岐阜大学地域科学部Webオープンキャンパス/学生インタビュー



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学生インタビュー1:山口琴帆さん(2023年度卒業生)


 卒業論文は、地域科学部の学びの集大成と言っても過言ではありません。書き上げるためには、問題と真に向き合い、調査を行い、そして頭の中にある考えや思いを人に分かるように文章にしなければならず、大変なエネルギーを必要とします、そんな中で山口琴帆さん(2023年度卒業生)は卒業論文を2本も執筆されました。なぜ2本も卒業論文を執筆したのか、どんな学生生活を送ったのか、お話をうかがいました。


――― まずは、卒論のタイトルと概要について教えてください。

山口:はい、1つは、合掌先生の環境心理学ゼミでやってきたことで、タイトルは「幼少期のキャラクターの好みが現在のパーソナリティに与える影響」です。内容は、小さい時に好きだったキャラクターに対して抱いている印象と本人の性格との関係についての考察です。結論を言えば、おおむね相関があって、特に、ジェンダー観については、比較的強い相関がありました。そのほかは、行動の積極性の指標が、特に男性では好きなキャラクターと相関がありました。
 もう一つは、南出先生のゼミでやってきたことですが、「キャラクター文化からひもとく若者のあり方」というタイトルです。キャラクターっていうのは、日本でも海外でも人気な文化の 1 つとして扱われています。そのキャラクターの主なターゲット層である若者の流行とか、考え方とかが、キャラクターの側から見えてくるものがあるんじゃないかなっていう仮説のもと、歴史とか、先行研究とか踏まえた上で、自分の考察を書きました。

――― そもそもなぜ2つも論文を書こうと思ったんですか?

山口:私たちの学年は、コロナが始まった年に入学して、しばらくは大学にも行けず、サークルに入るタイミングも逸してしまいました。もちろんサークルに入った人もいて、それに打ち込んでいる人もいたんですが、私は入らなかったので、サークル以外に何か打ち込めるものを探していたんです。ゼミ選択の際、南出先生が、ゼミを2つ取ることもできるよっておっしゃってくださって、結局、二つゼミを受講することになりました。

――― ゼミを二つ受講するのは、準備も必要だし、大変ですよね。

山口:そうですね、特に3年生の就活の時は、ゼミに行けないときもありました。確かに労力を考えると大変だったんですけど、でも、私自身、キャラクターが大好きで、地域科学部のいいところでもあるんですけど、自由に研究させてもらえたので苦痛ではなかったです。

――― 実際には、いつごろから卒論に向けて調査を始めたんですか。

山口:合掌ゼミの方は、結構コツコツやっていまして、4年生の就活が終わって、6,7月には、先行研究のまとめとかやっていました。夏休みは、遊び放題でした。

――― それも大事(笑)

山口:夏休みが終わって10月にアンケートの予備調査を行って、ゼミのみんなや先生と相談しながら最終的なアンケートを作っていき、11月の頭に調査を実施しました。12 月に分析を行って、1月は考察しながら論文を書き上げました。心理学の方は、学問的にちょっと理系の色も強いので、書き方が決まっていて、そこに調査結果と分析考察を当てはめていく感じでした。

――― 南出ゼミの方は、最初から卒論を書くと決めてたの?

山口:ゼミを受講した時から漠然と二本書いたら面白いだろうなと思っていたんですけど、実際に書こうと決めたのは4年生の春くらいです。最初は冗談だろうと思われていたみたいです(笑)。宣言しちゃったので、書くしかないとなったわけですが、実際に書き始めたのは、心理学の調査が終わった12月の頭くらいです。

――― 12月から書き始めたって、それすごいね。

山口:でもどちらもキャラクターを扱っているので、共通する部分も多いんです。心理学の方は、調査を行ってその結果を書くという自然科学的なものですけど、社会学の方は、文化的な側面から自由に書かせてもらいました。 逆に、どちらかだけだとしんどかったように思います。数値をめぐっての分析だけだと、私の考えじゃないって悶々としますし、好きなことだけ書いているのも実証性に欠けているので、両方書いてバランスがとれていたと思います。「人」という字みたいに(笑)。学問分野は異なるんですけど、こっちのゼミで読んでいた文献があっちのゼミでも使えて、学問分野ってどこかでつながっている部分があるんだなということも身を以って体験しました。それから、一時期柴田努先生の『資本論』の読書会に参加していたんですが、そこで学んだことも分野間のつながりを感じました。高校生の頃は、経済学って数学チックなのかと思っていましたけど、柴田先生に教えてもらった新聞記事は、卒論でも引用していて、実は経済学だって、心理学や文化とつながっているということも気が付きました。

