岐阜大学地域科学部Webオープンキャンパス/大学院 地域科学研究科の紹介
岐阜大学地域科学部の上には、地域政策専攻と地域文化専攻から成る大学院の地域科学研究科(修士課程)があり、ここには地域科学部の卒業生だけではなく、他大学の卒業生や社会人、そして海外からの留学生が集まっています。地域科学研究科では、より高度な専門応用能力とより幅広い国際性の涵養を目指す教育・研究を通じて、高度専門職業人や研究者を育てています。
[目次]
研究科紹介
担当:橋本 永貢子 教授(副学部長)
[目次に戻る]
学生インタビュー
久保田裕司さん(2023年度入学/岐阜県山県市副市長)
地域科学研究科では、社会で一定の経験を積まれた方も、社会人学生として、20代の日本人学生や外国人留学生とともに学んでいます。そのうちのお一人で、山県市の副市長でもある久保田裕司さん(2023年入学 地域政策専攻)に、入学の動機、授業の様子や修士論文のテーマなどについてお話をうかがいました。
――― まず、月並みな質問で恐縮ですが、副市長という重職にありながら、なぜ大学院に進学しようと思われたのですか?
久保田:一つは、アカデミックな場所で若い人たちと勉強するという刺激を求めて進学しました。これが本音のところです。もう一つは、これまでの経験を学問レベルで体系的にとらえ直してみたい思いがありました。山県市というのは、人口規模が2、3万という微妙な大きさでしてね、政策を進めるにあたっては経験や勘で、なんとかなる。その経験や勘だけでやってきたことが、アカデミックな視点からとらえるとあるいは新たな気づきがあるかもしれないということで、初心に帰って学んでみようと思ったわけです。
――― 2、3万くらいの都市だと経験や勘で進められるが大きな都市ではそうはいかない、というのは、どういうことでしょうか。
久保田:例えば、岐阜市だと人口40万人ほどですが、市民の人が何を考えているのか、掴みにくい。ましてや横浜市のように300万人となると絶対分からない。
山県市だと、今25,000人くらいで、もちろん全員のことを知っているわけではないですけど、多くの人と接する機会も多いですから、なんとなく市民の人が思っていらっしゃることが、だいたいのことは分かる。田舎なので自治会のつながりもあって、自治会の方から割と多様な意見もかなり吸い上げられるように思います。
市民データを取るにしても25,000人だと何か分析しようと思った時にも、エクセル使ってできてしまう。それが300万人だったらシステムプログラム組まないととてもできない。逆に1,000人だとプログラムなんか必要ないわけですが、山県市は中間的な規模で、ものによっては村役場のようにもできるし、場合によっては、市のように対応しないといけない。職員も非常勤職員を合わせても600人くらいなので、
経験と勘という「エピソード・ベース」で、対応としてもそんなにはずれることがなく、これまでやってきました。が、それがいかんのやという声もあって、特に若い人たちの感覚とずれている可能性もあるので、もうちょっと
客観的に、データに依拠した「エビデンス・ベース」を意識した政策立案だとどうなのか、確認したいということなんです。
――― 授業は週に何コマ取っていらっしゃいますか?
久保田:前学期は4つ、後学期は3つです。今日、たまたま成績発表があって、プリントアウトしてきました。
――― 「秀」ばかりですね、すごいですね。
久保田:おかげさまで。先生も優しい(笑)
――― 受講する時は、お仕事を休まれるんですよね?
久保田:行政学だけは10人くらい生徒さんがいらっしゃったんで、午前でしたけど、行政法の方は、2人だからってもう一人の学生さんにもお願いして、6限目(18:15~19:45)にしてもらえました。後学期も、遅い時間に開講される授業を取ったので、一日は遅刻、早退、中抜けをしましたが、他は勤務時間外に受講できました。通学時間も、15分くらいなので、両立はそれほど大変ではなかったですよ。あと、4年間の長期履修ができるので、無理せず履修できるのも安心です。
ただ、2年目は分からない。今までは仕事に関係する科目を履修してましたが、これからは他の分野を取らないといけない。これ(授業案内)を見ていても、こんなのついて行けるのって、めちゃめちゃ不安です。
――― 例えば、私の授業に中国語を勉強したことのない学生が受講することもありますが、そんな学生にも分かるような講義をします。ただ、あまりなじみがないものに対して、どれだけ興味を持てるかということはあります。
久保田:好奇心はめちゃめちゃ旺盛ですよ。実は今年の夏に漫才のM1グランプリに出ようと思ってるんです。職場の人間と。
――― M1グランプリに出る!?
