.. data collection ================ DATA COLLECTION ================ シンクロトロン光源でのSAXSデータ収集には、通常、短い露光(0.1〜0.3秒)の収集データがとれる。データ収集時間は、光源に応じて1秒の短さで全体として最長5分までとなる。BM29、SOLIEL、およびSIBYLSのようなビームラインは、試料位置で1秒あたり :math:`10^{12}` から :math:`10^{13}` の光子を持つが、P12は1秒あたり :math:`10^{14}` 程度の光子を持つことができる。露光セットは、データ減少により組み合わされて、全ての試料データを代表する単一のSAXS曲線を生成する。実際には、最初の画像(露光)がダメージフリーであると仮定し、他のすべての露光をこの参照フレームと比較する。最初のフレームと一致するすべての露光とマージし、残りのフレームは廃棄される。あるフレームへの修正は、放射線損傷があったと理解される。 試料ごとに、対応するバッファーをできるだけ多く測定することを推奨する。SAXSは試料とバッファーの2つの測定値であり、バッファー測定が試料で使われたと同じように、用心や注意を払うことは絶対に不可欠である。同様に、 BM29、P12およびB21にみうけられるサンプリングロボットを使用する場合、バッファーは何度も測定され、すべてのバッファー測定値は減算に使われる必要がある。 .. figure:: 2.jpg :scale: 70% :align: center サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)結合SAXSの場合、流速は使用する分析カラムのタイプに応じて毎分50μLから240μLまで変動することができる。一般的なカラムは2.4 mlの ``Superdex Increase PC 3.2`` カラムと4.8μlの ``Shodex KW-400`` シリーズである。 ``Shodex`` カラムは、少なくとも10〜100倍の分解能で、より高い流速で動作する。関心のある溶出ピークをわたって収集できるフレーム数を最大にするような流速でカラムを動かされるべきである。 .. figure:: 3.png :scale: 50% :align: center 図1は、 ``Shodex KW-403`` カラム(50μL 入試料、10 mg/ml)上で100μl/mで実行されるキシラナーゼのSEC情報を示す。キシラナーゼは21kDAの小さなタンパク質であり、カラム容積の最後に向かって行うべきである。試料は、2つのピークが示されるように、少なくとも2種類の混合物であることがわかる。同じ試料を使うことにより、 ``Superdex 200 PC 3.2`` カラムに50μLのキシラナーゼを注入した(図2)。``Superdex`` カラムで試料は、1つの非対称な溶出ピークとなり、混合物の分解能が悪いことを示す。 .. figure:: 4.png :scale: 50% :align: center カラムの選択は主に分解能によって決められる。しかし場合によっては、タンパク質とカラムが相互作用する可能性があります 、 ``Shodex`` 樹脂は酸化ケイ素を基にしているのに対して、 ``Superdex`` は機能化された炭水化物である。相互作用は、塩を調節するかスクロースのような添加物を使用することにより緩和される。 遠心分離とろ過 -------------- ********** SAXSは試料中のすべての物に敏感に反応し、溶液中の会合種の存在を容易に検出することができる。これは、 *X* −線散乱の全強度が電子の総数の二乗に比例するという事実の結果である。したがって、データ収集のために試料を充填する直前に、汚染されている凝集物を除去するために、試料を遠心分離またはろ過することが賢明であろう。ALSのBL12.3.1では、ビームラインでの試料調整のために使われる小容量のゲルろ過クロマトグラフィーシステムを維持している。それぞれのゲルろ過操作は、25μlが必要で、24分かかる。 なぜ複数の露光なのか -------------------- *********** シンクトロン光源での実験による単一のSAXS曲線は、たびたび同じ試料の2回以上の露光の結果である。シンクトロン *X* 線放射線は非常に強い(1秒あたり :math:`10^{11}` 光子)の *X* 線が集光するため、タンパク質サンプルは放射線誘発損傷を受ける可能性が高い。その損傷は、SAXS曲線に影響を及ぼし分子形状因子の正確な評価を妨ぐ。放射線損傷の監視をし、その後の損傷フレームの廃棄を行うために、一連の短い露光を使うことができる。最小散乱角での正確な測定は、ギニア近似による *Rg* の評価、また凝集や複雑さに関して試料の品質を評価をするためにも重要である。 2つ目に、散乱 *X* 線の強度は、散乱角の関数として指数関数的(q\ :sup:`-4`\ )に衰え、短い露光は、中広角散乱角で信頼できる測定のために十分な *X* 線光子を提供しない。したがって、複数回行う露光の集積は、中広角散乱角での信頼できる測定を可能にする。この情報は正確な *P(r)* 分布を計算するため、また *SAXS* 実験の分解能を拡張するために大切である。 試料の散乱強度を正確に測定するには、試料濃度や検出器の進歩、器具類など他の要因も明らかに大切である。次の図は、タンパク質濃度の関数とした散乱曲線の変化を示している。 .. figure:: 5.png :align: center