研究分野解説
地域経済論とはどのような学問分野か
岐阜大学地域科学部 地域政策学科 大澤圭吾(経済地理学、地域経済論)
地域経済論の問題関心
地域経済への関心は、第二次世界大戦後から徐々に高まってきました。それは日本経済の均衡ある発展を目指した地域政策がスタートしたことと、高度経済成長の中で地域格差の拡大とともに様々な地域問題が顕在化してきたことなどがきっかけです。
地域経済の自律的な発展
これまでの多くの地域経済振興として行われてきたのが公共事業や企業誘致です。ところが、近年の財政縮小やグローバル化経済の中で、公共事業予算は減少し、誘致した大企業の分工場は海外へ移転してしまうというケースが目立っています。これらの外来型開発への依存を脱却して地域経済の自律的な発展を考えるうえで、地域に根付いた経済主体に注目する必要があります。
地域経済の担い手としての中小企業
地域経済の自律的な発展において、これまでずっと注目されてきたのが中小企業です。その経済社会的な存在意義が「中小企業憲章」などで明文化されています。中小企業は、言うまでもなく大企業に比べて経済資源に乏しく、地域の様々な条件を自社の競争力に繋げて経営活動を展開しています。例えば、自社の生産能力や機械設備には限りがあるため、同業他社と情報交換をしたり仕事の回し合いをしたりしています。また、地域内に多くの取引先を持つ傾向にあります。労働力の調達先も地域内労働市場がメインになっています。こうした地域内の様々な条件を前提にした経営活動が多くの中小企業の特徴です。それゆえに中小企業は地域との結び付きが強く、中小企業を対象にした経済振興政策は地域の経済循環への影響がより強いと考えられています。
教員からのメッセージ(岐阜大学地域科学部 地域政策学科 大澤圭吾)
地域経済論は経済地理学の中心的な分野の一つとして古くから探求されてきました。地域経済を学ぶ上で一番大事だと私が思うことは、普遍的な理屈に拘泥することなく、具体的な地域の現実の経済社会問題に真っ向から向き合うことだと思います。地域にはそれぞれの歴史があり、そのうえに地域の個性や経済循環構造が成り立っています。様々な要因が影響し合って地域の総体が形成されています。そのため、一つとして同じものとして扱ってよい地域は無いと考えるべきだと思います。ただし、異なる実態を持つ地域にあっても、問題表出のメカニズムにはある程度共通するものもあります。ですから、研究の入り口では、地域問題の一般論的なメカニズムを諸地域に表層的に当てはめることに終始するのではなく、必ず一つ一つの地域の実態を丁寧に分析しつつ、その実態を踏まえて地域問題のメカニズムを明らかにすることが肝要です。
Copyright © 2025 Faculty of Regional Studies, Gifu Universtiy. All Rights Reserved.
[岐阜大学地域科学部Webオープンキャンパスサイトに戻る]