久保田:ええ。実は去年、吉本興業とお笑いで健康づくりしようって話になって、吉本の芸人を呼んでワークショップをしたんですが、その前座で担当課長と私も出たんですよ。
アマチュア5組のトップバッターとして。それで、今年はM1グランプリに出ようということなんです。結構レベルが高かったので、1回戦通るんやないかと言われとるんですけど、まぁ、1回戦負けでもいいんですよ。それから、紅白でけん玉をやっていた三山ひろしさんってわかります?あの人は山県市のふるさと大使になってもらっていて、毎年1回来てもらっているんですが、その関係で私も練習してけん玉検定を受けて6級もらいました。
いろんなことに興味はあるので、2年生はどんな授業を受けようか迷っています。1年生の時は、自分の仕事と直接関連したものばかりで、知見は広がりましたし、先生と話をしていて、それは違うんじゃないかと言われたこともありましたが、基本的には、同じ分野での議論でしたので、そういう考え方もあるのか、という感じです。ただ、これからは、例えば文化人類学とか、
普通なら学ぼうとたぶん思わないのですが、学生として無理やりそういう分野も勉強することで、視野が広まり、違う発想が出るかもしれないと期待しています。
――― 修士論文は、どのようなテーマですか。
久保田:「ふるさと納税」についてです。この制度が始まった時は、はっきり言うと「悪政」「愚政」、止めた方がいいと本当に思っていました。現行の地方自治制度に合っていなくて「異端児」的な存在なんです。ただ、よくよく考えると良いとこもあって、考えれば考えるほど結構深いなと思いました。当初は、寄付金を集めるために、寄付してくれる人のための施策を進めることになるのではないのかと懸念していました。それでは戦前の普通選挙でない(納税額要件あり)時代に戻ってしまう、いかん、いかんと。それが少し制度が変わって、返礼品を出すようになって、山県市でも鶏卵がベストテンに入って年間何億円っていうぐらい出荷されるんですけど、そういう地域振興にもつながっていて良いところもある。それから、多地域居住という点でもいいことがあります。家は埼玉にあるけど、職場は東京で、昼間は東京の道とか公園とかで恩恵を受けてるけど、税金は埼玉に納めている。それはおかしいので、半分は東京に税金を納めるべきじゃないかという議論があります。そういうことを考えても、納税者が納めるべきところに選択して納められるっていうのは、今の住民票のあるところだけに税金を納めているよりは良いんかな、と思うところがあります。なかなか奥が深いなと思い研究テーマにしました。
――― ここまで学生として1年を過ごして来られて、社会人が大学院で学ぶことの意義をどのように感じていらっしゃいますか。
久保田:仕事しながらの通学は、肉体的・精神的負担は増えるけれど、大学に来て、若い学生さんや先生たちと話をすることは、刺激になります。朝役所に行って仕事して5時くらいになったら帰るというだけでは、マンネリになりますが、今日は木曜日だから4時半には大学に行って、6時半まで勉強してくるっていうのがすごくエキスになっています。それから中国の学生さんといろいろ話せている意義も大きいです。この間、憲法の授業でプライバシーの話をしていて、スピード違反のカメラは予告しないと駄目なんですが、中国はどうかと聞くと、中国は撮影されていて当たり前っていう感覚だそうです。報道されていることと違うことが聞けるのは、面白いです。
――― 最後に、受験を検討している方にメッセージをお願いします。
久保田:うーん、僕のような人間はマイノリティというかファーストペンギンというか、みんながやっていないからやっているというところもあって、人によって思うことが違うので、一般的なことは言えません。学生になって良いことはいくらでもありますが、それは人に押し付けるものでもないですからね。
ただ、年齢を重ねるにつれ、人間の幸せは「知・徳・美」だなと思います。クイズ番組とか池上彰の「よくわかる~~」というのがよく見られているのは、やっぱりみんな「知ること」を面白いと思っているからなんでしょうね。学生時代には、やれと言われて勉強していたので、抵抗があったかもしれないけど、「知る喜び」は一番の幸せのはず。こんなとこへ来て、若い学生さんの中でなんで恥をかかないといけないのか、と思う人もいるでしょうが、知らないのは知らないでしょうがない、それが俺なんやって、割り切っています。若い子には負けたくないとも思っていますが(笑)。変なプライドが邪魔するかもしれませんが、今まで就労や子育てなどで学ぶ時間を作れなかった人こそ「リカレント教育」を勧めます。人として生まれた喜びが増幅するはずです。
