無細胞タンパク質合成系を分子生物学の新しいツールに

東京大学大学院新領域創成科学研究科  上田卓也

会長の言葉



  •   ゲノムや cDNA の網羅的解析が可能となった現在、遺伝子産物の性質を明らかにすることがきわめて重要である。そのためには、試験管内で遺伝子からタンパク質を自由自在に調製する技術が必要とされた。
  •  日本では 1980 年代後半に大腸菌やコムギ胚芽を原料とする無細胞タンパク質合成技術の開発が精力的に進められ、2000 年頃には質、量ともに抗原や立体構造解析試料の調製に利用できる高効率の無細胞タンパク質合成法が確立された。今や、多種類の遺伝子から同時にタンパク質を調製し、効率的に構造機能解析を行うことが可能となっている。
  •  無細胞タンパク質合成法は、分析的な研究だけでなく種々の分子複合体の再構成実験をも可能にするだろう。また近年注目される合成生物学の重要なツールともなるだろう。このような無細胞タンパク質合成系を基盤として拡がる新しい生命科学は、従来の生化学を完成させる科学であるとともに、その枠組みを超越した新しい科学である。ここに、この新しい分野を「無細胞生命科学」と呼ぶことを提唱し、新しく「無細胞生命科学研究会」を発足することを宣言する。

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