――― 地域科学部の学びをまさに体現していますね。卒業後はどんな仕事をするんですか。

山口:キャラクター関連の仕事をします。ゲームメーカーのアミューズメント部門で採用されて、キャラクターグッズの企画・制作などをします。あと仕事ではないですけど、書くことが好きなので、趣味として書くことは続けたいと思っています。

――― 地域科学部で最も印象に残っている授業を挙げるとしたら、どの授業ですか?

山口地域学実習ですね。堀江先生の下呂泊まりこみの実習で結構ハードでしたけど、集落の人たちと関わったり、お話を聞いたりするのは面白かったです。下呂市役所の方とかかわる機会もあって、行政の視点からのお話も聞き、人とのつながりが地域を創ると感じました。いいこと言いましたか(笑)。
 講義科目では、1年生の時に受けた柴田努先生の政治経済学が印象に残っています。高校の時には、経済学なんて全然興味なかったんですが、受けてみるとすごく面白かったです。それがきっかけで、全然興味ないことに挑戦するのもありかなと思うようになりました。あと胡麻をするわけではないですけど、合掌先生の環境調査法も楽しかった。錯視の実験とか、川原町の外観調査というフィールドワークもやって、普段見たことのない器具も使って計測したりして、大学生っぽいと思いました。グループワークがメインになるので、他の学生と交流できたのも良かったです。
 実は、もともと違う大学を目指していて、残念ながらそこが不合格で地域科学部を後期日程で受験して入ったんです。最初は、コロナもあって、悶々としていましたけど、結局この学部で良かったなと思っています。もともと志望していた学部は心理学しかできないところだったから、そこへ行けていたら行けてたでよかったのかもしれないけど、ここの方が、私的には成長できたのかなと思っています。

――― では、受験を考えている学生へのメッセージをお願いします。

山口:やりたいことが決まっている人でも、地域科学部に入るといろんなことを学んで、違う世界が広がってくると思います。人生の方向性がまだ決まっていない人も、いろんな授業を受けて、何にも染まっていない感性で、好きなことを決めて行けばいいと思います。このいろんな分野を勉強しているということが、実は就活の時に結構受けたなと思っています。スペシャリストも大事だけれど、ジェネラリストも大事という話はよく聞きました。地域科学部でいろんなことを自由に学ばせてもらったおかげで、ジェネラリスト的側面を評価してもらったと思っています。やりたいことが決まっている人も決まっていない人にもおススメです。

――― そう言ってくれるととても嬉しいです。今後の活躍を期待しています。

(2024年3月1日インタビュー by 橋本永貢子[地域科学部教授・副学部長])

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学生インタビュー2:清水一稀さん(2023年度入学)


 地域科学部では、短大を卒業された方、あるいは他大学で2年間の過程を修められた方を3年次編入生として受け入れています。4年生の大学で学習を進めていながら、なぜ、地域科学部への編入を決めたのか、実際に入学してみて、地域科学部での学びをどう感じているのか、清水一稀さん(2023年度入学、地域文化学科)に聞いてみました。


――― 3年次編入ということですが、地域科学部に入る前の専門は?

清水:四年生大学の英文科で通訳者や翻訳者を育成するコースで勉強をしていました。

――― そこからなぜ地域科学部に編入したんですか?

清水:そもそも前の大学は、第一志望ではなかったのですが、で、英語が得意なほうとだったので、英文科だからいいかなと思い入りました。でも、もともと文学とか、哲学とか、思想などに興味があったので、その英文科に所属しながらも、ずっとそういうのを学びたいなと思っていました。一人で勉強をしたりもしていたんですけれど、やっぱり人とディスカッションできる環境があった方がいいなということで、在籍していた大学を辞めて、岐阜大学に移ろうと思いました。

――― いろんな大学がある中で、地域科学部を選んだのは?