僕はもう遺書も書いていて、死ぬまでにできそうなことは、後悔の無いようにやっていきたいと思っています。今のところはほぼやり尽くしたなって気がしてるんですけど、あとはオックスフォードかハーバード大学に留学できれば思い残すことはないって思っています。
――― まだまだ夢は広がりますね。今日は楽しいお話をどうもありがとうございました。
(2024年3月1日インタビュー by 橋本永貢子[地域科学部教授・副学部長])
[目次に戻る]
修了生の声
地方自治体・省庁で働く修了生
児玉あいさん(2019年度修了) 岐阜県 中央子ども相談センター
私は、10年間児童福祉施設で働いてきました。子どもや家族への支援を研究したいと思い、地域科学研究科に入学しました。
研究方法やまとめ方もわからずスタートしましたが、授業は少人数で丁寧に指導していただけました。また、勤務に合わせて配慮してもらえることもあり、安心して取り組めました。
地域科学部は、さまざまな分野の授業があり、児童福祉に一見関係のなさそうな科目が多いと感じ、不安もありました。しかしどの分野でもどこかで児童福祉と繋がっていて、新しい学びを得ることができました。物事を多角的に捉えることから見えてくる新しい気づきは、子どもや家族への支援の幅を広げてくれました。
また、学生や院生の出会いも貴重でした。普段なら出会えなかった研究課題を知り、皆さんの熱量や知識の多さに刺激をもらいました。卒業後も学び合えることに感謝しています。
現在は、児童相談所で勤務しています。卒業してしばらく経ちましたが、大学院で学んだことを今でも思い出します。子どもたちとの関わりのなかで、悩んだり葛藤したりすることが多いですが、さまざまな角度から子どもたちを捉え、寄り添うことができるようになりました。自分自身が悩んだ時に立ち返る場所や自分の中で指針となるものが増えたことは、子どもや家族と向き合う力になります。
大学院では、人との繋がり、多角的に捉える力、自分の軸となるものを得ることができ、とてもいい経験になりました。2年間の学びにとどまらず、そこから広がる人や学びの楽しさを感じていただけたらと思います。
宮田恭兵さん(2014年度修了) 愛知県庁 尾張県民事務所 防災安全課
私は学部・研究科と三谷研究室に所属し、危機管理について研究しました。本邦の危機管理体制は災害対策基本法を中心に整備されていますが、研究を進める中でそもそも管理すべき「危機」とは何か、危機に強い行政組織とは何かという疑問へと興味関心分野が広がりました。
このように、純粋な法学とは言い切れない分野の研究をするにあたり、地域科学部・研究科では様々な専門分野を研究する教員の方々が所属するため、その先生に相談することも可能です。また、他の研究室で異なる興味関心分野を持つ学生や院生と、意見を交換することもできます。これらの環境から得られる多角観は、私にとって重要な価値観となっており、会社等の組織に属してからでは得難い経験だとも言えます。
現在は、愛知県庁の尾張県民事務所防災安全課に所属し、県災害対策本部の地域支部となる尾張方面本部の要員として、管内18市町の地域防災計画や国民保護計画の指導や、防災体制整備のための補助金交付事務を行っています。また、他所属の県職員に対し防災研修を実施し、被災した県内市町村に県職員を派遣できる体制を整備しています。
幸いにも、現在の所属は自身の研究分野で得た知見が活かせる環境にありますが、専門的な視点だけでなく先に述べた多角観の存在は、様々な主体が複合的に混在する防災の現場において重要な視点であり、ジェネラリストや学際的な知識が求められる昨今では、是非とも地域科学部・研究科で取得して欲しい価値観だと実感しています。
経営者として働く修了生
張 訳丹さん(2014年度修了) 株式会社 多美人生開発
