======================= :program:`PISA` の概要 ======================= :program:`PISA` とは --------------------- PDBePISA (Proteins, Interfaces, Structures and Assemblies) http://www.ebi.ac.uk/pdbe/pisa/ : PDBe(Protein Data Bank Europe)によって提供される、PDBファイル中の高分子複合体(タンパク質、DNA、RNA、リガンドなど)の 構造安定性を調べるためのWebサービスである。 タンパク質の界面の構造を調べたり、四次構造を予測したり、類似性した相互作用を持つ構造体を検索したりすることができる。 :program:`PISA` の解析対象 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ :program:`PISA` には解析対象として2種類ある :Structure Analysis: PDBにエントリーされている結晶構造や、PDBファイル形式のモデル構造。 通常の対象は複数の鎖を含むPDBファイルであるがモノマーのPDBファイルでも良い。 PDBのエントリー番号を指定したり、PDBファイルをアップロードする。 :Database Searches: PDBのデータベースを対象として条件にある四次構造を持つ構造体を検索する。 :program:`PISA` でできること ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ :program:`PISA` には3つの解析モードがある。 :``interfaces``: サブユニット間、およびサブユニットと基質の界面 :``Monomers``: 複合体を構成する各サブユニットの溶媒との界面 :``Assembles``: 複合体中のサブユニット界面 理論的背景 ---------- :program:`PISA` における解析の対象はPDB形式の原子座標ファイルである。 PDBファイルには生物学的集合体がモノマーでもオリゴマーでも良いが、 通常は複数のポリペプチド鎖からなるpdbファイルである。 :program:`PISA` で扱う結晶中でのタンパク質の界面 - 隣接する単位格子の分子との界面 - 隣接する非結晶構造単位間での界面 :program:`PISA` における、タンパク質の構造安定性は以下の物理化学的性質によって決定される。 1. 会合の自由エネルギー 2. 溶媒和エネルギーの獲得 3. 界面の面積 4. 水素結合 5. 界面に働く塩橋 6. 疎水性特異部位 :program:`PISA` における四次構造の予測は単位格子にとどまらない。 単位格子をまたいだ四次構造の予測 「結晶中での相互作用が溶液中でも起きているから結晶ができる」と推測し、:program:`PISA` が上記の六つの基準で複合体を予測している。 ===================== 操作方法と結果の見方 ===================== :program:`PISA` の起動 ----------------------- :program:`PISA` のサイト(http://www.ebi.ac.uk/pdbe/pisa/)を開き、 :guilabel:`Launch PDBePisa` をクリックする。 .. figure:: tutorial111.png :scale: 70% :name: f1 :program:`PISA` の起動画面 :numref:`f1` をクリックすると :numref:`f2` が現れる。 .. raw ::latex \clearpage .. figure:: tutorial3.png :scale: 120% :name: f2 :program:`PISA` のトップ画面 :guilabel:`Structure Analysis` か :guilabel:`Database Searches` かいずれの解析を行うかはこの画面の :guilabel:`Submission Form` で決める。 最初に :guilabel:`Structure Analysis` モードの説明を行う :guilabel:`Structure Analysis` による解析 ------------------------------------------- :numref:`f2` で調べたいPDBエントリー名を入力する。 .. figure:: tutorial3.png :scale: 120% :name: f3 PDBエントリー :file:`1n2c` を入力した直後の画面 エントリー :file:`1n2c` には8つのタンパク質鎖と22のリガンドがあり、 最も可能性の高い集合体は8量体であると表示される。 :numref:`f3` ではタンパク質鎖の数と結合リガンドの数などPDBエントリーに関する予備情報が得られる。 また必要なリガンドを選択したり処理モードを選択したりする。 :numref:`f3` で :guilabel:`view` をクリックすると構造を表示することができる。 .. figure:: 1n2c.png :scale: 40% :name: f4 :guilabel:`view` ボタンでPDBエントリーの構造を表示した図 :numref:`f3` において :guilabel:`Interfaces` 、 :guilabel:`Monomers` 、 :guilabel:`Assebblies` をクリックすると目的のタンパク質の構造的性質を知ることができる。 :guilabel:`Monomers` ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 一つ一つのタンパク質鎖やリガンドに関する以下のような情報が得られる。 解析リスト中の項目とその内容を下の表にまとめた。 .. csv-table:: :guilabel:`Monomer` の解析リストの項目 :file: monomer.csv :encoding: utf-8 :header-rows: 1 :delim: ; :widths: 1 9 .. raw:: latex \clearpage :file:`1n2c` の場合では ``A〜H`` のタンパク質鎖と ``HCA`` , ``CFM`` , ``CA`` , ``CLF`` , ``MG`` , ``ALF`` , ``ADP`` , ``SF4`` というリガンドに関する情報が得られる。 .. figure:: monomergamenn22.png :scale: 100% :name: f5 :guilabel:`Monomers` の解析結果 ポリペプチド鎖とリガンドの種類によって分類され、 ``id`` がふられている。 ``NN`` をクリックするとタンパク質鎖中のどのアミノ酸が溶媒分子と接しているか、などがさらに詳しく分かる。 :file:`1n2c` の場合、 ``A`` , ``C`` 鎖、 ``B`` , ``D`` 鎖、 ``E`` 〜 ``H`` 鎖が それぞれ同一の分子であるのでそれぞれひとまとめに分類されている。 .. raw:: latex \clearpage また、 :guilabel:`View Unit Cell` で :file:`1n2c` の単位格子を表示することができる。 .. figure:: unitcell.png :scale: 40% :name: f6 :guilabel:`View Unit Cell` による :file:`1n2c` の単位格子の表示 単位格子の中には生物学的集合体である8量体が8分子存在することがわかる :guilabel:`Interfaces` ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 2つのタンパク質鎖間やタンパク質鎖と低分子間の界面に関する以下のような情報が得られる。 リスト中の項目とその内容を下の表にまとめた。 .. csv-table:: :guilabel:`Interfaces` の解析リストの項目 :file: interface.csv :encoding: utf-8 :header-rows: 1 :delim: ; :widths: 2 8 .. raw:: latex \clearpage .. figure:: interfacegamenn.png :scale: 120% :name: f7 :guilabel:`Interfaces` の解析結果 :numref:`f7` で ``x`` の列の :math:`\diamondsuit` をクリックすると構造上どの位置の界面か確認することができる。 .. figure:: 1n2cDC.png :scale: 40% :name: f8 :math:`\diamondsuit` ボタンによる界面の位置表示 :numref:`f7` で ``NN`` をクリックすると、どのアミノ酸残基に結合が生じているかや どのアミノ酸が界面を形成しているかなどの詳しい情報が得られる。 .. raw:: latex \clearpage .. figure:: interfacegamennNN.png :scale: 120% :name: f9 各界面の詳細画面 :guilabel:`Assemblies` ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ タンパク質の集合状態に関する以下のような情報が得られる。 リスト中の項目とその内容を下の表にまとめた。 .. csv-table:: :guilabel:`Assemlies` の解析リストの項目 :file: assembly.csv :encoding: utf-8 :header-rows: 1 :delim: ; :widths: 3 7 .. figure:: assemblygammenn.png :scale: 120% :name: f10 :guilabel:`Assemlies` の解析結果 :math:`\Delta G^{int}` が最も低い値となっていることから :file:`1n2c` の場合最も形成する可能性の高い集合体は8量体である。 :numref:`f10` で ``Id`` の番号をクリックすると選択した集合体における界面の情報などが詳しく分かる。 ここでは8量体である ``Id`` が ``1`` をクリックする。 .. figure:: assemblygammennId22.png :scale: 120% :name: f11 :numref:`f10` の ``Id 1`` の集合状態の詳細情報 ``Probable Assembly [1]`` としてその集合状態内のサブユニット間相互作用の詳細が表示される。 :numref:`f10` で :guilabel:`View Dissociate` をクリックすると、 ``Probable Assembly [1]`` が解離する際、 どのように乖離するかを図示することができる。 .. figure:: atumarikata.png :scale: 40% :name: f12 ``Probable Assembly [1]`` が解離する際の解離の集合状態の予想図 :file:`1n2c` の場合は ``AB`` 鎖と ``CD`` 鎖 と ``EFGH`` 鎖の3種類の解離体が予想される。 .. raw:: latex \clearpage :guilabel:`Searches` による検索 --------------------------------- 基準を満たすエントリーの検索 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ :program:`PISA` はPDBの全てのエントリーのデータベースを保持しており、以下のような特定の基準に一致するエントリーを検索することができる。 * 会合数 * 対称性 * 空間群 * 塩橋やジスルフィド結合の数 * 高分子の種類 * 溶媒和自由エネルギー .. figure:: databasekensaku.png :scale: 70% :name: f13 :guilabel:`Searches` のトップ画面 例として、 ``同じモノマーからなる二量体でタンパク質とリガンドでできており、hydorolaseというキーワードに関連したエントリー`` という条件で検索する。 .. figure:: kennsakukekka.png :scale: 120% :name: f14 :guilabel:`Searches` の解析結果 条件に適合するPDBのエントリーのリストが表示される。 ここではエントリー :file:`3nl9` に注目する。 :numref:`f14` で ``mmSize`` の列の数字 ``2`` をクリックすると構造を表示することができる。 .. figure:: 3nl9.png :scale: 40% :name: f15 :file:`3nl9` の表示 :numref:`f14` で ``Entry`` の列のPDB番号をクリックすると界面の詳細を見ることができる。 .. figure:: kennsakukekka22.png :scale: 120% :name: f16 :file:`3nl9` の界面 :file:`3nl9` は1本の ``A`` 鎖しかないモノマーである。しかし、この表からわかるように 隣接する格子の ``A`` 鎖と結合し2量体を形成し、界面を成していることがわかる。 .. important:: このように、PDBの非結晶構造単位だけでなく、点群によって生成される分子も含めた 全ての可能な集合体が対象となっていることがわかる。 類似の界面を持つPDBエントリーの検索 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ また、:program:`PISA` では類似の界面様式についてPDBデータベース全体を検索することができる。 :numref:`f16` で表示されている界面のリストの中から調べたい界面を選択し、 :guilabel:`Search` をクリックすると下の検索画面になる。 .. figure:: search.png :scale: 120% :name: f17 界面データの検索画面のトップ 類似の程度などを指定した後 :guilabel:`Submit for search` で検索する。    .. figure:: kennsakukekka3.png :scale: 120% :name: f18 界面データの検索結果 自分自身とそれ以外の :file:`2ijc` が表示されている。 :numref:`f18` の検索結果より、六量体である ``2ijc`` の ``5`` 番目の界面が類似しているということが分かる。(一番上は元の構造体である。) .. figure:: kennsakukekka4.png :scale: 120% :name: f19 :file:`2ijc` における界面のリスト 検索条件に適合している情報だけでなく、その界面がどのような結晶中に 存在するか周辺情報も含めて表示される。 :file:`2ijc` の ``I`` 鎖と隣接する格子の ``I`` 鎖との界面が似ていることがわかる。