態で構造を解析するX線小角散乱法という技術を結合させることにより調べていきます。

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