私は中国の出身で、張訳丹と申します。笠井ゼミの唯一の留学生でしたが、アットホームなゼミの雰囲気から寂しさや言葉の壁を感じず勉学に励むことが出来ました。ワークライフバランスの取れたゼミでしたので、勉強以外にも国内外の学会への参加や社会人交流、ゼミ生との様々なパーティーなど充実した学生生活を送りました。以前は修士論文は頑張れば一人で書けるものだと思いましたが、実際はテーマ設定からデータ分析まで先生との二人三脚による製作が重要なプロセスでありました。先生のサポートと協力者の力をお借りして、多言語の相関関係を示すことが出来たことは私の自信になっています。お陰様で卒業式では謝辞の大役を担うことが出来たことは一生の思い出です。修士課程修了後、主人と会社を設立し、語学レッスンから地域資源を活用したインバウンドサービスまで外国人だから出来る事業を展開しています。先日は、岐阜県の「岐阜県で活躍する女性」として選出頂きました。いつも黒板の前で教鞭を振るう先生の姿を思い出しながら、私も同じようになれるよう事業に励んでいます。在学の二年間、社会言語科学から森林生態学まで幅広い分野の授業を選択しましたが、今振り替えると、関係がない分野でも社会人生活のどこかに役立つことが多々あります。全てが余す事なく人生の一部になっている感覚、これが一生の財産というものかもしれません。在学中の皆さん、ぜひ学生でしか体験できない楽しさを存分に味わってくださいね。
研究者として働く修了生
長谷部めぐみさん(2010年度修了) 信州大学全学教育機構
私は、2005年4月から2009年3月までは地域科学部に、2009年4月から2011年3月までは地域科学研究科に在籍していました。学部時代の教養科目は、文系科目・理系科目問わずに受講をすることができ、哲学・文学・経済学・統計学・化学・物理学など、あらゆる知識を身につけることができました。学部2年生の後期からは「言語学」を学べる研究室に所属し、牧秀樹研究室では統語論を笠井千勢研究室では第二言語習得論について学びました。
学部・修士課程に在籍中は、主に英語の文法規則に関する研究と、日本人の英語習得に関する研究を行っていました。文系の研究室と聞くと、机に向かい文献を手にすることが多いイメージがありますが、牧・笠井研究室では、「調査の題材を見つけ、データを集め、それを分析し、結果を学術会議で発表する」ことが中心でした。大学の研究費助成を受け、調査のためにアメリカのウエストバージニア大学に行ったことや、研究者が集まる国際会議でプレゼンテーションをしたことによって多くの人々から得た知識は、大学で講義を受けたり、文献を読んだりする学習からは学ぶことのできなかったものです。
修士課程修了後は、横浜国立大学の博士課程に進学し、2014年3月に博士号を取得しました。現在は、信州大学全学教育機構の助教として英語科目と学術リテラシーの授業を担当し、言語学に関する研究を続けています。岐阜大学に在籍し、先生や学友に恵まれ有意義な時間が過ごせたことを忘れず、信州大学の学生が有意義な学生生活が送れるように、しっかりと大学の教員として働いていきたいと思います。
[目次に戻る]
授業科目一覧・修士論文タイトル一覧
地域科学研究科では、こんな授業科目を開講しています。
地域科学研究科で学んだ学生たちは、こんなタイトルで修士論文を書いています。
[目次に戻る]
入試案内
必ず希望する(予定)指導教員とは出願前に連絡(研究内容等)を行い出願を行ってください。(参考:地域科学部教員一覧)
令和7年度入試(2次募集)を以下のとおり実施します。
<試験日>令和7年2月1日(土) (一般A/一般B/社会人/外国人留学生)
<出願期間>令和6年12月9日(月)~13日(金)
詳しくは地域科学研究科公式サイトの「大学院 地域科学研究科 - 入試概要」のページをご確認ください。
[目次に戻る]
研究科パンフレット
[目次に戻る]
問い合わせ先
地域科学部学務係
TEL: 058-293-3025/3326
E-mail: tigakumu@t.gifu-u.ac.jp
[目次に戻る]
*本サイトの動画で使用したBGMはすべて、YouTube Studioのオーディオ ライブラリに置かれた、著作権使用料無料・帰属表示不要の音源です。
Copyright © 2022-2024 Faculty of Regional Studies, Gifu Universtiy. All Rights Reserved.
ファイル公開日:2022年9月19日 ファイル更新日:2024年12月2日
[岐阜大学地域科学部Webオープンキャンパスサイトに戻る]