清水:もともとは、違う大学の哲学コースとか哲学科に入ろうと思っていたんですけど、たまたま地域科学部の案内を見て、気が変わりました。最初は「地域」って名前なので、岐阜などのある地域に特化して学ぶのかと思いましたが、教養とか国際がキーワードになるような学びも展開していて、ああ、これが自分の一番やりたいこともしれないと思いました。哲学だけ学んだとしても、ちょっと専門的になりすぎるかなとも思って。哲学とか思想を軸にしながら、全く異なった授業も受けてみて、より広い視野から物事を考えてみたいなと思ったことも理由です。

――― 哲学・思想系ではない授業で面白かったのはありましたか。

清水:あ、これ、お世辞とかでなくて、社会言語学(注:インタビュアー担当科目)が、自分の中で一番残っています。英語に関しては、前の大学でも学んでいましたが、母語である日本語に関しては、今まで考えたことも、分析したこともなかったので、実は複雑な構造しているんだということに気が付いて面白かったです。それから、一番印象に残っているのは、グループワークでのプレゼンテーションですね。講義の後半では、グループに分かれて、自分たちでテーマを見つけ、発表するという課題があって、自分たちは、男女の言葉について考えました。プレゼンテーションで考察も述べたのですが、先生からのコメントで、その根拠の所在を問われて、あっと思いました。自分はずっと思想や哲学をやっていて、データなどの数的根拠をあまり気にしていませんでした。でも、分野が異なれば、違うものが重視されてくるというか、根拠の与え方も変わってくるので、人を納得させるためには、多様な観点を入れて学ばないといけないなということで、自分としては勉強になりました。

――― そして、今は南出ゼミ(注:教育学、福祉学)に所属しているんですよね。これも哲学・思想から少しずれていますよね。

清水:はい、もともとは哲学のゼミを希望していたんですけど、定員に達しているということで、南出ゼミにお世話になることとなりました。でも、南出先生のゼミでも、生きづらさや若者に関わる現実の問題を扱うことができるので、自分の哲学思想を用いながらも、机上の空論にならないよう、実社会の課題と融合させて、研究を進めて行きたいと思っています。

――― 卒論のテーマはもう決まっているんですか。

清水:あ。はい、仮タイトルが英語でうまく訳せなくて困っているんですが、self and being、なんです。自己というのを研究したいと思っていて、どう生きるのが生きやすいのか、どういう価値観が開かれるべきなのかということが書けたらいいなと、漠然としながら、方向性としては決まっています。

――― 話は変わりますが、3年次編入生は単位を取るのが結構大変ですよね。

清水:まぁそうですね。でも、ここの大学は、他の大学に比べて、前の大学で履修した単位を割と認定してくれるので、2年で卒業できないという心配はないです。他大学に編入した人だと、入学した時点では、ほとんど認定されないということもあって、結構厳しいということも聞きます。

――― 地域科学部に入ってきて、実際のところどうですか。他の一緒に入って来た学生さんとどんな話をしていますか。

清水:この大学に来ることができてよかったね、といつも話しています(笑)

――― 他の学生さんはみんな違うゼミに?

清水:みんな違うゼミに入っているんですけど、それぞれにテーマも違うし、やり方も違う。どのやり方が優れているということはなくて、それぞれに価値があっていろんなやり方があるということに、話すたびに驚かされています。ですから、他のゼミにも出てみたいなという気持ちがあって、哲学のゼミに参加したり、他の先生のところものぞいてみたりしたいなと思っています。それから、僕のゼミの先生は、発想とか行動がとても自由で、道なき道を行くというようなタイプで、話や行動を目の当たりにして、自分がいかに常識というか、固定観念にとらわれていたかということに身をもって学ぶことができて、とても充実しています。

――― 3年次編入生は、入学して1年目で就活がありますが、学業の方も充実しているというわけですね。これからもキャンパスライフを楽しんでください。今日はありがとうございました。

(2024年3月1日インタビュー by 橋本永貢子[地域科学部教授・副学部長])

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ファイル公開日:2024年4月13日 ファイル更新日:2024年4月13日
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