研究分野解説

千里の道も一歩から―歴史史料が読めるようになるまで

岐阜大学地域科学部 地域文化学科 芹口真結子(日本近世史)


地道な作業―史料整理

動画では、実際の史料を用い、その史料からどのような歴史事象を読み取ることができるのかを紹介してきました。しかし、歴史史料は、もともとは各個人宅や団体などに保管されてきたものです。博物館や文書館、各種研究機関、図書館といった諸機関が整理し、公開(デジタルアーカイブズによるWEB公開も含む)している場合もありますが、未整理で保存されている史料群も多く存在します。そうした史料を読み解ける状態にするには、まず、1点ずつ各文書に番号を付けながら、どのような状態で保存されていたのかを記録し(現状記録)、文書が持つさまざまな情報を一覧化する作業(目録作成)が必要となります。諸機関が公開している史料群も、以上の作業を経て利用に供されています。

史料整理の現場から

写真1は、岐阜大学旧早野邸セミナーハウス(大垣市)で実施した、2022年度地域学実習の夏季学外実習の作業風景です。本施設は、早野龍五氏から寄附された岐阜大学第7代学長の早野三郎氏ゆかりの古民家で、早野家は、近世期から昼飯村の運営などに携わった家です。

昼飯村の史料は岐阜県歴史資料館が所蔵していますが、受講生達とともに、施設内の土蔵に保管された近世~近現代の未整理史料(写真2)を整理していくと、早野家から見た村の姿の一端が見える史料や、早野家の人々の活動が分かる史料があることが分かってきました。史料整理は時間と労力のかかる根気のいる作業ですが(この史料群の整理は、今年で3年目)、ひとつの家の史料群を整理することで、その家と、家をとりまく地域の歴史を探ることができるのです。

 

教員からのメッセージ(岐阜大学地域科学部 地域文化学科 芹口真結子)

私が歴史に興味を持ったきっかけは、歴史を扱った重厚な書物…などではなく、戦国時代を題材としたPCゲームでした。戦国時代に関心を持っていたのに、どうして江戸時代を研究することになったのかというと、大学時代に参加した外部の史料調査合宿でした。実際に古文書を触り、読んでいく(最初はくずし字に苦労しましたが)なかで、現在の研究対象に出会いました。

学問に対して関心を抱くきっかけは、どんな些細なことでも良いと思います。大学での学びで必要なことは、「知りたい」と思うことを知るために、適切な研究手法や知識を身につけることです。初発の関心を大事にし、アンテナを広げつつ、しっかりとした理論や知識に基づく分析ができるよう、一緒に学んでいきましょう。



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